【完結】ループ系魔法少女(n周目)   作:青のり

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 スタンピード。

 あるいは、魔獣の大進行。

 

 それは主にここ、旧首都圏を震源地として発生する。理由は単純。旧首都圏の大気中の魔力が原因だからだ。

 

 旧首都圏の大気中にはさながら飽和されたプールのように大量の魔力が隙間なく詰まっており、その濃度は他の場所の数段上である。当然、魔力をエネルギーとして発生し、魔力を喰らって成長する魔獣は旧首都圏を中心に発生し、強力な個体も一箇所に集まる。

 

 強力な個体は私たち魔法少女でも手に余る。

 また、魔法少女総出で定期的に魔獣を倒したとしても時期を少しだけ遅らせる程度の効果しかなく、魔獣の数は加速度的に増えていく。

 

 だから、スタンピードは避けられない。

 そして……ついにこのループでも発生の兆候が見えていた。

 

 最終的には私たち魔法少女が敗北することになるこのスタンピード。それは全部で三つの波からなる。

 

 その最初の波。

 これは大して問題ではない。

 最初だからか強い個体が少ない上に、そういう相手にめっぽう強い魔法少女がいるのだから。

 

 ──そう、思っていた。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 日課の見回りから帰ってきた私は思わずそんな言葉を発した。

 だが、私は悪くないと思う。

 何故なら──

 

 

「あっ、永愛さん!!」

 

 

 日課の見回りから拠点に帰還したらピンク色の物体がダイブしてきたからだ。

 

 

「え、え……結衣ちゃん?」

 

「はい!」

 

 

 そう、それは結衣ちゃんだった。その背後に目線を移せば、なぐさと火憐(かれん)もいる。

 

 ……え? 火憐? 

 

 思わず、二度見する。

 その名前の通りフレイムレッドのコスチュームを身に纏う、他の魔法少女と比べても華奢な身体。赤を際立たせ、主張強く揺れるネイビーのポニーテール。

 そして何より──

 

 

「君が噂の野良の魔法少女だね! ボクは朝比奈火憐! 気軽に火憐って呼んで!」

 

 

 自身のことを“ボク”と呼ぶ、少女にしては特徴的な一人称。

 政府の魔法少女にして、私の使う魔力弾の参考元になった()()()()()()()

 過去のループで私と共に戦った“仲間”の1人がそこに佇んでいた。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「──という事なんです」

 

 

 まだ困惑はしているが、取り敢えず結衣ちゃんから聞いた内容を整理する。

 

 端的に言えば、私は政府に警戒されているらしい。評議会での協議の結果、私を監視あるいはその人となりの調査が必要だという結論に至ったらしい。

 まあ……そうなるだろうね。旧首都圏はそれだけ危険視されている場所なのだ。野良が住み着いたなんてことは衝撃だったのだろう。

 

 一応私と面識のあるなぐさと結衣ちゃんでワンクッション置いて、本命の火憐が私が危険か否か判断するといったところか。

 

 

「つまり、私に敵意があるかどうか監視しに来たってわけだね」

 

「んー、まあ簡単に言えばそう……なのかな?」

 

 

 私の言葉に、火憐が少し首を傾げる。すると、慌てた様子の結衣ちゃんが寄ってくる。

 

 

「わ、私たちは信じてますから! ね、なぐさ先輩!」

 

「ええ……少し怪しいところはあるけれど」

 

「あはは、ありがとう2人とも」

 

 

 微笑んでフォローをしてくれた結衣ちゃんに礼を言う。何故だろう……結衣ちゃんといると胸がぽかぽかする気がする。自然と、口角も上がる。

 なぐさは……助けられたという事実と私が野良の魔法少女ということに両挟みにされてるという感じだろう。

 まあ、仕方がない。なぐさも複雑なのだ。

 

 

「そんなことよりも!」

 

 

 不意に火憐が私を見据えた。

 ……何故か、無性に嫌な予感がした。

 

 

「ここら辺、案内してよ。その場所について知るにはそこに住んでる現地人に聞くのが一番ってね!」

 

「げ、現地人って……」

 

 

 ……やっぱり。

 いや、まあ別にそれは良い。今すぐにやらなきゃいけないことはない。

 

 どうせスタンピードが発生することは止められないし、起こったとしてもここには火憐がいる。

 

 正史でもスタンピードの発生を察知できなかった魔法少女側は手痛い打撃を受けると思いきや、偶然現地に居合わせた火憐によって事なきを得た。

 

 ……思い返してみれば、そうだ。

 火憐はどのループでもこの時期にはここに来る。それぞれ理由は異なっていたとしても、必ず。

 

 その理由はあまり考えてはいなかったが、もしかしたら世界の強制力なるものが働いているのかもしれない。あるいは、ただの偶然か。

 

 まあ、それはどうでもいい……わけではないが、考えても分からないから置いておく。

 これは良い機会だ。火憐が負けることはあり得ない。ただ、火憐の固有魔法の使用にはチャージが必要となる。だから、それまでは魔獣の侵攻を防ぐ必要がある。もしかしたらその時に結衣ちゃんの能力の効果を確認できるかもしれない。

 

 彼女たちに希望を見出すかどうか決めるのは……それからでも遅くはないはずだ。

 

 取り敢えず、もうすぐとはいえ今日明日にスタンピードが発生するわけでもない。それに、拒否するのは何かを隠していると取られかねないし、拒否しても火憐の性格なら強行するだろう。

 

 

「うん、分かった」

 

 

 そういうわけで断る理由もなかった私は火憐の提案を受けることにした。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 じゃあ、まずは私の拠点周辺から。

 そう言って説明を始めた永愛と溢れ出る好奇心を抑えきれずにうずうずとしている火憐を横目になぐさはため息を吐いた。

 

 

(まさか、ここに来ることになるだなんて……)

 

 

 旧首都圏。

 永愛はその中でもここら一帯は比較的安全だと言っていて、来る時にそれも実感した。したが……不安は一向に無くならない。

 

 第一級危険区域に入ったことなんて数えられるほどしかない。だが、決まってその全てで何らかのアクシデントに見舞われてきた。

 

 そしてそれは今回も同じだろう。

 

 別に自分だけならいい。だが、ここには結衣もいる。

 本当なら断りたかったが評議会に呼び出されて指名付きで依頼されてしまっては無理だ。バラバラにならなかったのが不幸中の幸いか。

 

 以前の森──これは第二級危険区域だったが──での任務とは違ってここにはなぐさたちだけではなく、永愛と火憐までいる。2人ともなぐさと同等か、それ以上の強さなため戦力としては申し分ないはずだ。

 

 そのはずなのに──

 

 

(なんでこんなに……嫌な予感がするの?)

 

 

 なぐさは悪寒を感じて思わず大事な人──結衣へと視線を移す。

 

 魔法少女という存在は異端だ。

 普通の人間よりも丈夫な身体に、強靭的な生命力……そして何より魔法を使える。その中でもここにいるのは結衣を除いて上位に位置すると言えるだろう。その結衣でさえ日々成長していて、なぐさに追いつかんとしている。

 

 だが、だからと言って死なないなんてことはない。以前よりは減少しているとは言っても死者は出ている。

 

 ここにはあまり長時間居るべきではない。いざとなったら火憐を置いてでも都市に帰還する。

 ……たとえそれが評議会への裏切りになるとしても。

 

 なぐさがそう決意した次の瞬間──

 

 

 地面が、揺れた。

 

 

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