シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
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"それ"は白と黒の縞模様のヒトガタであった。おかっぱ頭のような風貌に、紅い瞳。口らしき器官はあるものの、そこが開いて言葉を発する様子はない。
間もなく、勇み足で踏み込んだ軍人たちがハンドガンでの発砲を開始した。複数のマズルフラッシュが監視カメラいっぱいに広がった。
だが、フラッシュから画面が回復したとき、立っていたのは軍人たちではなく"それ"の方であった。"それ"は悠々とカメラのフレーム外に出て行き、軍人たちはまるで元からいなかったように消え失せた。
「これが、君たちが到着する十数分前に起こったことだ」
責任者のキャンベル司令官は、録画映像を停止し、背後に立つ禍特対の面々にそう述べる。
「フラッシュを減光できませんか? 今のままでは何がどうなったかさっぱり」船縁は淡々とそう返し、
「この存在は今もこの区画にいると居て良いんですよね? ベーターシステムを悪用される危険はないんですか」滝は二次……否、三次被害を懸念しそう進言する。
「君たちの懸念は尤もだ。あれの存在が確認できた時点で、ここ以外の基地施設の電源はシャットダウンした。奴がベーターシステムを使用する事はないだろう」
二次被害が出ないため、でもあるのだろう。無策で突っ込んで勝てるような相手ではないことは彼らも理解したはずだ。
「あの。素朴な疑問をいいですか」そんな中、浅見が真顔で手を挙げる。「『ダダ』、っていうのは?」
「ああ、それか」キャンベル司令官は部下に目配せし、映像のミュートをオフにする。
『Da……Da……DaDa……DAAA……DAAA……』
兵たちの怒号と銃声に被さる不思議な声。いや、これは『声』なのか? だが、"それ"以外にこんな声を発するものはいない。
「成る程、だから『ダダ』」
「安着で何だが、今はそう呼称するしかない」
浅見は他メンバー全員に目配せを送る。否定する要素はなにもない。防災庁にお伺いを立てる必要もない。外星人第四号『ダダ』。今この場で呼称が決まった。
「画像の解析、完了しました」
命名完了と歩調を合わせるかのように、監視カメラ映像の色調補正が終了した。全員の目が大モニタの方に向く。
「司令官。第一陣のバイタルサインも……」
「ああ。消えてはいない。『ここにいる』」
マズルフラッシュを取り除いた監視カメラ映像に残されていたのは、この外星人がショートワープで巧みに銃撃を躱し、逆に銃を向け、『なにか』を撃った場面であった。
今この場で死んだ人間は誰もいない。バイタルサインは全てこの区画から動いた様子もない。加えて、『ダダ』が放った銃"らしきもの"からは青色の輪のようなものが一射に五連続、それがターゲットに当たっただけだ。
「船縁さん、僕、なんだか分かってきたかも」
「奇遇ね滝君。多分、答えは一緒だと思う」
バイタルサインは消えたのではなくここにある。だのに姿はどこにもない。奴の放つ光線らしきものにも殺傷能力があるようにも思えない。
「班長。補正された画像から特定しました。
ただ一人、会話に交わらず淡々と仕事をこなしていた神永新二が、ようやく口を開く。
「ここ、って? 神永さん、どこよ」
「画面右端、最大ズームをお願いします」
神永の指示でぎりぎりまで画像が拡大され、全員の目がそちらに向いた。今の今まで分からなかったが、『そこ』には彼ら全員が納得するものが映っていた。
「ビンゴ。流石ですね神永さん」
「恐ろしい連中だ。これではっきりしました。奴はあの銃型光学兵器で、人類を縮小させられる」
この不可解な現象をひとことで表すならばそれしかない。ダダは人間のカラダを縮め、殺しはせず何かを企てているのだ。何か・とは一体ナニか。他の管轄ならまだしも、禍特対の面々にとっては自明だ。
「いよいよ仕掛けてきたか……。人類を拉致し、自らの手駒にする外星人が」
禍特対班長・田村は苦い顔で唇を噛む。人類がベーターシステムにより巨大化するとどうなるか。彼らは誰よりもよく知っている。
「被害者に共通性がないのは、手当たり次第に人間狩りをしていると見て間違いないかと」船縁がそこに話を繋げ。
「基地中の電源、早いうちにシャットダウンしといて良かったっスね。でなきゃ今頃ここは更地になってた」滝が無神経に正論を放ち、
「しかし、ここからどうすれば。助けに行けば先の二の舞い。行かないで放置すれば、奴の興味は外に向きます」
最後に浅見がこのままでは駄目だと釘を差す。
「米軍が一方的にやられる相手だ。我々素人や自衛隊の戦力を投入しても無意味だろうな」
神永の目は今もなお監視カメラ映像にあった。マズルフラッシュが消え、明瞭になった中、『ダダ』の犯行の手口が見えて来た。
兵が銃を抜き、発砲した時点で奴は背後に回っており、光波を浴びせ縮小化。十字路のうち三つを押さえ、飛び込んで撃ち込む場面もあった。しかしダダは三方
ウルトラマンの手を借りる時か? あれが巨大化し、直接こちらを狙ってくるならそれも良いだろう。しかし、敵は基地の一区画に籠城し、その後の動きも特に無い。実質十数の人質を取られた状況に、全長六十メートルの巨人が顕現したところで悪手以外の何者でもない。
――RRR……RRR……
全員が手を拱くこの状況で、班長の田村の電話が鳴った。この緊急事態、彼に連絡を取る人間など一人しかいない。禍特対室長の宗像だ。
『――現場はどうだ』
「膠着状態です。人類の拉致を目的とした外星人が籠城。下手に増援をかけても向こうに餌を与えるだけです」
今現場で起こった事案を咀嚼し、簡潔に示すとこんなところか。宗像はそうかと一言述べ、通話間に一瞬の沈黙が流れる。
『――解った。では、外部から手を借りる事にしよう』
「外部?」
『――というか、今既にそこに向かっている。指揮官に伝えてくれ。在日米大使に連絡を取った。"招き入れて構わない"と』
「向かっている……? 誰が」
『――君たち程じゃないが、私もそれなりにパイプを持っていてね。こういう事案に誂え向きの男がひとり』
ヴウウウウン、とけたたましい二輪車のエンジン音が響くのと、宗像の言葉はほぼ同時だった。
エンジン音? 待て待て、ここは地上から約三十メートルもある監視塔。飛行機ならまだしも、バイクがそんな場所を通るわけが。
「何よあれ……緑の、仮面?」
「有り得ない。どんな速度で突っ込めばこんなことが」
「いやいや、それより。あれ着地して無事で済むと思います?!」
監視塔のガラス越し、バイクを駆り横田基地に飛び込む『仮面の異形』を見、禍特対メンバーはそれぞれその異常さを口にする。だが班長田村に並んで一人、この事態に一切動揺しない男がいた。
「成程。”彼”ならば、この事態も容易いか」
まるで、前から知っていたかのように。この異常が当たり前だとでも言うように。元公安の男・神永新二は静かにそう呟く。
「神永。お前は、あれを知っているのか」
「前職の”同僚”です。室長の言う通り、我々は彼を見送るだけで良い」
「見送るだけ、って」
パッと見、基地内の監視カメラに映る外星人と大差ない異形だ。それを放置で構わないとはどういうワケだ。
「大丈夫だ浅見君。心配せずとも必ずやり遂げる。彼は『仮面ライダー』。人類の味方だ」
(667)外星人ダダ
人間をさらい、自分の星で武器として使おうと、遠い彼方からやってきた外星人だ。自由自在に消えたり出たり、顔をかえて相手をこん乱させることができる。
物体をミクロ・巨大化させる銃を持っているが、素手の戦闘はとてもよわい。
(403)仮面ライダー2+1号
SHOCKER大幹部とのはげしい戦いで命を落とした本郷猛だったが、そのたましいはプラーナとなって仮面ライダーのマスクにやどった。
第二号ライダー一文字隼人はそのマスクを鮮やかな緑に塗り替えて、彼の意志と共にうけついでいる。
本郷のプラーナはいまもけんざいで、一文字はぜんぜんさびしくないのだ。