何故だ?俺が何をした?何もしていない。なのに何故、誰も俺を愛してくれない?
「・・・生まれてきたのが間違いか・・・」
寒い冬の中、吐いた息とともに呟きは消える。今は昼だというのに、俺の目に映る世界は暗い。マンションの屋上から下を見下ろす。ここなら死ねそうだ。どうやって柵を超えるか考えていると、急に寒気を感じた。下を見ると、白髪の美少年が立っていた。10階建てだからか、俺みたいのでも彼の強さを感じて、腰が抜けそうになる。今までの人生で1番、『死』を認識させられる。彼のつまらなそうな瞳が、俺を捉えた気がした。一瞬のことだったが、間違いない。俺は、彼の視界に入るぐらいには価値があるのだろうか?もしそうなら、生きることに意味はあるのかもしれない。彼が見えなくなった数秒後、ようやく屋上をあとにした。
そして、東京都立呪術高等専門学校に進学した。
入学して1年。桜はすっかり散って、視界が青々しくなり、セミの声が五月蠅くなった今日この頃。
「なかなか予定が合わなくて、すっかり遅くなりました。初めまして。2年の湖川千です。よろしく」
誰だお前という目で見てくる、たんこぶをつくった最強2人。完全に興味がなさそうな女の子。うん。今年の1年は厄介そうだ。夜蛾先生の眉間の皺が増えるのも分かるわ。
「2年?そんな奴いた?」
「こら、悟。一応先輩だぞ」
訝しげにこちらを見てくるのは、かの有名な五条悟。彼を諫めているのは、夏油傑。優等生に見えるけど、「一応」って言ってるし、コイツも碌な奴じゃないな。未だに興味がなさそうなのが、紅一点の家入硝子。
「どうせお前も雑魚だろ?」
「悟!すみません、湖川先輩」
噂通りに尖ってるね~。野良猫みたいだな。
「いいよいいよ。君らからすれば雑魚なのは本当のことだし」
正直に言うと、僕が弱いんじゃなくて、君らが規格外なんだけどね。
「先輩とか、敬語とかもいらない。湖川とか、千とか、気安く呼んでくれるといいな」
敬語使われるの面倒くさいし。
「分かってると思うけど、僕が君らに教えることは何もない。むしろ君らの迷惑になることの方が多いと思う」
「自虐キャラか?うっざっ」
「自虐じゃないよ。ただの事実」
「言っとくけど、弱い奴が生きていける程、世界は甘くねえぞ?」
「知ってるよ」
とっくの昔に痛感した。彼のサングラスから見える、蒼い瞳を見返す。
「じゃあ、何でここに居る?」
理由?そんなの簡単だ。
「死ぬ気で守りたいものがあるから」
あの日からずっと。
「はっ、少年マンガのヒーローきどりか?俺が嫌いなタイプだな」
「いい加減に、
「奇遇だね。僕もそのタイプは嫌いだ」
《吐き気がするくらいにね》
「へえ・・・」
少し興味が湧いたようだ。さっきまでゴミを見るような目に、好奇心が含まれた。
「改めてよろしくね」
作り物の笑顔で笑う。彼らとは良好な関係を築く必要があるから。