シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
・AM11:50
「一文字さん、幾らなんでも無茶苦茶っスよ。あんなことまで出来るのかよ」
「すごいのね、オーグメントって。禍威獣とも互角に渡り合えちゃうなんて」
輸送ヘリで現場に向かう道すがら、滝と船縁はテレビの中継映像を目にし感嘆する。
ウルトラマンの助力ありきとはいえ、頑丈な禍威獣の頸を、自分たちと同じ背丈の人間が斬り落とすという暴挙。それはまるで日本古来のおとぎ話、一寸法師が鬼を、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治したかのよう。長く禍威獣対策に携わってきたが、こんな事態は始めてだ。
つくづく、彼が味方でよかったなと思う。同時に、こんな超人を量産し、人類の敵として放つSHOCKERの恐ろしさに背筋が凍る。もしも彼までもが人類の敵についてしまったら――。
「あれ。どうしたのかしら」今もなおモニタを観ていた浅見弘子が声を上げた。「ウルトラマンが……いないわ」
「『いない』?」
「何言ってんスか浅見さん。彼ならそこ……に」
今少しだけ目を離したが、それにしたって僅か数秒。空を飛んだならレーダーがそれを捉える筈だ。ウルトラマンはどこへ消えた?
『――いや。彼は消えてなどいない』
スマートウォッチの中の本郷猛が、激しく画面を明滅させながら語り掛けて来た。
『――彼のプラーナはずっとそこにある。瓦礫の下だ、まだそこにいる』
「瓦礫の下って」変身を解除し、神永の姿に戻ったと? どうして急に。
「おいおいおいおい。まずいぞこれは」
唯一会話に参加していなかった田村班長が、別枠のドローン映像を目にし声を荒らげた。
「ウルトラマンが……捕まった」
・AM11:52
「油断したな。ウルトラマン」
変化に戸惑う彼の背後で、空間が急に『揺らめいた』。気配を察し振り返るも、『それ』は既にウルトラマンの脇腹に深々と押し込まれている。
「スペシウム133で構成されたお前の身体には、この星のどんな技術でも穿くことは出来ないそうだな。だからと言って安心してはいないか?」
透明の外套が風に揺られ、ほんの少しだけ捲れた。前に防災庁庁舎地下で見たオオカミの仮面。死神博士の手の者か。
(うっ……。何を、何をしたんだっ)
ウルトラマンの視界が不気味に歪む。眼の前の瓦礫はサイケデリックなモヤに覆われ、自分の足で立ってさえいられない。
「我が主、死神博士は天才だ。貴様の身体を穿つことなく無力化することなど容易い。どうだ、身体中のプラーナを外から乱された気分は」
ウルトラマンは神ではない。ヒトと同じ命を持つ一個の生命体だ。とんだ盲点を突かれたものだ。現在の人類の科学では、直接彼に傷をつけるのは不可能だ。だが触れて異常を起こすなら。皮膚越しに
『――ははは。よくやったぞオオカミオーグ。多少計画は狂ったが、これですべて帳消しだ。後は任せたぞ』
「かしこまりました」
オオカミオーグは捲れた外套を広げ、ウルトラマンを肩に担いだ後、自らもろとも包み込む。奴の姿が消えた。唯一彼を捕捉したレーダーが、猛スピードで北へと進んでゆく。
※ ※ ※
「あれって……まさかダダの縮小光波!?」
「まさか、ヒトの手で再現したってこと?!」
「あの日、横田では見つからなかったって聴いていたけど、SHOCKERの手に渡っていたなんて……」
禍特対の面々はドローンからの中継映像に釘付けだ。縮んだウルトラマン、背後からの不意打ち、震えながら膝をつくあの姿。『彼』が、こうも容易く無力化されるだなんて。しかも我々人間相手に。
「まずいぞ……。また逃げられる!」
田村班長はモニタ越しにこの惨状を睨み。ヘリの操縦席にこれを追えと強く促す。仮面ライダーは自己修復に時間がかかる。陸自空自は被害者の避難で手一杯。今奴を、神永を連れ去った者を追えるのは自分たちしかいない。
「いや、班長。待ってください」
船縁が指差す先では、空自所属の大型輸送ヘリが轟音を上げながらこちらに向かう様が映っていた。これは僥倖。即座に無線に呼びかけるが、相手方からの返事はない。
「船縁さん。あれ本当に『味方』スかね?」
思えば妙だ。陸自空自はレッドキング災害の事後処理に追われ、街の人々を輸送するので手一杯。こちらの二倍はあらんかというヘリが、どうして救助でなく現場に向かうのか。
『――逃げろ。あれは"味方"じゃない』
本郷猛がスマートウォッチ越しに声を荒らげ、滝の右手から緑色の光を解き放つ。輸送ヘリが操縦者の意思に反して急旋回。載る禍特対の面々は不意打ちを喰い転びそうになる。
一体何故? 先の本郷の言葉にその全てが詰まっている。並走する大型ヘリの横っ腹が開いた。その中にいたのは『ヒト』じゃない。真っ黒の仮面に赤い瞳。軍用ジャケットに似た防護服を纏う"仮面ライダー"だ。
"それ"は無警告で右肩に担いだ
『――間に合わない。皆伏せて、伏せるんだッ』
本郷猛はこれを予期していたのか? 急旋回のお陰で直撃こそ免れたものの、ミサイルはヘリの機体後部を掠めて爆破。後部ローターの回転が止まり、高度がぐんぐん下がってゆく。
「嘘、うそウソうそウソぉ!? なんだよ、なんなんだよこれ!」
「しがみつけって言われてもこれちょっと、あぁあぁああああ」
「班長!? なんなんですかアレ! どうして自衛隊のヘリに仮面ライダーが!」
「俺に聞かれても……」
バランスは崩したが、未だヘリは浮いている。だがもう逃げることはかなわない。班長の田村は移動を諦め、運転席に着陸を指示する。
「本郷猛、あれは何だ。君や一文字隼人と何の関係がある」
『――彼らは群生相バッタオーグ。僕たちの技術を応用したバッタタイプの量産型です。前に一度、殲滅したのですが』
オーグメントは『技術』だ。ノウハウと素体さえあれば、いくらでも量産に持ち込める。だがまさか、あのタイプを再びこの目で観ることになろうとは。
ドン、と派手な音を響かせ、輸送ヘリが住宅街のど真ん中に降り立った。敵も当然そこに向かい降りてくる。狙いは何だ? いや、わかり切っている。あれがSHOCKERの兵隊で、大本が獲物を捕らえ駆け出したということは。
「ウルトラマン――。神永さんの反応、レーダーから、消えました」
「『足止め』か。今まで歯牙にもかけなかったくせに、今更……」
敵方の大型輸送ヘリのハッチが開いた。中に居たのは一、二、三……総数六人。皆一様に黒いボディに真っ赤な目。首元と手首に黄色のラインが入っている。
「そして、僕たちにはどうにもできない」
「投降して……許してくれますかね?」
「降伏が目的なら、ヘリにロケラン撃たないでしょ普通」
彼らとの距離は目算二百。赤い複眼からは一切の感情が読み取れない。この中に武器はあるか? 移動が目的の輸送ヘリにそんなものはない。頼りになるのは浅見と田村が携帯している拳銃、それぞれ一丁。オーグメント相手には心許なすぎる。
『――いや、助かる道ならある』
そんな絶対的窮地を前にして、本郷猛の声は揺らがない。
『――滝くん。いや、禍特対の皆さん。力を貸してください。このスマートウォッチを誰でもいい、彼らのうちひとりに巻き付けてください』
(471)ウルトラマンが縮んだぞ
大天才の死神博士は、ダダが残していった縮小光波発射銃をかいせきし、ウルトラマンをちぢめることに成功した。けれど宇宙の技術をこの星の科学で再現するためには、かい獣にくくり付けてつかわなくてはならなかった。
死神博士はそれがとてもくやしいらしい。
(101)本郷猛のふっかつだ
かつて、仮面ライダー第一号としてSHOCKERと戦っていたせいぎの男。今はそのたましいだけがプラーナとして遺っていたが、遂にからだを手に入れてよみがえった。
がんばってくれ本郷猛、君だけが頼りなんだ。