シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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(以下の文章は連載当時のものです)
シン・仮面ライダーの全国的終映時期が告知されました。
うちも同じくらいのタイミングに終われるのが美しいと思ったのですが……。


28.覚醒めろ神永

 

※ ※ ※

 

・PM5:50

 

 

「滝。送られてきたデータの解析はどうだ」

「現在進行系でやってます。さすがは一文字さんだ。ウルトラマンを封じる機械をピンポイントに狙ってくれた」

 禍特対の面々を載せたヘリはもう間もなく青森を通過、本州から北海道入りしようというところか。滝明久と船縁由美は対ゴジラ血液凝固剤の音頭取りと同時に、外部から送られてきた膨大なデータを並列で処理し続けていた。

 ライダーがオオカミオーグを斃してすぐ。先を急ぐ一文字に滝が託した小さなUSBメモリ。それは挿した機械に手持ちのノートパソコンでアクセスし、割り込みハッキングを可能にするという代物であった。

「神永さん。もうちょい……もうちょいですからね」

「見ててくださいよ、今度は、僕たちがあなたを救ける番だ」

 ウルトラマンは外星人ダダの所持していた縮小光波発射装置を受け、人間大に縮んだうえ、身体に渦巻くプラーナを弄られ、動くことさえままならない。

 技術こそ外星人がもたらしたものだが、それをシステムという形に組み直したのは人間だ。解除の糸口はきっとある。

 

「滝君。見えた。多分これで行けるはず」

 滝の処理しているデータは、今ここに居る皆に無線接続で繋がっている。それぞれの知識を持ち寄って、全く未知のシステムを攻略しようとしている。

「ナイス浅見さん。よっし、こ、れ、で……っと!」

 死神博士の所持する電子演算器のプロテクトが解けた。即座に強制終了コマンドを打ち込む。プラーナによる制御装置が遂に機能を停止した。

「やった! パーフェクト!」

「一文字さん! 聞こえますか!? やった、やれましたよ僕たち!」

 腕力でも、科学力でもライダーや禍威獣、オーグメントにはかなわない。だが、負けを認めて諦めるなんてまっぴらだ。見たかオーグメント。たとえ戦いの役に立たずとも、支援なら幾らでも出来るのだ。

 

「後はもう、運を……いや、神永さんたちに任せるだけね」

「えぇ。託します。あとは全部」

 彼らのモニタは恵庭上空、巨大化した本郷猛の姿を映していた。彼一人で何とかできる相手ではない。神永の、ウルトラマンの力を借りなくては。ひとりでは敵わなくとも、ふたりいればきっとなんとかなる。到着まで後少し。禍特対の面々は固唾を呑み、各々の作業に戻って行った。

 

 

※ ※ ※

 

・PM5:55

 

「これは……馬鹿なッ」

 急ぎ反撃を行わんとするも間に合わず。装置の電源がシャットダウンされ、磔にされたウルトラマンが解放され、地に付した。

「はは。やるなァあの連中」

 一文字は大の字を作って立てないながらも、爽快なる絵面に声を上げて笑う。あの死神博士が、はじめて想定外の事態に揺れた。再起動を試みるも返事がない。解除と同時にシステムごと乗っ取られてしまったらしい。

「さぁて、後は俺の出番……だよなッ」

 未だ治り切らぬ身体に鞭を打ち、身体をくねらせ、倒れ伏すウルトラマンを見やる。外傷らしい外傷はない。だが乳白色の瞳は黒ずんで光っていない。たいないのプラーナを弄られ、未だに目覚めていないのか。

「起きろ……。起きろよ神永新二。お前はもう自由だ。こんなとこでぐぅすか寝てる場合じゃねぇだろう!」

 声を震わせ、時に咳き込みながら。突っ伏して動かないウルトラマンに呼びかける。

「本郷が戦ってる! あいつだけじゃ抑えられない! 解るか?! このままじゃたくさんの人が死ぬ! あんたの力が必要なんだ!」

 こんなに間抜けなことはない。自分が対処出来るならもうやっている。だが最早イチ仮面ライダーの手に負えるような事態ではない。惨めだろうが情けなかろうが、彼の覚醒に賭けねばならぬのだ。

「あんた、ウルトラマンなんだろ!? 何度もこんなピンチ乗り越えて来たんだろ!? 俺の相棒が命張ってんだ。このままずっとおねんねか? 冗談じゃない! 見せてみろよ、光の巨人のチカラってやつを!」

 如何に嗄らして叫ぼうが声は声。プラーナを弄られ、意識を失ったウルトラマンには届かない。実際叫ぶ一文字ですらトーンダウンし、諦めかけたその瞬間。乳白色の瞳に薄っすらと淡い光が灯り出す。

 

 

(僕は……今まで、何を……)

 意識を回復した神永新二(ウルトラマン)の目に映るのは、何から何まで見覚えのない建物と、床に突っ伏したままの仮面ライダー第二号。そして、横目に映る恵庭岳"跡地"で展開する巨大な存在ふたつの死闘であった。

 飛躍が過ぎる。レッドキングを斃してどうなった。そもそもこの視界は何だ。どうして変身は解けていない?

 

「この野郎……。ようやく目醒やがったか」

 一文字の安堵した声がウルトラマンの耳に届いた。今一度彼を見やる。憎まれ口を叩きながら、どうしてあんな風に寝そべっている?

「説明は"向こう"で聞いてくれ。こっから先はあんたの仕事だ。任せたぜ、ウルトラマン」

 わからない。全く以て何がなんだか。しかし、行くべき場所は分かった。すべきこともなんとなく理解できた。もう自分を縛るものはない。ウルトラマンは右拳を硬く握って突き出し、左手を腰に添える。『彼』の中にあった記憶。変身に際し、最も力の籠もる構え。

(ああ、任された)

 人間大だったウルトラマンの身体を紅い光が包み込み、急激に膨張してゆく。ダダの縮小光波によって縮められた身体が、ウルトラマン自身の意思で元の姿に戻ろうとしているのか。

 

「な……なんだ、なんだこれは……」

 システムの再起動でてんやわんやだった死神博士も、隣で起きたこの豹変には目を剥いた。と同時に無駄な足掻きだと心中毒づく。彼――、イカオーグの触れたものは限界まで柔らかくなり、その弾力は全て当人に跳ね返る。

「はは……ははは。ばっ、馬鹿馬鹿しい。破れるものか、破れるわけがない!」

 すり鉢状の天井が巨人の身体を御し切れず、熱を帯びた餅めいてぶくぶくに膨れ上がる。この反動がどれだけの運動エネルギーを呼び込むか。死神博士は勝ちを確信しほくそ笑む。

「は……はは、ふぁっ!?」

 死神博士の顔から笑みが消えたのはその時だ。薄く長く張り詰めた『天井』が、膨張し続ける巨人の質量に『押されて』いる。如何に柔らかくなろうが物質は物質。外星人のでたらめでべらぼうな非常識が、常識の範疇にある博士の理屈など通用しない。

「馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な! あり得ない、有り得ていいはずがない!」

 限界まで膨張した風船が弾け、ウルトラマンの身体が支笏湖のほとりに飛び出した。

 

(成る程。これじゃあ一言じゃ説明しきれないか)

 ウルトラマンの乳白色の瞳は、その先で起こる騒乱を見咎める。面積の実に半分近くが更地と化した恵庭。蔦と蔓で形作られた禍威獣。そして、それに縛られ絶対絶命の仮面ライダー第一号。こうなればやるべきことはひとつ。ウルトラマンは跳躍から蹴伸びの姿勢を取り、禍威獣たちの頭上を取った。

 

(待ってろ。いま助ける)

 蹴伸びの姿勢のまま宙に浮いたウルトラマンは、自らをドリルめいて横回転。スペシウム133エネルギーが彼の身体から放出され、輪のような形を形成してゆく。

 "輪"はひとりでにウルトラマンの身体を離れ、大口を開けたB・Gオーグへと向かう。アシカが鼻先で放られたリングを操るかのように、禍威獣の口にスペシウム133の輪が引っ掛かる。

『GUO……oo!?』

 それも、ひとつやふたつではない。輪っかは止めどなく放出され、次々に禍威獣の口に嵌ってゆく。一本の矢は弱くとも二本・三本ならばナントやら。禍威獣の口は無理矢理塞がり、放たんとしていた胃酸が口内でどろどろと溶けてゆく。

「君は……!」

 後は慣れた仕事だ。青白いエネルギーを丸鋸状に固定した刃を放ち、仮面ライダーを拘束する蔦を切断。

(遅れて済まない。加勢するよ、仮面ライダー)

「あぁ。感謝する、ウルトラマン」

 互いに口を開き、会話をする必要はない。神永の心はテレパシーで本郷に伝わり、本郷の言葉はプラーナに乗って神永に伝わっている。ようやっと、すべきことに芯が通った。ひとりで駄目ならふたりで叩く。

 赤と銀の外星人・ウルトラマン。緑の仮面に薄桃色の瞳を宿した仮面ライダー。両雄が北海道・恵庭の地に並び立つ。

 

 

(つづく)




次回、『戦う勇者手を取れば』
ご期待ください。
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