シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
※※※ 遡ること、五分前 ※※※
「ちょっと、ちょっと待ちなさい」
「ここは防災庁の庁舎ですよ。入庁には身分証の提示を願います」
神永らが籍を置く防災庁庁舎には朝から晩まで常駐交代制でふたりの警備員が配されている。彼らに身分を証明し、次いで中で機械的に再度の証明。禍威獣災害に限定とはいえ、一時的に行動の有無を握れる職務だ。セキュリティが厳重なのに越したことはない。
「あぁら、あらあら。あたくしの歩みをお止めになるの? ずいぶんなご身分ですこと」
"それ"は白と黒のツートンカラー、胸元を大胆に開いたシースルードレスの美女であった。長い栗色の髪をツインテールに括り、たわわと実った豊満なバストを惜しげもなく見せ付けている。
「ま。止めようが止めまいが構いませんけど」
"それ"は幾重にも連なるフリルに覆われたスカートを揺らし、紅いヒールをカンと鳴らす。警備員の顔は不審と困惑で続く対応を決めあぐねていた。
もしもこの時、与えられた暴力を行使できていたら。腰に提げた電磁警棒で、彼女にすぐさま飛び掛かっていたならば――。否、所詮無意味か。『あれ』は成人男性ふたり程度の力でどうにかなる代物ではない。
「貴方がたも、この建物も。わたくしの邪魔するもの一切合切。消し去って差し上げますから」
"それ"は背を反り勢いよく顔を、長く伸びたツインテールをしならせ、後方に追いやった。
再び顔を上げた時、警備員たちは一手遅れたことを後悔する。
「うっ……?」
「え……あ?」
敵と見なし、腰の警棒を手に取るがもう遅い。しなりを伴って帰ってきたツインテールの先にはそれぞれ蜂と蠍の毒針がマスク同様装着されており、それが警備員らの腹に深々と突き刺さっていた。
悲鳴を上げる暇さえない。注入された『毒』は五秒とかからず全身に伝播し、十秒で体組織の腐敗がはじまり、十五秒で骨も残らず消え去った。
「あぁん、もう。少しは抵抗しなさいよう。こんなんじゃ全ッ然、楽しく無いじゃあありませんの」
ハチとサソリの仮面を被り、口元だけを露出させたそれは、自らの『毒針』を自身の立つ地面に突き立てる。最早これは毒ではない。アスファルトの地表を溶かし、刳り、その下にある装甲板さえも穿ってゆく。
「仕掛けは上々ですわよ。お出になってェ、『オオカミ』さぁん」
かの異形の声に応じ、その近くで何もない『空《くう》』が揺れた。ヒトひとり分の奇妙な揺れは、仮面の異形が迷いなく開けた大穴に飛び込んでいった。
※※※ そして、現在 ※※※
『――一文字。高濃度のプラーナが二つ。真下に居る』
滝の持つスマートウォッチがひとりでに輝き、設定した覚えのない声で喋り始めた。一文字隼人のマスクから滝のウォッチに移動した本郷猛のプラーナが、自分たちに似た反応を察知したのだ。
「おいおいおいおい。今回は荒事はナシだって言ってたじゃねぇかくそッ」
何故・なに・誰のせいはこの際どうでも良い。一文字は即座に席を立ち、宗像の方を向くと。
「なぁおい。ゴジラ細胞が安置されてるのはどこだ」
「この施設の、地下二十階だ。エレベーターで地下に降り、そこから三つの認証を」
「ンなもん待ってられっかよ」場所が分かればそれで十分。一文字は脇に抱えたマスクを被り、電子ロックされた出入り口を『蹴破って』出て行った。
「確かに、彼の言う通りだ」去る一文字を尻目に、田村班長はそう呟いて。「室長。我々も彼の援護に向かいます。構いませんね」
「勿論だ」かの細胞の危険性を話して聞かせたのは自分だ。止める理由はどこにもない。「有事の際は発砲を許可する。頼んだぞ」
「了解です」田村は神永と浅見に目配せし。「二人は俺と地下へ。船縁と滝はここで待機。室長、陸自に応援要請を願います」
「任せろ」
田村は小さく肯くと、部屋奥のロッカーを開け、その中で八桁のキーコードを入力。ずらりと並んだ拳銃の中から二丁を選び、一方を背に、もう一方を右手に構える。
「浅見君。覚悟はいいか」
「まさか、この部署で銃を使う事態に出くわすなんてね」
互いに警視庁公安の出身だ。銃を使うことに忌避感はない。田村と同じく二丁を携え、三人は開け離された部屋を出ていく。
「室長、神永さん、浅見さん」
「どうか……お気をつけて」
滝ら非戦闘員の激励に、三人は無言で首肯。エレベーターの元へと駆け出した。
「地下に降りさえすりゃあいいんだろ」
エレベーターに乗り込んだ仮面ライダーは、その腕力ひとつで天板を強引に開け広げ、『ハコ』の上に飛び乗った。その紅い瞳で遥か下方を見やる。巧妙に隠されてはいるが、最下部の床の色が他の材質と違うことを見破った。
「最短距離、だッ」
ライダーは十五階建て相当の距離に臆せず、脚から勢いよく飛び降りる。落下の速度に錐揉み回転を加え、形だけの地表を通過。
そこから四枚の非常用シャッターを次々蹴破り、ダイナマイトの炸裂めいた爆音を轟かせ、最下部フロアへと辿り着く。
「お邪魔するぜ、っと」
まるで引き戸を開けるかのように、仮面ライダーは分厚い扉を押し広げ、他と隔絶されたフロアに足を踏み入れた。
天井まで届くほどに高い大棚と数え切れないほどの小引き出し。それが開架された図書館めいてずらりと並んでいる。
明かりが無ければ手元も見えないような暗さだが、今回に限ってそれはない。この区画の中央に大穴が開いており、そこから夕陽が円状に差し込んでいる。
「来たか。仮面ライダー」
視界の奥、開け放されたままの引き出しの近くで『もや』が
(冗談だろ。何のための迷彩だよ)
あれが組織の開発した光学迷彩ローブであることは疑いようがない。だからこそ一文字ライダーはその意味を図りかねていた。ここに押し入り、細胞を奪うのが目的なら、何故自分に声をかけるのか。
「自己紹介しておこうか。俺はSHOCKERのオオカミオーグ。"死神博士"が造りし最高傑作だ」
透明のローブを脱ぎ捨てて、夕焼けの茜色にその姿があらわとなる。狼を模った厳しい仮面に、灰色に黒の差し色の入ったトライアスロン・アスリートめいた装束。両手両足から伸びた鋭利な爪。名は体を表すの良い例だ。
「必要ないことまでペラペラと。そいつはお前、余裕か?」
「そうだ。貴様を斃し、これを博士の元に持ち帰る。それが我が使命」
奴が小脇に抱えている筒は――。考えなくても解る。獲物は既に奴の手の中。こちらとしても奴を逃がすわけにはゆかなくなった。
「あぁ、そうかい。そんなら……全力で邪魔する」
急降下からの錐揉みでプラーナは充分圧縮した。やるなら今だ。今しか無い。一文字隼人は紅い瞳を輝かせ、臨戦の構えを取った。
「ふふふ。そうだ。そうでなくてはな。来い、仮面ライダー」
こちらもそれが当然とばかりに、研いだ爪をギャリンと鳴らす。我が主に証明するのだ。賊の排除など自分にとっては造作もないのだと。
ふたりのオーグメントは睨み合ったまま向かい合い、一方は跳躍のために腿の肉に縄のような筋肉を盛り上がらせ、もう一方は両手の爪を真正面に構える。
「いま」
「だ!」
ひゅう、と大穴から風が吹き込んだその瞬間。両者は残像すら残さず交錯し、互いに位置を入れ替えた。
着地し、先に立ったのは――。
(554)オオカミオーグと死神博士
『よぉ〜っしよしよし、よくやったぞオオカミオーグ』
目当てのゴジラ細胞をてにいれて、死神博士は上きげん。てがらを立てたオオカミオーグをねこかわいがりしている。
オオカミオーグは死神博士をとてもそんけいしているけれど、まるでペットのようなかわいがりをするこの時だけはあまり好きではないらしい。
(753)おおあばれ、レッドキング
『さぁ出てこいウルトラマン、街のひとびとがどうなってもいいのか?』
死神博士のあやつるかい獣レッドキングが街をおそう。逃げるひとたちをふみつけ、押し潰すひきょうなやり方に神永新二のいかりがばくはつ。がんばれウルトラマン、かい獣をやっつけてくれ!