【完結】ループ系魔法少女(n周目)   作:青のり

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いつの間にかUA一万突破してました。ありがとうございます! 
引き続き評価・感想頂けると泣いて喜びます。


04

 

 

 

 魔人を打倒する唯一の鍵。

 その可能性があるのは、イレギュラー的存在である結衣ちゃんだけだ。

 

 あの後結衣ちゃんの固有魔法を教えてもらったが、その効果はまさに魔法そのものの上位互換。やつらを殺すためだけに生まれたかのような固有魔法。

 

 もしそれが魔人にも効くのであれば……今度こそ勝てるかもしれない。

 私は魔人のことをよく知っている。

 

 絶対者であることからくる傲慢さ。

 私たち魔法少女を玩具のように見ている残虐さ。

 行動パターン、癖、趣味嗜好。

 

 文字通り、何度も死んで暴いてきた。

 未だに倒せていないのはやつの防御を突破できる火力がなかったから。

 

 だが、今回は? 

 結衣ちゃんがいる。

 

 魔獣特攻の魔法が使えて、誰にでも分け隔てなく優しい。

 きっと結衣ちゃんは私みたいな失敗作とは違う……この世界の主人公だ。

 きっと私をこの地獄みたいな世界から救ってくれる。

 だから、私はうだうだ悩んでないで彼女のサポートをすれば良い。

 

 そのはず……なのに。

 私の心が弱いから、まだ覚悟を決めきれていない。

 万が一にでも可能性があるのであれば、例えそれがどんなに小さかろうと、例えどんな手段を使おうともその可能性を掴み取ろうとしなければならないはずだ。どうせ今回が失敗でも、また次があるのだから。

 

 それこそ、いつものように政府に協力してなぐさたちと共に戦えば良い。野良の魔法少女だったことから最初は難色を示されるかもしれないが、私は彼女らのことをよく知っている。きっとなんとかなる。その途中で結衣ちゃんの固有魔法について検証すれば良い。それが最適解だ。そうするべきだ。

 

 ……そんなことは最初から分かっていた。

 だが、私は確認するのが怖かった。

 

 もしダメだったら? 効果がなかったら? 

 

 その時私は……どうすればいい? 

 

 それに、よく考えてみれば結衣ちゃんはこのループでのみ観測されたイレギュラー。最悪もう出会えないかもしれない。唯一の希望が潰える。そうなれば終わりだ。またあの先の見えない道を進まなければならない。

 

 結局、状況はなにも変わっていない。

 

 

「ああ、ダメだ……」

 

 

 1人になるとネガティブな思考が脳を汚染する。

 

 陽はこんなにも明るいのに、私の心はこの廃都市のように廃れ切っている。何の悩みもなさそうに明るく照っている太陽が今だけは少し恨めしく思えた。

 

 

 *

 

 

 結衣たち魔法少女の守護する都市。

 その中央に位置するビル──魔法少女管理局本部。

 その最上階。

 

 複数の魔法少女が集い、円卓を囲んでいた。

 

 

「やはりフォーマンセルの義務化は正解だったようです」

 

 

 堅牢なコンクリートの壁で仕切られた一室に、議会の進行役である少女の事務的な声が響く。明るい外とは対照的に部屋の中は薄暗く、お互いの姿は影を帯びている。

 

 

「確かに新人の生存率は上がったが……少々過保護過ぎやしないかい? 私らの時はそんなもの必要なかっただろう」

 

「今は新人の育成が最優先です。来るべき戦いに備えなければなりません」

 

 

 その政策に不安視する声に、やはり単一のトーンで答えが返される。

 

 彼女らは──魔法少女評議会。

 この都市の魔法少女の実質的な司令塔として機能している。つまりは、魔法少女の頂点。

 その椅子に座ることの許されている魔法少女はほんの一握り。一度も死ぬことなく実績と経験を積み上げた百戦錬磨の魔法少女だけである。

 

 

「またそれかい? 確か、スタンピードだったか。いつ起こるかだけじゃなくてそれが本当に起こるのかすらも分からないなんて、君の未来が見えるという魔法もいやはや難儀なものだ」

 

「……現に魔獣の数は増加傾向にあります。それに、私の固有魔法は厳密には未来予知ではありませんので」

 

 

 嘲笑するかような同僚の問いに、今度はムッとして答える少女。

 ヒートアップしてきた2人を見かねた別の少女が慌てて話題を変える。

 

 

「まぁ落ち着きなって2人とも。木蔦(こちょう)の未来予知? で助かったことだってあったじゃない。それはそうと、リストにない野良の魔法少女が出没したんだっけ?」

 

「随分と露骨な話題変更だねー、まぁあたしはどっちでもいいけど。詳しいことはエンカした本人たちに聞いた方がいいでしょ。わざわざ来てもらったんだしね」

 

 

 全員の注目がなぐさと結衣に集まる。良くも悪くも野良の魔法少女というのは関心の対象なのだ。2人は本来なら出席を許されていないのだが、この件について話を聞くために一時的に許可が出ていた。

 

 

「実際のところ、どうなのですか? なぐささん」

 

「……そうね、でも別に危害を加えられたわけでもなく、ただただ通りかかったから助けてくれただけみたい」

 

「へぇ……野良嫌いで有名ななぐさが珍しい」

 

 

 思わずそんな言葉が漏れるくらいにはなぐさが野良を憎んでいることは周知の事実だった。良くも悪くも。

 

 

「君はどうだい? 新米ちゃん」

 

「永愛さんは悪い人じゃ、ないと思います。助けてもらったのは2回目で、えっと……寝ちゃった時もあったんですけど何もされませんでした」

 

「ああ、君があの話題になってた初任務で遭難した子ね」

 

「そ、その節はお騒がせしました!」

 

 

 結衣との問答で心なしか場の雰囲気が良くなったが、そこに疑問の声が入る。

 

 

「はいはい! 質問! 君たちの任務場所は森林。たまたまで行くようなところじゃないよね。タイミングが良すぎるんじゃない? ほら、例えば途中まで隠れて見てて危なくなったから恩を着せるために助けたとか」

 

「ち、違います! 永愛さんはそんなことしません!」

 

「えー、それかもしかしたら全部自作自演で、本当は魔法で魔獣を操ってたりして──あいた!」

 

 

 頭を襲った突然の衝撃に、少女は涙を浮かべる。

 

 

火憐(かれん)、結衣ちゃんを揶揄うのはやめなさい」

 

「ちぇ、分かりましたよー」

 

 

 一癖も二癖もあるメンバーの揃っている魔法少女評議会にとってはこんなことは日常茶飯事。特段何かがあるわけでもなく何事もなかったように会話が再開される。

 

 

「で〜、その子はどこに住んでんのさ? この辺で私たちの監視が行き届いてない場所なんてないじゃない」

 

「旧首都圏」

 

「は?」

 

「旧首都圏……らしいわ。本人が言ってた」

 

 

 予想外の答えに、ざわざわと驚きの声が波紋する。

 

 

「ちょっ……首都圏ってあの首都圏? あんな魔獣がうじゃうじゃいるところに住んでるなんて、こりゃきな臭くなってきたなぁ」

 

「……なるほど。確かにあそこは私たちでも数週間に一度周辺を偵察する程度です。そこなら私たちに見つからずに潜伏できるのかもしれません……無論、それだけの戦闘能力があればという条件付きですが」

 

 

 万が一のために偵察しに行くと言っても、決して奥まで立ち入ることはない。それだけ旧首都圏というのは危険な場所だった。

 いくら野良の魔法少女でもそんな命知らずなことはしない。だから魔獣が増えすぎないよう監視してさえいれば良い。そんな共通認識が崩れた瞬間だった。

 

 

「これは、一度調査する必要がありそうね……」

 

「そうですね。ですがそうなるとその野良の魔法少女と面識のあるなぐささんと結衣さんは確定として、だれかもう1人必要です」

 

 

 得物に手を伸ばしてやる気を見せる者もいれば、めんどくさいことになったとでも言うように気怠そうに机に突っ伏す者もいた。そんな中、1人の少女が手を挙げる。

 先ほど結衣に絡んでいた少女だった。

 

 

「はいはーい! ボク行くよー。一回旧首都圏がどんな感じなのか行ってみたかったんだよねー」

 

「……遊びではないのですよ、火憐。今回の目的は報告にあった野良の魔法少女についての調査。戦闘は極力回避しなければいけません」

 

「分かってるって。流石のボクもそんなバカじゃないよ! なんで信じてくれないの!」

 

「普段の行いが悪いからですね……」

 

 

 無い胸を張って威張るアホを、進行の少女は冷たい目で見る。正直、この状況こそが自身の頭の足りなさを強調していることに気づいていない時点でお察しである。

 

 

「まあ、良いでしょう。これでも腕は確かです。なぐささんと結衣さんもそれでよろしいですね?」

 

 

 2人が頷いたのを確認した少女は、議論を次の話題に移す。

 

 

「では、次の──

 

 

 ここにいる全員が都市の最高戦力。それぞれ大事な仕事が割り振られている。故に、こうして集まれる時にある程度方針を決めておかないといけないのである。

 まだまだ協議すべき議題は残っていた。

 

 

 

 

 そして、数時間後。

 全ての議論が終わり、集まりは解散していた。

 

 だが閑散としている部屋にまだ1人、少女が残っていた。

 議会の進行役を担っていた、木蔦と呼ばれていた少女である。

 その顔には先ほどまでの真面目な面影とは一転、恍惚とした表情が浮かんでいた。

 

 

「あは、そんなところにいたんですね……永愛さん。早く戻ってきてくださいよ。今回はどんな表情(かお)を見せてくれるのか……待ちきれなくてイっちゃいそうです♡」

 

 

 身体を震わせ、全身から喜びを表現する少女の呟きはしかし、誰にも聞かれることなくコンクリートの壁に吸い込まれて消えていった。

 

 

 

 

 

 

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