シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※ ※ ※
「成る程……。人類救済をお題目に、人間をオーグメントにする地下組織、ですか」
「ああ。公にされていないだけでオーグも、その被害者も多数出ている。アンチSHOCKER同盟は、身から出た錆を内々で処理すべく貧乏くじを引かされた連中、というわけさ」
禍特対本部に戻る道すがら、神永はメンバーに対し、自らの過去を淡々と語った。
Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling(計量的な知能の埋め込み改造により持続可能な幸福を目指す組織)。通称・
その大元締めにあたる自律稼働の超・高性能人工知能は、作り主の『人類全体を幸福に導け』という命令を遂行するに際し、それを達成するには人類を余すことなく幸せにするのではなく、もっとも深い絶望を抱えた人間を幸福にするべきであると結論づけた。
SHOCKERはその財力と技術で絶望に打ちひしがれた人間を超人へと
「けどそれって、どうなるんですか?」
「オーグにされた人間は幸せかもしれないけど、周りは」
「そう。元が深い絶望を抱え、社会から爪弾きにされていた存在だ。そんな人間にチカラを与えれば、遅かれ早かれ騒乱の元となり、社会に甚大なダメージを与えることになる」
極端な話だ。個人の救済は行うが、それに際して発生する他者への被害は知らぬ存ぜぬ。いや、敢えて無視していると言うべきか。そんな存在を捨て置いて良い訳がない。
「で。あの仮面ライダーという存在は何だ」
「彼も組織によってオーグメントにされた男です。ですが洗脳処理をはね除け、自らの意思で組織と戦うことを決めたこちら側の最高戦力。アンチSHOCKER同盟の実態は、彼と我々の協力関係にあります」
正式名称第二バッタオーグ。バッタの高い身体能力をその身体に埋め込まれており、あの驚異的な跳躍力を可能にしている。
「神永さん。『第二』ってことは」
「あぁ、いまの仮面ライダーは"二代目"で。過去にもう一人……」
言いながら部署のロックを外し、禍特対本部に到着する五人。神永の口から重要なワードが出てきたような気がするが、扉を開けたその瞬間、斯様な興味はどこか遠くへ消え去っていた。
「よぉ。やっとご帰還か。待ちくたびれたぜ」
鮮やかな緑の仮面に赤の複眼。堅牢な防護服に身を包んだ異形の超人。今しがた、米軍基地で目にした仮面ライダーその人だ。彼が、禍特対班長席に踏ん反り返り、鍵のかかったこの部屋で自分たちを待ち構えている、だと?
「どうやってここに入ったッ」
殆ど反射的に田村、浅見の両名が腰に下げた拳銃を抜いた。いつでも引ける状態にも関わらず、仮面ライダーはそれに動じる様子はない。
「やめとけ。
「滝……えっ、僕!?」
今この諍いには無縁と思っていた『滝』明久は、初対面の異形に名前を呼ばれたじろいだ。
逆に、それを聞いた『神永新二』は、身じろぎ一つせず無言で二人に制止を求め、浅見らもそれに従った。
「久し振りだな一文字隼人。先の一件、速やかに解決してくれて感謝する」
「あんたの組織に頼まれてね。専門外だってのに、いい迷惑だ」
彼らの会話はぶっきらぼうだが、どこか開け透けな風にも聞こえる。成る程、親密な仲であることはよく分かった。
「何の用だ。君が進んで政府筋の施設に足を運ぶとは思えないが」
「そうだな。それを説明しなきゃあならないが……」ライダーはわざと勿体つけ、席を立つと。「お前のその、スカした態度が気に入らねえ。『タキ』ってのは偽名か? 俺は前に言ったよな。名前を明かさない奴は信用しないと」
「俺は公安の人間だ。名前が複数あったとしても不思議じゃないだろ。くだらない意地の張り合いで時間を無駄にするのか」
「あぁ、するね。俺は自分がすっきりするかどうかが一番の行動指針だ。そういう嘘ついて平然としてるやつを見て、首を縦に振ると思うか?」
そして、何やら複雑な因縁を抱えていることも見えて来た。傍から見ればそうなる気持ちも分からなくはない。あのような戦いを続け、共闘する中で、片方が片側を騙していたとなれば心穏やかではいられないだろう。
『――もう良い、キミでは話が進まない。僕が代わろう』
「おい。なんだよ。代わるも何も無いだろ」
互いに険悪な雰囲気の中、急にライダーが彼らではないどこかに向けて言葉を発し始めた。一体誰に? 疑問を向けようとするも、ライダーは己との対話に夢中でこちらを見てすらいない。
「わかったよ。解った。交渉事はお前に任せる」
彼の中で何か決着がついたのか、ライダーは不貞腐れつつも周囲を見回し、滝明久に視線を合わせる。
「おい。お前……。そうか、お前も滝なんだっけか」
「え……あ、はぁ。そうですけども」
ライダーは滝の方へと歩を進め、彼の右手首を指差すと。
「それ。右手のスマートウォッチ。ちょっと俺に貸せ」
「はあ?! なんスか急に! 何するつもりなんスか!」
「別に壊したりしねぇよ。"終わったら"すぐに返す」
そんなこと急に言われても。断ろうと拒否の意を示すが、ライダーの側も早く渡せと譲らない。とうとう滝の側が折れ、ウォッチを外し、おずおずと彼に差し出した。
「良し。ちょっと待ってろ」
ひゅう、と締め切った禍特対本部の中を風が舞う。何故かと皆が疑問に思う中、ライダーは借りたウォッチを滝に突き返した。
「もういいぞ。付けていい」
「はあ……」
一体この人は何がしたいのか。滝が不愉快な顔でスマートウォッチを腕に巻いた、その瞬間。
『はじめまして。僕は本郷猛。彼と同じ、仮面ライダー"だった"者だ』
「うわ、ぁあ!?!?」
時計が、喋った? いや、スマートウォッチなのだから、声くらい出ても不思議じゃないが、設定した音声は女性のそれだ。こんな穏当な声の『男性』ボイスには覚えがない。
「えっ、滝君なにそれ」
「名前とか付けてるの? ウォッチに」
「あ! これ、僕だけがおかしくなったわけじゃないんスね。皆にも聞こえるんですね? いやいやいや、おかしいでしょ! 何、ナニ、何!?」
『だから、僕は本郷猛。ワケあって体を持っていないが、君たちと同じ人間だ。怪しい者じゃない』
どうもこの声の主は、周囲で起こる狂乱をうまく認識していないらしい。いや、単に天然なだけか? どうにもなにかズレている。
「聞いての通りだ。本郷猛。組織のやつらとやりあって、身体を失い魂だけになった『最初の』仮面ライダーさ。いつもは俺のマスクの中に棲んでる」
それを、スマートウォッチに移動させた、と? 科学の範疇を超えている。SHOCKERの科学陣はこんなことまで可能なのか?
『一文字。君もだ。お願いをするなら、素性を明かして協力を得るのが筋だろう』
「生真面目だな、お前ってやつは……」
仮面ライダーは少し悩んだ後、やがて「わかったよ」と相棒の頑なさに折れ、被ったマスクに両手をやった。
カシャン、という音と共に下半分のクラッシャー部分が収納され、彼の顎が露出する。そのまま仮面を脱いで小脇に抱えると、若く精悍とした顔つきの男の顔があらわとなった。
「一文字隼人。表の顔はフリーのジャーナリスト。んで、裏の顔がこいつってわけだ」
「一文字……」浅見が訝しげな目で彼を見、「あぁ、あなたが"あの"! うそ、本物?!」
「浅見さん。『あの』ってどういう?」
「真実を暴くためならばらどんな危険な場所へも渡る神出鬼没のジャーナリスト。公安でも噂になってた人物よ」
ジャーナリストという職業は、如何にペンとカメラを武器にしようと、一個人では国家権力や暴力にはかなわない。だが彼は違う。如何なる暴力にも屈せず、如何なる権力にも忖度しない。公安のエリートさえ彼の行方は掴めなかったというのに。
「まあ。俺の話はどうでもいい。そもそもお前らにしてやる義理もない。というわけで」
仮面ライダー……一文字隼人は滝が腕に巻いたスマートウォッチを指差して。
『細かい説明は省こう。ここからが本題だ。僕たちはアンチSHOCKER同盟から、ここにあるものを君たちから受け取って来てくれと指令を受けてここに来た』
「ある"モノ"、とは?」
『昨年冬。ベーターシステム起動実験の副作用でこの世界に招いてしまった異界の怪物、
(777)一文字隼人
本郷猛に次いでバッタオーグ=仮面ライダー第二号にオーグメントされた青年。ジャーナリストとしてペンと写真で世の中の悪をあばくことを信じょうとしている。
サイクロン号にのって世界各地をかけ回り、どんなきけんな場所にある悪事ものがさない。
たくさんのスクープをとってきたけど、あつかってくれる新聞しゃやニュースサイトがいないのが最近のなやみだ。
(113)ゴジラ
ベーターシステムの実験ちゅうに、べつの世界から現れたおそろしいかい獣だ。
日米軍のさいしん兵器もものともせず、日本をかい滅のききに追い込んだが、ウルトラマンのちからでどこかほかの世界に送られた。
細ぼうひとつひとつがいきており、これを海で回しゅうした米軍は、これをもとにあたらしい兵器を作ろうとしたのだが……