シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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22.仮面ライダー「新」一号

 

・PM2:30

 

『――久しぶりね猛さん。ずいぶんと凛々しいお顔だこと』

「君こそ。元気そうで何よりだ」

 抜け殻になったバッタオーグの身体を乗っ取り、今一度生身の肉体を得た本郷猛は、レトロな電話機に導かれ横田在日米軍基地へと赴いていた。

 赤いフルフェイスヘルメットにぼろぼろの防護服を身に纏った不審者極まりない本郷を、守衛たちは敬礼と共に迎え入れる。興味本位で何故かと問うた。『上官の命令ですので』と彼らは返した。こちらの窺い知れないところまで話が行っていることだけは解った。

『――向こうに話はちゃんとつけてある。心配しないで入ってきて』

 道端に転がっていたオンロードバイクを駆り、横田へと向かう中、なんとなく話は伝え聞いていたけれど。まさかここまでスムーズだとは恐れ入る。

 バイクを降りて決められた通路を右へ左へ。分厚い扉がリズミカルに開いてゆき、本郷を奥へ奥へと誘う。

「ここ、は」

 見覚えがある。というより、一週間前に『ふたりで』足を踏み入れた場所だ。大穴を取り急ぎ薄い鉄板で塞ぎ、窓枠とガラスを総入れ替えしたまさに応急処置。在日米軍のベーターシステム開発区画。どうしてここに。

『――"お色直し"よ』声の主、緑川ルリ子は困惑する彼に対し、扉を開けて中に入るよう促す。

『折角また身体を手に入れたのだから。私の我慢できる格好にして頂戴』

「ルリ子さん。これは不可抗力だ。手に入れたなどと。"彼"の名誉のためにも、そんな風には思ってほしくない」

 

 緑川ルリ子。オーグメンテーションを施され、バッタオーグとして組織の駒になる筈だった本郷に自由を与え、続く道を指し示したもうひとりの相棒。その身体はSHOCKERとの戦いで消失したものの、彼女の魂もまたプラーナとなって現世に留まっていた。

 本郷猛は彼女の魂の安寧のため、タチバナらにプラーナの保護を願い出た。その願いは叶えられ、彼女だけが戦いの最前線から遠ざかった。

『――冗談よ。単なるバッタオーグではこの後の展開について行けない。必要な装備を揃えた。すぐに着替えて』

 だが、SHOCKERとの戦いを止めた訳では無い。彼女は本郷のようにプラーナだけになりながらも、アンチSHOCKER同盟の一員として、彼女なりに戦い続けていたのだ。自らのいのちを賭して『願い』を叶えてくれた本郷たち仮面ライダーのために。

「こんなもの……。前に来た時には無かった筈だが」

 本郷が足を踏み入れた瞬間、床の一部がシャッターめいて開き、中のショーケースが頭を出す。見覚えがある――、どころではない。これは。

『――知ってるでしょ。私は常に用意周到なの』

 収められていたのは、一文字隼人が今もなお使用し続けている防護服とマスクだ。これを、SHOCKERと直接関わり合いのない場所で眼にすることになろうとは。

『――米軍に父さんの技術を横流ししたの。SHOCKERに抗い、今もなお量産機が現役として製造され続ける最高傑作。覇権国家が飛びつかない訳がない』

 今の彼女は身体を持たない魂だ。それが電子の海を泳ぎ渡り、こんなことまで出来てしまうとは。

『――安心して。データにはバックドアを仕込んでおいた。邪な目的に使おうとするなら私の意思ひとつで炭化させられるから』

 ひどく物騒なはなしだが、彼女ならやりかねない。今の彼女はまさしく『なんでもあり』だ。

『――さあ、どうぞ。これまでの戦闘データから改良を加えたコンバーターラング。ちょっとやそっとじゃ壊れないし、より多くのプラーナを吸収できる』

 本郷はぼろぼろの防護服を脱ぎ捨て、新しいものに袖を通す。以前使っていたものと同じ着心地だ。改良を示すものなのか、六つのコンバーターラングは深緑色にリペイントされている。

『――こっちはマスク。あなたたち、ふたりで一人の仮面ライダーなんでしょ。お揃いのものにしておいたわ』

 赤いヘルメットを脱ぎ、新たなマスクを被る。一文字が使っているのと同じ、鮮やかなライトグリーンに彩られた新品だ。被ると共に複眼に薄桃色の輝きが灯った。

『――暴力への高揚、忌避感の欠如みたいな機能は消しておいた。代わりに、通信機能を拡張してある。ヒゲ男たちや禍特対の面々と連絡を取り合うのに使えるはずよ』

「通信」"こころ"に干渉する機能を抜いてくれたのは助かる。だが、必要以上に外部通信を推すのはどういうわけか。

『――そしてこれ。ライダーには必需品』

 最後に、3Dプリントされた赤く長い布が手元に届く。バッタオーグと仮面ライダーを隔てる重要なアイコン。首に巻いて使うスカーフだ。

「ヒーローといえば赤、か」

『――そう。私にとって、大事なこだわり』

 全て取り付け終わった後、赤いスカーフを首に巻く。この瞬間、本郷猛は仮初めのバッタオーグから、仮面ライダー「新」一号へと"変身"した。

 

『――うん。とても良い感じ。あなたはやっぱりその格好が似合うわね』

「ありがとう」だが、わざわざこんなことをした理由はなんだ?

「ルリ子さん。僕に着替えを促したその理由。そろそろ教えてはもらえないか」

『――いいわ。準備は整ったし』

 装備を収めたショーケースが再度地中に消え、代わりに地中から円状のエネルギー放出装置がせり出し、壁の左右から受け皿となるような天井が顔を出す。

『――そこに入って、猛さん』

 仮面ライダーは促されるままに装置の上に立つ。半信半疑で載ったそこで、足元がじりじりと紅く熱くなり始めた。

『――いまの状況と対抗手段、一文字さんたち。皆の動きをシュミレートしてみた。このままでは100%、ゴジラオーグの出現は阻止できない』

 ゴジラ・オーグ。ゴジラと何かの混ぜものか。敵は既に『それ』を完成させつつあるのか?

『――もしもウルトラマンを解放できず、向こうの覚醒が早かった場合、猛さん。あなたがゴジラを止めて欲しい』

「止める、って」同じオーグメントならまだしも、この身体で禍威獣と戦えと? いくらなんでもそれは「無謀」だ。

『――だからこそ、この施設よ』ルリ子は動じることなく言葉を紡ぎ。『米軍に話はつけた。この国のおエライさんも何とかしてくれるはず』

「なんとか……? 米軍? ルリ子さん、君は何を」

『――ここが何の場所か忘れたの? 米国主導で作られたベーターシステム開発区画。準備が整い次第、ベーター線をあなたに照射するわ』

「え」

 肉体を捨て、魂だけとなった存在だ。ちょっとやそっとじゃ動じなくなったが、それでもこれには耳を疑う。

「待って。待ってくれルリ子さん。それってつまり」

『――そうよ。ウルトラマンが小さくなってて戦えないなら、あなたが巨大化して、ゴジラオーグと戦って、猛さん』

 




(187)B・Gオーグ(花獣)
身長:六十メートル
体重:二万トン

死神博士が造り出したバラとゴジラ細胞の合成オーグメント。ゴジラと植物はとても相性がよく、すさまじい勢いで成長をはたした。
キバの生えたツルをしょくしゅとして操り、支笏湖から恵庭岳、札幌へ移動。ヒトの多い所を本能てきに狙っているようだ。


(333)仮面ライダー新一号
群生相バッタオークの身体をかりた本郷猛が、ルリ子がかいはつした新しい防護服とマスクをまとった姿だ。
防御力がましており、ベーターシステムにも耐えられるように設計されている。
赤いマフラーはヒーローのしるし。ルリ子がざいしつまでこだわった一品らしい。
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