シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
・AM11:40
『――がっかりだ。がっかりだよウルトラマン。弱者のためにここまで体を張るとは』
レッドキングはウルトラマンに馬乗りになりながら、両肩を掴んでがつん、がつんと叩きつける。断続的に続く震度四。アスファルトに蜘蛛の巣めいた亀裂が駆け巡り、周囲の建物がつつかれたプリンめいてたわんで揺れている。
(どうすればいい……。どうすれば)
ウルトラマンは身体を丸め、レッドキングの猛攻に耐えるばかり。どうすれば? 解決策は既に視えている。最大チャージしたスペシウム133光波熱線だ。これを至近距離でぶつければ、即座に問題は解決するだろう。
だがそれは、この地域すべてを焦土に変えるということでもある。事態が終息し、戻って来た避難民から家や生活を奪うことになる。
『――守護者というのは辛いのう。あんな木っ端を気にして戦わねばならんのだからなァ』
レッドキングの目は彼ではなく、避難民でごった返す福生方面の国道七号線に向けられていた。手近な家屋を『引っこ抜き』、鷲掴みにして振り被る。野球ボールめいて投てきするつもりか? そんなことをしたら……。
(やめ、ろッ!)
ウルトラマンは即座に防御を解き、両足を引いてバネめいた勢いで禍威獣の腹を蹴りつける。虚を突かれたレッドキングは家屋を取りこぼし、十数メートル道路を滑った。
『――はっ、くだらん悪あがき。貴様のそのぬるさがこれだけの被害を招いたのだ。何の犠牲もなしに結果が得られると思うなッ』
その犠牲を強いておいて何を言う。ウルトラマンは心中歯噛みし、レッドキングに直接掴み掛かる。
『――
押し……いや、押されている。力比べでも向こうが上か。レッドキングの太い両腕がウルトラマンの腰を掴んだ。そのまま強引に体を捻り、彼を地表に叩きつける。右のスーパーマーケットとコンビニがどん、と音を立てて一瞬『宙に浮いた』。
『――もうよい。貴様が本気を出さぬなら、出させてやるまでよ』
まずい。このまま避難民を直接狙われたら。だが、こちらには止める手立てがない。倒すには人里に近すぎる。どうしたら、どうすれば……!
「情けねぇぞウルトラマン! 何を迷ってやがる!」
耳元で、聞き覚えのある声がする。乳白色の目が突っ伏したまま横を向く。緑の仮面に紅い複眼。仮面ライダーの姿がそこにあった。
(一文字隼人。どうしてここに)
声に出したが、向こうには届かない。ライダーもそれを承知の上だ。更に大声でまくし立てる。
「テレビで観てたぞ。さっきの輪っかだ。あれをやつにかましてやれ! 丸く収めるにはそれしかない」
(だが、それは)奴の腕力の前に敗れた。それをもう一度、だって?
「お前、前に言ったよな。自分を信じてくれって。そっくりそのまま返してやるぜ。俺を信じろ。必ず上手く行く」
ウルトラマンは顔には出さず目を丸くした。確かにそうだ。それを引き合いに出されると弱い。彼はライダーに会釈で答え、ゆっくりと体を起こして立ち上がる。
(いいだろう。君を信じる)
拳と拳を突き合わせ、右掌にスペシウムエネルギーを集束。先程の実に二倍。広く大きく激しく回転する青い光輪が出来上がる。
忍者が手裏剣を投げるように。メジャーリーガーがストレートボールを投げるように。ぐっと振り被った光輪がレッドキング目掛け風切る勢いで解き放たれた。
『――ぬ、ぅ! 成長のない、奴め!』
光輪は、レッドキングの首筋に深々と突き刺さる。さっきと寸分違わず同じ場所だ。このまま通れば首を刈るのも容易い。
無論『通れば』であるが。レッドキングは己にたかる蝿を払うように、またも光輪に手を伸ばす。ここまではさっきと同じ。またへし折られて振り出しだ。
「うっし! あとは任せろ、ウルトラマン!」
だが、今の彼には仲間がいる。ライダーはサイクロン号を駆り、国道七号をフルスロットル。加速の乗った勢いでレッドキング目掛けて『翔んだ』。
「喰らえッ」
サイクロン号のカウルに緑色の輝きが迸る。六気筒全てを噴射させ、加速に依って得られたプラーナを車体に纏わせて。丸鋸横回転する光輪に体当たりをぶちかます。
「気張れよサイクロン。ここが勝負どころだぜぇええ」
ライダーはアクセルを吹かし、プラーナの鎧越しに光輪を『押し込む』。レッドキングの手で留められていた刃が、ぐっと一段深く刺さった。
『――貴様、ふざけた真似を!』
スピーカー越しの死神博士の声に、ここで初めて焦りが生じた。レッドキングは残る左手で邪魔なバッタを払いにかかる。
(邪魔は、させない!)
だが、今彼が相手にしているのはライダーだけではない。光輪の発射主であるウルトラマンは、放つ念力を更に強め、光輪を更に深く押し込む。レッドキングの太く堅い首の約半分。青白い丸鋸は更に侵攻してゆく。
『――おのれ、おのれおのれおのれ! 忌々しいバッタの分際で!』
街を守るか、禍威獣を倒すか。これまで陰湿な二択を強いてきた死神博士が、逆に二択を強いられている。片手だけでは足りない。どちらかを。このどちらかを止めなくては!
「さっさ、と! く、た、ば、れ、ぇえええええええええええッ!!」
一文字ライダーの背部、翅部分から余剰のプラーナが吹き出した。自分がこの高出力に飲まれて消えるか、レッドキングの首が飛ぶか、二つにひとつ。仮面ライダーは自らの命をウルトラマンに賭したのだ。命懸けで自分を守ってくれた彼らのために。
『GGG……GRUOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!』
賭けは、仮面ライダーたちに軍配が上がった。
レッドキングの太く硬い首に刺さった光輪は、ライダーの助力を経て無事貫通。それひとつが一般家屋程もある巨大な顔が、空中三回転の後坂道の頂上まで吹っ飛んだ。
「はは、どうだ。やってやったぜ……って、ぉおおオッ!」
勝利に湧き、とうに限界を超えていたことを忘れていた。一文字ライダーはサイクロン全速力の噴射と共に地面に激突。受け身を取ることさえ出来ず、全身の骨が嫌な音を立てて砕けてしまう。
「畜生……、ははッ。痛ってェ〜〜ッ」
ライダーはなんとか身を捩って身体を反転。頸から上を失い、力なく項垂れる禍威獣と、片膝をついて脱力するウルトラマンを同時に見やった。
この程度の怪我なら二・三時間で完治する。オーグメントになってから、多少の無茶が怖くなくなった。便利だが、どんどんヒトから遠ざかって行っている。
(ありがとう一文字隼人。君のおかげだ)
言葉は通じないが、心は伝わる。ウルトラマンは感謝を込めた会釈をし、仮面ライダーもそれを受け、よろよろとした首肯で応える。
これでひとまず一段落。ここに居る誰もがそう思っていた。
『――ははは。やってくれたな。我が計画を台無しにしよって』
頸を斬られ、死んだはずのレッドキングが『喋っている』。いや、禍威獣に動きはない。奴の身体に巻き付いた拘束具とスピーカーだ。あちらはまだ生きているのか。
『――仕方がない。予定を少し早めるとするか』
死神博士の言葉に続き、スピーカー、と思われていた発声機関が組み変わり、砲塔めいたカタチに変貌する。
避けなければ。ウルトラマンは急ぎ身を屈めんとするが間に合わない。燈に輝く円状の連続光波が彼の身体に吸い込まれてゆく。
(な……)
「何だよ、ありゃあ……!」
ウルトラマンが、
否。消えたわけではない。気配は未だここに在る。ならば何処に? 目線を下に移せば自明。
身長六十メートルの巨人が、常人と何ら変わらぬ大きさまで"縮んでいる"。
(269)死神博士がスカウトされた日
『凡人どもめ。なぜ私の考えを理解しないのだ』
死神博士はヒトと植物をゆうごうさせ、じんるいをさらなる高みにゆかせるというあぶない考えをもっていた。
それに賛同するものはだれもおらず、博士も不治のやまいでしにかけていた。
SHOCKERは、そんな彼に手を差し伸べイカオーグにオーグメントしてしまったのだ。
(581)大量発生群生相バッタオーグ改
SHOCKERにとってはにっくき仮面ライダーだが、そのつよさは組織もみとめるところだ。
死神博士は緑川イチローの残したデータを元に改良型をかいはつ。一文字ライダーと同等のちからを持つバッタオーグたちを六体も造り出した。
だが強すぎるちからに心がこわれ、どの個体も発きょうして意識がない。