シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
・PM5:05
「いいロケーションだ。こんな時でなきゃ、観光していきたい所だが」
両手でレイアウトを取り、エアカメラで景色をぱしゃり。
オオカミオーグとの戦いから早二時間。高速道路から青函トンネルを抜け、道南を突っ走って北海道道78号線沿い。一文字隼人の眼前に恵庭の山がそびえ立つ。
恐るべきはサイクロンと彼自身の身体能力である。これだけの距離を休憩も挟まず全速力。流石はオーグメントとといったところか。
「情報によればこの近辺、地下50メートルだって話だが……」
この下で化け物がいるとは思えないくらい静かだ。情報は本当に確かなのか?
(登山客)
重そうな荷物を背負った人たちが、こちらに背を向け、山を登る。まだここはバイクの通れる道だ。禍特対やアンチSHOCKER同盟が避難を促したという情報もない。
いざとなれば、SHOCKERのオーグメントは彼らを利用する可能性もある。『やりづらい』。どうにかして彼らを遠ざけることはできないものか。
「いや、違う」
登山客がこちらに向けて会釈した。それを受けて会釈を返し――、いや、あれはなんだ。ニット帽を被ったその顔は、黒一色に白の集中線が入った仮面!
「仕掛けてきたか!」
あれはSHOCKER下級構成員の擬態だ。大きなバックパックから小型のガトリングガンを取り出して、無警告でこちらに発砲を始めた。
マスクが空気の変化を先んじて捉えた。ライダーは弾が当たるよりも早く跳躍。回転を加えた急降下飛び蹴りで即座に偽の登山客の首を刈り取る。
「分かりやすくって助かるぜ。ここいら全部、やつの庭ってわけか」
一体何処に隠れていたのか。見覚えのある雑兵たちが次々と森の中から顔を出す。捕まえて尋問するわけには……ゆかないか。そもそも『あれ』と会話が成立した試しがない。
「悪いが、いちいちお前らの相手をしているほど暇じゃねぇんだ」
一文字ライダーは下級構成員たちを躱して高く跳躍。バッタオーグの優れた感覚器官で周囲をサーチ。草木・土・風の音に川のせせらぎ。そんな自然の営みにそぐわない不可思議な機械音の響く区画を探り当てた。
「成る程、そこかッ」
ライダーは跳躍の頂点できりもみ回転。掘削ドリルめいた勢いで足から突っ込み、周囲の土を爆ぜ刳る。
「うっし、到・着」
アタリだ。必殺のきりもみドリルキックは土の下に造られた、白一色の無機質で硬質の部屋に風穴を開けて止まった。後ろには通用口らしいなだらかなスロープ。前にはだだ広い構く、ゴールの視えない通用路。壁には構成員が出入りするための矢印がペイントされている。『ヤツ』はこの先にいると見て間違いない。
「だが、そうすんなりと入れちゃあくれねぇか」
一文字の紅い複眼が、迫り来るアクティブな反応を捉えた。『見覚え』がある。実際に自分が目にした訳では無いが、本郷猛のプラーナに紐付いた記憶で観たことがある。
『我があるじ、死神博士は大事な研究の真っ最中です』
『侵入者は排除、排除、はHaハ、排除』
『近寄ったら斬ります。近寄らなくても斬ります』
クモオーグ。カマキリ・カメレオンオーグ。ハチオーグ。ガワだけ再現して別の誰かに能力をそのまま載っけたリサイクル品か。悪趣味極まりない代物だ。良き悪きは別として、個々人の幸せを謳うSHOCKERの代物か? 中身の人間が浮かばれない。
「ムカつく奴だ」こうなってしまった以上、一刻も早く黄泉の国に送る以外に彼ら彼女を救う手立てはない。一文字ライダーは仮面の下で額に青筋を走らせ、拳をぎりりと握り込む。
「ヒトの命ってやつを、何だと思っていやがる……!」
その怒りを敵意と取ったか、三体のオーグは一斉にライダーに飛び掛かる。一文字は跳躍から左の壁に張り付き、右、左と跳ね、アジト侵入時に失ったプラーナを少しでも溜め込んでゆく。
「来やがれ、再生オーグメント共」
※ ※ ※
・PM5:35
「対ゴジラ用抑制剤、後一時間ほどで予定量の確保いけます」
「ポンプやタンク車じゃ間に合わない。朝霞駐屯地に連絡。弾頭に積み込んで現地で起動させましょう」
「禍特対特別条項を適用。恵庭・支笏湖周辺十数キロの住民、旅行者に広域避難命令を」
禍特対の載るヘリは青森を通過、もうまもなく北海道に到達するというところ。目的地に着くまで手をこまねいているわけにはゆかない。
滝と船縁はゴジラに準ずる存在出現に備えた抑制剤製造・投与の音頭取り、浅見は現場からの住民避難の準備を電話口に指示していた。
『――了解した。官邸は任せろ。現場を頼む』
「承知しました。ご苦労をかけます」
班の長である田村は、部下らの発案・提案を柔軟に受け容れ、室長の宗像に逐一連絡。無茶を国に承諾させる屁理屈を次から次へと押し通していた。戦う場所は違えども、
「仮面ライダーの信号、恵庭岳付近で消失……」
「アジトは地下だと聞きました。到着し、交戦に入った、ということでしょうか」
「だろうな」この場で唯一の部外者、アンチSHOCKER同盟のタチバナがそう断定する。「恐らく、今後仮面ライダーの手は借りられないだろう。向こうもこちらまで気を回す余裕はない筈だ」
尖兵たるオオカミオーグは斃した。恵庭に陣を敷くのはこの騒動の首謀者・死神博士。ウルトラマンを手玉に取り、ゴジラ覚醒の燃料に使う男だ。片手間に倒せるような相手ではない。
「だからこそ、僕たちの手でこっちは何とかしなきゃ・でしょ……ん?」
滝がそう意気込んだその瞬間。ここに居る全員の携帯端末から『禍威獣出現』を示すアラームが鳴り響く。一体どこから? 今この場にいる誰もが同じ場所に目を向ける。
「うそ……でしょ」船縁がまず口を開き。
「奪われて……まだ五時間くらいでしょ!? もう……?」滝が動揺に腰を抜かし。
「あれが……。あれを、オーグメントだっていうの……?」浅見はこの状況が信じられないと目を剥き。
「もう、何が起ころうが不思議じゃない。理性で事実と受け止めよう」田村班長はごくんと唾を飲んだ後、"画面"を凝視し、そう呟く。
その光景は個人のSNSからニュースサイトへ、またたく間に日本じゅうに拡散されてゆく。素人目の粗い画像であったが、『それ』が何であるかは一目瞭然であった。
支笏湖の湖面に、頑丈な蔦に覆われた薔薇の花が