艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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 書(か)き溜(た)めていたものを投稿(とうこう)していきます。
 以下(いか)の注意事項(ちゅういじこう)を読(よ)んで自分(じぶん)に合(あ)わないと思(おも)った場合(ばあい)は、すみやかなブラウザバックをおすすめします。

 許(ゆる)す範囲(はんい)が広(ひろ)い人(ひと)向(む)けです。腹筋(ふっきん)の鍛錬(たんれん)をしたい、虚無(きょむ)を体験(たいけん)したい、貴重(きちょう)な時間(じかん)を無駄(むだ)づかいしたい、などといった人(ひと)にも向(む)いているかも知(し)れません。

「艦隊これくしょん -艦これ- 攻略 Wiki* 」を参考(さんこう)にしています。

 映像化(えいぞうか)した場合(ばあい)、鎮守府側(ちんじゅふがわ)のレイティングは公式(こうしき)4コマ程度(ていど)、深海棲艦側(しんかいせいかんがわ)はそれよりだいぶ高(たか)めです。読(よ)む側(がわ)の想像(そうぞう)や特殊効果(とくしゅこうか)などへの力(ちから)の入(い)れ方(かた)次第(しだい)では、さらに高(たか)くなる可能性(かのうせい)があります。

 自分(じぶん)のやりたいことはアレな映画(えいが)やアクション系(けい)作品(さくひん)や他(ほか)の方(かた)の作品(さくひん)などで既(すで)に表現(ひょうげん)されてしまっているように思(おも)えるので、何(なに)とクロスオーバーしていることにすればいいのか書(か)いている側(がわ)もわからなかったりします。

 この作品(さくひん)の一次創作物的(いちじそうさくぶつてき)な部分(ぶぶん)の他(ほか)は、サンプル扱(あつか)いです。

 書(か)いている人(ひと)は、
「映像化(えいぞうか)するならば、○○からやってきた□□型(がた)△番艦(ばんかん)でアンケートをとっておもしろかったら採用(さいよう)しましょう」
 だの、
「VFXをワカリウッドスタイルでやってはいけないのだろうか? 」
 などという意味不明(いみふめい)なことを思(おも)いつきで言(い)いかねないので、連絡(れんらく)をとらないほうが無難(ぶなん)かと思(おも)います。




第一話「平穏に不穏が忍び込む」

 島(しま)の海岸(かいがん)よりずっと海(うみ)に入(はい)ったところで、波(なみ)が白(しろ)く砕(くだ)けていた。

 浜(はま)の先(さき)の海(うみ)は少(すこ)し濃(こ)いめの青(あお)。だんだんと薄(うす)い水色(みずいろ)になり、波(なみ)の砕(くだ)ける向(む)こう側(がわ)は濃紺(のうこん)というより黒(くろ)に近(ちか)い。

 

 波(なみ)の砕(くだ)けている洲(す)は、サンゴでできた砂(すな)が海中(かいちゅう)から盛(も)りあがって丘(おか)になっている。ところどころに切(き)れ目(め)があり、そのうちの間隔(かんかく)があいた一(ひと)つに、一隻(いっせき)の小型船(こがたせん)が波(なみ)に揺(ゆ)られながら浮(う)かんでいた。

 形(かたち)は漁船(ぎょせん)というよりも、小(ちい)さなフェリーに近(ちか)い。

 

 見(み)る人(ひと)が見(み)れば、それを「長官艇(ちょうかんてい)」と呼(よ)んだだろう。それが、どういうものであるかも解説(かいせつ)してくれるに違いない。

 |船(ふね)の屋根(やね)とその上(うえ)に張(は)られた天幕(てんまく)のほかには、日差(ひざ)しを隠(かく)すものはほとんどない。島(しま)に生(は)えている植物(しょくぶつ)と建物(たてもの)、沖(おき)のほうに浮(う)かんでいる白(しろ)い雲(くも)くらいだ。

 

 波(なみ)がゆったりと上下(じょうげ)する海(うみ)の彼方(かなた)から、機械(きかい)が動(うご)くような連続(れんぞく)した音(おと)が響(ひび)いてきた。海(うみ)よりも明(あか)るい空(そら)に、シミのような小(ちい)さな影(かげ)が現(あらわ)れる。

 プロペラ機(き)が二機(にき)飛(と)んでいる。前(まえ)のほうを飛(と)んでいる一機(いっき)は、前後(ぜんご)に細長(ほそなが)い胴体(どうたい)の前側(まえがわ)に、プロペラが一(ひと)つついている。

 

 両翼(りょうよく)の下(した)には大(おお)きなフロートがそれぞれ一(ひと)つずつ。両翼(りょうよく)の上下(じょうげ)と胴体(どうたい)後(うし)ろの左右(さゆう)には所属(しょぞく)を示(しめ)すマーク。

 垂直尾翼(すいちょくびよく)には、白(しろ)い塗料(とりょう)で書(か)かれた数字(すうじ)とアルファベット。

 

 長官艇(ちょうかんてい)から双眼鏡(そうがんきょう)で眺(なが)めている者(もの)がいれば、この鎮守府(ちんじゅふ)に所属(しょぞく)する偵察機(ていさつき)であるとわかったであろう。零式水偵(れいしきすいてい)という機種(きしゅ)であることも判別(はんべつ)できたはずだ。

 

 後(うし)ろのほうの一機(いっき)は、左右(さゆう)の翼(つばさ)にプロペラが二(ふた)つずつついている。その外側(そとがわ)に、機体(きたい)に比(くら)べて小(ちい)さめのフロート。

 胴体(どうたい)は、前(まえ)から見(み)ると渋柿(しぶがき)か真桑瓜(まくわうり)を思(おも)わせる形(かたち)をしている。機体(きたい)の下(した)のほうは明(あか)るい色(いろ)で塗(ぬ)られていて、飛行機(ひこうき)というよりも船(ふね)の底(そこ)のようだ。

 

 零式水偵(れいしきすいてい)より後(うし)ろのほうを飛(と)んでいるにもかかわらず、機体(きたい)はずっと大(おお)きく見(み)える。

 

 二式飛行艇(にしきひこうてい)──二式大艇(にしきたいてい)とも呼(よ)ばれている。

 

 零式水偵(れいしきすいてい)は長官艇(ちょうかんてい)の姿(すがた)を見(み)つけたのか、翼(つばさ)を少(すこ)し上下(じょうげ)に振(ふ)った。海(うみ)の上(うえ)を滑(すべ)るように駆(か)け抜(ぬ)けると、プロペラの回転音(かいてんおん)を高(たか)く響(ひび)かせながら再(ふたた)び空(そら)の彼方(かなた)へと飛(と)んでいく。

 二式飛行艇(にしきひこうてい)は高度(こうど)を下(さ)げて、サンゴ礁(しょう)の外側(そとがわ)の海(うみ)にプロペラにかかるほど高(たか)い水(みず)しぶきをあげながら着水(ちゃくすい)した。しばらく海面(かいめん)を走(はし)って速度(そくど)を下(さ)げると、プロペラの速(はや)さを調整(ちょうせつ)して方向転換(ほうこうてんかん)をする。

 

 サンゴでできた洲(す)の切(き)れ目(め)を通(とお)り抜(ぬ)け、内側(うちがわ)に入(はい)り込(こ)んでエンジンを止(と)める。長官艇(ちょうかんてい)がエンジンを始動(しどう)させ、二式飛行艇(にしきひこうてい)に近寄(ちかよ)っていく。

 

 しばらくして、飛行艇(ひこうてい)前方(ぜんぽう)の出入(でい)り口(ぐち)が開(ひら)き、女性(じょせい)が姿(すがた)を現(あらわ)した。

 

 いや、正確(せいかく)に言(い)うと女性(じょせい)であり、女性(じょせい)でないとも言(い)える。その“女性(じょせい)”は、艦娘(かんむすめ)と呼(よ)ばれる存在(そんざい)だからだ。

 また、長官艇(ちょうかんてい)後部(こうぶ)の船室(せんしつ)出入(でい)り口(ぐち)から姿(すがた)を現(あらわ)した“女性(じょせい)”も、飛行艇(ひこうてい)から姿(すがた)を現(あらわ)した“女性(じょせい)”と同様(どうよう)に艦娘(かんむすめ)であった。

 

 ──この世界(せかい)において自(みずか)らを“人(ひと)”と称(しょう)している存在(そんざい)は、遠(とお)い過去(かこ)に陸(りく)に住(す)む者(もの)と海(うみ)に棲(す)む者(もの)に別(わか)れた。両者(りょうしゃ)の間(あいだ)で、様々(さまざま)な理由(りゆう)による争(あらそ)いが何度(なんど)となく起(お)きた。

 長(なが)い時間(じかん)と数多(かずおお)くの争(あらそ)いのうちに、陸(りく)に住(す)む者(もの)の中(なか)に「妖精(ようせい)さん」という“何(なに)か”を見(み)ることのできる者(もの)が現(あらわ)れた。「妖精(ようせい)さん」を見(み)ることができる者(もの)は、海(うみ)に棲(す)む者(もの)との戦(たたか)いで大(おお)きな力(ちから)を発揮(はっき)することができた。

 

 それに対抗(たいこう)するかのように、海(うみ)に棲(す)む者(もの)の中(なか)にも同(おな)じような存在(そんざい)が現(あらわ)れた。

 

 そして今(いま)では、「妖精(ようせい)さん」を見(み)ることができる者(もの)は鎮守府(ちんじゅふ)という場所(ばしょ)に配属(はいぞく)されるようになった。艦娘《かんむすめ》と艦娘(かんむすめ)を指揮(しき)する提督(ていとく)、その他(ほか)の鎮守府(ちんじゅふ)に所属(しょぞく)する人(ひと)たちのことだ。

 

 艦娘(かんむすめ)というのは、別(べつ)の世界(せかい)において兵士(へいし)が銃火器(じゅうかき)を装備(そうび)するのと同(おな)じように、艤装(ぎそう)という方法(ほうほう)で戦闘可能(せんとうかのう)な艦艇(かんてい)が装備(そうび)する兵器類(へいきるい)を装着(そうちゃく)して戦(たたか)うことができる存在(そんざい)である。

 

「艦(かん)の記憶(きおく)のような何(なに)かを得(え)た者(もの)が艦娘(かんむすめ)になる」

 と、言(い)われているが、どのような条件(じょうけん)で記憶(きおく)のような何(なに)かを得(え)られるかは、現在(げんざい)においてもはっきりとはわかっていない。

 

 基本的(きほんてき)に、艤装(ぎそう)は鎮守府内(ちんじゅふない)でしか装着(そうちゃく)できない。それ以外(いがい)の場所(ばしょ)でできるのは、使用(しよう)した兵器類(へいきるい)の補充(ほじゅう)とある程度(ていど)の修理(しゅうり)や交換(こうかん)までである。

 艤装(ぎそう)は複数(ふくすう)の物資(ぶっし)を用(もち)いて建造(けんぞう)される。物資(ぶっし)は様々《さまざま》な方法(ほうほう)で得(え)られるが、一度(いちど)に大量(たいりょう)には取(と)ることができない。

 

 装着(そうちゃく)された艤装(ぎそう)は全身(ぜんしん)を覆(おお)う。肌(はだ)が露出(ろしゅつ)しているように見(み)える部分(ぶぶん)も、実際(じっさい)には艤装(ぎそう)に覆(おお)われている。

 また、艤装(ぎそう)が解(と)かれる際(さい)には全(すべ)てが空気(くうき)に変換(へんかん)されるため、本人(ほんにん)の周(まわ)りに爆発(ばくはつ)のような衝撃(しょうげき)が生(しょう)じてしまう。

 

 ただし、そのような存在(そんざい)が実際(じっさい)にいるのか、記(しる)されていないことはどうなっているのか、などと問(と)われると返答(へんとう)に困(こま)らざるを得(え)ない。

 そもそもこの世界(せかい)が、そのように問(と)う人(ひと)の世界(せかい)と時間(じかん)や空間(くうかん)でつながっていて、世界(せかい)を構成(こうせい)する数々(かずかず)の条件(じょうけん)や法則(ほうそく)が似(に)ているかどうかがわからない。

 ここまで使用(しよう)してきた船(ふね)の名称(めいしょう)や飛行機(ひこうき)の名称(めいしょう)についても、「この世界(せかい)でそのように呼(よ)ばれているからそう記(しる)している」に過(す)ぎない。艦娘(かんむすめ)を数(かぞ)える時(とき)に一人(ひとり)、二人(ふたり)と表現(ひょうげん)するのが当(あ)たり前(まえ)のこの世界(せかい)を、受(う)け入(い)れることのできない「人(ひと)」がいたとしても仕方(しかた)がないことなのだろう。

 

 これ以降(いこう)もそうした世界(せかい)の出来事(できごと)を記(しる)していくため、ここで読(よ)み終(お)えて忘(わす)れてしまうか、それでも読(よ)もうとするかは、読(よ)む側(がわ)の判断(はんだん)に委(ゆだ)ねたいと思(おも)う。

 無理(むり)をしてまで読(よ)む必要(ひつよう)はないのだ──

 

 それはさて置(お)き、長官艇(ちょうかんてい)に乗(の)った艦娘(かんむすめ)のうちの一人(ひとり)が、

 

「Hey(ヘイ)大淀(おおよど)、私(わたし)の提督(ていとく)は元気(げんき)デスカ? 私(わたし)のこと話題(わだい)にしてたデスカ? 」

 

 と、飛行艇(ひこうてい)から姿(すがた)を現(あらわ)した艦娘(かんむすめ)──大淀(おおよど)に声(こえ)をかけた。

 大淀(おおよど)は、そうしたことに関心(かんしん)もなさそうに、

 

「金剛(こんごう)さん。久(ひさ)しぶりに会(あ)って最初(さいしょ)に聞(き)くのがそれなんですか? 」

 

 と、返答(へんとう)をして、呆(あき)れたように大(おお)きなため息(いき)を吐(は)く。

 

「あたり前(まえ)デース。提督(ていとく)にバーニングラブの私(わたし)を何(なん)だと思(おも)っているのデス? 」

 

 金剛(こんごう)は何(なに)もおかしなことは起(お)きていないと言(い)いたげな表情(ひょうじょう)をしている。

 

「さ、早(はや)く提督(ていとく)に会(あ)わせるデース」

「わかりました」

 

 大淀(おおよど)は不毛(ふもう)なやりとりをする気(き)がないようだ。

 

「移乗(いじょう)の用意(ようい)をお願(ねが)いします」

 

 その一言(ひとこと)で、長官艇(ちょうかんてい)の上(うえ)は一気(いっき)に騒(さわ)がしくなった。

 金剛(こんごう)に続(つづ)いて船室(せんしつ)に待機(たいき)していた艦娘(かんむすめ)たちが次々(つぎつぎ)と姿(すがた)を現(あらわ)した。青葉(あおば)と秋津洲(あきつしま)。それと吹雪(ふぶき)だ。

 |船室(せんしつ)から道具類(どうぐるい)を出(だ)している手(て)が覗(のぞ)いているので、まだ数人(すうにん)は乗(の)っているようだ。

 

 金剛(こんごう)を含(ふく)む舷側(げんそく)に出(で)た四人(よにん)は、接舷(せつげん)する側(がわ)に防舷材(ぼうげんざい)と海(うみ)に落(お)ちた時(とき)に上(あ)がるための網(あみ)を取(と)りつけ、飛行艇(ひこうてい)の出入(でい)り口(ぐち)にロープを投(な)げ込(こ)んだ。

 飛行艇(ひこうてい)内側(うちがわ)に戻(もど)った大淀(おおよど)はロープを支柱(しちゅう)に仮固定(かりこてい)し、再(ふたた)び出入(でい)り口(ぐち)から顔(かお)を出して合図(あいず)をする。

 金剛(こんごう)が号令(ごうれい)をかけ、青葉(あおば)と吹雪(ふぶき)がロープをたぐり寄(よ)せる。秋津洲(あきつしま)がそれをわ(・)が(・)ね(・)て(・)──つまり環(わ)の形(かたち)に束(たば)ねていく。

 

 飛行艇(ひこうてい)と長官艇(ちょうかんてい)が接触(せっしょく)しそうになるまで近寄(ちかよ)ったところで、金剛(こんごう)が再(ふたた)び号令(ごうれい)をかけてたぐり寄(よ)せるのをやめさせた。

 長官艇(ちょうかんてい)の向(む)きと飛行艇(ひこうてい)との間隔(かんかく)を微調整(びちょうせい)──よし。

 

 長官艇(ちょうかんてい)の側(がわ)でもロープを仮固定(かりこてい)して、パイプを溶接(ようせつ)して作(つく)ったらしきハシゴを飛行艇(ひこうてい)の出入(でい)り口(ぐち)に伸(の)ばした。艦娘(かんむすめ)たちの身長(しんちょう)より頭(あたま)一(ひと)つ短(みじか)く、その真(ま)ん中(なか)付近(ふきん)左右(さゆう)に水没防止用(すいぼつぼうしよう)の浮(う)きがついている。

 大淀(おおよど)はそのハシゴを手(て)に取(と)って、U字型(ユーじがた)になった先端(せんたん)を出入(でい)り口(ぐち)下(した)の段差(だんさ)に引(ひ)っかけた。

 

 金剛(こんごう)と青葉(あおば)、吹雪(ふぶき)と秋津洲(あきつしま)の二人(ふたり)ずつがハシゴの左右(さゆう)に並(なら)び、金剛(こんごう)の号令(ごうれい)で一斉(いっせい)に姿勢(しせい)を正(ただ)して略式(りゃくしき)の登舷礼(とうげんれい)をとる。

 

「お出迎(でむか)えご苦労(くろう)さまー」

 

 飛行艇(ひこうてい)の出入(でい)り口(ぐち)のほうから、この厳粛(げんしゅく)な場(ば)にはいささか似(に)つかわしくない、間延(まの)びした声(こえ)が聞(き)こえてきた。

 やがて「よっ」とか「おっと」などと言(い)う小《ちい》さな声《こえ》が聞(き)こえ、一人(ひとり)の女性(じょせい)が危(あぶ)なっかしい動作(どうさ)でハシゴを降(お)りてくる。

 

 ちなみに、飛行艇(ひこうてい)の出入(でい)り口(ぐち)と長官艇(ちょうかんてい)の甲板(かんぱん)との高低差(こうていさ)は、せいぜい手(て)のひら二(ふた)つぶんである。にもかかわらずこのような道具(どうぐ)が使用(しよう)されたのは、それが必要(ひつよう)な人物(じんぶつ)だからだと答(こた)えるしかない。

 そういう器用(きよう)さ、あるいは不器用(ぶきよう)さの持(も)ち主(ぬし)なのだ。

 

 年齢(ねんれい)は三十代(さんじゅうだい)くらいだろうか。町中(まちなか)を歩(ある)いていても目立(めだ)ちそうもない風貌(ふうぼう)だ。

 細身(ほそみ)というほどでも長身(ちょうしん)というほどでもない。目元(めもと)と口元(くちもと)に薄(うす)く化粧(けしょう)を施(ほどこ)している。

 

 準礼装(じゅんれいそう)から出(で)ている肌(はだ)は、日焼(ひや)け止(ど)めを塗(ぬ)っているであろうにもかかわらず見事(みごと)に褐色(かっしょく)に焼(や)けている。

 そして何(なに)よりも、本来(ほんらい)ならば軍帽(ぐんぼう)をかぶっているはずの頭(あたま)には、その辺(あた)りの店(みせ)で売(う)っているような麦(むぎ)わら帽子(ぼうし)が乗(の)っている。この上(うえ)もなく悪(わる)目立(めだ)ちになってしまっていた。

 

「いやー、仕舞(しま)った軍帽(ぐんぼう)取(と)り出(だ)すのが面倒(めんどう)でさー」

 

 提督(ていとく)としての威厳(いげん)など何一(なにひと)つ感(かん)じられない態度(たいど)と口調(くちょう)だが、金剛(こんごう)を始(はじ)めとする艦娘(かんむすめ)たちが意(い)に介(かい)していない様子(ようす)を見(み)るに、この鎮守府(ちんじゅふ)ではこの光景(こうけい)のほうが日常的(にちじょうてき)なのかもしれない。

 

「お帰(かえ)りネ、提督(ていとく)」

「あー、抱(だ)きつくのはやめてね。海(うみ)に落(お)ちたくないから」

 

 提督(ていとく)は近寄(ちかよ)ろうとした金剛(こんごう)にそう言(い)いながら、あやすように頭(あたま)を一撫(ひとな)でする。

 

「それで? それで? 」

 

 その様子(ようす)を写真(しゃしん)に収(おさ)めた青葉(あおば)が口(くち)を開(ひら)いた。

 

「向(む)こうではどんな話(はなし)があったんですか? みんな興味津々(きょうみしんしん)なんですよ」

「えー」

 

 生返事(なまへんじ)をする提督(ていとく)の視線(しせん)の先(さき)を追(お)った青葉(あおば)はそこに、

 

「これがヨソの大艇(たいてい)ちゃん……あたしの大艇(たいてい)ちゃんはもちろんだけど、こちらもなかなか……」

 

 などとつぶやきながら、恍惚(こうこつ)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべて飛行艇(ひこうてい)に頬(ほお)ずりしている秋津洲(あきつしま)の姿(すがた)を認(みと)めた。

 

「いや、ちゃんと興味(きょうみ)は持(も)ってましたよ。今(いま)はそうじゃないだけで」

「えー」

 

 提督(ていとく)と青葉(あおば)の駄弁(だべ)りのようなやりとりを聞(き)き流(なが)しながら、吹雪(ふぶき)は飛行艇(ひこうてい)の出入(でい)り口(ぐち)から顔(かお)を出(だ)した大淀(おおよど)に声(こえ)をかけた。

 

「荷物(にもつ)を取(と)りましょうか? 」

「あ、はい。お願(ねが)いします」

 

 大淀(おおよど)の降(お)ろした荷物(にもつ)を手(て)に取(と)った吹雪(ふぶき)は、小(ちい)さな声(こえ)を出(だ)しながら船室(せんしつ)に運(はこ)んでいった。

 

「先(さき)に運(はこ)ぶ荷物(にもつ)はあと二個(にこ)です」

 

 大淀(おおよど)は、長官艇(ちょうかんてい)に乗(の)る誰(だれ)にともなくそう言(い)ってからつけたした。

 

「それと、依頼(いらい)のあった購入品(こうにゅうひん)や作戦(さくせん)に使(つか)う荷物(にもつ)が、大発動艇(だいはつどうてい)一隻分(いっせきぶん)あります」

「ワオ」

 

 金剛(こんごう)が声(こえ)に出(だ)して驚(おどろ)く。

 

「ところで、どんな作戦(さくせん)なんデスか? 」

「えーと、ねー」

 

 提督(ていとく)はアゴに人差(ひとさ)し指(ゆび)をあててしばし沈黙(ちんもく)していたが、やがて、

 

「詳(くわ)しいことは鎮守府(ちんじゅふ)に戻(もど)ってからにしよーかー」

 

 と、言(い)ってから不意(ふい)に大淀(おおよど)を呼(よ)んだ。

 

「終(お)わったら“彼(かれ)”も降(お)ろしてねー」

「ホワット? 」

 

 金剛(こんごう)の驚(おどろ)く声(こえ)は、先(さき)ほどよりも大(おお)きかった。

 

「えーと、ね。実(じつ)は帰(かえ)る途中(とちゅう)で出会(であ)ったんだけど」

 

 提督(ていとく)の返答(へんとう)が何(なん)の説明(せつめい)にもなっていないことは、金剛(こんごう)の表情(ひょうじょう)を見(み)なくても明(あき)らかだった。

 

「まー、それも鎮守府(ちんじゅふ)に戻(もど)ってからねー」

 

 大淀(おおよど)から渡(わた)された荷物(にもつ)を持(も)った提督(ていとく)は、困惑(こんわく)したまま立(た)ちすくんでいる金剛(こんごう)を残(のこ)したまま船室(せんしつ)へと運(はこ)んでいった。

 




物語の導入部は、
→ 水上機と飛行艇を登場させたかった
→ 「飛行艇の乗降口と船や陸との間に高低差がある」ことに気がついたので乗り方を調べた
→ そもそも機体と船がどれくらい沈んでいるかを設定してなかったことを思い出した
→ それは無視して、オリジナル提督を出すのだからオリジナル装備を使うことにしようと決めた
→ 運動のセンスが壊滅的な提督になった
→ 色々とあきらめるついでに出身をノンベン・ダーラリ(のんべんだらり)、名前をタラ・グー(ぐーたら)と設定した
と、いう順番でつくりました。
たぶん参考にしないほうがいいと思います。

提督のモデルには北上他、複数のキャラクターがあてはまりそうです。

本国がどういうところかは決めていないので、水上機を含めて自由に置き換えして大丈夫です。

軍事用語を使うと「それらしく」なるのはわかってはいるのですが、なるべく使わない方向で書いてみました。
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