シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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21.必殺のライダーきりもみシュート

 

・PM3:05

 

『はは……。ははははは。今まで総てがここへの布石! 我がヴィルースの味! とくと味わうがいい!』

 オオカミとヒトの合成オーグメント、オオカミオーグの体内には、常人の致死量の実に千倍の狂犬病ヴィルースが駆け巡っている。先の戦闘では、数度かすっただけで行動不能となり、一週間の集中治療を強いられた程の代物だ。それを直に、深々と突き刺されればどうなるか。最早言うまでもない。

『どうすればその足と手を封じられるか。思った通り、貴様は情を捨てられない未成熟な奴だ。格下の人間など、無視して我に向かっておればよいものを』

 などと勝ち誇って喋り続ける中、オオカミオーグは違和感に気付く。何故、この男――、仮面ライダーは倒れない。致死の爪と毒を同時に貰い、既に立ってなどいられないはずなのに。

「は。ははは。手札はこれで切れたか。底の浅っさい奴だなぁお前は」

 一文字ライダーの声に焦りはない。痛みに多少仮面の下で顔をしかめてはいるが、この不意打ちになんのアクションも起こしてはいない。

「ありがとうよ。かすり傷で致命傷負わせてくれてよ。あの時死にかけたお陰で、こちとら『耐性』がついたんだ。このくらいの怪我、プラーナが吹き飛ばしてくれらァ」

 驚くオオカミの腕を逃さんと掴み、ぎりりと軋ませる。折るつもりはない。折ってしまっては意味がない。一文字はサイクロンのエンジンを再動させると、ジャックナイフの態勢を取り、その場で何度も、何度も、独楽めいて回転し始めた。

『き、きさま。何をするつもりだ』

「手前ェのツラも正直見飽きたぜ。いい加減、冥土に送ってやろうと思って、よっ」

 回転に勢いがつき、ベルトの風車を通し、コンバーターラングにプラーナが行き渡ってゆく。もう、送り込まれたヴィルースの影響は殆どない。充分に全力が出せる。

『な、なな、何、ををををを』

 当然、その遠心力は『繋がった』オオカミオーグもモロに受けることになる。腕を引き抜くことも出来ないまま、彼の身体は激しい横回転に従い、上へ上へと引っ張られてゆく。

「これで!」回転が充分にチカラを得たその瞬間。一文字ライダーは六気筒をブーストさせながらの緊急停車。遠心力に囚われたオオカミオーグの右腕を、脇腹から一気に引き抜く。

「終わり、だッ」ほんの少し上方に添えられたことで、オオカミの身体は遥か空の彼方にすっ飛んでゆく。

 飛び去るオオカミを追うかのように。サイクロン号はジェット噴射で急上昇。一文字ライダーは急加速のGをも物ともせず、座席に飛び乗り、ぐっと身を沈めての超跳躍。

 きりもみに飛ばしたところで奴は死なない。この下は乗用車の行き交う高速道路だ。道路に迷惑をかけるわけにはゆかない。

 ならば答えは一つ。ライダーはサイクロンの上昇+背の翅からのプラーナ解放に加え、ドリルめいた急回転を蹴りに纏わせ、無抵抗のオオカミオーグに叩き込む。

 

『ぐ、ぉ、おおおおおおおおおおおおおおおおおお、っ!!!!!!』

 まるで"嵐"だ。オオカミオーグの物理肉体がグズグズに分解され、雨あられと降り注ぐ。

『死神博士……! 申し訳……ござい……』

 SHOCKERの構成員は証拠や技術漏洩を防ぐため、末端から幹部まですべからく融解・消失処理を施されている。オオカミオーグの肉片は落下の最中泡となり、道路に辿り着くまでには完全無害の霧と成り果てた。

 

「は……。ははは、どぉだ、この野郎」

 一文字ライダーは独楽めいて上空五百メートルの距離を自由落下。翅から発せられたプラーナの逆噴射で制動をかけ、音もなく、道路にも迷惑をかけず着地する。

 泡となり、跡形もなく消えたオオカミの姿を見やる。奴がいた、と思われる場所を車が通り過ぎ、気に留める者は誰もいない。

 冥福を、祈ってやるべきだろうか。一文字隼人はほんの少し逡巡し、結局は相棒に倣い軽く頭を下げた。

「さて、と!」

 路肩に置いてきた運転手の男性を見やる。ボンネットから降り、震えながら運転席に戻る姿が視えた。後は巡回に任せれば大丈夫だろう。ライダーのマスクを黒のヘルメットに戻し、高速道に舞い戻る。

(こんなもんは、まだ序の口だ)

 少なく見積もっても本丸まであと六百キロ近い。事態は一刻を争う。死神博士とやらの研究が完成するまで時間がない。

 

『――一文字さぁん!』

 

 双方向の通信回線に聞き知った声が響く。ほんの少し目線を上向けると、突き離したはずの禍特対輸送ヘリがやや後ろまで迫って来ていた。

「脅威は去った。後は警察に任せる」

『――確認したよ』タチバナは後続に形成されつつある渋滞を見やり。『後ろのあれはツケにしておいてやる』

「そうかい。そりゃあ有り難いことで」

 

『――一文字さん』次いでの声は滝か。『あなたに渡したいものがあります。ここからでも拾えますか』

「おう。何とでもなる」

 ヘリは全力でサイクロン号の斜め前を陣取り、ほんの少し開いた窓から『それ』を投げ入れる。バッタオーグの高精細な目はその物体を瞬時に捉え、多少の蛇行の後、危なげなくそれをキャッチした。

「これは」

『――きっとあなたの方が先に着くはずから。持っていてください。何かの役に立つ筈です』

 渡されたそれは、電波を送受信できる特殊なUSBメモリだ。用途はとんと解らないが、禍特対のメンバー(その筋のプロ)が言うなら持っていて損はあるまい。

 

「さあてと。うまくやっているかな。あの朴念仁とお嬢さんは」

 アクセルを吹かし、先を往く車たちをすり抜けて。思うはここにいない相棒のこと。騒乱の最中ただ一人、アジトではなく横田の基地でのランデブー。はてさて、何が起こることやら。

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