艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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第十三話「努力のムダ使いをする努力」

 たて続(つづ)けに知(し)った状況(じょうきょう)にサラトガ(Saratoga)はさぞ混乱(こんらん)しているであろうが、少(すく)なくとも鎮守府(ちんじゅふ)の飛行場(ひこうじょう)に飛行機(ひこうき)を飛(と)ばす理由(りゆう)については理解(りかい)できただろうし、納得(なっとく)もしているだろう。

 

「グロスマン」への攻撃(こうげき)で損傷(そんしょう)を受(う)けた航空機(こうくうき)が多(おお)かったために、空母(くうぼ)への帰還(きかん)を取(と)りやめて鎮守府(ちんじゅふ)の飛行場(ひこうじょう)で修理(しゅうり)、補充(ほじゅう)を行(おこな)うことにした。これに、防衛艦隊(ぼうえいかんたい)の空母(くうぼ)が搭載(とうさい)している航空機(こうくうき)を加(くわ)えて部隊(ぶたい)を再編成(さいへんせい)する。

 

 その後(あと)は上空(じょうくう)で待機(たいき)し、「グロスマン」が近(ちか)づいて来(き)たところで爆撃(ばくげき)と雷撃(らいげき)。同時(どうじ)に、防衛艦隊(ぼうえいかんたい)が砲撃(ほうげき)と雷撃(らいげき)を行(おこな)う。

 

「行動不能(こうどうふのう)か、弾丸(たま)切(ぎ)れには追(お)い込(こ)みたいよねー」

「もしくは撤退(てったい)に、ですか……それにしても……」

 

 願望(がんぼう)を全開(ぜんかい)にした提督(ていとく)の言葉(ことば)に鳳翔(ほうしょう)が答(こた)え、途中(とちゅう)で自分(じぶん)の艤装(ぎそう)に目(め)をやった。

 

「いつもこの時間(じかん)には食事(しょくじ)の用意(ようい)をしていますから、どうにも落(お)ち着(つ)きませんね」

 

 少(すこ)しばかり困(こま)ったような表情(ひょうじょう)をする。

 

「そういえば、鳳翔(ほうしょう)さんがこの時間(じかん)に出撃(しゅつげき)するのを見(み)るのは、久(ひさ)しぶりですね」

「そうですね。そう言(い)われると、確(たし)かに」

 

 赤城(あかぎ)の言葉(ことば)に、鳳翔(ほうしょう)が小首(こくび)をかしげた。

 

「深海棲艦(しんかいせいかん)の攻撃(こうげき)が、一時期(いちじき)よりも減(へ)りましたから」

「そうなんだよねー。ここが出来(でき)て最初(さいしょ)のうちは忙(いそが)しかったけど、別(べつ)の鎮守府(ちんじゅふ)が休養所(きゅうようじょ)に使(つか)うつもりで作(つく)ったと知(し)ってからは、あんまり来(こ)なくなったよねー」

「『変(ヘン)ナトコロニアルカラ秘密基地(ヒミツキチ)カト思(オモ)ッタノニ』って、むしろガッカリしてたかも」

「えっ(Huh)? 」

 

 加賀(かが)、提督(ていとく)、秋津洲(あきつしま)のやりとりに、サラトガ(Saratoga)が思(おも)わず聞(き)き返(かえ)していた。

 

「あ、はい。そうなんです。ここが出来(でき)た理由(りゆう)は、別(べつ)の鎮守府(ちんじゅふ)の提督(ていとく)が『近(ちか)くで遊(あそ)ぶ場所(ばしょ)が欲(ほ)しい』と言(い)い出(だ)したのがきっかけで……」

「それに鎮守府(ちんじゅふ)の艦娘(かんむすめ)と所属(しょぞく)の人(ひと)が賛成(さんせい)して本国(ほんごく)に意見(いけん)したら、『新規(しんき)鎮守府(ちんじゅふ)の建設(けんせつ)願(ねが)いとして処理(しょり)する』と返答(へんとう)があったんで、そう手続(てつづ)きしたんだ」

 

 千歳(ちとせ)の説明(せつめい)を補足(ほそく)した隼鷹(じゅんよう)は、そう言(い)って笑(わら)い声(ごえ)をあげた。

 

「つまり……ここは、正式(せいしき)な鎮守府(ちんじゅふ)ではないのでしょうか? 」

 

 サラトガ(Saratoga)が、自分(じぶん)の耳(みみ)を疑(うたが)うように質問(しつもん)する。

 

「正式(せいしき)な鎮守府(ちんじゅふ)……だよね? 」

「運用(うんよう)は特殊(とくしゅ)かと思(おも)いますが、本国(ほんごく)の許可(きょか)がありますので正式(せいしき)でよろしいかと」

「あれ? あたしの所属(しょぞく)ってここでいいんだっけ? 」

「ここに転属(てんぞく)で来(き)たのなら、ここの所属(しょぞく)ですよ」

 

 自信(じしん)がなさそうに尋(たず)ねる提督(ていとく)と慌(あわ)てて確認(かくにん)している隼鷹(じゅんよう)に、よどみなく答(こた)える大淀(おおよど)の口調(くちょう)と表情(ひょうじょう)は、この上(うえ)もなく真剣(しんけん)だった。

 

 もしかしたら、深(ふか)く追究(ついきゅう)してはいけない案件(あんけん)なのかも知(し)れない。

 

 - - - ( * _ * )

 

 戦艦(せんかん)レ級(きゅう)の尻尾(しっぽ)の先(さき)についた砲(ほう)が、たて続(つづ)けに怪物(かいぶつ)の口(くち)の中(なか)で砲弾(ほうだん)を発射(はっしゃ)した。轟音(ごうおん)が響(ひび)くたびに、怪物(かいぶつ)の頭(あたま)が弾(はじ)かれるように上下(じょうげ)する。

 

 左右(さゆう)の目(め)は焦点(しょうてん)を失(うしな)い、まったく違(ちが)う方向(ほうこう)を向(む)く。口元(くちもと)から、血液(けつえき)とも何(なん)ともとりかねる色(いろ)の液体(えきたい)が周囲(しゅうい)に飛(と)び散(ち)る。

 

 怪物(かいぶつ)の力(ちから)が抜(ぬ)けるのを感(かん)じ取(と)ったレ級(きゅう)が真後(まうし)ろに下(さ)がった直後(ちょくご)に、口(くち)を半開(はんびら)きにしたまま怪物(かいぶつ)の頭(あたま)が浅瀬(あさせ)に倒(たお)れ込(こ)んだ。波(なみ)しぶきを上(あ)げたクチバシの中(なか)に、海水(かいすい)が入(はい)っていく。

 

「フ……ハハーッ! 」

 

 レ級(きゅう)は歓声(かんせい)を歓声(かいせい)を上(あ)げながら、中指(なかゆび)と薬指(くすりゆび)を立(た)てた右手(みぎて)の甲(こう)を怪物(かいぶつ)に向(む)けた。尻尾(しっぽ)の砲(ほう)を模(も)したような身振(みぶ)りだが、挑発(ちょうはつ)、あるいは侮辱(ぶじょく)を示(しめ)しているようだ。

 

「思(オモ)イ知(シ)ッ──」

 

 最後(さいご)まで言(い)うことはできなかった。怪物(かいぶつ)の喉奥(のどおく)からすさまじい勢(いきお)いで吐(は)き出(だ)された息(いき)が、レ級(きゅう)の体(からだ)を直撃(ちょくげき)したのだ。

 いや、直撃(ちょくげき)したのは息(いき)だけではなかった。喉(のど)の奥(おく)から深海棲艦(しんかいせいかん)──艤装(ぎそう)の解(と)けた駆逐艦(くちくかん)やら軽巡洋艦(けいじゅんようかん)やらが、形(かたち)をとどめたまま飛(と)び出(だ)して来(き)た。

 

 怪物(かいぶつ)に飲(の)み込(こ)まれたうちの一体(いったい)、あるいは何体(なんたい)かが、一番奥(いちばんおく)まで入(はい)って艤装(ぎそう)を解(と)いたのだ。空想上(くうそうじょう)の動物(どうぶつ)をかたどった像(ぞう)の口(くち)から吹(ふ)き出(で)る噴水(ふんすい)と言(い)うよりは、漁船(ぎょせん)の網(あみ)からあふれ出(で)る魚(さかな)を思(おも)わせる光景(こうけい)ではあったが。

 

 倒(たお)れたレ級(きゅう)の艤装(ぎそう)が解(と)けていることから、直撃(ちょくげき)を受(う)けたのが一体(いったい)や二体(にたい)どころでないのは確(たし)かだった。飲(の)み込(こ)まれた深海棲艦(しんかいせいかん)ともども、戦闘(せんとう)には復帰(ふっき)できないだろう。

 

「ウキ……筏(イカダ)ニ乗(ノ)セテ栖(スミカ)ニ連(ツ)レ帰(カエ)レ」

 

 しばらくしてから、リコリス棲姫(せいき)がつぶやくように言(い)った。無表情(むひょうじょう)なのではなく、どのような表情(ひょうじょう)をしていいのかわからなそうな雰囲気(ふんいき)だった。

 

 - - - ( * ´ ω ` )

 

 鎮守府(ちんじゅふ)のある島(しま)から「グロスマン」までの距離(きょり)が島(しま)の全長(ぜんちょう)よりも短(みじか)くなるまで、防衛艦隊(ぼうえいかんたい)は島(しま)の東側(ひがしがわ)の陰(かげ)に隠(かく)れたまま、攻撃(こうげき)する機会(きかい)をうかがっていた。偵察機(ていさつき)からの報告(ほうこく)で、その位置(いち)は手(て)に取(と)るようにわかっている。

「グロスマン」も、攻撃(こうげき)を控(ひか)えたまま接近(せっきん)を続(つづ)けている。何(なに)かを、何(なん)らかの方法(ほうほう)で探知(たんち)しているのか、といったことは見当(けんとう)がつかない。

 

 頃合(ころあ)いを見計(みはか)らって島陰(しまかげ)から飛(と)び出(だ)した防衛艦隊(ぼうえいかんたい)は、西南西(せいなんせい)に見(み)えている「グロスマン」に向(む)かった。戦艦(せんかん)の主砲(しゅほう)の最大射程(さいだいしゃてい)よりも長(なが)い距離(きょり)を、艦列(かんれつ)を整(ととの)えながら突進(とっしん)する。

 

 防衛艦隊(ぼうえいかんたい)は、三(みっ)つの戦隊(せんたい)に別(わか)れた。島(しま)から最(もっと)も外側(そとがわ)に位置(いち)しているのは、陸奥(むつ)を先頭(せんとう)にポーラ(Pola)、タシュケント(Тошкент)、響(ひびき)、吹雪(ふぶき)が続(つづ)く戦隊(せんたい)だ。

 

 それよりも島(しま)に近(ちか)い側(がわ)を進(すす)む戦隊(せんたい)の先頭(せんとう)は、ガングート(Гангут)。その後(あと)を鬼怒(きぬ)、睦月(むつき)、望月(もちづき)が追(お)う。

 

 島(しま)に最(もっと)も近(ちか)い側(がわ)の戦隊(せんたい)は、霧島(きりしま)、朝雲(あさぐも)、山雲(やまぐも)、雪風(ゆきかぜ)、時津風(ときつかぜ)の順(じゅん)に並(なら)んでいる。

 

 深海棲艦(しんかいせいかん)がこれを見(み)たら何(なん)と思(おも)うだろうか? そのように並(なら)んだ意図(いと)を探(さぐ)ろうとするだろうか? 

 もちろん、何(なに)も考(かんが)えないかも知(し)れない。少(すく)なくとも、「グロスマン」はこの時点(じてん)で何(なん)の反応(はんのう)も示(しめ)していない。

 

 両者(りょうしゃ)の距離(きょり)は、さらに縮(ちぢ)まる。戦艦(せんかん)に搭載(とうさい)された主砲(しゅほう)の最大射程距離(さいだいしゃていきょり)まで、あと少(すこ)し。

 

 最大射程距離(さいだいしゃていきょり)の範囲(はんい)に入(はい)った。双方(そうほう)ともまだ撃(う)たない。

 

 最大射程距離(さいだいしゃていきょり)の五分(ごぶん)の四(よん)。四分(よんぶん)の三(さん)。三分(さんぶん)の二(に)。

 

 北西(ほくせい)の方向(ほうこう)から、航空機(こうくうき)の集団(しゅうだん)が現(あらわ)れた。島(しま)にある山(やま)の半分(はんぶん)くらいの高度(こうど)を保(たも)ちながら、「グロスマン」に向(む)かって突(つ)っ込(こ)んでいく。

 

「グロスマン」から対空砲弾(たいくうほうだん)が撃(う)ち出(だ)された。空間(くうかん)の色(いろ)が変(か)わるほどに……と、表現(ひょうげん)したいところではあるが、変(か)わっていないのだから撃(う)っている量(りょう)がどれくらいなのかはわからない。

 発砲(はっぽう)の煙(けむり)は出(で)ていないし、曳光弾(えいこうだん)と呼(よ)ばれる、飛(と)ぶ方向(ほうこう)が目視(もくし)できるようにする弾丸(だんがん)も使用(しよう)されていない。そのため、「グロスマン」がどのような機能(きのう)を用(もち)いて射撃(しゃげき)しているかはわからない。

 

 しかし、鎮守府側(ちんじゅふがわ)の戦闘機(せんとうき)があちらこちらで墜落(ついらく)しているのだから、命中(めいちゅう)しているのは確(たし)かなのだ。“戦闘機(せんとうき)”が、だ。

 

 そう。この時(とき)「グロスマン」に突入(とつにゅう)したのは、戦闘機(せんとうき)だけだった。

 戦闘機(せんとうき)は機銃(きじゅう)を撃(う)ち終(お)えると、高速(こうそく)で「グロスマン」の上空(じょうくう)を通(とお)り過(す)ぎていく。

 機銃(きじゅう)が「グロスマン」に損害(そんがい)を与(あた)えたとしても、それはほんのわずかであっただろう。しかしその攻撃(こうげき)は、接近(せっきん)し続(つづ)ける艦隊(かんたい)への注意(ちゅうい)をいくぶんかそらすことができた……と、思(おも)いたい。

 

 その間(かん)に、戦艦(せんかん)に搭載(とうさい)された主砲(しゅほう)の最大射程距離(さいだいしゃていきょり)の半分(はんぶん)よりも近(ちか)づいた各艦(かくかん)は、「グロスマン」からの攻撃(こうげき)を受(う)けつつもそれぞれの役割(やくわり)を果(は)たそうとしていた。

 

 戦隊(せんたい)の配置(はいち)が変(か)わっていた。「グロスマン」に対(たい)してほぼ直角(ちょっかく)に左回頭(ひだりかいとう)した陸奥(むつ)とガングート(Гангут)は、速度(そくど)を保(たも)ったまま砲撃(ほうげき)を開始(かいし)した。

 右手側(みぎてがわ)の主砲(しゅほう)で「グロスマン」の側面(そくめん)を、左手側(ひだりてがわ)で上面(じょうめん)を狙(ねら)って発射(はっしゃ)する。

 

 同(おな)じように左回頭(ひだりかいとう)したポーラ(Pola)と鬼怒(きぬ)は、速度(そくど)を上(あ)げて陸奥(むつ)の左側(ひだりがわ)を追(お)い抜(ぬ)いていく。砲撃(ほうげき)を始(はじ)めたその後(うし)ろにタシュケント(Тошкент)、響(ひびき)、吹雪(ふぶき)、睦月(むつき)、望月(もちづき)と続(つづ)き、順々(じゅんじゅん)に魚雷(ぎょらい)を発射(はっしゃ)した。

 

 直進(ちょくしん)した霧島(きりしま)は速度(そくど)を落(お)とし、正面(しょうめん)を向(む)いたまま主砲(しゅほう)を撃(う)つ。

 霧島(きりしま)を避(さ)けるように左回頭(ひだりかいとう)した朝雲(あさぐも)、山雲(やまぐも)、雪風(ゆきかぜ)、時津風(ときつかぜ)は、タシュケント(Тошкент)たちより「グロスマン」に近(ちか)い距離(きょり)から魚雷(ぎょらい)を発射(はっしゃ)する。タシュケント(Тошкент)たちの発射(はっしゃ)した魚雷(ぎょらい)が、進路前方(しんろぜんぽいう)を通(とお)り過(す)ぎたと信(しん)じ切(き)っての行動(こうどう)だ。

 

 砲弾(ほうだん)と魚雷(ぎょらい)が、「グロスマン」を目(め)がけて襲(おそ)いかかる。命中(めいちゅう)した所(ところ)から煙(けむり)が、水柱(みずばしら)が次々(つぎつぎ)と上(あ)がる。

 

「グロスマン」からの攻撃(こうげき)も艦娘(かんむすめ)たちに命中(めいちゅう)した。艤装(ぎそう)が形(かたち)として見(み)えている部分(ぶぶん)だけでなく、肌(はだ)が露出(ろしゅつ)しているように見(み)える部分(ぶぶん)にも爆発(ばくはつ)のような衝撃(しょうげき)が起(お)きる。

 破損(はそん)という形(かたち)でも耐(た)えられない艤装(ぎそう)が空気(くうき)の塊(かたまり)となって、爆発(ばくはつ)するかのように消滅(しょうめつ)していく。

 

 速度(そくど)を落(お)とした霧島(きりしま)の被害(ひがい)が最(もっと)も大(おお)きい。ポーラ(Pola)は腹(はら)に直撃(ちょくげき)を受(う)けて咳(せ)き込(こ)んだ後(あと)、どこからともなくワインの瓶(びん)を取(と)り出(だ)して直飲(じかの)みを始(はじ)めた。

 

 一(ひと)つ息(いき)をつくと振(ふ)り返(かえ)り、

 

「え~と……気(き)つけはいりますか~」

 

 鬼怒(きぬ)に言(い)った。

 

「ゴメン! 今(いま)ちょっと手(て)が離(はな)せない! 」

 

 ポーラ(Pola)は鬼怒(きぬ)の返事(へんじ)を気(き)にした様子(ようす)もなく、ワイン瓶(びん)をしまって砲撃(ほうげき)を再開(さいかい)した。

 

 それが合図(あいず)……だとは思(おも)えないし、思(おも)うつもりもないが、南西(なんせい)の方角(ほうがく)から爆弾(ばくだん)や魚雷(ぎょらい)を積(つ)んだ攻撃機(こうげきき)の編隊(へんたい)が現(あらわ)れた。

 

 - - - ( * ´ з ` )

 

 戦(たたか)えなくなった連中(れんちゅう)を栖(すみか)に運(はこ)ばせたリコリス棲姫(せいき)は、状況(じょうきょう)を確認(かくにん)した。鬼級(おにきゅう)や姫級(ひめきゅう)の脱落(だつらく)は少(すく)ないが、物資(ぶっし)の残量(ざんりょう)が心細(こころぼそ)くなっている。

 怪物(かいぶつ)がいなければ、やって来(く)るであろう艦娘(かんむすめ)たちを追(お)い払(はら)ってとっくにこの島(しま)の周辺海域(しゅうへんかいいき)を確保(かくほ)できていた……かも知(し)れない。そう言(い)ったところで何(なに)かが解決(かいけつ)するわけでもないし……

 

 考(かんが)え込(こ)んでいるリコリス棲姫(せいき)以外(いがい)の深海棲艦(しんかいせいかん)たちは、思(おも)い思(おも)いに休息(きゅうそく)や補給(ほきゅう)をとっていた。倒(たお)してしまった怪物(かいぶつ)には見向(みむ)きもしていない。

 

 その、焦点(しょうてん)を失(うしな)っていた目(め)が突然(とつぜん)動(うご)いた。つまり、映画(えいが)をアルファベットでクラス分(わ)けした場合(ばあい)のB以降(いこう)によく見(み)ることができる展開(てんかい)が生(しょう)じたのだ。

 

 怪物(かいぶつ)は、音(おと)も立(た)てずに頭(あたま)を上(あ)げた。リコリス棲姫(せいき)の視界(しかい)の外側(そとがわ)──つまり、

 

「オッ(ウシロ)! オッ(ウシロ)! 」

 

 と、様子(ようす)を見(み)ている者(もの)なら声(こえ)をかけたくなってしまう状況(じょうきょう)が、リコリス棲姫(せいき)の背後(はいご)で起(お)こったのだ。

 

 いわゆる、こういう時(とき)のお約束(やくそく)であるはずのかすかな物音(ものおと)、背後(はいご)に伸(の)びる影(かげ)、不気味(ぶきみ)な呻(うめ)き声(ごえ)などは起(お)きなかった。無粋(ぶすい)なことだが、リコリス棲姫(せいき)にもそうした演出(えんしゅつ)に応(おう)じようとするつもりがなかった。

 

 それゆえ、空母(くうぼ)オ級(きゅう)の声(こえ)がした瞬間(しゅんかん)、リコリス棲姫(せいき)は前(まえ)へと飛(と)び出(だ)していた。怪物(かいぶつ)のクチバシがわずかに遅(おく)れて、先(さき)ほどまでリコリス棲姫(せいき)の立(た)っていた場所(ばしょ)に襲(おそ)いかかった。

 




「提督らしくない提督」を出したついでに「変な理由で作られた鎮守府」にしたくなったので、このようにしました。
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