艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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第十五話「物理法則に眠りの魔法をかけよう」

 霧島(きりしま)に尋(たず)ねられた金剛(こんごう)は、しばらく言(い)いよどんでから思(おも)い切(き)ったように答(こた)えた。

 

「白(しろ)いもこもこに身(み)を包(つつ)んでペンギンのクチバシをつけたカワウソのぬいぐるみみたいデース」

「やっぱりそう思(おも)いますよね」

 

 霧島(きりしま)が我(わ)が意(い)を得(え)たとばかりにうなずいた。

 

 金剛(こんごう)と霧島(きりしま)のやりとりが理解(りかい)できなくても当然(とうぜん)だと思(おも)うが、最初(さいしょ)にそう表現(ひょうげん)した者(もの)も理解(りかい)しないまま口(くち)にしたのだと思(おも)いたい。そう結論(けつろん)づけるしかない威力(いりょく)がその言葉(ことば)にはあった。

 

 従(したが)って、“白(しろ)いもこもこに身(み)を包(つつ)んでペンギンのクチバシをつけたカワウソのぬいぐるみ” みたいなものとは何(なん)なのかと問(と)われても、“白(しろ)いもこもこに身(み)を包(つつ)んでペンギンのクチバシをつけたカワウソのぬいぐるみ”みたいなものだと答(こた)えるしかない。いや、本当(ほんとう)にペンギンであるのかカワウソであるのかと問(と)われたほうが、むしろ返答(へんとう)に困(こま)ることになるのだが……それ以外(いがい)の何(なに)と表現(ひょうげん)してもおかしくなりそうなため、そう記(しる)すしかない。

 

 そして、大(おお)きさが「グロスマン」の倍(ばい)もあるそ(・)れ(・)を“ぬいぐるみ”と表現(ひょうげん)することにも抵抗(ていこう)があるのだが、見(み)かけが“ぬいぐるみ”そのもので材質(ざいしつ)も“ぬいぐるみ”のようなのだからそう記(しる)すしかない。

 

 繰(く)り返(かえ)しになるが、艦娘(かんむすめ)たちの視線(しせん)の先(さき)には白(しろ)いもこもこに身(み)を包(つつ)んでペンギンのクチバシをつけたカワウソ……みたいな、ぬいぐるみらしきものが覆(おお)いかぶさっている「グロスマン」の姿(すがた)があった。

 「グロスマン」は全力(ぜんりょく)で脱出(だっしゅつ)と破壊(はかい)を試(こころ)みているものの、そのどちらもうまくいってない。

 

 結果(けっか)として、合流(ごうりゅう)した艦娘(かんむすめ)たちは「グロスマン」の攻撃対象(こうげきたいしょう)から外(はず)されたらしく、おそらくここ以外(いがい)では見(み)ることのできない光景(こうけい)を特等席(とくとうせき)で見物(けんぶつ)する機会(きかい)を得(え)た。そういうことである。

 

「あ~、ちょっとずつ動(うご)いてますね~」

 

 残(のこ)りのワインを全部(ぜんぶ)飲(の)み干(ほ)したポーラ(Pola)が言(い)うと途端(とたん)に疑(うたが)わしくなるのだが、確(たし)かにそのとおりだった。「グロスマン」は、少(すこ)しずつではあるが後退(こうたい)を始(はじ)めている。

 

「ええっと……攻撃(こうげき)はしたほうがいいのかしら? 」

 

 陸奥(むつ)の問(と)いかけに全員(ぜんいん)が返答(へんとう)をできずにいる。

 

「しなくていいと思(おも)います」

 

 霧島(きりしま)は少(すこ)し考(かんが)えてからそう言(い)うと、急(いそ)いでつけ加(くわ)えた。

 

「『グロスマン』が攻撃(こうげき)してこなければ、の話(はなし)ですが……」

「あ、うん。それでいこう」

 

 誰(だれ)よりも早(はや)く加古(かこ)が反応(はんのう)した。

 

「まあ、鎮守府(ちんじゅふ)の前(まえ)にこのまま居座(いすわ)られても邪魔(じゃま)になるだけですし……」

「相手(あいて)をしなくていいならそのほうがいい、というのには賛成(さんせい)だ」

 

 青葉(あおば)とガングート(Гангут)も霧島(きりしま)に同意(どうい)を示(しめ)す。

 

「私(わたし)は、むしろ鎮守府(ちんじゅふ)のほうが気(き)になるデスネー」

「あの“ヌイグルミ”? ……が、どこから出(で)てきたのかもね」

 

 金剛(こんごう)とリシュリュー(Richelieu)の返答(へんとう)を聞(き)いた陸奥(むつ)は、一(ひと)つうなずいて言(い)った。

 

「じゃあ、軽巡(けいじゅん)と駆逐艦(くちくかん)にもそう伝(つた)えましょうか。いつの間(ま)にか記念撮影(きねんさつえい)を始(はじ)めているみたいだし」

「ああっ! 」

 

 「グロスマン」のほうを見(み)た青葉(あおば)が叫(さけ)び声(ごえ)を上(あ)げると、渡(わた)していたカメラを取(と)り戻(もど)しに行(い)った。

 

 

 提督(ていとく)はしばらくの間(あいだ)アゴを手(て)でつまんで考(かんが)え込(こ)んでいたが、あきらめたように明石(あかし)に言(い)った。

 

「あの、ゴメン。何(なに)をやったかもう一回(いっかい)聞(き)いていい? 」

「いや、あの……その、ですね。壊(こわ)されるかも知(し)れないのなら、普通(ふつう)やらないことをやってしまおうと思(おも)ってですね」

「その発想(はっそう)がわからないのですが」

 

 提督(ていとく)を背負(せお)った状態(じょうたい)のまま、大淀(おおよど)は額(ひたい)に右手(みぎて)をあてている。

 

「ま、まあ、それは置(お)いといて……建造(けんぞう)に使(つか)った材料(ざいりょう)なんだけど」

「いやその、報告(ほうこく)のとおりで……その辺(あた)りに置(お)かれたままになっていた白(しろ)いもこもことペンギンと……カワウソか何(なに)かのぬいぐるみもまぎれてたようで……」

「それでできちゃったんだー」

「それでできちゃったんですー」

 

 何(なん)とも表現(ひょうげん)のしようがないやりとりに、全員(ぜんいん)が頭(あたま)を抱(かか)えていた。

 

 

 皆(みんな)の注意(ちゅうい)が散漫(さんまん)になったり別(べつ)の方向(ほうこう)にそれている中(なか)、海防艦(かいぼうかん)たちは島(しま)の東端(とうたん)を回(まわ)り込(こ)んで「グロスマン」に近(ちか)づいていた。

 

 全員(ぜんいん)が体(からだ)のあちこちに、つる植物(しょくぶつ)で木(き)の枝(えだ)を縛(しば)りつけている。遠(とお)くから見(み)た時(とき)に、森(もり)の一部(いちぶ)と間違(まちが)わせるつもりなのだろうか。

 

 先頭(せんとう)で周囲(しゅうい)を警戒(けいかい)しているのは大東(だいとう)。それ以外(いがい)の四人(よにん)は、根元(ねもと)から刈(か)り取(と)った木(き)を担(かつ)いでいる。

 それぞれの長(なが)さは、海防艦(かいぼうかん)の身長(しんちょう)の三倍(さんばい)から四倍(よんばい)ほど。全部(ぜんぶ)で四本(よんほん)。

 

 そのうちの三本(さんぼん)は、根元(ねもと)と先端(せんたん)を互(たが)い違(ちが)いにしてつる植物(しょくぶつ)で縛(しば)られている。

 

「よぉーし! ここまで近(ちか)づいたら届(とど)くだろっ! 」

 

 大東(だいとう)の言葉(ことば)を聞(き)いて、占守(しむしゅ)が安堵(あんど)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべた。

 

「早(はや)く用意(ようい)しようぜ! さっきから逃(に)げようとしているみたいだ! 」

 

 いくぶん焦(あせ)りながら佐渡(さど)が言(い)う。

 

 海防艦(かいぼうかん)たちの視線(しせん)の先(さき)には、“何(なに)かよくわからない白(しろ)い塊(かたまり)”から少(すこ)しずつ離(はな)れている「グロスマン」の姿(すがた)があった──

 

 虫取(むしと)りの罠(わな)を仕掛(しか)けた辺(あた)りまで近(ちか)づくより先(さき)に視界(しかい)に飛(と)び込(こ)んできたその光景(こうけい)は、しばらくの間(あいだ)全員(ぜんいん)の思考(しこう)を失(うしな)わせた。我(われ)に返(かえ)った後(あと)──正気(しょうき)に戻(もど)ったかどうかはさて置(お)き、各自(かくじ)が思(おも)い浮(う)かべたのは鎮守府(ちんじゅんふ)がどうなっているか、だった。

 

 激論(げきろん)が交(か)わされた。鎮守府(ちんじゅふ)に向(む)かってどうするのか、「グロスマン」に見(み)つかったら、どうやって戦(たたか)えばいいのか──

 

 会話(かいわ)をする者(もの)の間(あいだ)には、ツッコミとボケの関係(かんけい)が自然(しぜん)と築(きず)かれるのではないだろうか。深刻(しんこく)な内容(ないよう)の会話(かいわ)で問(と)う側(がわ)をツッコミ、答(こた)える側(がわ)をボケと例(たと)えるのは、不謹慎(ふきんしん)な比喩(ひゆ)だとは思(おも)うけれども。

 

 海防艦(かいぼうかん)たちの論争(ろんそう)においては、ツッコミとボケはその時々(ときどき)で入(い)れ代(か)わったために、誰(だれ)がどちらだったとは言(い)い難(がた)い。しかしながら福江(ふかえ)の、

 

「アイツが攻撃(こうげき)を続(つづ)けるつもりなら、護(まも)るんだ! 負(ま)けるもんか! 」

 

 と、いう一言(ひとこと)はツッコミに当(あ)てはまるようだった。そして不幸(ふこう)なことに、ツッコミがボケを加速(かそく)するほうに作用(さよう)するケースにも当(あ)てはまったらしく……現在(げんざい)の状況(じょうきょう)が、引(ひ)き起(お)こされたのだ。

 

 大東(だいとう)と福江(ふかえ)がつる植物(しょくぶつ)で縛(しば)られた三本(さんぼん)の両端(りょうはし)を肩(かた)に乗(の)せて、「グロスマン」への進路(しんろ)を遮(さえぎ)るように位置(いち)をとる。残(のこ)りの一本(いっぽん)を佐渡(さど)と占守(しむしゅ)が抱(かか)えて、「グロスマン」の反対方向(はんたいほうこう)に移動(いどう)する。

 

 佐渡(さど)は、占守(しむしゅ)の持(も)つ根元(ねもと)が「グロスマン」に向(む)くように調整(ちょうせい)して、口(くち)の開(ひら)いた袋(ふくろ)を二(ふた)つ、三(みっ)つと先端(せんたん)に乗(の)せていく。

 

 どの袋(ふくろ)の口(くち)からも、たくさんの機雷(きらい)が姿(すがた)を見(み)せている。いや、一(ひと)つだけ口(くち)を閉(と)じたままの袋(ふくろ)があった。

 

「ところでそれ、何(なに)が入(はい)ってるっすか?」

「いひっ、これか? 」

 

 占守(しむしゅ)に尋(たず)ねられた佐渡(さど)が、いかにも人(ひと)の悪(わる)そうな笑(え)みを浮(う)かべた。

 

「木(き)を倒(たお)している時(とき)に見(み)つけたアリ塚(づか)のかけらを入(い)れてあるんだ。見(み)てみるか? 」

「いや、いいっしゅよ! やめとくっす! 」

 

 返答(へんとう)を聞(き)いた占守(しむしゅ)は、慌(あわ)てて断(ことわ)りをいれた。

 

「んー……今(いま)さらだけど、三本(さんぼん)で大丈夫(だいじょうぶ)かな? 」

 

 佐渡(さど)と占守(しむしゅ)のやりとりを聞(き)き流(なが)しながら、大東(だいとう)が不安(ふあん)げに言(い)う。その言葉(ことば)に、佐渡(さど)の勧(すす)めを逃(のが)れようとしていた占守(しむしゅ)が食(く)いついた。

 

「あ、それは大丈夫(だいじょうぶ)っすよ! 『一本(いっぽん)だと折(お)れても三本(さんぼん)なら強(つよ)い』って昔(むかし)の人(ひと)が言(い)ったらしいっすから! 」

 

 占守(しむしゅ)の言(い)う“昔(むかし)の人(ひと)”がそれを聞(き)けば、そういう意味(いみ)ではないと否定(ひてい)したかも知(し)れない。しかしながら、占守(しむしゅ)にとっては、佐渡(さど)の注意(ちゅうい)をそらすことができるならば内容(ないよう)が正確(せいかく)である必要(ひつよう)がなかった。

 

「じゃ、いくっしゅよ! 」

 

 何(なに)かを言(い)われる前(まえ)に、占守(しむしゅ)は木(き)の根元(ねもと)を頭(あたま)の上(うえ)に持(も)ち上(あ)げた。その声(こえ)を聞(き)いた大東(だいとう)と福江(ふかえ)は、抱(かか)えた木(き)を両手(りょうて)でしっかりと抑(おさ)える。

 

 佐渡(さど)は残念(ざんねん)そうな顔(かお)をしながらも、袋(ふくろ)を乗(の)せた先端(せんたん)を抱(かか)え直(なお)す。そのついでに、アリ塚(づか)の入(はい)っている袋(ふくろ)の口(くち)を少(すこ)しゆるめた。

 

「せえのっ!! 」

 

 と、占守(しむしゅ)が叫(さけ)んで海(うみ)の上(うえ)を滑(すべ)り始(はじ)める。

 向(む)かう先(さき)は大東(だいとう)と福江(ふかえ)が持(も)ち上(あ)げた木(き)。あるいは、その延長線上(えんちょうせんじょう)にある「グロスマン」だ。

 

「しむしゅしゅっ! 」

 

 占守(しむしゅ)は間合(まあ)いを見計(みはか)らって飛(と)び上(あ)がった。持(も)ち上(あ)げられた木(き)に足底(あしぞこ)──船(ふね)で言(い)えば船底(ふなぞこ)を乗(の)せた次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)に、木(き)を蹴(け)って一層(いっそう)高(たか)く上(うえ)に飛(と)ぶ。

 

「しゅっ!! 」

 

 占守(しむしゅ)が海面(かいめん)に着水(ちゃくすい)すると同時(どうじ)に木(き)と木(き)がぶつかって、占守(しむしゅ)の持(も)つ木(き)の先端(せんたん)が勢(いきお)いよく佐渡(さど)の手(て)を離(はな)れた。機雷(きらい)やアリ塚(づか)を入(い)れた袋(ふくろ)が宙(ちゅう)を舞(ま)い、「グロスマン」目(め)がけて落(お)ちていく。

 爆発(ばくはつ)の時間(じかん)に達(たっ)した機雷(きらい)が次々(つぎつぎ)と火(ひ)と煙(けむり)を噴(ふ)いた。いくつかは「グロスマン」上側(うえがわ)の外板(がいはん)に損害(そんがい)を与(あた)えたようだった。

 

 やや時間(じかん)をおいて、袋(ふくろ)からこぼれたアリ塚(づか)が「グロスマン」上側(うえがわ)の外板(がいはん)に落(お)ちた。アリ塚(づか)に隠(かく)れていたアリが四方八方(しほうはっぽう)に散(ち)り、隙間(すきま)を見(み)つけてもぐり込(こ)んでいった。

 

 意地(いじ)の一撃(いちげき)だとは言(い)えるのだが、効果(こうか)のほどには疑問符(ぎもんふ)がつく。ただそれは、海防艦(かいぼうかん)たちにとっては重要(じゅうよう)なことではなかったらしい。

 

 命中(めいちゅう)させればそれでよかったのか、立(た)ちのぼった煙(けむり)を見(み)て、全員(ぜんいん)が歓声(かんせい)を上(あ)げている。

 

「やばっ! 見(み)つかった! 」

 

 大東(だいとう)が叫(さけ)ぶのとほとんど同時(どうじ)に全員(ぜんいん)が狼狽(うろた)えだした。叱責(しっせき)を受(う)ける覚悟(かくご)をすることと、叱責(しっせき)を受(う)けることには天(てん)と地(ち)ほどの開(ひら)きがある──それがはっきりとわかる光景(こうけい)だった。

 

 海防艦(かいぼうかん)たちにとって幸運(こううん)だったのは、この鎮守府(ちんじゅふ)における通信(つうしん)が音声通話(おんせいつうわ)ではなく、符号(ふごう)を使(つか)った電気通信(でんきつうしん)だったことだ。つまり、何(なに)かのスイッチを入(い)れれば声(こえ)が聞(き)こえるというわけではなく、それゆえに声(こえ)から誰(だれ)であるかがわかるわけではない。

 応答(おうとう)をしなければ、知(し)らぬふりで押(お)し通(とお)すことも可能(かのう)なのだ──別(べつ)の方法(ほうほう)で確認(かくにん)されていなければ、の話(はなし)だが。まあ、それより先(さき)に知(し)らぬふりで押(お)し通(とお)せるのか、という問題(もんだい)があるのだが。

 

「この前(まえ)みたいに、聞(き)かれる前(まえ)に自分(じぶん)から言(い)い出(だ)すんじゃないぞッ! 」

「人(ひと)のこと言(い)えるのか!? その前(まえ)の前(まえ)は──」

「あーっ、覚(おぼ)えてない! そんな恥(は)ずかしい失敗(しっぱい)なんて覚(おぼ)えてないッ!! 」

 

 福江(ふかえ)と佐渡(さど)のやりとりを聞(き)く限(かぎ)り、望(のぞ)みは限(かぎ)りなく薄(うす)いようだ。

 

 - - - ( . _ . )

 

 ちぎれた翼(つばさ)のつけねから腕(うで)を生(は)やした怪物(かいぶつ)は、大(おお)きく体(からだ)をのけぞらした。その背(せ)で寝入(ねい)ってしまった北方棲姫(ほっぽうせいき)と北方棲妹(ほっぽうせいまい)は、目(め)を覚(さ)ますよりも先(さき)に転(ころ)がり落(お)ちようとしている。

 

 翼(つばさ)を抑(おさ)えていた深海棲艦(しんかいせいかん)たちは突然(とつぜん)の事態(じたい)に遭遇(そうぐう)して、条件反射(じょうけんはんしゃ)であるかのように怪物(かいぶつ)と翼(つばさ)から離(はな)れていた。北方棲姫(ほっぽうせいき)と北方棲妹(ほっぽうせいまい)のことを思(おも)い出(だ)すには、しばらくの時間(じかん)が必要(ひつよう)だった。

 

 港湾棲姫(こうわんせいき)と集積地棲姫(しゅうせきちせいき)は、その中(なか)では比較的(ひかくてき)早(はや)いうちに思(おも)い出(だ)した側(がわ)だった。それよりも、北方水姫(ほっぽうすいき)のほうが早(はや)かった。

 

 怪物(かいぶつ)は、転(ころ)がり落(お)ちようとしている二体(にたい)に注意(ちゅうい)すら払(はら)わず、めったやたらに腕(うで)を振(ふ)り回(まわ)していた。

 その目(め)は見(み)えているのか、いないのか。そもそも、生(い)きているのかすら疑(うた)がわしい。

 

 どこを攻撃(こうげき)してくるかわからないがために、どう回避(かいひ)すればいいのかがわからない。そのような状況(じょうきょう)すら意(い)に介(かい)さず、北方水姫(ほっぽうすいき)は怪物(かいぶつ)へ、落下(らっか)している二体(にたい)へと進(すす)んでいった。

 

 背中(せなか)から生(は)やした魔獣(まじゅう)の腕(うで)を浅瀬(あさせ)に叩(たた)きつけて、一気(いっき)に空中(くうちゅう)へと跳(と)び上(あ)がる。北方棲姫(ほっぽうせいき)と北方棲妹(ほっぽうせいまい)を抱(だ)きとめた。

 

 怪物(かいぶつ)の腕(うで)が横(よこ)から襲(おそ)いかかってきた。魔獣(まじゅう)の腕(うで)を軽々(かるがる)とはじき飛(と)ばし、北方水姫(ほっぽうすいき)たちを宙(ちゅう)へと舞(ま)い上(あ)がらせる。

 

 反対側(はんたいがわ)の腕(うで)が襲(おそ)ってきた。魔獣(まじゅう)の腕(うで)はあらぬ方向(ほうこう)に折(お)れ曲(ま)がっている。

 防(ふせ)げそうにない。

 

 北方水姫(ほっぽうすいき)は、マントで首(くび)から下(した)を覆(おお)ってしっかりと前(まえ)を閉(と)じた。怪物(かいぶつ)の腕(うで)が突(つ)っ込(こ)んでくるのを待(ま)ち、当(あ)たる直前(ちょくぜん)に魔獣(まじゅう)も含(ふく)めた自(みずか)らの艤装(ぎそう)を解除(かいじょ)した。

 

 艤装(ぎそう)が空気(くうき)に変換(へんかん)されてマントが膨(ふく)らみ、足元(あしもと)から凄(すさ)まじい勢(いきお)いで噴(ふ)き出(だ)した。ほんの少(すこ)しではあるが落下(らっか)の速度(そくど)が遅(おそ)くなり、怪物(かいぶつ)の腕(うで)は北方水姫(ほっぽうすいき)の下(した)をすり抜(ぬ)けた。

 




「しむしゅしゅしゅっ! 」については、
→ 艤装を想像力やイメージである程度変形できるという設定を考える
→ イメージで巨大化させた主砲から砲弾を発射し、砲口の前に輪の形に垂らした錨の鎖をひっかけて飛ぶという案を考える
→ 航空駆逐艦があるという話とアニメで航空戦艦が空を飛んだという話を知る
→ 航空海防艦にして空を飛ばそうかと考え直す
→ 飛んだあとのことを考えているうちに本文の内容に落ち着く
と、いうふうにしてできました。

前回からのポーラの飲酒、みんなで回し飲み、記念写真は、ただやってみたかったという理由で、ぬいぐるみは普通に戦闘したら倒せそうにないからわけのわからない倒し方をしようと思って出してみました。
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