シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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作者体調不良により遅くなりました。
ここまでが17話の範疇だったのですが、切れ間に迷って前後編となりました。ほぼバトルアクションしかありません。どうぞおたのしみください。




なお、事前に告知した通り、またも書き溜めがなくなりました。
ので、また暫く休載させていただきます。どうかごゆるりとお待ちいただければなと。


18.ライダーアクション

 

『来い』

 ただ一人薄く淡い桃色の目をした黒バッタ――、本郷猛の魂を宿した"裏切り者"は、かかって来いと残り五人を挑発する。

 ずっと無言で、生きた反応を返さなかった五体のバッタオーグだったが、自分たちと同じ存在の謀反を感じ取ると、身体に電流が走ったかのように覚醒。棒立ちが猫背となり、各々が武器を構え、はっきりとした殺意を向ける。

 

(なんだ……身体が、『重い』)

 五人が円を囲み、本郷ひとりをそれぞれの得物で襲う。チェーンソー、メリケンサック、モーニングスター、電磁警棒、トンファー。翔んで躱せばどうにでもなる相手だったが、自分が思う動きと実際の挙動に"ラグ"がある。

『ぐ……っ!』

 咄嗟に背を張って迫るチェーンソーを間近に躱し、背後の警棒とトンファーをもろに喰らう。マスクのアンテナの先端が半分斬られ、背中の翅型コンバーターラインが削れてゆく。

『お……、おォおぉおっ!』

 手痛い一撃を貰いはしたが、同時に"距離"も得た。跳躍で得たプラーナを吸収し、右肩から大きく振り被る。

 CRAAAAAAAAASH!!!! 翅めいて放出したプラーナと共に繰り出した、痛烈なる右の打ち下ろし。黒バッタはトンファーで防がんとするも間に合わず。文字通りの兜割りでマスクを割られ、地表にめり込み、突っ伏した。

『なんとなく……解ってきたぞ』

 着地の隙に背後からのモーニングスター。堅牢なマスクにヒビが入り、本郷の身体が左に揺れる。

 そもそもこの状態は、本郷猛という精神体が発狂し自意識を持たない空っぽの器に間借りすることで成立しているイレギュラー。互いによく似た姿ゆえ操れているが、完全に同調するには時間がかかるのだ。

(だが、悠長に待ってなどいられない)

 ここは命を取り合う戦場。向こうは悪辣なる者に操られた物言わぬ屍。そして何より、この背の後ろには護らなければならない人々がいる。何が何でもやらねばならぬ。

『思い通りにならない……なら!』

 両手に電磁警棒を構えたバッタが眼前に迫る。イメージだ。今そこで起こる事象ではなく、その一歩前・一秒前を視よ。"目を凝らす"。敵の動きだけがスローモーションで流れてゆく。

 良し。掴んだ(・・・)。本郷は先読みで自らの手をそこに『置き』、警棒の先端を握り込む。尋常ならざる握力がそれを砕き、赤熱する稲妻が彼らふたりの掌を焼いた。

 本郷はその勢いを殺すことなく握り拳と変え、警棒バッタのこめかみを穿つ。まるで潰れたスイカだ。赤黒い飛沫が八方に飛び散り、本郷のマスクを返り血で染めてゆく。

 掴む事はできた。だが加減ができない。自分のカラダでさえ慣れるのに相当かかったのだ。憑いてすぐの他人では。

 

『くっ……』

 振り抜いた右腕に落ちる黒い影。モーニングスターの鉄球がすぐ後ろに迫っている。『読んで』いなければこの時点で死んでいた。本郷は直ぐ様身を屈め、頭への致命的な一撃を寸でで躱す。

 振られた鉄球がチェーンをぎゃりぎゃり音を立てながら、弧を描いて戻って来た。本郷は敢えてその軌道に自らの右腕を置き、鉄球に繋がれた鎖を巻きつける。

『ぐ、く、ぅ……! う、ぉ、お、ぉ、お!』

 本郷の腕と脚に縄のような筋肉が浮かび上がり、戻りゆく鎖の運動エネルギーを掻き消した。眼前にはチェーンソーを構え、無防備な獲物を狙う別のバッタがいる。これが彼の狙いだ。引っ張られた右腕をぐんと引き下ろし、鎖ごとその持ち主を『投げつける』。

 その軌道には何がある? チェーンソーを持った黒バッタには理解できない。本郷と自分との間に挟まった哀れな第三者は、胸部をぐさりと回転鋸で貫かれ、赤黒い血を撒き散らす。

 同時に、これまで物々しい音を立てていたチェーンソーもその回転を停止した。硬すぎる外皮と刃が干渉し、それ以上の駆動を阻害しているのだ。

 本郷は腕に巻かれた鎖を解き、右足にプラーナを集中。胸を刺されて動かないもう一体ごと、二匹分のバッタに強烈な横蹴りを見舞う。その姿はまるで串に刺さった団子か何かか。真っ黒のオーグメントたちは家屋二軒をなすすべなく横滑りし、その中途で事切れた。

 

『残り……一体!』

 本郷猛のプラーナが、土煙に隠れて迫る敵の挙動を捉えた。最後のひとり、メリケンサックを手にしたバッタだ。気付き、体勢を整えた時点で既に奴の距離。『ラグ』のあるこの身体では躱し切れない。

 鋭利で硬い銀のメリケンサックが本郷の右こめかみを掠った。ぎりぎりで芯を反らし、刳り取られることはなかったが、走る亀裂がマスクの右半分に伝播する。

(目視じゃ間に合わない)

 向こうは既に二打目を放つ準備を整えている。本郷猛は借りた身体から視覚情報を得るのを止め、自らに流るるプラーナに身を任せた。

(右! 左、左、右! これは膝か? 次は左!)

 敵の発するプラーナの挙動だけを頼りに次の行動を予測。ぎこちない身体でそれを躱して躱して躱し続ける。無論、そんな無茶が長く続く筈もなく。たまたま即死でない掠り傷が蓄積し、防護服がべこべこに歪み、本郷……が借りたこの身体の体力を確実に削いでゆく。

(逃げているばかりじゃ駄目だ。肉を切らせて骨を……断つ!)

 極度の集中に周囲の風景が鈍化する。次の一撃は体重の乗った右ストレート。喰らえば確実にこちらの頭が破裂。躱したところでジリ貧は免れまい。

 覚悟を決めろ。やるしかない。本郷は弓を引くような動作で上体に捻りを加え、相手の右に対し、自らの右を解き放つ。

 双方命懸けのクロスカウンターが頭部に命中。本郷のマスクはもう限界だ。蜘蛛の巣状の亀裂が全体に回り、真っ黒の仮面が砕け散り、弾け跳ぶ。

 対し敵の黒バッタはどうだ。未だ首が頭の上に乗っている。仕留め切れなかったか? 否、否否否。メリケンサックのバッタはマスクの下から赤黒い汁をだらだらと流し、振った拳から力が失せた。本郷は一歩後ろに下がる。SHOCKERに操られた意思なき兵隊最後のひとりは、文字通り糸の切れた人形めいて崩れ落ちた。

 

「よぉ本郷。終わったな」

『一文字。怪我はもういいのか』

「お陰様で。心配をかけたな、もう大丈夫だ」

 戦い終えてふらつく本郷に、後ろからやってきた一文字が肩を貸す。ウルトラマンと共にレッドキングを倒してから十五分ほど。狂犬病ヴィルースの影響もなく、今まで通りの活気を取り戻している。

「しかし凄ェ面だな。歯ぐき見えてんぞ」

『彼らの中には何もない。だからこそ僕がここに居られるんだ』

 マスクをなくし、ぼろぼろの防護服を纏っただけのその姿は、文字通りのバッタ男であり、気弱な者が目にすれば、それだけで発狂失禁するほどの怖ろしさであった。いや、彼らは元々こうだった。この異形をマスクで隠したのが仮面ライダー。本郷も一文字も、この顔を仮面で隠して戦っているのだ。

「そのままじゃカッコつかねぇよ。ほらこれ、使え」

 一文字はその辺で拾った赤いヘルメットを彼に手渡し、被るように促す。

『助かるよ、ありがとう』

 彼もまた、この姿が他に受け容れられるものでないことは分かっていた。触覚を折り曲げ、無理矢理に頭を入れて押し込む。薄桃色の光がバイザー越しに炯々と輝いていた。

『みんな無事か?』

「お前のお陰でなんとかな。一人を除いて」

 禍特対の面々はなんとか守った。だが、彼らが失ったものは大きい。ウルトラマン――、神永新二はSHOCKERに捕らえられ、追おうにもこの雑兵共との対応のうちに圏外に消えた。

 

「絵に描いたような最悪の事態だな」

 彼らから少し遠くで車が止まり、黒服の男が車を降りた。あの顔には見覚えがある。かつて"同盟"として一緒に働いていたあの男だ。

 禍特対の四人も既に車の中にいる。彼――、タチバナが集めてくれたのか。

 

「久し振りだな本郷猛。まさかまた、こうして顔を突き合わせることになるとは」

『分かるんですね。だいぶ変わってしまいましたが』

 赤のフルフェイスヘルメットを被り、ところどころバッタの異形が垣間見える異質な存在。彼はそれを迷いなく『本郷猛』と呼んだ。ヒトの身でありながら、この場馴れ感は一体なんなのだろう。

「せっかくのダブルライダー集結に水を差すようで悪いが、本郷、お前は別行動だ」

『別行動?』

「ああ。緑川ルリ子が待っている」

 

 

(つづく)

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