【完結】ループ系魔法少女(n周目)   作:青のり

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最終話

 

 

「感動の再会のところ悪いけど、あたしたちもいるから」

 

 

 感傷に浸っていたのも束の間、声に反応して背後を振り返ってみればそこには3人の少女たちが立っていた。

 声をかけてきたのは野良魔法少女のリーダー、守野恵美。その後ろには医療班、白井蓮香。そして──雪乃。

 

 

「──っ! すみません、永愛さん! わたしのせいでなぐささんが……それに、中々言い出せなくて──

 

「蓮香が気に止む必要はない。あいつはそういう奴だった。本当に謝らなきゃ行けないのは……私。赦されるとは思わないけど、せめて一緒に戦わせてほしい」

 

 

 蓮香が凄い剣幕で謝ってきたことも驚いたが、中でも1番目を見張ったのは雪乃だ。面会に行った時は精神が壊れてしまっていたのに、以前と比べれば暗いにせよ、その瞳には強い意志が宿っている。私の知らない間に、一体何があったのだろうか。

 結衣ちゃんは知ってたのかと気になって横を見れば、彼女はイタズラが成功した子供のようにはにかんだ。

 

 

「あーもう! 今はそんなことしてる場合じゃないでしょ!」

 

「そ、それもそうだね。まだ戦いは終わってないし……結衣ちゃんもそれでいい?」

 

「はい、今はこっちに集中しましょう!」

 

 

 話している間も注意は切らさなかったが、魔人はこうやって盛大に隙を晒していたのにも関わらず何もしてこなかった。それは自身の力への絶対の自信からくる驕りか、或いは自分の攻撃を打ち消した結衣ちゃんを警戒してるからか。

 どちらにせよ、好都合だった。

 

 

「みんな、私だけじゃあいつに傷一つつけることすらできない。だから……手伝ってくれない?」

 

「あったり前だよ!」

 

「……勿論」

 

「今度こそ、永愛さんの力になりたいです!」

 

「……ありがとう」

 

 

 舞台は整った。

 元々想定していたメンバーではないけど、このメンバーなら何でも出来るような気がした。

 

 

「……相談は終わったみたいですね。では、続けましょうか」

 

 

 魔人はまだゲーム感覚でいるようだ。一ニ八の魔弾が私たちを圧殺せしめんと高速で此方に飛んでくる。

 でも、そんな攻撃はもう脅威でもなんでもない。

 

 

「結衣ちゃん!」

 

「はい、ホーリーレイ!」

 

 

 私の前に立った結衣ちゃんがそう叫べば、光は魔弾を呑み込み、全て掻き消した。

 そして間髪入れずに雪乃から支援魔法が、蓮香から回復魔法が飛んでくる。恵美は魔人に対して重力魔法をかけている。

 

 

「これなら──ッ【支援魔法(アイギス)──限界突破(リミットブレイク)】!」

 

 

 今日二度目の【限界突破】。

 蓮香の回復魔法を持ってしても身体が悲鳴をあげているのが分かる。でも、それでも──ッ! 

 

 

「はぁああああ!」

 

 

 魔人に接近し、なぐさのなんでも切れる魔法を模倣した大剣(クレイモア)を振り上げ──下ろした。

 

 

「──やったか!?」

 

 

 手応えはある。でも……足りない。

 何か、致命的なものが──

 

 

「──二五六」

 

 

 悪寒がした。

 咄嗟に背後に飛び、状況を確認する。

 すると、二五六の魔弾の嵐が先ほど私がいたところに現れた。そして呼応するように、結衣ちゃんの輝きが増す。

 今回も、その大量の魔弾は私たちに届くことなく掻き消えた。

 しかし──

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 流石の結衣ちゃんでもあの数を掻き消すのは簡単ではなかったみたいで、苦しそうに肩から息をしている。

 恐らく次は無理だ。仮に行けたとしても、このままじゃジリ貧なことは明白。

 

 私も結衣ちゃんの固有魔法が使えれば、この状況を打開することが出来るかもしれないのに──

 

 

「……!」

 

 

 そう考えて、ハッとした。

 何で私は結衣ちゃんの魔法を使えないと思っていたのだろうか。これまで、他の魔法少女の固有魔法を模倣して自分のものにしてきた。ならば、結衣ちゃんの固有魔法だって、きっと──

 

 賭けだった。

 模倣できる保証なんてない。だけど、何故か出来るような……そんな気がした。失敗すればこのまま何も出来ずに助けに来てくれた結衣ちゃんたちすらも殺してしまう。

 それは嫌だった。みんなを守りたい一心で願う。

 

 ほんの少しでいい。魔人に傷をつけられるようになるだけで。あの光の力が……結衣ちゃんの力が、欲しい! 

 

 そして──

 

 

「……で、きた」

 

 

 私は、賭けに勝った。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 その様子を見ていた木蔦はその場で起きていることが信じられなかった。

 ここで、初めて回帰者(タイムルーパー)である彼女の経験せしめなかった事態が起きたのだ。

 いや、最初にこれまでのループとは違う展開を生み出そうと佐々木結衣というこの物語の鍵を抹殺せずに放置するという選択肢を取った時点で未来は変わっていた。しかし、それでもこれまでは彼女の知っている世界と似通ったものであった。ちゃんと彼女の手の平の上で事は進んでいたのだ。

 それなのに、どうして最後の最後で計画が崩れてしまったのか木蔦には分からなかった。

 

 

「ま、まさか……佐々木結衣の魔法を模倣した? でも、この世界の永愛さんは自分の固有魔法が()()()()()()()()()()()()()だと勘違いしていて、本来の固有魔法である()()()()()()()()()()()には気づいていないはず……なんで? なんで? なんで?」

 

 

 木蔦はある世界線で一度魔人に勝ったことがある。経験を積んで最高戦力となった結衣を使い潰して木蔦自身は何とか生き残ることができたのだ。

 そして、その1ヶ月後に新たな魔人が都市へと侵略しきたことで絶望し、自殺した。

 

 そんな折、何も知らなかった永愛に救われたのだ。しかし、木蔦は知っていた。都市がスタンピードで崩壊することも、魔人を斃しても終わりがないことを。

 

 その時彼女に芽生えた感情──それが永愛と共に再度戦う意志であったのならば、木蔦にも永愛が諦めずに本来の力を取り戻すことができた理由が理解できたのかもしれない。

 

 だが──木蔦が選んだのは、永遠の時の中でただ1人永愛を歪な形で愛することだった。

 

 故に、木蔦は気づけない。認められない。

 最早既にこの世界が、愛する少女が救済の光によって彼女の手の内から離れていたことを。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 ……感じる。

 結衣ちゃんと同じ、不浄のモノを滅する力。

 

 それが、私の手の中にあった。

 結衣ちゃんとは形が違い、私のは大剣に纏わり付くように浮遊している。

 なけなしの魔力を注ぎ込めばその量に呼応して、いや……倍々に膨れ上がっていく。

 

 

「これが、結衣ちゃんの……」

 

「永愛、さん……?」

 

 

 私は衝動的に戸惑っている結衣ちゃんに抱きついた。深呼吸すると、結衣ちゃんのほんわかとした太陽のような匂いが鼻から身体の奥まで抜けていく。

 

 

「と、永愛さん!?」

 

 

 ああ、良かった。

 もう結衣ちゃんを離さないで済む。この力さえあれば。

 

 

「ありがとう、結衣ちゃん。すぐに終わらせるから見てて」

 

「──よ、よく分からないですけどいやです! 最後まで一緒に戦います!」

 

「え……」

 

 

 拒否されるとは思っていなかったから、思わず目を丸くする。

 

 

「後でどういうわけか教えてくださいね?」

 

「うん……分かったよ」

 

 

 どうやら結衣ちゃんも最後まで一緒に戦ってくれるみたいだ。まあその方が、私たちらしい。

 私と結衣ちゃんが再会して初めての共同作業。魔人討伐なのが少し癪ではあるけど、まあ悪くないかな。

 

 

「じゃあ行くよ! 結衣ちゃん」

 

「はい、永愛さん!」

 

 

 ──こうして私たちは、魔人討伐に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「はは、まさか本当に勝ってしまうなんて。……いや、認めない。認められるわけない。例え永愛さんに私がしてきたことがバレてしまったとしても、ここで終わらせるわけには──

 

 

 少女は壊れたように笑う。

 物語を修正するために、盤上の駒に自ら手を加えようとして──今の状態がかつて自身が望んでいた最良の状態ではないにしても、自分の追い求めていた理想に近しいものだということに気づいた。

 

 

「……違う、違う、違う……! 私は、なんでこんなこと──ッ!」

 

 

 かつて世界に絶望し、狂気に身を落とすことで自己防衛を成した魔法少女。その狂気(メッキ)が剥がれていく。

 

 

「ああ、そうだったんだ。私は……誰かに愛してほしかったんだ」

 

 

 その呟きは、勝利の歓声によって掻き消されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





夜、いつもの時間にエピローグ投稿します。
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