シン・仮面ライダーvsシン・ウルトラマン 作:イマジンカイザー(かり)
「が……はっ!」
互いの爪と拳が交錯し、位置を入れ替え、先に立ったのは仮面ライダーであった。しかし、彼の右脇腹には防護服を貫通した真一文字の傷がある。
「他愛無い」翻って、オオカミオーグに傷はない。ライダーからワンテンポ遅れ、悠々と立ち上がる。
「この……野郎ッ」
今度はライダーが先手で仕掛けた。上体を沈めて跳ね、右手の手刀を見舞いにかかるが、オオカミオーグには届かない。
「技術は常に進歩している」オオカミは二打目を躱してまたも位置を入れ替えた後、ライダーに背を向け言い放つ。「貴様が最新鋭機だった時代など、我々から見れば既に過去。俺は、死神博士が造りし哺乳類合成型の最高傑作。勝負はやる前から視えている」
「そう……かよ」
右に次いで左腰にも傷を作られ、流石に一文字も理解せざるを得なかった。奴の言う通り、基本スペックでは向こうの方が上だ。死神博士。SHOCKERの技術屋か? 自分がスピードで遅れを取るほどとは恐れ入る。
(だっ……たら!)
ここまではほんの小手調べ。ここも米軍基地と同じ障害物の多い閉所だ。利用しない手はない。仮面ライダーは棚から棚へと跳ね回り、オオカミの死角を狙う。
向こうが性能差で攻めるなら、こちらは自分の得意を押し付けてやるまで。七跳躍目でオオカミの背後を取り、握り拳を見舞わんとするが、それより早く敵の裏拳が、仮面ライダーのマスクを激しく打った。
「ぐぉっ……おっ、マジかよ……!」
「何度も言わせるな。勝負は既に見えている。あとは貴様がどう死ぬか。それだけだ」
紅い視界が上下左右に激しく歪む。オオカミは意趣返しだと言わんばかりに壁を蹴りつけ、縦横無尽に跳び回る。
「ぐっ……! おお、うっ!」
目で向こうの挙動が追えない。おおよその位置に拳を置くも、それさえ読まれて躱される。ライダーの防護服に、黒の手袋に、ブーツに、痛々しい切り傷がひたすらに刻まれてゆく。
「滅茶苦茶やりやがって。こんなもの……。効いてねぇぞォ」
確かに素早い。現状打てる手立ては何もない。だが同時に、決定打となり得る一撃を貰っていないことにも気付く。たかが服を裂くつむじ風。こんなもので倒せると思われるのは心外だ。
「効いてない……。ハ、お前にはそう視えるか。だが、既に貴様は終わっている。その腹に手を当ててみるがいい」
腹? 言われ反射的に腹部に手をやる。一体いつだ? 大気中のプラーナを圧縮し、戦闘能力に還元するベルトのバックル部に、真一文字の切り傷が出来ているではないか。
「だから、何だってんだ」
「そうだな。我々オーグメントは体内のプラーナを使い果たさない限り死すことはない。だが、これで貴様は新規にプラーナを取り込み、圧縮することは出来なくなった」
何だ? この余裕、膠着状態だというのに。奴は何がしたい? 何を待っている?
「そろそろ違和感を感じる頃じゃないかね仮面ライダー。切り傷の痛み以外で、その身を蝕む苦しみを」
この疑念の謎が解けた。と同時にライダーの膝ががくんと揺れる。身体に力が入らない。なんだこの痛みは。なんだこの震えは。オーグメントになって、風邪のひとつも引かなかった自分が、今になって何故。
「俺は狼のオーグメントだ。我が主死神博士は、単にその特性を移植しただけでなく、更なる付加価値を俺にお与えくださった」
視界がぼやける。奴の顔が三つに見える。奴は一体何をした!?
「狂犬病を知っているか。イヌ科の生き物を死に至らしめ、ヒトもその猛威に震える病だ。俺はこの身体に野生のイヌ共の数百倍のヴィルースを内包している。この爪に裂かれるとはそういうことだ。貴様はもう、終わりだ」
組織の最高傑作を謳うオーグメントが、ただ疾いだけのタイプであるはずがなかった。触れればそれだけで詰みとは恐れ入る。ここまでに何発貰った? あれからどれだけ時間が経った? 頭に霞がかかったかのように判然としない。
「これが同胞を葬った裏切り者の末路か。他愛のない」
命令されたゴジラ細胞は今も小脇に抱えたまま。左手の爪だけで仮面ライダーを無力化せしめたオオカミオーグは、無感情にそう呟き、この空間を出んとする。
カン、と仮面に銃弾が当たり、弾かれたのはその時だ。撃たれた方を見やる。エレベーター。三人のスーツの男女。それぞれが拳銃の引き金に指をかけている。
「勇気と無謀を履き違えるな、人間」
オオカミオーグは避けることなくそちらを観、禍特対の三人にそう言い放つ。彼らが来ていたことはわかっていた。敢えて撃たせた。そんな攻撃に意味がないと分からせるために。
「今貴様たちが気にすべきは俺じゃなく、そこで転がっている敗者じゃないのかね」
言って指差した先にあるのは、狂犬病を発症し、横たわり身を捩る仮面ライダーの姿だ。
「一文字隼人。まさか、君が敗けたのか」
神永新二は驚きに目を見開き、倒れ込んだライダーに手を貸す。ダメージではなく、別の事象で弱っていることは手に取るように解った。
「もうここに用は無い。その負け犬を連れてさっさと
上体を深く沈めて跳躍し、大穴の壁を蹴りながら去る瞬間。彼は暗闇の中で何らかのハンドサインを送っていた。何に対する合図だ? 答えは直ぐに解った。ここにはもうひとり、地表を抉って孔を作った、恐るべきオーグメントが潜んでいた。
「うふ。うふふふ。赦しが出たわ。出たわったら出たわ。何もかも全ぇん部、私の毒で溶かしてあ、げ、る」
蜂と蠍の半々仮面。超猛毒で防災庁のセキュリティーを強引に突破したハチサソリオーグ。彼女の黄と赤のオッドアイが、禍特対生身の三人の姿を捉えた。
(798)おそいかかる再生オーグメント軍団
SHOCKERのずのう、人工知能アイには、これまでにつくられたオーグたちのデータがすべてのこされている。死神博士はこのぼう大なデータからライダーが過去にたたかったオーグたちをあらたに作り出したのだ。
だが、無理やりオーグメントしたので元ほどつよくなく、自意識もほとんどない。
(545)こんなところでやられてたまるか
「一文字隼人、何をする」
「止めてくれるな。こうするしかない」
ウルトラマンが大ピンチ。病院でやすんでいた一文字ライダーはぼろぼろの体で屋上に登り、落下してプラーナを取り入れようとする。
いちかばちかの賭けだ。仮面ライダーは復活できるのか?