シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
今更になりますが、本作で初開示となる要素は、基本的に作者が創作した架空のものです。
『Da……da……!?』
外星人ダダの目からライダーの姿が
『DADA……Da!?』
ダダの右頬に黒い拳が深々と突き刺さる。打たれたならば反撃を。そう思い銃を向けた場所に、仮面ライダーはもういない。
向こうもワープを使うのか? ダダは仕切り直しと部屋奥に移動するが、その着地点に、再びあの拳が待っていた。
「オラオラオラ、どうした? 俺はここだぜ。触れて見ろよ」
ここに在り続ける気配と、次々に打ち込まれる殴打を浴び、周囲で続く微弱な揺れを感じ、ダダはこの状況をようやく理解する。
とても信じられるものではないが、あの仮面の存在は、上下左右360度、壁・床・窓を蹴りつけ、跳ね続けているのだ。奴は消えてなどいない。ただこの目が捉え切れないだけだ。
『――一文字。角度修正右斜め三十度。小さくされた人たちがいる』
「はいよ、っと」
『――次いで左斜め五時の方角。奴のプラーナがそこで止まった』
「オウ」
しかも。ライダーは闇雲に跳び交っているわけではない。内に宿る『声』の助言に従い、障害物・縮小化された人たち・ダダの位置を掴み、微細な調整で
無駄な被害をもたらさず、確実に打撃を加えて来ている。
バッタの跳躍力を
(悪いなおかっぱ野郎。こっちにゃ最高の目と耳があるんでね)
顔。脇腹。腿。左腕。奴の足がたたらを踏んでいるのも視えている。最後の仕上げだ。奴の持つ銃を奪い、人質を返してもらう!
『Da……Daaaaaaaaaa!!』
ダダの震える手が銃を握り、引き金に指をかけた。当てられないのは先刻承知の筈だ。今更何をしようと?
答えは至ってシンプルだ。窮鼠猫を噛む。追い詰められた鼠ほど恐ろしいものはない。ダダは縮小化光線のレバーを『逆』にし、自らの身体に撃ち込んだ。
『――一文字。小さくなった人たちを』
「解ってる!」
ダダの身体が質量保存の法則を無視し、基地施設の分厚い壁を突き抜けた。ライダーは攻撃を中止し、即座に縮んだ人たちを掬い上げ、舞い散る瓦礫の盾となる。
『DaaaaaaaDaaaaaaaaaa!』
ライダーが瓦礫を払い除け、自らに落とされる影に振り返ると、山のように大きな白黒縞模様の体が目に飛び込んで来た。
「オーオゥオー。でっけぇなあ。俺に渡すくらいならってか?」
助け出した人々を退避させ、自分に足を向ける外星人を見、ライダーは驚くことなくそうぼやく。奴の放った大岩――、瓦礫の欠片は問題なく拳で砕けた。ならば体積が変わろうが結果は同じはず。
「図体がデカけりゃ勝てると思ったか? 逆だ。俺に『飛距離』を与えたことを後悔しな」
丁度、ここには奴の開けた陽の光差し込む大穴がある。こうも"準備"に誂え向きな状況もない。ライダーはぐぐと半身を沈め、脚の筋肉を縄のように盛り上がらせ、地表が割れんばかりの勢いで跳んだ。
「い、く、ぞ、ぉおおおお」
ベルトの風車が跳躍によって生じた
66M30。ダダの頭上、跳躍の最大距離に到達したライダーは、その頂点で勢いを殺さぬまま縦回転。十分に勢いがついた所で飛び蹴りの構えを取った。
瞬間、彼の背から放出されたプラーナがバッタの翅を思わせる形状に変化。猛烈なジェット気流を生じさせ、目標目掛け突っ込んでゆく。
『DaaaaAAAaDaaaaaAAAA』
無論、それはダダの目にも捉えられていた。先の閉所での高速機動と違い、勢いこそあれ、十分見て対応できる挙動であった。あれが自分の胸を穿たんと放たれたものなのは解っている。ダダは右手を伸ばし、空中のライダーを握り潰しにかかった。
『Da……dA!?』
しかし、ここでダダは想定外の事態に目を回すことになる。ひとつを受けて流せばよかった障害が、接敵の瞬間『ふたつ』に増えてしまったからだ。
何故増えた? 既に手を振ってしまった。片手で二つは抑えられぬ。もう片方は? 今からでは間に合わない。ではどうする、どうすれば!
『DaaaaaaaaDaAAAAAAAAAAAAA!!!!』
注意一秒怪我一生。受けに回り、選択を強いられたダダに必殺の一撃を防ぐ手立てはなかった。ライダーは半端に伸びた右掌をすり抜け、胸部にその右足を強かに打ち込んだ。
ダダはたたらを踏んでバランスを崩し転倒。頭から固いアスファルトの床に激突し、その衝撃は周囲一キロに渡って亀裂を走らせ、局所的に震度五の地震を引き起こした。
事前の見立て通り、胸を打たれ、頭部を強かに打ち付けたダダは手足を二・三ばたつかせた後、糸の切れた人形のように動かなくなった。
目算で60メートル近い巨体が空気の抜けた風船めいて萎み始めたのはその時だ。死した――。ないし意識が飛んだからか? ずいぶんと脆弱なシステムだな。回転の反動でバック転、そのまま基地の天井に着地した仮面ライダーは、その様子を目にし無感情にそう呟く。
『あれ……なにこれ、わっ、わわわ!』
『凄いぞ、カラダが……戻ってく』
『おかーさーん! あぁ、怖かったァ』
ダダによって穿たれた穴の下から老若男女の声がする。当人がそうなら被害者も同じか。皆元に戻り、各々この状況に困惑している。
『――本人に紐づけられた武装、もしくは認証の問題なのかもしれないな』
「まあ、人類の尺度で考えたって無駄何だろうけどよ。都合がいいのは良いこった」
これ以上衆目に顔を晒すのは本意じゃない。仮面ライダーは人質たちの無事を確認すると、愛機サイクロン号に跨がり、一気にアクセルを踏み込んだ。
ヴヴヴウンンという轟音と共に前輪をはね上げたサイクロン号は封鎖された横田基地の鉄柵を容易に突破。入れ違いで乗り込んできた増援を尻目に去って行った。
「ご苦労。手早い仕事ぶり、流石だな」
そのまま一息に駆け抜けてゆこうとしていたのに。ライダーの眼の前にはまたも見知った黒服。彼がここから出てゆくのを解っていたかのような位置取りだ。
「なんだよ。仕事は済ませただろ。少しは休ませろよ」
「行きかげの駄賃というやつさ。いや、実際こっちが本題で、今のは他の部署に恩を売っただけだが」
「何ぃ……」
相変わらず腹の立つ物言いだ。こちらは政治的な駆け引きで外星人と戦わされたのか。一歩間違えば縮められ、ダダの星に連れてゆかれたのは自分かもしれなかったのに。
「まあ落ち着け。君にもう戦いを強いはしない。お使いだよ。この先の話を聞けば、事の重大さを解ってもらえる筈だ」
「使い、だと?」
「そうだ。場所は解っている。君には『それ』を預かって来てもらいたい。ブツの名は――」
※ ※ ※
「キャンベル司令官。人を寄越してください。事態は収束しました」
監視塔の防犯カメラ、そしてかの巨大戦を肉眼で確認した神永は、もう大丈夫だと皆に伝える。
「神永さん。あなたどうして、あの超人のことを知っていたの」
米軍が慌ただしく動く中、浅見が尤もな疑問を述べる。積極的に聞こうとしなかっただけで、ここにいる誰もがそう思っていたことだろう。
「さっきも言った筈だ。同僚だと。禍特対に配属される前、俺は公安で”
「ショッ、カー……?」
「一体、何をする組織なんですか?」
「戻りながら話そう。幸い、ここからは全部米軍の管轄だ」
外星人による軟禁事件は終わった。基地内に残されたダダの死体は、日本政府に引き渡されることはないだろう。ここら日本であって日本ではない。禍特対が口を出せる問題ではない。
状況終了。あとは事情聴取と死体解剖。それでひとまず幕引き。ここに居る誰もがそう思い、油断していた。
『――"オオカミオーグ"よ、周囲の様子はどうか』
「基地内部に侵入。エコー診断。『目標物』は此処には有りません」
『――そうか。宜しい。一旦"巣"に帰れ。ここに無いとなれば、目ぼしい場所はだいぶ限られてくる』
「は」
開け放された出入り口から『堂々と』在日米軍基地に侵入したそれは、外観を睥睨した後、体内に埋め込まれた無線で"飼い主"にそう伝える。
何故誰もこの闖入者に気づかないのか。答えは簡単だ。『彼』の姿は非常に精巧な光学迷彩によって周囲に溶け込んでおり、肉眼で捉えることがかなわないからだ。
「ですが、死神博士。面白いものを拾いました。必ずやご期待に沿えるものかと」
ダダが所持していた銃を奪い、風を置き去りにする疾さで基地を脱した『それ』は、敷地から数キロ離れた地点で上掛けにした光学迷彩フードをはね上げる。狼の顔を機械的にアレンジメントした奇怪な仮面の異形がそこにあった。
(つづく)
(429)神永新二
禍特対に所ぞくする元公安のエリート。ウルトラマンに変身できる唯一の人物。
過去になにをしていたのか本人も語らずなぞが多いが、禍特対に配属される前は、『タキ』という名前でアンチSHOCKER同盟におり、仮面ライダーとともにオーグたちを追っていたらしい。
(559)オオカミオーグ
〇出身地
・北海道のしこつ湖
〇とくちょう
・一文字ライダーよりも素早く地をかける。
・全身にもうどくのきょう犬病ヴィルースがまわっており、爪で引っかかれるととてもあぶない。
・オーグメントにしてくれた死神博士につよい忠せい心をいだいている。
〇弱点
・ほ乳類との合成オーグなので、月をみるなどオオカミの習性に引きずられることがある。