シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン   作:イマジンカイザー(かり)

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6.大禍威獣のあとしまつ

 

「ゴジラの……細胞片?」

「そんなの……。だって、ゴジラはもう」

 今から三ヶ月ほど前の冬。人類はウルトラマンが託した基礎原理からベーターシステムの開発に成功。その起動実験をこの国で行った。

 実験は見事成功したが、その弊害として、こことは違う別次元から恐るべき禍威獣を呼び込んでしまう結果となった。

 それが禍威獣第九号・呉爾羅(ゴジラ)。ゴジラは日米海軍の最先端兵器を物ともせず東京を襲撃。駆け付けたウルトラマンが、間一髪別の次元に送り込んだことで首都壊滅という最悪のシナリオだけは免れた。

「そうだ。そういう話だったな」

 一文字隼人はそれはいい、と話を急かす。

「だが、それで終わりじゃなかった。日米の兵隊たちがバカスカ撃って、全部無駄になって。で、それが禍根を残す結果になった」

「それで、肉片が……遺ったと?」

「聞いたこと無いですよそんなの。私たち禍威獣対策のプロフェッショナルですよ。情報が入ってこないなんて」

 本当に何も知らないのか? 話は平行線を辿り、どちらも譲る様子はない。

 

「此処から先は、私が代わろう」

 動きのない禍特対本部に来客あり。室長の宗像が、この異常事態に驚きもせず、一文字たちをはっきりと見据えてそう言った。

「室長」

「えっ、あっ、でも。いますよ? なんかこう、緑のヒトが!」

「そうだ。私が呼んだ。言っただろ。コネがあると。かの一件、穏便に済ませてくれて感謝する」

 宗像は一文字の方を向き、深々と頭を下げた。彼ほどの男が感謝の意を示す程とは。今更ながら禍特対メンバーは『彼』の特異性を理解する。

「そういうのはいい。代わろう、ってのは」

「解っている。班長、パソコンを借りる」

 宗像はスーツのポケットにしまったUSBを挿し、24桁のパスワードを入力。部下たちと一文字にこちらに来るよう手招いた。

「遅れて済まない。ごねる部署を説得するのに手間取ってね。ここから先はトップシークレットだ。決して誰にも漏らさないよう約束してほしい」

 そう強く念押しした上で、中に入ったフォルダを展開。そこにあったのは百近い画像ファイルと九の動画ファイルだ。これが何を示すのか。彼らにもなんとなく読めてきた。

「一文字隼人君。その情報に対する答えはイエスだ。米の新装備はゴジラを斃せはしなかったが、その装甲を削ることは出来た」

 画像は時系列順に並んでいた。最初のファイルはゴジラ掃討作戦の二日後。調査の名目で東京湾内に入った海軍が、四・五十センチ程度のごつごつとした肉塊を拾ったところから始まる。

「禍威獣の研究は日米共同管理下の元行われているのは皆知っているな。これもその一環だ。明るみに出ず誰もが口をつぐんだのは、『これ』があまりにもヤバい代物だったと気付いたからだ」

 宗像は続く画像列にカーソルを走らせる。そこから一週間ほど経過しただろうか。舞台は海中から、どこかの研究施設に移っていた。

「ウルトラマンですら『追い返す』ことでしか解決出来なかった相手だ。その秘密を識れば、終わりの見えない禍威獣災害に何らかの糸口が掴める。米国の打診に大隈総理も折れ、引き取りと輸出を許可。研究は米国主導で行われ、そして失敗した」

「失敗……ですか?」

 禍威獣対策の専門家たる自分たちにさえ明かされなかった情報だ。既に嫌な予感しかしない。

「ここまでの話を踏まえ、これを見てくれ」

 宗像は画像ではなく右から三番目の動画をクリック。どこかの研究室らしい場所を映した記録映像が再生される。

 言語は全て英語だ。ゴジラの肉片を沈めた大水槽に、バルブを繋げて何かを与えようとしているシーンらしい。

「ちょっ、これって……!」

「室長。見たことのあるマークですけど。まさか」

 滝と船縁は、動画右端に映る丸い黄色に三つの三角形を押し込んだマークに声を上げた。それが何を意味するか、専門的な知識がなくとも、ここに属する人間ならば誰もが知っている。

「そう。プルトニウムだ。各種栄養、電気では目覚めを促す事ができなかったらしくてね。かの国らしいといえばらしい。そんな危険なものをポンと用意出来るのだからな」

 宗像はそこから三つ飛ばしにし、六つ目の映像を再生すると。

「その結果がこれだ。エネルギーの供給開始から一週間。どこから剥がれて、どの部位だったか解らない細胞片が、だ」

「いや、いやいやいやいや……。冗談ですよね室長」

「目……こっち見てるんですけど」

 一つ前の映像で握り拳大だった細胞片は目算で三メートル程度まで生長。何処を向いているのか、如何なる感情を秘めているのかわからない不気味な眼が、モニタ周囲の研究者たちを忙しなく視続けている。かつて、大戸島で目にしたものと同じだ。これが、僅か一週間の出来事だと?

「驚くのはまだ早い」室長は六つ目の映像を切り、八つ目に移動。眼のついた肉の塊は深海魚のラブカめいた流線の姿となり、水槽の中を所狭しと泳いでいる。

「うそ……でしょ……」

「室長、この映像は」

「先の三日後だ。研究チームも流石に恐れをなし、エネルギー供給を断ったのだが」

 言いながら、宗像は最後の映像をクリック。肋骨が発達し、脚の生えた悍ましい異形が、分厚い強化ガラスを激しく叩いている姿が映し出されていた。

「核燃料……止まってるんですよね?」

「ああ、止めた。付け加えるなら、先の映像の翌日がこれだ」

「いやいやいや、ヤバくないスか? 水槽、ヒビ入ってるように見えるんですけど」

「割れたよ。この一時間後に奴は研究棟に侵攻。水棲から陸棲に変化する前に、誘導弾五発で殺処分したよ。逃げ遅れた研究員三人を犠牲にな」

 これが、科学の傲慢さが行き着く場所か。次いで宗像が示した画像には、アリゾナの荒野に横たわる、ゴジラに"なるはずだったもの"の死体が残されていた。

「要するに、だ」

 なれど、彼らに感傷に浸る暇などない。一文字隼人はこの画像に渋い顔を向けつつも、先に進めと顎で促す。

「あの細胞はちょっとした欠片であろーと、ヒトが手入れすると禍威獣になってしまう。知識人ぶった連中が手元に置いておくには危険な代物だってこった」

 話はまだ枕の段階。この事故と何故仮面ライダーが結びつくのか、現段階では全くわからない。

「それを踏まえてここからが本題だ。俺は少しばかり耳が良い。神永(そいつ)からSHOCKERの話は聞いたな? 連中がそのゴジラ細胞を狙ってる。奴らの手に渡ったらどうなるか。いちいち説明しなくても解るよな?」

「え……」

 ようやく、点と点が線に繋がり始めた。故に、敵対者である彼が処理に赴いたという訳か。

「いや、ちょっと待ってください。ゴジラ細胞って、根こそぎ米国が持ってったんじゃあないんですか?」

「ウチに寄って許可取る理由は何よ」

 細胞は輸出され、アリゾナで研究開発をしていたのだろう。なら渡米してそちらで交渉すれば良いではないか。至極尤もな疑問に対し、室長の宗像がばつの悪そうな顔でここに割って入った。

「実は……だな。日本にもあるんだ。凍結処理を施して、ここの……地下に」

「はあ?!」

「えっ!?」

「室長、一体どういうことですか!」

 声を荒げる部下たちの気持ちも尤もだ。今しがたこれが危険な代物だと説明されたばかりなのに。それが今、この建物の中に? どうしてそんな無謀がまかり通るのか!

「私もね。私の立場で……反対はしたんだ」宗像はこの反応を予想していたのか、煮えきらない顔と声でたどたどしく言葉を継ぐ。

「しかし、学者連中や色々と……利権が絡んじゃうと……。うちは基本金食い虫だからさぁ……。そこを攻められるとイヤとは言えないんだよねえ……立場的に」

 彼はこの禍特対の室長だ。殆ど現場に出ない代わりに、長として政府各省庁との折半を取り仕切る役目を担っている。その彼が、ここまで言葉を濁したともなれば。

「承知しました。そういう事情なら、我々からは、何も」

 まとめ役たる田村は先んじてそう返し、部下たちにも同意を求める。私利私欲のためで無いのなら、これ以上彼を責め続けるのはお門違い。皆、無言で首肯する。

「おぉい、話は終わったか?」この集まりの中、唯一の外様たる一文字は、話の折を見てそうぼやく。

「そういうワケだ。さっさとそいつを渡せ。お前たちとしても、職場の下に危険物が眠っているなんて御免だろ?」

 実際、一文字隼人の言う通りだ。こんなものを放置して気持ちよく仕事ができるわけがない。

「無論。引き渡す」宗像が迷いなくそう返し。「私がここにいるとは『そういうこと』だ。官邸とは後で話し合って納得させるよ」

 改めて言おう。彼は現場と官庁とのパイプ役だ。現場の無茶な要望を、各省庁にゴーサインを出させるのが室長たる彼の務め。彼がそう宣うなら間違いはない。禍特対メンバーは再度首肯で彼に従う意思を示す。

「OK。それじゃあ案内を」

 

 ――RRR……RRR……

 

 諍いなく終わってよかった、と胸を撫で下ろそうとしたその瞬間。着信を示す無機質なビープ音が禍特対オフィスに鳴り響く。一体誰だ? 各メンバーの卓上電話ではない。では誰だ?

「オイオイオイ。なんで俺の電話が鳴るんだ」

 一文字隼人は羽織ったダスターコートの中を探り、しまわれていた傷だらけのスマートフォンを取り出した。当然ながら向こうは非通知。だが予想はつく(・・・・・)。つくからこそ奇妙なのだ。

『――交渉の最中に済まない。タチバナだ』

「お前。電話や電子メールは盗聴されてるんじゃなかったのかよ」

 

 ビルから遠く、遥か下方でドン、重く鈍いという音がしたのはその時だ。交通事故だろうか。気になってブラインドカーテン越しに外を見た滝は、そこで起きた事態に目を剝いた。

「なんで……トラックが、腹をさらしているんだ……?」

 この建物のすぐ真下で、中型運送トラックが縦に半回転し、四輪を空回りさせている絵面が目に見えた。横転ならまだ解る。だが『前転』とはどういうことだ? 何か穴に引っ掛かって蹴躓いたか? トラックを引っ掛ける穴とはなんだ。

 

『――奴らに先手を取られた。このタレコミそのものが罠だった。本当に申し訳ない』

「詫びはいらねぇ。何が起きたか話せ。緊急事態か?」

『――コード・レッドだ。SHOCKERのオーグメントがゴジラ細胞を奪いに来た。もう、そこまで来ている』




(354)禍特対もたたかうぞ
SHOCKERの幹部、オオカミオーグのこうげきを受け、一文字ライダーがたおれてしまった。禍特対の神永、浅見、田村はかれをまもるため、SHOCKERのオーグメントにたたかいをいどむ。
『君は俺のことが嫌いかもしれないが、今だけは、俺たちを信じてくれ』


(854)ハチサソリオーグ
SHOCKERの死神博士がつくったヒトとハチとサソリの三しゅ合成オーグメントだ。ツインテールのみぎとひだりにハチのちゅう射針とサソリのどく針をつけていて、そのどくはコンクリートのじめんもグズグズにとかしてしまう。
どくがつよすぎてあたまがおかしくなり、こまかいめいれいを聞いてくれないのがたまにきず。
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