シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
このおはなしですが、このままのペースだとあと5〜7話くらいで幕引きができそうです。
ごゆるりとおまちいただければ。
(いずれも、掲載当時のものです 05.07.21)
※ ※ ※
・PM6:15
「ぐ、ぐぬぅ……おのれぇ……。勝て、克つんだB・Gオーグ! お前は最強だ。ベーターシステム如き敵ではない! 私の技術は外星人なんぞに負けるんじゃあないぞォ」
大穴が穿たれ、土や砂がさらさらと流れる環境になってなお。死神博士の目は大モニタに釘付けだ。
ウルトラマンと仮面ライダーの決死の攻撃に真っ二つにされた、と思いきや。それを物ともせず生長。植物という枠組みさえも外れ、戦うための手足を獲得した。これ程の見世物を見逃せるわけがない。
「舐めた真似……してくれやがる……」
ここまで想定外の事態に置かれてなお、彼の目が後ろで横たわる一文字隼人の方を向くことはない。『時間』は十分に貰った。グズグズのズタズタにされた身体はほとんど快復し、壁に寄りかかりながらよろよろと立ち上がる。
もう、あの禍威獣は奴の手を離れた。今ここで斃したところで、現場に立つふたりの支援にはならない。だがしかし。あんなものを嬉々として造る存在を生かしてはおけない。今この場で、片付ける!
「ほほう。流石だな、緑川イチローの忘れ形見」
死神博士はこちらを見ることなく、立ち上がった一文字ライダーにそう告げる。『無意味』だからだ。快復こそしたが、彼の胸部コンバーターラインにはそこらかしこにヒビが見られ、プラーナを吸収・排出するベルトの風車はひしゃげ傾いている。これ以上何かしようものなら、彼の身体は耐久限界を超え、泡となって消滅するだろう。
「最早お前如きどうでもいい。好きにしろ」
死神博士は投げやりにそう言って、再度興味をモニタに向ける。彼の実力は先の一閃で分かった。旧式のバッタオーグに、自分の持つ『軟体』は突破できない。
「ああ、好きにさせて……もらう」
一文字ライダーもまた、モニタ上に広がる絵面を視た。仮面ライダー・本郷猛がウルトラマンと肩を並べ、ゴジラと植物の混ぜもの相手に体を張るその姿。負けていられない。あちらが彼らの現場なら、ここは自分のフィールドだ。必ず克つ。やり抜いてみせる。
「行、く、ぜ、ぇえええええッ」
十二分に上体を沈ませ、縄のような筋肉を浮かび上がらせて。一文字ライダーの身体が風切る勢いで翔んだ。先程出来た『孔』からここを脱するのか? 否、彼の跳躍軌道は孔ではなく、その近くの外壁である。
バッタオーグの超・跳躍力を以てしても、イカオーグの能力による軟化は破れない。そこだけが膨れ上がった焼き餅めいて伸びに伸び、弾力を伴って弾き返す。
無論、そうなると
こんなことに何の意味が? 意味ならある。弾かれれば弾かれるほど、接触と反発の時間は短くなってゆき、勢いが蓄積されてゆく。
(もってくれよ身体……。もう少し、あと少し……!)
ウルトラマンがさっき教えてくれた。奴の能力は完璧ではない。力さえあればこの柔らかさは突破可能だと。等身大の仮面ライダー・一文字隼人にそれだけの膂力はない。閉所であるここでは、プラーナ吸収からの能力強化も望めない。
だが、この場全てがトランポリンのようなものだとしたら。どこを蹴っても跳ね返るのなら。運動エネルギーは立ち止まらない限り彼の身体に蓄積し続ける。
とは言え。そこにかかる圧力は、誰でもない一文字自身が受け止めなければならない。先程の無理がたたり、快復したはずの身体を再度激痛が駆け巡る。
叫び散らしそうな痛みを喉元で押し留め、砕け散りそうな身体を理性で律し。果てのないトランポリン跳躍を繰り返す。
「なんだ……なんだァ騒々しい」
この異常事態に、さすがの死神博士も振り向かざるを得なくなる。とは言え、一瞥してなお彼の目には余裕があった。
「はっは。面白い。そうして跳ね回り続ければ倒せると? 無駄だ、無駄だ。お前がどれだけ頑張ろうと、私の張力を超えることなど絶対にない」
死神博士はオーグメンテーション開発のスペシャリストだ。組織に施術を受けた後、己が自ら体に手を加え、日々ポテンシャルを高め続けている。
ゴジラ細胞という未知に手を出したのは、際限のない自らの知識・技能の果てを見たいという純粋な欲望だ。最早自分の身体は高め尽くした。ウルトラマンという異常事態に見舞われ、"多少"動揺したが、同じ地球のオーグメントなら驚くことなど何もない。
「ろくにアップデートも出来ない旧式風情が。私の
研究区画全体の張力を利用した超・超・超・跳躍により、一文字ライダーの身体は疾風を伴い、周りのものを弾き飛ばし始めた。先の一撃、彼はその反射ダメージだけで全身複雑骨折を被り、その回復に残留するプラーナを使いすぎた。最早彼を止めるものは無い。トドメを刺そうが刺すまいが、彼はこの跳躍で得た運動エネルギーを御しきれず、潰れたトマトになって死ぬ。
(余計なことは、考えるな)
それでも。それでもなお。一文字隼人の目に諦めの二文字はない。不安や恐怖はスピードの遥か後ろに追いやり、速さと力を求め、ひたすらに跳ね回る。
(カタナだ。己を一本の刀と思え。迷いのない太刀筋、研ぎ澄まされた切れ味。目標はただ、目の前の……)
十分にエネルギーが"溜まった"。一文字ライダーは跳ね回るその中で素早く体勢を整え、右肩から大きく振り被る。
「喰らえ」
引き絞られて放たれる寸前の矢のように。砲身に込められた弾のように。緊張が解き放たれ、ライダーの身体が空を裂く。
跳ね回り、チカラを溜める中で、一文字隼人が決めの一撃に選んだのは手刀だ。向こうがイカなら斬って捌いて卸すまで。最早一片の迷いもない。これまでに溜めた運動エネルギーとプラーナを右手に集中し、横薙ぎに振り抜いた。
「ほ」
この場の何よりも、誰よりも硬く柔い死神博士の首が圧力に敗けてひん曲がった。左耳が左肩にくっつき、首だけが薄く伸びたチューインガムめいて引っ張られてゆく。
「ん、ぬ、ん、ぉ……お?!?」
組織に拾われ、オーグメントとなった時に捨てたはずの『死』への恐怖、生への執着。ようやっと一文字隼人を敵と認識し、何らかの対策を打とうとしたが、その全てが遅かった。
自分とは比べるまでもない旧式。自分の計画には何の支障も与えない筈の路端の石。侮り、放置し、好きにさせてやった。
その全てが間違いだった。痛みこそ小さくとも、独力で組織にダメージを与え続ける存在だ。軽視すべきではなかった。彼は走狗たるオオカミオーグが殺られた時点で、何らかの対策を取っておくべきだったのだ。
「おぐ……おっ、おっ、う……」
無様な負け犬には辞世の句も断末魔も許されない。死神博士――。イカオーグの首はライダー渾身の必殺チョップで寸断され、『柔い』リノリウムの床をバウンドしながら跳ね回る。
だがそれも直ぐに止まった。この柔らかさの根源は死神博士。彼が死ねば、此の区画にかけられた弾力は当然消え失せる。地震か? 否、ライダーが全力で駆け回ったツケを払う時が来ただけだ。バッタオーグの圧倒的脚力に単なる壁は耐えられない。能力で分散していた圧力が施設全体に蜘蛛の巣を走らせる。
死神博士は仮面ライダーという存在を侮っていた。自分が万能の存在と思い込んでいた。自分よりも格下の彼が、ただの一撃で施設の機能を停止させ、倒壊に追い込むなど、生きているうちは思いもしなかっただろう。
それを知らず逝くことが出来たのは、彼にとって救いだったかどうなのか。今となっては知る由もない。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
イカの弾力を突破貫通した一文字ライダーは、その勢いを維持したまま壁という壁を破壊し、恵庭の地下三百メートルの土を掘り進む。
死亡による能力の解除と、施設そのものが地下にあったことが彼のその後の運命を分けた。掘りに掘ったライダーは土を突き抜け支笏湖の水に到達。生き埋めから逃れ、土砂の積もる濁った水の中にに投げ出された。
「ははっ。ははは……痛ってェ」
残る力を振り絞り、水面まで昇ってゆく。カラダを保てているのは奇跡だ。衝撃を湖の水が分散してくれたお陰だろうか。
「後は任せたぜ。本郷、神永」
全身の力を抜いて、水面に体を預け、だいぶ暗くなった空を見やる。ここからでは戦況はみえない。後はもう信じるだけだ。
「ああ、だいぶ心スッキリだ」
一文字隼人は流れる雲を目で追いながら、満足そうに独り言ちた。
(995)大決戦、B・Gオーグ対ウルトラマン&仮面ライダー
ついに、バラ・ゴジラオーグがさっぽろの街に入った。ふたりのチカラだけではこのかい獣を止めきれない。
禍特対のなかまたちがきりふだをさっぽろに発射した。これがさいごの勝負だ。
(996)ゴジラ・アース
B・Gオーグが進化のはてにたどり着いたおそるべき形態。
植物のからだでありながらとても大きく、とてもつよく、体内のエネルギーを光波熱線にかえて撃ち出してくる。