シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
・PM2:45
「あの、顔……!」
滝はモニタ越しに映る『敵』の姿を見、歯噛みしながら睨みつける。この騒乱の発端。ゴジラ細胞を強奪し、あまつさえウルトラマンを拉致して逃げ去ったオオカミオーグ。まさか、こちらを狙ってくるなんて。
『――奴の相手は引き受けた。アジトへの一番乗りは譲ってやる』
一文字ライダーは無線越しにそう告げ、目標進路を僅かにずらす。オーグの狙いはこのヘリで、ライダーはこれを迎え撃つ形になる。この分だと会敵は彼の方が早い。
「解った。後は頼む」
これまでずっと隠密に徹し、目的遂行を至上としたかのオーグが、急に顔を晒したのは何故か。我々の足止めないし殲滅。そしてそれを実行するにあたり、周囲の被害はきっと考慮しないだろう。
今身体を預けているこのヘリに武装はない。あったとして、ヘリ一機でオーグメントを片付けられるなら、そもそもアンチSHOCKER同盟なんてものはいらない。
ここは仮面ライダーに任せるしかない。タチバナは即座に電話を切り、運転席に先へ進めと促す。
『安心しろ。我に例外はない。貴様も、ヘリの連中も。死神博士の元に辿り着く前に総て殺す』
無線の波長を盗聴したのか。まだ姿も薄ぼんやりな中、仮面ライダーに向かい殺害予告を投げかけるはオオカミオーグ。やはり目標は邪魔者の始末か。声色に殺気が満ち満ちている。
「来やがったなッ」
走行する車のエンジン音に混ざり、どん、どん。と重く硬い音が響く。奴だ。車の屋根やボンネットを飛び渡り、凄まじい速さでこちらへと向かってきている。
『性懲りも無く現れたな仮面ライダー。我が爪の怖ろしさ、今一度貴様に刻んでくれよう』
「は。怖ぇえのは毒であってお前なんかじゃあねェ。リターンマッチだ、叩き潰してやるッ」
一文字ライダーの紅い複眼が敵の姿を捉えた。並み居る八十〜百キロ近い車たちをすり抜け、右斜めへ突進してゆく。
「いま」
『だ!』
目算で十メートル程の距離。一方はバイクで、もう一方は乗用車の天井から跳ね飛び、爪と手刀が交錯する。
『ぐ……ぅっ!?』
「どぉだ犬野郎。男子三日会わざれば刮目して見よってな」
交錯の寸前、ライダーはサイクロン号を急加速。ほんの一瞬伸びたリーチで手刀を打ち込み、向こうの爪を寸でで躱した。バッタオーグの広い視野が背後のオオカミの姿を振り返ることなく捉える。左脇腹を打たれ、別の車の上で苦しがる奴の姿が見て取れた。
『おのれ……。おのれェい』
武人ぶっているが、所詮は獣か。オオカミオーグは自分が足場としている乗用車から運転手を"引っこ抜き"、恐れ慄く彼をライダー目掛けてぶん投げる。
「オイオイオイ、ふざけんなよ」
足場として使っているんだ。"そう"するだろうな、という予想はあった。だが本当にやってくるとは。一文字ライダーはアクセルに足を置いたまま、放られた哀れな運転手をキャッチする。
『これならどうだ、仮面ライダーぁああ』
当然、これは布石だ。次が来る。オオカミオーグは空いた運転席に乗り込み、乗用車をフルスロットル。ミサイルめいた勢いで解き放ち、自分ひとりが別の車に飛び去った。
「やってくれるぜ畜生」
右手には抱えた運転手。迫り来るフルスロットルの乗用車。ここで躱してしまうのは簡単だ。しかし避ければこの被害を並走する他の車に被せることになってしまう。
彼――、一文字隼人に本郷猛ほど不殺を貫く意志はない。だがこれは駄目だ。放っておけばずっと心がモヤモヤする。それだけは絶対に嫌だ。
「口閉じてろ。舌噛むぞ」
一文字ライダーは右に抱えた運転手にそう指示し、逃げるではなくむしろ荒れ狂う車と対峙する。残る左手をハンドルから離し、下半身だけでバランスを取って、左掌で突進する車のボンネットを押し留めた。
サイクロン号の六気筒が一気に火を噴き、車のそれ以上の前進を許さない。さながらそれは力士同士の土俵際の駆け引きだ。フルスロットルの乗用車とバイクが互いに斥力を放ってぶつかり合う。
だが、それも長くは続かなかった。全力を出し続けるサイクロンと違い、車はアクセル全開でぶつけられただけ。中に誰も乗っていないなら、エンジンブレーキがかかって速度は急速に落ちてゆく。
「はい、よ、っと!」
仮面ライダーはジャックナイフを起こしてどん、と止まった車を路肩に寄せ、右脇に抱えた運転手をボンネットの上に載せる。
バッタオーグの広範囲・高精細の眼で周囲を見やる。あれだけの騒乱を起こしたにしては、周囲の車の走行妨害に留まり、二キロ程度の渋滞を形成するに留まった。死合いの巻き添えにしては抑えられた方だろう。
「悪ぃな兄さん。クルマの修理代はアンチSHOCKER同盟ってとこにツケてくれ」
横暴だろうか? 否、話せばちゃんと解ってくれるだろう。巻き込んだのはあの怪物なのだ。そもそも、紅く大きな眼をした仮面の話など、まともに聞いているかどうかさえ解らないが……。
「あ……あぁ、あ」
だが、運転手の目はライダーの方に向いてはいない。自分ではない? ではどこに。目線から背後と知り、振り向くと。
『はは、ハハハハハ。油断したな仮面ライダー。今までの総てが陽動にすぎん。本丸はこれ、だッ』
音もなく。気配さえも感じさせず。懐に入ったオオカミオーグの鋭利な爪が、一文字ライダーの右脇腹に深々と突き刺さっていた。