シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
いつもの仮面ライダーの規模ではあり得ない大スクリーン、良音響で仮面ライダーを魅せてくれてありがとうございました。
そんなわけで、このおはなしもそろそろクライマックスです。
※ ※ ※
・PM6:30
『URRRRROARRRRRRRR』
地獄の鬼すら震わせる禍威獣の鳴き声が札幌の街に響き渡る。ふたりの巨人は即席の造成地から転げ落ち、陸上自衛隊・札幌駐屯地近辺まで追い込まれた。
そう。
『ROARRRRRRRRRRRR』
弱点と思われていた腹部の嚢は蔦で出来た外皮で巧妙に隠され、新たに生えて来た手足は力士のように太く。押そうが引こうが殴ろうが、跳ね返ってダメージを受けるのは彼らふたりの方だ。
「今度、こそ!」
(千切れろッッッ)
ふたりは丸鋸状況の光輪で奴の胴体を削りにかかるが、切断された先から傷口と傷口とが『紐づき』、全くダメージになっていない。
あれからたったの三十分。既に造成地で戦っていたあいつとは別物だ。手足を生やし、長い蔦と蔓を編み上げて尻尾とし、鎌首をもたげ咆哮するそれは紛れもなくゴジラ。植物で身体を構成されたゴジラそのものだ。
(まずいぞ……)
「このままでは、勝てない」
ベーターシステムで巨大強化された身体ゆえ、倒され膝をつくことはないが、逆に向こうを斃し切る術もない。千日手の持久戦を続ければ、自分たちは良くても北海道の地は三日と経たず焼土と化すだろう。
「う……」(くぅ……!)
しなる尻尾が横薙ぎに振られた。二人がかりで受け止めるも御しきれず、落下先の札幌駐屯地をその巨体で押しつぶしてしまった。
『URUOOOOOOOOO』
最早手段を選んでいる場合ではない。先んじて立ち上がったウルトラマンは右腕を水平に、左手を直角九十度に伸ばし、体内のスペシウム133を腕に集束させてゆく。
(一か八か……)これで倒せるという保証はない。そもそも市街だ。禍特対の活躍でほとんどの住民が避難しているとはいえ、その後の被害は想像もできない。
いや、だが。それでも打開するにはこれしかない。ウルトラマンは悩みを振り切り、二つの手を交錯させんとした、が。
「待ってくれ。それは未だ早い」
(早い……? 一体どういうことだ)
肩を並べ戰場に立つ仲だ。互いの戦況、互いの手札はとうに理解している。もし光波熱線が悪手だというなら、もっと早くに止めていただろう。
それが何故。発射寸前に静止をかけた理由はなんだ。右肩ごと割け入った仮面ライダーに理由を問う。
「君の仲間たちから"連絡"が来た。僕たちだけじゃなく、僕ら『みんな』で、あいつを片付ける」
※ ※ ※
・PM6:28
「いよっし! 準備完了」
「見えました! ウルトラマンと……仮面ライダー!? まさか、そんな……嘘でしょ!?」
禍特対の面々が札幌に到着するのと、対ゴジラ用血液凝固剤の『準備』が整ったのはほぼ同時であった。
そんな折、彼らがヘリのガラス越しに目の当たりにしたのは、SHOCKERの拘束から解き放たれし見知った仲間と、識ってはいたが、どうしてそうなったのかわからない巨大なバッタのオーグメントの姿。段階を飛ばして見ると意味不明な光景だ。
「しかし、あれ……本当にオーグメントですか?」
「報告と形状がまるで違う。あれが薔薇っておかしいでしょ」
自分たちが札幌駐屯地からの通信で聞き知ったのは、幾重もの蔦と蔓に巻き付かれ、紅い花弁に覆われた花獣であった。それが今や、動物の鰐めいた大口に太く硬く伸びた手足。幾ら植物は生長するものとはいえ、あそこまで極端なものがあるものか。
「いや、そんなことより。完成したのはいいけど」
「そうだ。神永さんたちにどうやって伝えたら……」
浅見の指摘を受け、ここまで先延ばしにしていた問題と向き合わざるを得なくなる。反撃の準備は整った。しかし、それを戦場のウルトラマンたちに伝える手段がない。声を嗄らして話すには複雑すぎるし、巨大化した
――RRR……RRR……RRR
打つ手なしと手をこまねくそんな中。ヘリ内の非常電話がけたたましく着信のベルを打ち鳴らす。
「はぁ!? ここに、電話ぁ?」
一番近くにいたのは滝だ。彼は他の面々から目線に耐えかね、恐る恐る受話器を取った。
「何だよ、今取り込み中……」
『――そんなことは百も承知。あの二人を助けたいんでしょう? 協力するから通信回線を開けて』
「はぁ!? あんた誰だよ、助けるって何を?」
電話口の声は若い女か? 承知済みで助ける? 自分たちではなく"あのふたり"? と、言うことは。
『――私のことはどうでもいい。仮面ライダー……本郷猛さんの協力者。今はそれで十分でしょ』
「十分って」
そちらの都合で話を進めるな。更に噛みつかんとしていた滝を、『タチバナ』がよせと食い止める。
「君の言うことを聞こう。接続出来るのか?」
『――私から彼に詳細を伝える。彼とウルトラマンはプラーナを介して意思疎通みたい。作戦の共有はここだけで十分』
「いいだろう」タチバナは滝らの保有していたデータを"彼女"に回し。「聞いただろう。彼女は我々の味方だ。警戒する必要はない」
「ええ、えっ……?」
この見ず知らずの相手を信じろと?とは言え、他に手がないこともまた事実。
「分かった。どこの誰だか知らないが、頼む。滝、船縁。状況の説明を」
困惑の空気を振り切るように、田村君男班長が力強くそう応える。こうなってしまっては彼らに選択の余地はない。
「了解です」滝はへの字眉でノートパソコンを叩き。「じゃあ、本郷さんと神永さんに伝えてください。ゴジラ凍結に使用する血液凝固剤の精製、及び"射出"準備が整いました。御殿場の自衛隊演習場から凝固剤入りの弾頭を札幌に向けて撃ち出します」
『――射出?』
「敵の本拠地が北海道だと分かった時点で切り替えたの」船縁は電話口の女にそう補足し。「神永さん《ウルトラマン》の握力も計算に入れてある。口に放り込むか、口内で握り潰せばあれの身体に吸収されます」
「弾頭は全部で十」滝が追加のデータを呼び出して。「目算なので完全じゃあありませんが、あれの中に五発を放り込めば、奴の動きをストップ出来るはずです」
「射出はゴーサインが出た瞬間から二分間隔」浅見が更に付け加え。「こちらからじゃ現場の状況や変化に逐一対応出来ない。だから等間隔に禍威獣に向けて撃ち込む。後は現場に任せる。二人にそう伝えて」
『――解ったわ』電話口の女はこの説明を聞き返すことなく了承し。『猛さんの確認が取れた。弾頭の射出をお願い』
「もう!?」幾らなんでも早すぎる。本当に大丈夫なのか? やはりこれはいたずら電話なのでは……。
「いいだろう」田村はそんな滝の疑問を握り潰し。「滝、始めてくれ」
この場で物事の決定権を持つのは田村だ。彼が行けと言えば従う他無い。
「え、え、い。ままよ!」
後はもう、信じる他ない。滝は待機する隊員たちにGOを送る。
その瞬間、御殿場の演習場から一基の弾頭が北海道目掛けて翔んだ。
※ ※ ※
・PM6:32
「というわけだ」
(成る程。"彼ら"らしい)
緑川ルリ子伝いに禍特対の考えを聞いた。ふたりに選択の余地はない。あれに勝つ可能性があるのなら、全力で戦いモノにするまで。
「来たぞ!」
バッタオーグの超・聴覚が接近する弾頭の飛来を捉えた。上体を沈め、一気に跳躍。既に落下を始めていた弾頭を無理矢理に押し留め、中身を引っ張り出して着地する。
「まずは、一発」
仮面ライダーは着地と共に振り被り、プロ野球選手めいた強烈な投球を叩き込む。"ボール"は呆けて口を開ける禍威獣の喉元に引っかかり、そこで破裂。血液凝固剤が身体中に行き渡ってゆく。
『GUO……oo……OO!?』
飲み込んだ奴の動きに動揺が観られた。『効いている』。これなら、奴にダメージが入る。
弾頭は残り九発。滝らの計算によれば最低でも残り四。成る程、やってみる価値ありか。ウルトラマンと仮面ライダーは互いに頷き、覚悟を決めた。