エロゲーみたいな世界だが、私(ロリ)は日常を謳歌する   作:音佳霰里

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①主人公の家族とかの話
②その辺の主婦から見た主人公の話
③ているちゃんから見た主人公の話

の!三本立てでお送り致します。


B面

 

 ―――ピンポーン。

 

『幼木』と書かれた表札の家に、スーツを着た大人が1人、訪ねてきた。

 

「はーい、今開けまーす」

 

 そう言って、客人を出迎えるのは幼木あやかの母、『幼木てんま』。○十代とは思えない程の美貌を持つが、二児の母である。

 

「あら、近衛さんじゃないですか。お疲れ様ですー」

「幼木さん、どうも。本日もお話を伺いに参りました」

「どうぞどうぞ、上がってください!」

「では、失礼します」

 

 客間にて腰を落ち着けた2人は、先程まで見せた社交的な(近衛と呼ばれた女性に表情の変化はなかったが)顔から一変、真剣な表情になって、話を始めた。

 

「ではまずは、お子さんについての話ですが..」

「みたまはいつも通りです。あやかも、最近はすごく落ち着いていますよ」

「なるほど。あやかさんが最近トラブルに巻き込まれたとかは...?」

「いえいえ、全然。本人も中学の頃のことは黒歴史みたいに思っているらしくて。聞いてもあんまりいい返事はしてくれませんね」

「はは、そうですか...。いえ、何も無いならそれが一番ですよ。特にあやかさんは『鬼の血』が流れていますからね...。もちろん、みたまさんも気にかけるべきですが」

 

 実は幼木家には、ある伝承があった。

 それは、何世代かの内の、ふたなりでは無い女性には鬼の血が流れていて、その血を引くものは普通の人間では有り得ない程の力が発揮されるのだ、というものである。

 

 幼木あやか本人は、転生者特有のなろう系チートだと考えているが、そんなものでは一切無い。

 

 しかし、彼女が小中学生の頃に行った行動は、この血による力があってこそ、出来たことであった。

 

「やっぱり子供には、無事でいてもらうのが一番なんですけどねぇ..」

「最もですね..」

 

 そうしみじみと呟く2人の顔には、子を想う大人としての思いが、確かに刻まれていた―――。

 

 

 

 

 ―――「おっ、幼木さんだ..」

 

 決して静かだとは言えない電車の中。誰かがそう呟いたのが、嫌によく聞こえた。

 

 車窓から外を見ると、いつも通りの無表情で自転車を漕ぐ、幼木あやかちゃんが居た。

 

『幼木あやか』。その名前は、この町に住むものなら誰もが知っていて、―――誰もが、畏怖の対象とする者の名前だった。

 町の老人たちは当然のように知っているし、今私が抱きかかえている幼い子供だって、『悪いことをしたら幼木あやかに叱られる』と言われて育つ位には、この町での彼女の認知度は高い。―――もしかしたら、町を超えて市の人間でさえも。

 

 彼女に関する噂なんて、その辺の商店街を歩くだけでもおなかいっぱいになるくらいには事欠かない。

 しかも、その中に根も葉もない物しか無いのかと言われれば、絶対に違うと言えるのがまた厄介だ。

 

 例えば、たまたま町にお忍びでやって来ていた強盗団のメンバーをボコボコに殴って捕まえたとか、実は瞬間移動が使えるとか、荒唐無稽にしか思えないような噂話が多いが、これは殆ど真実だったりする。

 

 強盗団のメンバーを捕まえた話については、細かい所は違うが、大筋の話は大体合っているし、瞬間移動についての話は、彼女が使うのは瞬間移動ではなく、馬鹿げた脚力だ、というのが真実だ。

 ...そもそも、走っている電車に、ロードバイクでもないただのママチャリで、しかも立ち漕ぎさえせずに並走出来ている時点で、彼女の身体能力はお察しの通りだ。

 

 どうやらここ数年は、彼女に関する話を聞かないみたいだが、彼女の妹を名乗る人物が人助けのような事をしているという話は、上の娘から流れてきた。

 

 ...何年か前までは、町全体が彼女の話題で溢れていたが、ここ最近ではそれもすっかり落ち着いて、嬉しいような悲しいような。...でも、あんな化け物じみた力を持つ女の子が野放しにされていたのも、それはそれで怖い。

 

 ―――車窓から彼女の姿が見えなくなるまで、そんな事を考えてみたりした。

 

 

 

 

 ―――私、尾野田ているには、気になる人がいる。

 気になる、と言っても、色恋だとか、そんなものでは無い。

 

 確かに彼女自身は気づいていないかもしれないが、彼女はクラスの子、いや、学校全体の子たちからもすごい人気を誇っていて、彼女が何かをする度、その一挙手一投足に、ものすごい視線が集まっている。

 

 とはいえ、普段から聞くその悪名のおかげで、私以外に彼女に話しかける人は誰も居ないし、周りでヒソヒソと彼女に関する話をしている人がいても、彼女は無関心を貫いているため、本人の誤解めいた認識が正されることが無いのが、非常に厄介だ。

 

 彼女は、毎朝同じ時間に登校する生徒が多いんだな。なんて言って笑っていたけど、それは半分合っていて、半分間違い。

 

 私は彼女よりも早く学校に来ているので、よく分かる。

 上から見ると、彼女を中心に一定の距離を取って、円を描くようにして囲っているのがよく分かる。

 

 ―――その子たちはあなたに近づきたいのだと、それでも自制しながら必死に日常を演出しているのだ、と、彼女に告げてあげたくなる。

 

 自己評価の低い彼女は、『まさかー』なんて笑って、否定するのだろうけれど、残念ながらそれがホントの事。

 

 この自意識のすれ違いに、彼女はいつ気付くのだろうと、私は毎日、モヤモヤしながら彼女に話しかける。

 

『不動の寡黙』。

 

 それが高校に入ってから、あなたに付けられた渾名。

 本人は絶対に気づかないし、周りが彼女にそれを告げることも、今後ないでしょう。

 

 だからこそ、私は彼女のことが気になっているし、きっとあなたに話しかける人なんて、私以外居ないだろう、と思っていた。

 

 

 ―――そしてある日、彼女に話しかける人は2人になった。




以上、短編終わり。

こういうタイプの勘違い系のやつが増えて欲しいですね。
掲示板形式もなんだかんだ流行ったんだからさ。
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