シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
・PM5:10
『――だいぶ時間がかかっちゃったけど、もう間もなくエネルギー充填が完了する。備えて、猛さん』
「あぁ。解っている」
緑川ルリ子が"本郷猛"を在日米軍基地・ベーターシステム開発区画に呼び込んで二時間半。本郷は中央のカプセルらしき地点に閉じ込められ、ルリ子の合図をじっと待っている。
そこから壁一つ隔てた電子演算セクションでは人の子ひとりいないのに、数十台のパソコン・サーバーが凄まじい勢いでデータを吐き、計算を進め、この区画にエネルギーの道筋を紐付けている。プラーナだけとなったルリ子が電子機器から機器を飛び回り、合法・非合法問わない手段で総てをクリアにしようとしている。
その総てが彼のため。この実験段階のシステムを完全な状態で発動させるためなのだ。
「この装置ひとつ動かすために、日本じゅうの電気を五分間借りるのか。桁が大きすぎていまいち実感が湧かないな」
『――言っておくけど、それで必要最低限。うまくゆかなければ装置はショートでオーバーロード。あなたも私も爆発に巻き込まれてオシャカ。上手く行ったとしてここはもう二度と使い物にならなくなる』
作業に集中しているとはいえ、物言いがいつも以上に物騒だ。そこに容れられている自分の身にもなってほしい。本郷猛は心中そうぼやく。
『――本当は、こんなことさせたくなかった』心が読めるのか。演算を並行させながら、ルリ子がしおらしい声で言葉を紡ぐ。『けれど今、他にあのオーグメントを止める手立てはない。このシステム自体、モルモットでの動物実験が成功した段階でしかない。ごめんなさい猛さん。あなたにばかり苦労をかけて』
なんとかしようと思う気ばかりが先走り、気持ちを伝えるのが二の次になっていたのか。成る程、あの博士の娘なだけはある。本郷は『いいんだ』と切り替えし、自らを閉じ込める強化ガラスにそっと触れた。
「成功するさ。僕は君と、人類の叡智を信じる」
『――猛さん』
ガラス越しに目にした計器類が次々と100%を示し始めた。いよいよだ。何もかもがぶっつけ本番。時は来た。あとは実行あるのみ。本郷猛の視界……その中心に据えられたモニタに、『ENTER』の文字が映し出された。
『――行くわよ。覚悟はいい?』
「構わない。やってくれ」
力強いこの言葉からワンテンポ。一呼吸のうちにENTERをクリック。日本じゅうの建物という建物から電気が消えた。その総てがこの施設、この区画に集束してゆく。
目映い紅の輝きが、固く閉ざされた扉から漏れ出、計器という計器が吐き出される数値を維持できず、パチスロの大当たり演出のような状況がそこらかしこで起きている。
急ごしらえのハッチが開いた。行き場なく燻っていた紅の光が福生の街を朝日のように染め上げる。
『――ぎりぎり、間に合ったわね』
ルリ子の声がマスクから響き、ようやく自分に起こった変化を理解した。今の今まで地下区画に閉じ込められていた筈の自分が、その施設全体を俯瞰して視ている。
「これが……ベーターシステム、なのか」
通常、ヒトが巨大化すれば倍加した自重に骨が付いて来ず、直立どころか生存すらできない。この星で最も大きな生き物が海にしか居られないのもそうした理由だ。
だが、これはまるで違う。圧迫される感じはどこにもなく、重力に引きずられることもない。両の拳を握り、開く。脳から下された命令を神経が適切に処理し、ラグなく末端に伝えている。こんなことが可能なのか? いや人類は、外星人の口添えありきとはいえ、ここまでの領域にまで達したというのか?
『――猛さん。どう? 行けそう?』
「ルリ子さん」
彼女の一言で我に返る。そうだ。まだここはスタート地点。大変なのはこれからだ。
「成功だよ。多分、このまま行けると思う」
『――良かった。ここや周囲の厄介事は私たちが引き受ける。後をお願い』
「解った」
ベーターシステムで巨大化したのは自分だけ。サイクロン号やそれに準ずる乗り物は無し。問題ない。ウルトラマンと同じ六十メートルの巨体、薄桃色の瞳が"目的地"を見据えてそう言った。
本郷ライダーはその場で半身を沈め、両足に力を込める。足元の計器類がただそれだけでがたがたと震え、リノリウムの白い床に蜘蛛の巣が生じた。
「行ってくる」
溜めに溜めた力を解放し、ライダーの身体が空へと翔んだ。ベーターシステム開発区画がその衝撃波だけで完全に崩壊し、上空に陣取る雲に穴が開く。
跳ぶのではない。翔んでいる。たった一度の跳躍で彼の身体は利根川を超え、日光を超え、福島と栃木の県境辺りでようやく落下に転じ始めた。ただの人間ではこうはゆかない。ヒトの体に昆虫の特性を移植されたオーグメント。あの時点で既に66M30を記録していたジャンプ力が、ベーターシステムによる巨大・強化で何十・何百倍にまで"跳ね"上がっている。
(末恐ろしい)
本郷は土砂を巻き上げながら着地し、そこでまた上体を沈める。二秒の静寂の後跳躍。地表に五メートル近いクレーターを作った上で、ライダーの身体がまたも翔ぶ。まるで自分自身がヒトのまま禍威獣になったかのようだ。そこに高揚感などない。このままではいけない。本郷ライダーは接地の瞬間、背中からプラーナで出来た翅を展開。制動をかけつつ、秋田と青森の県境に『着地』した。
「見えた」
本郷猛の高精細なアイ・カメラが支笏湖から恵庭岳に分け入り、人里へと進む禍威獣の姿を捉えた。ルリ子の予期した通りだ。ウルトラマンは。一文字は。ここからでは何もわからない。
今はただ信じるしかない。自分がすべきことは、あれの動きを食い止めることのみ。充分に上体を沈め、跳躍。上昇の頂点で翅を広げ、街に向かう薔薇の花に照準を合わせ、空中でプラーナを解放。流星が如き勢いで必殺の飛び蹴りを叩き込む。
――CRAAAAAAAAAASH!!!!
これが、外星の技術とこの星の最先端が交わった結果か。これまで三度の跳躍でその危険性は十分に理解しているつもりだった。見通しが甘かった。身体がこれだけ大きくなれば、取り込めるプラーナの量もそれだけ増える。
(なんて……威力だ……)
恵庭の山の半分が抉れ、禍威獣がその奥にめり込む。たった一発のキックが、これほどまでの破壊力を及ぼすことになってしまうとは。
(555)仮面ライダー新一号 ジャンボフォーメーション
身長:六十メートル
体重:5800トン
人類が完成させたベーターシステムによって仮面ライダーが巨大化したすがただ。
ウルトラマンと同じ大きさになり、ジャンプ力もパンチ力も何百倍にパワーアップしている。
(753)B・Gオーグ(植獣形態)
仮面ライダーのつよさを理解し、彼とたたかうために進化した姿だ。ゴジラのような顔と口がついており、口からおそろしい放射樹液をはきだす。