シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
・AM:11:20
「ん……あぁ、ん……」
「目を覚ましたか、一文字隼人」
見覚えのない天井を目にし、一文字は反射的に上体を起こさんとする。
「いっ……。うっ!」
「止めておけ。一命は取り留めたが、まだ本調子には程遠い」
「本……調子?」
頭に霞がかかっているかのようだ。ぼんやりとしていて何が何だかわからない。起きるのを諦めて再び体を横たえ、どうしてこんな状況に置かれたのか。記憶を探り、反芻する。
防災庁への訪問。敵襲。狂犬病ヴィルース。そして、彼ら禍特対に助けられたこと。思い出して来た。これは輸血の管か? 自分は治療を受けているのか。
「ベルトの修復は終わった。今、君の体に残った狂犬病ヴィルースを透析で除去している。目覚めたのなら、もうじき動けるようになるなろう」
「俺がここに運ばれて、どのくらい経つ」
「もうじき一週間だ。手がかりは掴めず、向こうも動く気配がない」
国の恥部であるゴジラ細胞の強奪は、報道管制を敷き、表向きどこも報道していない。あの日の防災庁侵入の一件も、適当なペーパーカンパニーをスケープゴートに『陥没事故』として決着させた。
「敵は光学迷彩を纏って逃げ出した。連帯責任として米の偵察衛星を借りて調べたが、この国の北部に向かったということまでしか分からない。一応今も捜索は続けているが、期待しない方がいい」
神永は淡々とそう言い終え、ふうと溜め息をひとつ。捜索は彼の専門分野だ。休みなく働いているのはひと目で分かる。
「解った。それはもういい。で?」
「捜索が行き詰まったから、別の方法を考えようという話だ。滝や船縁さんが米国からゴジラの生育データを借り受けた。今後起こりうるゴジラ災害への対策を練っている」
「そうか」転んでもただでは起きない、か。制服組にしてはガッツがある。一文字は乾いた笑みを浮かべ、神永の方を見ると。
「あんたらには借りが出来ちまったな。舐めていたことを認めるよ。助かった」
「借りにだなんて思わなくていい。俺たちはこれが仕事だ」神永はやはり真顔出そう返し。「礼なら、君の相棒に言うといい。適切な薬剤で痛みを和らげ、治療までの時間を稼げたのは、彼のお陰だ」
「あいつめ」一文字は柔らかくくしゃりと微笑むと。「で、その相棒はどこだ」
「我々と共にいる。禍特対の仕事を手伝ってもらってるよ」
仮面ライダーはひとりで二人。本郷猛の魂はプラーナとなり、一文字ライダーのマスクに宿っている。それが今、滝明久の持つスマートウォッチへと移動し、カラダがないなりに仕事をこなし続けている。
「彼から伝言だ」神永はほんの少し表情を和らげると。「今君に出来ることはない。戦いに備え、体を休めておいてくれ、と」
「ハ。言ってくれるな、あの野郎」
魂だけの人間に言われちゃあ聞く他ないか。一文字隼人は久し振りのベッドに身体を預け、神永新二に背を向けた。
「じゃあ俺からも伝言。暇で暇でしょうがない。終わったらさっさと戻って来い」
「いいだろう。伝えるよ」
素直じゃないやつだ。和らいだ空気が気取られぬよう、声にも顔にも出さず席を立った。
その瞬間。
※ ※ ※
・AM11:15
そこは昼間であっても霧深く、まだそんな季節でないのにも関わらず、居るだけでじんわりと汗をかく不気味な場所であった。観光客の姿はない。近づく者は不気味な仮面を付けた警備員によってやんわりと遠ざけられ、それでも食い下がるなら捕らえられ、行方不明にされて終わりだ。
四月の北海道。ようやっと雪が減り、青々と茂った草木の映えるこの場所に、『死神博士』の研究施設はあった。その入口は巧妙に隠されており、ここの地下三十メートルに、この世のものならざる研究を行っているなど夢にも思うまい。
『お久しぶりですイカオーグ様。研究は順調なようですね』
研究施設の最深部、すり鉢状になった下層の下層。大水槽を前に黙々と作業を行う『死神博士』に来客だ。上等な赤のスーツを見事に着こなし、立ち振る舞いも丁寧極まりない存在。
だが、その顔と手は機械で形作られており、目や口が動くことはない。人造人間、いやアンドロイドと言った方が正しいか。"彼"の名はケイ。SHOCKERの中枢が外世界を観測するために産み出した『監視者』だ。
「その名前は好かんと言っただろう、ケイ」死神博士は口に置換されたバッカルコーンをわきわきと蠢かせ、不快感をあらわにする。イカオーグはヒトを捨てた彼の本名だ。脆弱な人間の身体にイカの特性を組み込んだ、SHOCKERの次世代型オーグメントのひとり。
本来オーグたちは組織が与えたその名前を誇りとして名乗るが、彼は数少ない例外だ。オーグメント開発部門、死神部隊の精鋭中の精鋭。名への拘りは、そのまま自身の能力への自負なのだ。
『SORRY、申し訳ありません。訂正致します、死神博士。研究が順調そうでなにより』
「そりゃあそうよ。私は天才だからな」
なんとも面倒な人格である。名前に訂正を求めた時は異様に神経質そうな顔をしていたが、いざ研究を褒められると嬉々として話に応じる。まるで子供だ。子供がそのまま大人になったかのようだ。
「そこで見ているがいいケイよ。私の発明によってこの世界は激変するぞ。秩序と善意に雁字搦めにされたくだらない世界もこれで終わり。富める者も貧しき者も平等に怖れ慄く時代の到来だ」
ハイテンションでそう宣う彼の後ろで、『ゴジラ細胞』はマリモ状になってこぽこぽと音を立てている。米国はこのステージから先に進むため、プルトニウムを水に溶かし、栄養分として与えていた。彼はまだそうしないのだろうか。
『しかしBAD NEWSです。アンチSHOCKER同盟の網が青森まで迫って来ました。他のオーグの皆様も数名襲われています。ここを彼らに知られるのも時間の問題かと』
好意的に接するが、だからと言って味方をするつもりもない。彼はあくまで観測者だ。対象の『幸せのカタチ』を知らんと観察するが、与えるのは助言まで。彼がここで死んだところで涙を流すこともない。次の監視対象者の元へ向かうだけだ。
「分かっておる。私とて、老いらくの園芸で済ませるつもりもないわ」
当然、イカオーグ――死神博士もそれを解っている。期待などしない。切り抜ける『策』なら既に整えている。
「私の頭脳を愚民どもに知らしめる時が来た。『待機中』の工作員共に連絡しろ。
死神博士は水槽をスクリーン代わりにモニタを投影。横倒しになったまま動かないうずくまるそのシルエットは――、もしや、禍威獣か?
「正義を標榜する凡人どもめ。貴様らの努力など私の頭脳にかかれば無に等しい事を教えてくれる。目覚めよ『レッドキング』。奴らを皆殺しにしてしまぇい」
(347)群生相バッタオーグ軍団のおでましだ
『もはやお前たちに用はない。しねっ』
オオカミオーグの指揮するバッタオーグたちが、対ゴジラ研究ちゅうの禍特対をおそう。一文字ライダーと同じせいのうを持ち、集団でおそってくる恐るべき相手を前に、とうする禍特対!
(668)ゴジラ細胞のめざめ
『ふふふ、ようやく安定してきたな』
死神博士のゴジラ研きゅうもかきょうだ。博士はゴジラの細胞が植物のバラといっしょにすると安定することに気が付いた。
おそるべきかい獣がそだっているぞ。止められるものはいないのか!?