シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
・PM1:30
「よぉ〜〜っしよしよしよし! いいぞ、よくやった、よぉおおくやったなオオカミオーグ!」
「はい、死神博士」
ウルトラマンの実質的『敗北』から一時間半。死神博士の走狗・オオカミオーグは恐るべき速度でアジトに到達。ターゲットを送り届け、主の元で跪く。
「きた、来た来た来た来たきたぞォ。外宇宙の神秘、未知の物質。やはり私は天才だ。わかる、わかってきたぞぉおお」
ダダの縮小光波を解析し、ヒトが使える形に組み直した男だ。スペシウム133で構成された身体を調べることなど造作もない。
「あとは解っているな。私はこれから詰めの作業に入る。何人足りとも、害虫を通すんじゃあないぞ」
ウルトラマンを磔にし、その体に電極めいたものを次々と貼り付けてゆく。赤と銀の光の巨人も、ヒトと同じ等身大となり、動けず項垂れていては、神秘性もなにもあったものではない。
「かしこまりました。死神博士」
忠臣・オオカミオーグは無駄な会話をしない。主が行けと行けば最速最短で向かうまで。言葉を交わしたその瞬間、オオカミの姿は研究施設から消えていた。
「嗚呼、長かった。ここまでなんと長かったことか……。私がどれだけこの時を待ち望んだかわかるか? 解るか? エエッ?! どうなんだ!」
彼はSHOCKER最高の科学技術者だ。組織に属する限り、彼はこの星で最も偉大な頭脳のひとりで在り続けるだろう。
そんな彼の矜持をへし折った存在がふたつ。人類の常識がまるで通じない光の巨人・ウルトラマンと、更にでたらめでべらぼうな禍威獣・ゴジラ。
この星の生物ならば何でも自由に出来る彼が。元に地球産の禍威獣は自らの意のままに出来た彼にすら、この二つにはシャッポを脱いで平服することしかできなかった。
「何が神秘だ。何が外星人だ。貴様らなんぞ所詮は生き物。我が科学の前にひれ伏すがよいわッ」
死神博士は水槽と磔にされたウルトラマンを交互に見やる。その二つは複雑に絡まったコード類でひとつにまとめられている。
「お高くとまった凡人どもめ。貴様らのその浅ましい発想がこの星を停滞させているのだと何故気付かぬ。お前たちに見せてやろう、これが、人間のチカラだッッッッ」
※ ※ ※
・PM2:30
「イカオーグ……。ヒトとイカの合成オーグメント、ですか」
「それって、ちゃんとヒトの形保ってます?」
あきる野での事案も一段落し、事後処理を陸自空自に任せた禍特対の面々は、『タチバナ』と名乗るアンチSHOCKER同盟の男と共に、新たにチャーターした輸送ヘリに乗り込んでいた。
「通称『死神博士』。SHOCKERのオーグメントたちを拡張強化させることに成功した集団の長だそうだ。保身のため身分を隠す傾向のある科学技術者畑としては珍しく、顔も名前もオープンにしている」
タチバナの用意した資料には、遠方から撮影されたとされる『彼』の顔写真が封入されていた。よれよれの白衣を肩がけにし、腰まで伸びた長い黒髪を後ろで撫で付けた三〜四十代くらいの男。
そこまでは世間一般の想像する科学者の範疇だったが、鼻から下をバッカルコーンめいた触手に置換しているとなれば話は別だ。こんなものを恥とも思わず誇示する存在。話し合いが成立するとはとても思えない。
「成る程。ようやく話が繋がってきたわ」資料から首を上向け、船縁由美がひとり呟く。
「班長、タチバナさん。ここ数ヶ月の間、核物質が新規に持ち出されたりは」
「確認されていない」田村が即座にそう答え。「ゴジラに関わる事案。しかも、一度失敗もしているんだ。動かせば何かしらの機関が嗅ぎ付ける」
「我々の組織も同様だ」タチバナも首を縦に振り。「だから、ゴジラ細胞を奪われたとして、目覚めのキスを促すものはなにもない」
「だからこそ、
はっきりと口に出したが、驚く者はここにはいない。繋がらないふたつを一つにする理由。なんとなく察しはついていた。
あの日、ゴジラの放射線流とウルトラマンのスペシウム133光波熱線が重なり合ったのを見た。ふたつのチカラは膨大なエネルギーとなり、侵略禍威獣をこの星から追い出し、成層圏外に放逐・灼き尽くすほどのパワーを生んだ。
それを『目醒め』に転用するのだ。如何なる手段でそうするか想像もつかないが、産まれてくるブツが我々の手に負えないものになるであろうことは容易に想像できる。
「そいつが神永さんのチカラで良からぬことをしようとしてるのは解った」点と点が繋がった今、浅見弘子が困惑から声を上げた。
「けど、それが一番したいことなのでしょう。私たちに知られて奴は平気なの?」
「我々如き障害とも見てないのだろう」タチバナはうんざりそうに嘆息し。「ヤツの傍らにはゴジラ細胞を奪ったオオカミオーグ。他にも何人かのオーグメントを囲って護衛に回しているという噂だ。現に、アジトは割れたが、一時間前に突入した別働隊からの連絡は未だ無い」
「アジト」田村班長がこの単語に反応し。「我々は今、向かっているのもそこですか」
「その通り。恵庭岳の山裾、地下五十メートル付近。奴が購入し、研究施設とした区画がそこにある」
ヘリは福島を通過、更に北へと向かっている。このままのペースで進めば、日が陰る前には北海道まで到達出来るだろうか。
『――OK、そいつの位置をこっちにくれ』
輸送ヘリの無線にここにはいない人間の声が響く。別行動――、サイクロン号を駆り、高速道路をひた走る仮面ライダー・一文字隼人だ。禍威獣との負傷もほぼ快復し、別口で同じ場所へと向かっている。
「了解だ。サイクロン号に座標を送った。我々も出来る限り早く合流するよう努力する」
短波無線はヘリとサイクロン間で共有されており、一文字ライダーも彼らの会話を横耳に聴いていた。敵の居所は割れた。あとは小回りの効く自分が叩くべき。彼がわざわざ無線を開いたのもそういうことだろう。
『――受け取った。じゃあ、お先!』
サイクロンがヴヴヴヴヴンとエンジンを響かせて、前を行く車たちをすり抜けてゆく。その姿が地平の彼方に消えるまで、差して時間はかからなかった。
「あの。一文字さんがあっちを押さえるのは理解できます」今更ながら行き先を知らされた滝は、納得しかねるという表情でタチバナに問う。「けど、僕たちまでそちらに行く意味、あります?」
彼は、禍特対の面々をピックアップする際、ゴジラ対策という名目を出してきた。だが、相手は見た目も中身もクレージーな危険分子。ヒトである自分たちがやれることなど今更あるのか。
「無論、仮面ライダーのバックアップさ」タチバナはさも当然というように返し。「君たちのパソコンに各省庁への連絡先を送付しておいた。『薬品』の音頭はそちらで取ってくれ」
彼はその上で、運転席のモニタに目をやり。
「それに。到着が先なのは、一文字だとは限らないしな」
現在地から北海道までを示すマップデータ。赤丸ふたつは自分たちと仮面ライダー。この赤丸、いやライダーに向かい、急速に接近してくる青丸の姿を認めた。
『――ずいぶんと、早いじゃねぇの』
一文字隼人のぼやきが、無線越しに響く。
『聞こえてるよな。こっちは俺が引き受ける。あんたらにも、この周囲にも被害が出ないよう努力する。だから、先に行ってろ』