日間ランキングってしゅごい(小並感)
ここで彼女たちを助けたとしても、
そう理解していたはずなのに、居ても立っても居られなかった。
「……チャージ」
手のひらを翳すと魔力が集まる感覚がある。
そして、冷静に対象を定めて──
「──バースト」
放出。
勢いよく打ち出された魔力弾は途中で分裂。今にも結衣ちゃんとなぐさに襲い掛かろうとしていたトレント共を根元から吹き飛ばし、地面に叩きつける。
「なっ、なに……!?」
「ひゃっ!?」
その衝撃が近くにいたなぐさと結衣ちゃんにも行ってしまったみたいだが……見たところ所々傷はあるものの大きな外傷はなさそうだ。
結衣ちゃんも右足を怪我しているが、そのほかに目立った傷はない。
良かった、間に合った。
何の解決にもなっていないのは分かっているが、心の中は安堵感で満ち溢れる。
「野良の魔法少女さん……!?」
「野良……? 結衣ちゃんなにか知ってるの?」
「あ、ええっと……実は──
背後から話し声が聞こえる。
……これだけ話せるのなら大丈夫だろう。
安堵した私は結衣ちゃんとなぐさを背に残りのトレントに向き合う。
「……さて、どうしてくれようか」
私の固有魔法は死に戻り。
だから他の魔法少女のような派手な殲滅力のある魔法やなぐさのような強力な魔法は使えない。
私に使えるのは魔法少女全員が使える基礎魔法だけ。
実際に魔力弾で吹き飛ばしたトレントはもう起き上がってきている。私の魔法では圧倒的に火力が足りない。
だが、私には何度も世界をやり直して得た経験と知識がある。
皮肉にも肝心の魔人相手にはほとんど通用しなかったが、この程度の相手ならば問題はない。
「【
私がそう言うと、魔力で剣が形作られる。
なぐさのどんなものでも切れる剣と比べたらこれは剣の形をしたハリボテでしかない。下位互換だ。
だが──それで充分。
大剣を手にした私は駆け出した。
◆◇◆◇
圧倒的だった。
さっきまで苦戦していたトレントがまるで雑魚のように倒れていく。
トレントから放たれる枝や魔法の数々を全て紙一重で避け、接近。切り伏せる。それの繰り返し。
たったそれだけ。何も特別なことはしていない。なのに、なぐさはその動きに目を奪われていた。
──無駄がない。
極限までに効率を追い求めたかのような、無駄のない動き。全ての攻撃がトレントの急所となる核を捉えている。それはどこかなぐさの追い求めていたものに近く、その様はまるで蝶が舞っているかのようでその黒のローブとも相まって幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「やっぱり、凄い……!」
隣で結衣が声を漏らす。
実は結衣は今回が初めてではなく、初任務の日にこの魔法少女に一度救われているらしい。
( 1人で無事で帰ってきた時は驚いたけれど……そういうことだったのね)
無事に帰れたらそのことについて根掘り葉掘り聞くと決意したなぐさは、再びトレントと戦っている……いや、蹂躙している魔法少女に目を向ける。
野良の魔法少女。
それも、こんなにも強い。
政府所属の魔法少女は野良の魔法少女を総じて危険な者だと認識している。中でもなぐさは過去の事件からそれが顕著だ。
勿論善良な魔法少女もいないことはないが、政府の魔法少女をよく思っていない魔法少女が多い。だから任務の最中に出会した時に瞬時に判別できるようよく出没する野良の魔法少女はリストアップされ共有されている。
なのに、なぐさは知らなかった。戦闘能力と技術の高さから最近魔法少女として覚醒したという線は薄い。だとしたら、政府に見つからないように意図的に隠れていたとしか思えなかった。
何故今接触してきたのかは分からないが、近頃魔獣の数も増えてきたこともあって警戒するに越したことはない。
なぐさがそう結論づけるのと最後のトレントが抵抗虚しく地に伏すのは同時だった。
◆◇◆◇
無事に脅威を排除し、
「結衣ちゃん、大丈夫? たまたま通りかかってね、本当に間に合って良かっ──
「待ちなさい」
突然目の先に現れたクレイモアの剣先に、足が止まる。
こうなることは分かっていた。結衣ちゃんの……妹のためならなぐさは必ずそうするだろう。
だけど、いくら私だって仲間に剣を向けられるのはつらい。
勿論過去のループでも必ずしも政府側に立っていたわけじゃない。
……結局、そんなことは意味をなさなかったけど。
「……なぐさ先輩?」
「結衣ちゃん、下がって」
「でも……」
「いいから、今は私に従って」
渋る結衣を有無を言わせない態度で背後に下がらせたなぐさを見て、思う。やはりなぐさはなぐさ……例えその隣に立っているのが私でなくとも変わらないのだと。
ふと暗い感情が首をもたげたが、それを振り払ってなぐさと向き合う。
「……助けてくれたことには感謝するわ、ありがとう。でもあなたたち野良の魔法少女を信用することはできない。何故私たちを助けたの? 答えなさい。返答次第では──斬る」
「な、なぐさ先輩!?」
結衣ちゃんが唖然とした声を漏らす。
彼女は私と一度会っている。だから感謝はすれど警戒をするという選択肢がないのだろう。
……いつか誰かに騙されないか少し、心配だ。
なぐさの行動は正しい。
こんな森の中で偶然なんかあるわけがない。いくら助けられたからと言ってこんな怪しいやつを信用するなんてどうにかしている。それこそ結衣ちゃんのように天然なのか、危機管理すらできない馬鹿かの二択だ。
とはいえ、万全の状態ならともかく、今のなぐさは満身創痍。私がズルをしていることを抜きにしても私に勝てる可能性はない。そんなことはなぐさにも分かっているはずだ。
だが、なぐさは引かない……いや、引けない。背後に結衣ちゃんがいる限りは。そういう性格だ。
あの時も……そう。怪我した私を守るために無茶をした。その結果が、あの事件だ。
「変わらないなぁ……なぐさは」
「……何? なんで私の名前を知っているの?」
私の言葉になぐさは怪訝な顔をするが、構わず続ける。
「私は親友に……かつての相棒に借りを返しに来ただけ。あなたたち政府所属の魔法少女に不利益なことはしないよ」
「……何を言っているの?」
「そりゃ……分からないよね。ごめん、やっぱり今の全部忘れて。私はたまたまここに通りかかって、たまたま戦闘音が聞こえたからここに来ただけ……他意はない」
「なっ! そんな偶然あるわけ……!」
なぐさには私が何を言っていたのかさっぱり分からないだろう。それもそのはずだ。知っていることの方が……私の方がおかしいのだから。
この記憶は、感情は、思い出は、私にしかない。この世界のなぐさと私は初対面だ。
両手を頭の横に挙げる。
元よりなぐさと戦うつもりはない。私は彼女たちを助けに来たのだから。
……例えそれがただの自己満足だったとしても。
黙っている私に痺れを切らしたなぐさは、次の質問をする。
「……さっき結衣ちゃんから以前あなたに助けてもらったことを聞いた。そのことについて口止めされていたことも。それは何故?」
「……」
──あなたたちに会わせる顔がなかったから。
思わずそう答えてしまいそうになったがなんとか言葉を飲み込んだ。そんなこと、言えるわけがない。
再度静寂が場を支配する。
そんな緊迫した状況を壊したのは結衣ちゃんだった。
「もういいじゃないですか、なぐさ先輩! こんなことやって何になるんですか!」
「で、でも……」
「でもじゃないです! いくらなぐさ先輩でも怒りますよっ!」
「うっ」
結衣ちゃんの言葉になぐさは渋々とクレイモアを下ろす。
「……まあ良いわ。でも、悪いけど信用はできない」
「……うん、それで充分だよ」
また会えただけで、もう充分。
これで本当にさようならだ。
この世界でも、次の世界でも。きっともう会うことはない。
じゃあ、私はもう帰るから。
そう言ってあの誰もいない廃都市へ帰ろうとした時、背後から結衣ちゃんに引き止められた。
「あの……聞きたいことがあるんですけど!」
振り返ってみると、結衣ちゃんがぱぁと笑顔を咲かせ、詰め寄ってきていた。
「名前、教えてください! 前回は聞きそびれちゃったので!」
想定していなかった事態に、頭がフリーズする。意味が分からない。たった今まで、私たちは半ば敵対していたはずで。
「え……な、まえ?」
「はい、名前です!」
なまえ……名前?
判断に困った私は反射的になぐさの方に顔を向ける。
困ったような顔をしたなぐさは、私と結衣ちゃんを交互に見比べ……ため息を吐いた。
「はぁ……私も気になるわ、あなたの名前」
……良いのだろうか。
名前を教えるということは、繋がりを作るということだ。最初に結衣ちゃんを助けた時だって、もう会うつもりはなかったから教えなかった。どうせ最後には何もなかったことになることを知っていたから。
だが……良いのだろうか。今回は、期待しても。
正面を向くと、結衣ちゃんがフェアリーピンクの瞳をキラキラと輝かせ私の言葉を今か今かと待っている。
その様子に、思わず笑みが溢れた。
「ふふっ、私の名前は
この日、私は久しぶりに笑った。
なんか良い感じの雰囲気が流れてますが、状況はほぼ変わってないです。