キバナとリーグ職員がダブルな地方へ行くそうです 作:想像力が足りたポケトレ
ザックリとですがイベント戦です。設定だけ考えて小説はザックリ書きました。
オリジナル地方らしさを少しでも楽しんでいただければ幸いです。
PokeTubeで密かに話題になっている動画チャンネル『バラト地方公式チャンネル』。
その動画一覧にある「【初回】大救済クエストinナドの森【生放送】」の公開を多くの視聴者が待ち望んでいた。
そして真っ黒な待機画面からマクロコスモス・ネットワークのロゴマークが浮かび出る。いよいよだ、と視聴者はワクワクしながら画面に食い入る。
バラト地方のロゴマークに切り替わり、直後に映るはキバナのドヤ顔ダブルピースであった。
『おいっすー、バラト地方に出張中のキバナ様だ!待たせたなー!』
『お前ら速攻で弄ってくんなぁ!少しは勝利を称えてくれよぉ!』
どいつもこいつも!と不貞腐れるキバナにまた揶揄いのコメントが増えていくのを、ドローンロトムを操作しているリーグ職員は苦笑いして見ていた。
彼の隣にはハガネールトラックが鎮座しており、運転席に座るクダリが「ボクも行きたかったなー」と不貞腐れている。2人はチェンナタウンの電波塔付近でお留守番だった。
街の人々がデスクトップPCを中心とした機器を物珍しそうに眺めるのを無視して、リーグ職員はキーボードを操作して3基のドローンロトムを遠隔操作する。生放送は始まったばかりだ。
―――
「オレ様は今バラト地方のナドの森に来てるぜ、そして見ろ! これがナドの森のエネルギースポットだ!」
ブゥン、と飛行音を発して画面が変わる。深い森の中を飛び回りながら、太陽の光に照らされた巨大な薄紅色の花と、こちら側(ドローンロトム)を睨むメガカイロスの姿を映し出す。
「オレ様より初見のメガカイロスに優しいの可笑しいくね?」
パッと画面が変わり、キバナさんの怪訝そうな顔がドアップで映し出される。
どうやらドローンロトムは3基飛び交っているらしく、先程の画面とは別の個所を撮っているドローンロトムが画面端に映っていた。
「とにかくだ、今日はバラト地方の大救済クエストをやっていくぜ! メインはこのキバナ様と―――コイツらだ!」
そう言ってキバナが両腕を伸ばし、引き戻すと3人の少年少女らが抱き寄せられる。
「いきなり引っ張らないでください! さっきから何ですか貴方は!」
1人は、迷惑そうにキバナを見上げる、眼鏡を掛けた生真面目そうな少年。
生粋のバラト人か、肌は褐色で、黒髪をオールバックで纏めていた。どこかのポケモンスクールの生徒会長だと言われたら10人中9人が納得する、そんな人物だった。
「これドローンロトムだよね、うわテンションあがる~! うぇ~い見てる見てる~!?」
1人は、楽し気にカメラ目線でピースサインを向ける、紫のイヤリングを付けた如何にもチャラい少女。
海外の血を引いているのか、こちらは肌が白い。金髪のパイナップルヘアーというインパクトのある髪型をしているが、その明るい笑顔が彼女の人の好さを物語っている。
「こ、こんにちわ」
1人は、いきなり引き寄せられて戸惑ったままドローンロトムに挨拶する、ボブカットの少女。
白に赤のグラデカラーという独特的な髪色をしており、こちらは二人と違って「上京したばかりの田舎娘」といった感じだ。彼女もバラト生まれか小麦色の肌をしている。
「あー見えない見えない、後半のコメは見えてなーい! てなわけだ、打ち合わせ通り自己紹介してくれな!」
とか言いつつ彼らを抱擁してた腕を離すあたり、キバナも気にしていた様子。
「確かに事前に話を伺っていますが、初めての大救済クエストだというのに呑気に自己紹介など!」
「多数決で決めたんだから文句いわな~い! Lv1なんだし気にしない気にしない!」
「そうだよ。折角、えっと、なまホウトウ?するんだし。新しい事やってみたいな」
「それを言うなら生放送ね~。全国中の人々にアタイらというポケモントレーナーの雄姿が届けられるんだよ!」
文句を言う少年、それを適当に宥めるパイナップル少女、新しい事に興味津々な紅白少女と反応は様々。
そんな三人を見て「青春だね~」とキバナが口を漏らす。
「じゃあ一番はアタイから! イッシュ地方生まれタミルタウン育ちのハスでーす! 所謂ワルってヤツだぜぇ?」
ニヤリとカメラ目線で笑う少女・ハス。既にモンスターボールから出していたであろうか、ツタージャとゾロアが彼女の体を登り、同じくカメラ目線でニヤリと笑った。
「ほら、次々! 未来のチャンピオン目指してるんでしょ、こんなトコロでビビっちゃお終いだよ!」
ハスは悪戯っぽく笑いながら、グイグイと画像の中心になるように紅白髪の少女の背を押す。押された少女はアワアワ言っていたが、覚悟を決めたように口を結びワニノコとタタッコを纏めて抱き上げる。
「あ、アーシャです! 夢はでっかく、バラトリーグチャンピオンです! 頑張ります!」
「アーしゃんやるぅ! じゃあ最後は―――」
「解っている……私はタミルタウンのジュナと申します。 代々バラト地方の指導者として活躍してきた先祖に恥じぬよう、何事にも全力で挑む所存です。
未来のチャンピオンというよりは、バラト中の困った人々を助けられるような、そんなポケモントレーナーになることを夢見ています」
そういってジュナはドローンロトムの前で綺麗なお辞儀を見せる。それに続くようにヒコザルとリグレーが彼の足元で同じようにお辞儀する。
「個性豊かな自己紹介サンキューな! てなわけで、これからバラト地方特有のイベント・大救済クエストを4人で―――
「オレも来たぞ!」―――どひぇぇぇっ!?」
いつの間にか背後で仁王立ちしていたライダースーツの女性……バラトリーグ四天王のシャタバリが叫んだ事でキバナ、そしてタミルトリオが驚愕する。
「初心者の君達とキバナ、そしてそこのドローンロトム越しに見ているだろう視聴者の諸君に、このシャタバリが大救済というものを教えよう!」
「気を楽にすると良い」と頷くシャタバリに対し、タミルトリオはバラトリーグ四天王の登場にワイワイ騒ぎながらも「お願いします」と揃って教えを乞うた。
キバナもいきなりの登場に驚くも、ゲストとはいえ大救済クエストの初心者には違いないので軽く頭を下げる。
シャタバリからの簡単な説明によると以下の通り。
1.シュギョーポケモンをアバレポケモンの群れから、バトルや障害物を用いて守り抜く
2.4か所の開けた場所からポケモン達が2匹ずつ出てくる。基本ダブルバトル
3.大救済クエストで出せるポケモンは1人2匹まで。味方とのタッグバトルは1人1匹
4.最後に出てくるアバレポケモンを倒せば大救済達成。シュギョーポケモンから報酬を貰える
「エネルギースポットの守り手としてシュギョーポケモンに認められる人数は4人まで、ポケモンは計8体まで。これより多いとシュギョーポケモンに敵と見做されてしまうんだ。
オレは四天王の証でもある【さきもりのあかし】という貴重な道具を所有しているので例外だ。しかし大救済クエストに直接参加できず、指示や警告がメインとなる」
シャタバリが解説する間に、淡く光る巨大な花の雄蕊から出る光の粉がキバナ達に降り注ぐ。
「途中で群れの勢いが様子見の為に止まる時があるので、その間に付近の街からの支援を受ける。この場合はチェンナタウンの人々が資材の補給や回復を行ってくれる」
あれがそうだ、と木箱を指さす。そこにはキバナが所有しているツインズバッジと同じマークが刻まれていた。
「中には回復アイテムの他、ポケモンの進行をある程度制限できる『しょうがいぶつ』を作り上げる資材が幾つかある。
これを使ってまずはポケモンの行く手を阻めるきのさくと、落ちれば暫く動けなくなるおとしあなを作って設置してみよう」
シャタバリの指示の下、木片を小道具で加工し、簡素なバリゲードと穴を掘って布をかぶせただけの落とし穴が完成。エネルギースポットの周辺にいくつか設置する。
「アバレポケモンの目的はエネルギースポットを中心とした破壊活動だが、諸君らが相手するのはエネルギースポットの恵みを目的とした残党だ。
よってシュギョーポケモンを弱らせようと群がってくる。勿論メガカイロスも迎撃するが、エネルギースポットを傷つけない為に手加減している状態だから、倒されるのは時間の問題だ。
アバレポケモンより先にシュギョーポケモンが倒れた場合、アバレポケモンのみならず周辺のポケモン達が恵みを根こそぎ奪い去り、クエストは失敗となる」
まぁこれは防衛戦の演習のようなものだが、と緊張する少年少女らを励ます。気にしすぎは毒だぞ、と。
「因みに確認されたアバレポケモンは―――アリアドスだ!」
シャタバリは大胆にも自らの谷間に手を突っ込み、そこから細く長い巻物を取り出して広げ、画面の皆に出現ポケモンの一覧を見せつける。
中央に大きく描かれたアリアドスを見てアレコレ意見を述べる少年少女だが、キバナは今も微かに揺れている谷間に釘付けだった。
「よ、よっしゃ! オレ様はOKだ! お前ら何か質問あるかー?」
「おっけー!」
「私からはありません」
「大丈夫、です!」
スマホロトムでログを横で見ていたのだろう、誤魔化すようにしてキバナが問いかける。
対するアーシャ達はそれぞれの意気込みを見せつける。腕を組んでいたシャタバリも満足そうに頷く。
それに呼応するかのように森が騒がしくなり、明確な敵意が周辺から此方へ向けられる。
「最後に言っておくが―――これは演習だが、何かを、そして誰かを守る戦いである!」
「では―――大救済を開始する!」
咆哮のような号令を放った直後、3基のドローンロトムが散開しエネルギースポットを中心に飛び交う。
4方向の開けた場所から現れる、2匹1組の多種多様なポケモン達。それらに対し、エネルギースポットを囲む4人のトレーナー達が立ちはだかった。
「よっしゃ落とし穴におちた! 手が空いたからそっち行くぜ!」
「お願いしますキバナさん!」
「うぇぇぇイトマルきっつぅ! ジュナ、パスパス!」
「今行く! ハス君は新しい『きのさく』を作って欲しい!」
「イワコザルとマンキーが抜けたぞ、メガカイロスに襲い掛かってる!」
「いま行きます! やるよワニノコ、タタッコ!」
「すまないヒコザルがダウンした! げんきのかけらを貰うぞ!」
「なるはやで! マンキー出てきたからこっちヤバいよ~!」
「ちと対処が間に合わねぇな……一回きりだがしれいのふえを使うぞ!」
「「「頼みます!」」」
―ピピーッ!
「シャタバリ参上! いくぞチャーレム!」
「……よし、気配が薄れたな。ハーフタイムだ、休憩はいるぞ~!」
「ぐへぇ~づがれだ~! 飲み物ちょうだ~い!」
「チェンナタウンの人が見えた、新しい物資が届けられるはずだ」
「ジョーイさんも来てるね。ポケモンを回復してもらおうっと」
「来たぞ、アバレポケモンのアリアドスだ……いやでっけぇな!?」
「キバナさん、私と共に迎え撃ちましょう! ハスくんとアーシャくんは他を!」
「あいあい~! あちしは『きのさく』を追加で作っとく!」
「じゃあ虫ポケモンは私が相手しとくよ!」
「おいおいこのアリアドス『つるぎのまい』してきやがった!」
「ヒコザル『さるのまい』! キバナさんのアリゲイツをサポートするんだ!」
「あっちヤバそう~! ホーホーもいるし、『リフレクター』されたらヤバイって!」
「ハスちゃん、あと1組倒したら念のため私達も行こう!」
―――
紆余曲折あれど、ようやくアバレポケモンのアリアドスが瀕死となり小さくなった―――故に!
『大救済、達成ー!』
4人のポケモントレーナーが勝鬨を上げる! いつの間にか現れたシャタバリも満足そうに頷き、メガカイロスがふわりと飛んで喜ぶ。
「皆、ご苦労だった! では自然の恵みを受け取ろう!」
シャタバリがそう言うとメガカイロスが巨大花の上を飛び交う。するとメガカイロスと花が同時に淡く輝き、根本の地面からポコポコと植物や石が生えてくる。
オボンのみやフィラのみといった珍しいきのみ、けいけんアメが幾つか、そして掌サイズの石板。
「なんだこりゃ? 石ころ……いや石碑か? 『どくのまもり』って書いてあるが……?」
「それはわざストーン。使い切りのわざマシンのようなもの、ガラル地方のわざレコードと同じだな。太古の知識が凝縮された物で、ポケモンに渡すと記された技を会得できる。
『どくのまもり』は毒タイプのポケモン全てが覚えられる変化技で、2ターンだけ味方1体が受けるフェアリー・どく・むし・くさ・かくとうのダメージを半減させる効果がある」
「コレあればチェンナジムの攻略楽だったじゃん!」
キバナ渾身の叫びにハスとアーシャが驚くが、ジュナは次のジム攻略の情報を得て「なるほど」と頷く。
「では皆、大救済クエストはこれにて―――ッ!?」
シャタバリが締め括ろうとした直後、ハイパーボールを放り投げチャーレムを繰り出す。
ドローンロトムが慌ただしく動く中、同じく真剣な面持ちでジュラルドンを繰り出すキバナや、慌てだすハス・ワニノコを抱きしめるアーシャ、周囲を警戒するジュナの姿が次々に映る。
そして豪快な水音に釣られてカメラを向け、音源を探そうと彼方此方を見渡し―――上から巨大な水滴が落ちてくるのを最後に画面が途切れる。
「キバナさん? キバナさん!? 応答してください!」
リーグ職員が必死になってインカムに叫ぶも、帰ってくる音は雑音だけ。興味本位で見ていた周囲の人々も何事かと首を傾げざわめき始める。
その間にもカタカタと高速でキーボードを指ではじくも、画面は暗くなったまま。3基のドローンロトムの応答も無く、電波は通じていない。
「ねぇアレ、アレみて!」
いつの間にかトラックから降りて来たクダリがリーグ職員の肩を叩き、空を見るよう促す。
ナドの森の上空には、雷鳴轟く積乱雲が鎮座していた。
・所謂主人公組登場:オリジナル地方のポケモン二次小説を書くにつれて考えたオリキャラです。
・アーシャ:女の子主人公。男の子主人公なら「ラジープ」。インドではメジャーな名前らしいです。
・ハス:パイナップルヘアーが特徴的なちょいワル系女の子。カルマで言うなら混沌/悪……だけど普通に良い子。名前の由来はハス科の水生植物「蓮」。
・ジュナ:褐色肌に眼鏡の委員長系男この子。カルマで言うなら秩序/善なド真面目くん。名前の由来はターミナルリア属の樹木「アルジュナ」。「マハバラタータ」の英雄の名でもある。
・タタッコ:ミロバラ博士から貰う御三家とは別の、女の子主人公の幼馴染ポケモン。実は占い雑誌の選択次第で幼馴染ポケモンが変わるという裏設定を妄想していた。
・大救済クエスト:障害物や回復アイテムを使って立ち回ろう!
・アバレポケモンのアリアドス:ちょいとHPが高い程度ですが『つるぎのまい』を覚えているボスポケモン。しかも相方のサポ付き。初心者には厳しい相手だと我ながら思う。
・シャタバリさん:いつでもどこでも大救済にシャタバリさん!他の四天王も現場に赴くけど、主人公が出る大救済クエストだと必ず彼女。
・わざストーン:ダイマックスレイドのわざレコードみたいなもの。小さな石板だと神秘っぽいかなって。
・どくのまもり(オリ技:変化技)
味方一体が対象。味方がどくタイプ持っていると失敗する。エスパーとじめんが相手だとダメージ2倍とかにならない。
ノーマルを除いた11タイプ別に技があるが、例えば『れいのまもり(ゴースト)』でも格闘タイプのダメージを無効化にできない
・アクシデント:次の裏話で正体が明らかに。