シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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サブタイトル通り、終幕です。
ちょっとやりたいことが多くなったのと、一緒にすると感情の持ってゆきどころに困るチャプターが増えたので、本日と明日のふたつに分けさせていただきました。
このおはなしは次回で完結です。


エピローグ・1

※ ※ ※

 

 ゴジラという超弩級の禍威獣災害から一夜明け、人類はその爪跡を改めて直視することになった。北の都・札幌が事実上喪失したこと。恵庭岳の実に七割近くが抉れ、支笏湖の実に半分が埋め立てられたこと。被害に遭った建物やヒトは六桁七桁に及び、総額は国の国家予算一年分に達するとのこと。

 それでもなお、人々は瓦礫を踏みしめて立ち上がり、この地に根を張って生きようと奮戦していること。何もかもが事実である。

 

 

「本郷……あの馬鹿野郎」

 室蘭の水面に輝く朝日を眼にしてもなお、一文字隼人の顔に安堵は無かった。当然である。彼のマスクに『棲んでいた』同居人は、彼の同意無しに外界へ旅立ち、そのまま何の音沙汰もないのだから。

「俺たちは、一心同体なんじゃなかったのかよ」

 その"選択"を否定するつもりはない。彼がいなければ、この星はゴジラに乗っ取られ、遠からず人間は絶滅していた。アタマでは理解出来ている。だが納得出来たわけじゃない。別れの言葉も何もなく、自分を置いて宇宙に散った相棒に、一文字隼人は沈痛な面持ちで毒づいた。

 

 彼が、肌にひりつく感覚を覚えたのはその時だ。何かが『ここ』に降りてくる。姿が見えないのは余計なトラブルを防ぐためか? だが一文字には分かる。この感触は。このプラーナは。

 

「ウルトラマン……お前」

(今戻った。君の方は……無事なようだな)

 揺れる水面に反射する半透明の存在。太陽光を捻じ曲げ、一文字に奇妙な影を落とすそれは、今しがた地球へと帰還した赤と銀の巨人であった。

「見かけは、な」

 落ち着いたとはいえ昨日の今日。見てくれは元気そうだが、辛うじて骨組みが体を支えているに等しい状態だ。今オーグメントが攻めて来たなら、何も出来ずにやられるだろう。

「人類全部に代わって礼を言うよ。あのオーグメントを斃してくれてありがとう」

(礼には及ばない。出来ることをしただけだ)

『ありがとう』に若干の嫌味が混ざっているのに、ウルトラマンは気付いただろうか? この星に根を下ろし生きる者歳は、その安寧を守ってくれた感謝を述べたい。けれどその代償は重い。この世で唯一の相棒を、そのために失ってしまったのだから。

 

(一文字隼人。君に言伝がある)

 ウルトラマンは銀の仮面に乳白色の瞳、素知らぬ顔でそう続ける。

(『何も言わずに去ってしまってすまない』。彼はそう言い残して、太陽にゴジラを蹴り込んだ)

「突拍子も無ェ話だな」

 カラダのない奴は自分の扱いが雑だ。いや、一度死んだから現世に執着しないのか。人の気も知らないで。即断即決でそんなことをして、悲しまない人間はいないと言いたいか?

「だからアンタはあいつを見殺しにしたのかよ。そりゃあそうするしかなかっただろうさ。だが! 俺は、俺は……」

 ずっと吞み込んで我慢するつもりだった。けれどその元凶が目の前にいたから。握り潰そうとした感情があふれ出て止まらない。

 ウルトラマンとしても、それは想定済みの展開のようだった。彼は小さく頷くと、『その通りだ』と肯定する。

(そうだ。あの時はそうするしかなかった。けれど、僕はこう返した。”そういうことは、自分の口で言え”と)

「なんだって?」

 

 ひゅう、と波風も立たないのに風の音がしたのはその時だ。一文字隼人はこの感覚を知っている。懐かしいこの感じを知っている。風が収まり、一拍の呼吸の後、バイクのハンドルにかけっぱなしの緑のマスクから「声」が響く。

 

「――やあ。ただいま。一文字」

「本郷……?」

 これは夢か? 自分はあの戦いで死んでいて、これ全部丸ごと走馬灯の幻覚か?

 いいや違う。直りかけの膝が痛む。これは紛れもなく現実だ。つまりこれは。これは。

「――ゴジラを太陽に押し込む瞬間、”彼”がカラダからプラーナを引っ張り出してくれた。お蔭で何とか戻ってくれたよ」

「はは。ははは。ンだよ……それ」

 ベーターシステムを解析し、ようやく隣に並んだのに。彼は我々人間の先を行く。敵わないな。本当に敵わない。

(一文字隼人。”借り”は返した)

 ウルトラマンを紅い光の渦が包み込み、その巨体が水面から消えた。代わりに、黒いスーツに身を包む神永新二の姿となり、彼ら”ふたり”の元へと駆け寄ってくる。

「改めて礼を言う。君たちのお陰で最小限の被害で済んだ」

「最小限って言うかね、これを」

 これが北海道でなかったら、日本という国は事実上壊滅していた。生きているのはただ運が良かっただけだ。なにもかも、運がよかっただけにすぎない。

「それと。忠告を一つ」神永は仏頂面でさらに続ける。「助けられておいて何だが、君たちはベーターシステムを武器として使用し、その実用性を宇宙じゅうに示した第一人者だ。今後はSHOCKERのみならず、この星の為政者や、他外星からの刺客にも狙われることだろう」

「だろうな。人気者はツラいぜ」

 相棒が巨大化という手段を取った時点で、そうした未来はとうに見えていた。覚悟の上だ。元より、オーグメントになってからは、ずっと誰かに追われて生きてきた。厄介事が多少増えるだけだ。

「君の専門はオーグメント。僕たちの専門は禍威獣と外星人。もし面倒に巻き込まれたなら」

「ああ、頼らせてもらうよ。専門家のチカラを」

 人と群れてぬくぬくとするのは嫌いだ。バイクを愛し、孤独を愛し、風の向くまま気の向くまま生きていたい。

 だが彼らは例外だ。自分たちに手を貸し、相棒のことも救ってくれた。彼らなら信じてやってもいい。

 

「何かあればいつでも頼ってくれ。僕たちも」

「ああ。好きにしな」

 互いに話すことはもうない。一文字はヘルメットを被り愛機サイクロン号に跨り、神永は彼に背を向けて。

「また会おう、仮面ライダー」

「おう。またな。ウルトラマン」

 頼りにはするが、道までは交わらない。仮面ライダーは野へ、ウルトラマンは街へ。居るべき場所に帰ってゆく。いつかまた、互いが互いを必要とする、その日まで。

 

 

……

…………

 

 

「――すまなかった。一文字。君に何も伝えられなくて」

「何もかも今更だ。戻ってきたんなら別にいい」

 バイクを走らせ、長い長い地下のトンネルを進む折、再びプラーナだけとなった本郷が一文字に声をかけてきた。

「で。宇宙はどうだった」

「――凄まじかったよ。人知の及ばない空間だった」

「そうかい」

 これでまた、ひとりで二人の仮面ライダーに戻ったか。一文字隼人は本郷の話を聞きながら、感慨深くそう心中独り言ちた。

 

 

…………

……

 

「あっ、神永さん」

「よかったァ、無事だったんだ」

「神永、無事か」

 ウルトラマン帰還の報は、すぐ近くで作業をしていた禍特対の面々の耳にも入っていた。悠然と歩いてくる神永をヘリで出迎える。

「神永さん。おかえりなさい」

「ああ。ただいま」

 ”かつて”はおかえりも言えず、何が起きたかも解らず、困惑のまま皆を迎えて終わった。

 けれど今は違う。自分が何者で、何をしたかも解っている。神永は仲間たちの祝福に柔和な目と言葉で応え、自分の居るべき場所へと戻っていった。

 




(998)外星人ゾーフィ
ウルトラマンと同じ光の星からやってきた外星人だ。ひじょうに強力なスペシウムエネルギーの持ち主で、ウルトラマンをも超えるつよさをもつ。
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