艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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第二話「パニック作品の定義とは」

「あ……あーあー……よし、と」

「霧島(きりしま)ー。無理(むり)にキャラ変(か)えようとしなくていーよー」

 

 わかる人(ひと)にはわかっているいつもの決(き)めセリフを言(い)おうとした霧島(きりしま)は、その直前(ちょくぜん)に意図(いと)を察(さっ)しない提督(ていとく)にさえぎられてしまった。

 硬直(こうちょく)していた霧島(きりしま)は咳(せき)をして、何(なん)とかいつものセリフを決(き)めようとしたが、

 

「あの……何(なん)かいいです……どうぞ……」

 

 と、気(き)まずそうにしながらマイクを提督(ていとく)に渡(わた)した。

 

「えーと、そーだねー……みんな集(あつ)まってくれてありがとねー

「もう! それ、那珂(なか)ちゃんがコンサートの時(とき)に使(つか)っている挨拶(あいさつ)だよ! 」

 

 ゆるゆるとした提督(ていとく)の挨拶(あいさつ)に、那珂(なか)がむくれながら指摘(してき)を入(い)れる。

 

「そ、そうだったかなー」

「そうだよ! 」

 

 口(くち)ごもってしまった提督(ていとく)に那珂(なか)は人差(ひとさ)し指(ゆび)を向(む)ける。

 

「それと! 間(ま)が空(あ)きすぎ! 司会進行(しかいしんこう)はもっとテンポよく! 」

「う、うん。そうだねー」

 

 提督(ていとく)は那珂(なか)の言葉(ことば)に同意(どうい)して深呼吸(しんこきゅう)をしたものの、なおしばらく口(くち)を閉(と)ざしたままだった。そのあげくにようやく出(で)てきたのは、

 

「それで、何(なに)から説明(せつめい)しようか? 」

 

 という、脱力(だつりょく)してしまいそうな質問(しつもん)だった。

 

「グダグダじゃん! 」

 

 ほとんど同時(どうじ)に半数以上(はんすういじょう)の艦娘(かんむすめ)からツッコミを受(う)け、提督(ていとく)は無意識(むいしき)に後(あと)ずさる。

 だれかけた室内(しつない)の雰囲気(ふんいき)を元(もと)に戻(もど)したのは、鍋(なべ)をお玉(たま)で鳴(な)らした鳳翔(ほうしょう)だった。

 

「あの、食事(しょくじ)の準備(じゅんび)がありますので、早(はや)くしていただけると助(たす)かるのですけど」

 

 数名(すうめい)の艦娘(かんむすめ)はこの時(とき)のことを、

 

「勇敢(ゆうかん)さでは引(ひ)けを取(と)らないはずの者(もの)でさえ、魂(たましい)を宙(ちゅう)に飛(と)ばしたように動(うご)かなかった」

 

 と、後日(ごじつ)匿名(とくめい)を条件(じょうけん)にして語(かた)っている。

 

 ただし、それが本当(ほんとう)かどうかをあえて確(たし)かめた者(もの)は今(いま)のところいないようだが。

 

「まずはそちらの男性(だんせい)を紹介(しょうかい)していただけますか? 」

「そ、そうですよね」

「早(はや)く済(す)ませてしまいましょう」

 

 赤城(あかぎ)と加賀(かが)が鳳翔(ほうしょう)に賛同(さんどう)の意(い)を示(しめ)したのは、単(たん)に食事(しょくじ)という言葉(ことば)に反応(はんのう)したわけではないだろう。とは言(い)え、建設的(けんせつてき)な雰囲気(ふんいき)に一度(いちど)は戻(もど)りかけたのだ。

 

「あらあら。もしかして身(み)を固(かた)める相手(あいて)のお披露目(ひろめ)かしら? 」

 

 期待(きたい)の分(ぶん)はともかく、残(のこ)りの分(ぶん)に不穏(ふおん)な感情(かんじょう)を持(も)っているらしい陸奥(むつ)が台無(だいな)しにするまでの、一瞬(いっしゅん)のことではあったが。

 

 そして、「こうしたこと」に関(かん)する猛者(もさ)が極(きわ)めて少数(しょうすう)だったのが、この鎮守府(ちんじゅふ)における不幸(ふこう)であった。その動揺(どうよう)ぶりはというと、鳳翔(ほうしょう)でさえもが先(さき)ほどとは別人(べつじん)のように目(め)を宙(ちゅう)に泳(およ)がせてしまったほどなのだ。

 なお、ある種(しゅ)の人々(ひとびと)がどう思(おも)うかは不明(ふめい)ではあるが、「こうしたこと」は心(こころ)の整理(せいり)をつけにくい感情(かんじょう)の類(たぐい)である──意外(いがい)なところで見(み)つけた珍獣(ちんじゅう)の生態(せいたい)に対(たい)して抱(いだ)く好奇心(こうきしん)、あるいは保護観察(ほごかんさつ)などへの衝動(しょうどう)という意味(いみ)で。

 

「うん、落(お)ち着(つ)こう。一旦(いったん)落(お)ち着(つ)こうか。ね? 」

 

 この状況(じょうきょう)で何一(なにひと)つ口調(くちょう)が変(か)わらない提督(ていとく)のことを、豪胆(ごうたん)だと評価(ひょうか)すべきなのであろうか。

 

「それじゃあ、“彼(かれ)”のことを説明(せつめい)するねー」

 

 いや、むしろ何(なに)も考(かんが)えずに自(みずか)ら危険(きけん)に飛(と)び込(こ)む命(いのち)知(し)らずと言(い)ったほうがよさそうだ。

 

 艦娘(かんむすめ)たちの動揺(どうよう)が収(おさ)まっていない中(なか)、提督(ていとく)は“彼(かれ)”に手招(てまね)きをして呼(よ)び寄(よ)せた。

 

 - - - ^ ^ ) _ 旦 ~ ~

 

 海面(かいめん)のずっと下(した)。“彼(かれ)”のことを話(はな)そうとしている提督(ていとく)がいる鎮守府(ちんじゅふ)の近海(きんかい)やや南西側(なんせいがわ)に、この海域(かいいき)を担当(たんとう)する深海棲艦(しんかいせいかん)の栖(すみか)があった。

 

 ──この世界(せかい)の陸(りく)に住(す)む者(もの)の一部(いちぶ)に「妖精(ようせい)さん」を見(み)ることができる者(もの)がいる一方(いっぽう)で、海(うみ)に棲(す)む者(もの)の一部(いちぶ)には「もやもやした闇(やみ)の中(なか)で不規則(ふきそく)に拡大(かくだい)と収縮(しゅうしゅく)を繰(く)り返(かえ)す赤(あか)い“何(なに)か”」の存在(そんざい)を感(かん)じる者(もの)がいる。

 

 深海棲艦(しんかいせいかん)になるのはそうした者(もの)だ。“何(なに)か”の存在(そんざい)を感(かん)じたことによって表皮(ひょうひ)が変化(へんか)し、感(かん)じた存在(そんざい)の大(おお)きさや明(あか)るさによって艦(かん)の種類(しゅるい)や強(つよ)さが決(き)まる……と、考(かんが)えられている。

 

 また、

 

「戦(たたか)いたいという衝動(しょうどう)を高(たか)めることによって、艤装(ぎそう)を展開(てんかい)できるようになる」

 

 とも推測(すいそく)されている……なぜそうなるのかは、海(うみ)に棲(す)む者(もの)にも未(いま)だにわかっていないらしい──

 

 艦娘(かんむすめ)の中(なか)で潜水艦(せんすいかん)に分類(ぶんるい)される、潜(もぐる)ことを得意(とくい)とする者(もの)であっても、たどり着(つ)けるのは海(うみ)の深(ふか)さのごく一部分(いちぶぶん)だけ。それより深(ふか)いところは、海(うみ)に棲(す)む者(もの)の支配下(しはいか)にある。

 

 とは言(い)っても、陸(りく)に住(す)む者(もの)は、潜水艦(せんすいかん)よりも深(ふか)く潜(もぐ)る別(べつ)の方法(ほうほう)があることを知(し)っている。海(うみ)に棲(す)む者(もの)も、その方法(ほうほう)では偵察(ていさつ)だけしかできないことを知(し)っているが、そうさせるつもりはない。

 陸(りく)に住(す)む者(もの)が、その方法(ほうほう)で偵察(ていさつ)できないように妨害(ぼうがい)する。陸(りく)に住(す)む者(もの)にとっての鎮守府(ちんじゅふ)にあたる栖(すみか)は、そのような目的(もくてき)で建(た)てられていた。

 

「サテ」

 

 この海域(かいいき)を取(と)り仕切(しき)る──陸(りく)に住(す)む者(もの)の側(がわ)で言(い)えば提督(ていとく)の立場(たちば)にいるリコリス棲姫(せいき)が口(くち)を開(ひら)いた。

 

「我々(ワレワレ)深海(シンカイ)ニ生(セイ)を受(ウ)ケシ者(モノ)ガ艦娘(カンムスメ)ト戦(タタカ)ウヨウニナッテ以来(イライ)、初(ハジ)メテトモ言(イ)エル異常(イジョウ)ナ事態(ジタイ)ガ起(オ)キタワケダガ」

「エ、何(ナン)ノコト? 」

 

 真(ま)っ先(さき)に口(くち)を開(ひら)いたのは潜水(せんすい)ソ級(きゅう)。

 

「アー、連絡(レンラク)ボードニ何(ナン)カ書(カ)イテタナー……何(ナン)ダッケ? 」

 

 と、言(い)ったのは重巡(じゅうじゅん)ネ級(きゅう)。

 

 それ以外(いがい)の何体(なんたい)かは考(かんが)え込(こ)んだままでいる……深海棲艦(しんかいせいかん)は艦娘(かんむすめ)を一人(ひとり)、二人(ふたり)と数(かぞ)える一方(いっぽう)で、自分(じぶん)たちを一体(いったい)、二体(にたい)と数(かず)えているのだ。

 

「確認(カクニン)シトケヨ! 話(ハナシ)ガ進(スス)マナイダロ! 」

 

 リコリス棲姫(せいき)が怒鳴(どな)りつけても反応(はんのう)が鈍(にぶ)い様子(ようす)を見(み)るに、こちらも何(なに)かと問題(もんだい)を抱(かか)えているようだ。

 

「離島棲姫(リトウセイキ)! オ前(マエ)ガ見(ミ)タコトヲ説明(セツメイ)シテヤレ! 」

「エエ? 私(ワタクシ)ガ!? 」

 

 離島棲姫(りとうせいき)は驚(おどろ)いて言(い)い返(かえ)したものの、相手(あいて)の表情(ひょうじょう)を見(み)て仕方(しかた)がなさそうに席(せき)を立(た)った。

 

「デハ……私(ワタクシ)ガ夜空(ヨゾラ)ヲ見(ミ)アゲテイルト、ハルカ上(ウエ)ノ方(ホウ)カラ奇妙(キミョウ)ナ模様(モヨウ)ガ光(ヒカ)リナガラ、ユックリ降(オ)リテ来(キ)テイルコトニ気(キ)ガツキマシタ」

「見(ミ)タ、見(ミ)タ! アレ凄(スゴ)カッタナ! アンナコト起(オ)キルナンテ思(オモ)ワナカッタ! 」

 

 戦艦(せんかん)レ級(きゅう)が話(はなし)に割(わ)り込(こ)んできた。

 

「ソノ模様(モヨウ)ハ、円(エン)ノ中(ナカ)ニタクサンノ文字(モジ)トイクツカノ記号(キゴウ)ガ書(カ)カレテイルヨウナ……例(タト)ルナラバ……」

「ソウ! 見(ミ)タコトモナイ文字(モジ)バカリ! 本当(ホントウ)ニ凄(スゴ)カッタ! 」

 

 レ級(きゅう)は天井(てんじょう)を見(み)上(あ)げて、目(め)に見(え)ない何(なに)かを受(う)け取(と)るように両手(りょうて)を掲(かか)げた。

 離島棲姫(りとうせいき)は、意図的(いとてき)にレ級(きゅう)の存在(そんざい)を無視(むし)しながら、

 

「ソノ模様(モヨウ)ハ、私(ワタクシ)ノイタ所(トコロ)ヨリ北(キタ)ノ、ズット離(ハナ)レタ海面(カイメン)マデ降(オ)リテクルト、すうっト消(キ)エテシマイマシタ」

 

 と、続(つづ)けたものの、そこにレ級(きゅう)が、

 

「コンナ大(オオ)キク見(ミ)エテルノガダゾ! 信(シン)ジラレナイダロ! 」

 

 と、言(い)いながら割(わ)り込(こ)んできて、掲(かか)げた両手(りょうて)の広(ひろ)さを保(たも)ったまま、胸(むね)の前(まえ)で上下(じょうげ)に急(いそ)がしく挙(あ)げ下(お)ろしをした。

 

「ソノ途端(トタン)ニ、鈍(ニブ)ク輝(カガヤ)ク雲(クモ)ガ星(ホシ)ヲ覆(オオ)イ隠(カク)シナガラ広(ヒロ)ガリ始(ハジ)メテ……」

 

 この時点(じてん)で離島棲姫(りとうせいき)の声(こえ)は若干(じゃっかん)低(ひく)くなっていたうえに目(め)を閉(と)じて拳(こぶし)を握(にぎ)りしめていたのだから、レ級(きゅう)はそれに気(き)がついてもよかったはずなのだ。

 

 しかし、そうしたことに無頓着(むとんちゃく)だったために、

 

「強(ツヨ)イ風(カゼ)ミタイナ音(オト)ガごおおおおっテ聞(キ)コエテ、海(ウミ)カラ島(シマ)ガ現(アラワ)レタンダ! 」

 

 と、言(い)った次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)には、怒(いか)りに包(つつ)まれた離島棲姫(りとうせいき)に頭(あたま)をつかまれていた。

 

「ダ、カ、ラ……説明(セツメイ)ノ邪魔(ジャマ)シナイデクレル? 」

「イヤ、アノ……キ、聞(キ)イテルウチニ話(ハナ)シタクナッテ……ネ? 」

 

 笑(わら)ってごまかそうとしたのは失敗(しっぱい)であった。離島棲姫(りとうせいき)のつかむ手(て)の力(ちから)がさらに強(つよ)くなり、戦艦(せんかん)レ級(きゅう)は声(こえ)にならない声(こえ)をあげる。

 

「トニカク! 」

 

 リコリス棲姫(せいき)の怒鳴(どな)り声(ごえ)にも似(に)た一言(ひとこと)に離島棲姫(りとうせいき)とレ級(きゅう)は争(あらそ)いをやめた。

 

「ソレガ起(オ)キタノガ二週間前(ニシュウカンマエ)ノコトデ、ソレカラ待機(タイキ)ガ続(ツヅ)イテイタダロ? ソノ間(アイダ)ニヨソノ栖(スミカ)デ、太平洋(タイヘイヨウ)深海(シンカイ)棲姫(セイキ)ノ連(ツ)レガ尻尾(シッポ)カラ飲(ノ)ミ込(コ)マレソウニナッタノダ」

 

「ハ? ……チョット待(マ)ッテ。太平洋(タイヘイヨウ)深海(シンカイ)棲姫(セイキ)ノ連(ツ)レッテ、アノ大(オオ)キイヤツダヨネ? 」

 

 南方棲鬼(なんぽうせいき)が自分(じぶん)の耳(みみ)が信(しん)じられないとでも言(い)たげに口(くち)を開(ひら)いた。

 

「ソウダ」

「……ソレガ飲(ノ)ミ込(コ)マレソウニナッタノ? 」

「陸(リク)ニイルいぐあなヲ数倍(スウバイ)大(オオ)キク、狂暴(キョウボウ)ニシタヨウナ怪物(カイブツ)ニナ」

「ソンナノイルノ? 」

 

 リコリス棲姫(せいき)に聞(き)き返(かえ)す南方棲鬼(なんぽうせいき)の疑問(ぎもん)がもっともすぎて、離島棲姫(りとうせいき)も戦艦(せんかん)レ級(きゅう)も争(あらそ)いそのものを忘(わす)れて二体(にたい)のやりとりに関心(かんしん)を向(む)けている。

 

「深海司令本部(シンカイシレイホンブ)カラ怪物(カイブツ)ト戦(タタカ)ッタ時(トキ)ノ映像(エイゾウ)ガ送(オク)ラレテキタカラ、ソレヲ今(イマ)カラミンナニ見(ミ)セル」

 

 そう言(い)うと、リコリス棲姫(せいき)は室内(しつない)に置(お)かれている大(おお)きくて細長(ほそなが)い箱(はこ)と小(ちい)さな箱(はこ)をケーブルで接続(せつぞく)した。

 大(おお)きな箱(はこ)の隅(すみ)のほうに触(ふ)れると、反対側(はんたいがわ)にある丸(まる)いガラス状(じょう)の部分(ぶぶん)が光(ひか)って、幕(まく)のように広(ひろ)がった海藻(かいそう)の内側(うちがわ)に明(あか)るい四角形(しかくけい)を作(つく)る。

 

「アラカジメ言(イ)ッテオクガ、映(ウツ)リハアマリ良(ヨ)クナイゾ」

 

 リコリス棲姫(せいき)が言(い)い終(お)わるのとほとんど同時(どうじ)に海藻(かいそう)の幕(まく)に映像(えいぞう)が表示(ひょうじ)された。

 

 映像(えいぞう)の中央(ちゅうおう)には深海棲艦(しんかいせいかん)が使用(しよう)している文字(もじ)が映(うつ)されていて、その周(まわ)りは文字(もじ)を目立(めだ)たせる装飾(そうしょく)のようなデザインになっている。

 表示(ひょうじ)が切(き)り変(か)わるたびに真(ま)ん中(なか)の文字(もじ)が変(か)わっていく様子(ようす)から察(さっ)するに、カウントダウンを意味(いみ)しているのだろう。撮影(さつえい)した機材(きざい)によるものなのか、リコリス棲姫(せいき)の言(い)うとおり、確(たし)かに映(うつ)りは良(よ)くなかった。

 

 やがて、画面(がめん)に深海棲艦(しんかいせいかん)が使用(しよう)する文字(もじ)がずらずらと表示(ひょうじ)され、特徴(とくちょう)のある音楽(おんがく)が流(なが)れてきた。どこかの泊地棲鬼(はくちせいき)がバストショットで映(うつ)る。

 

「去(サ)ル、BB日(ニチ)CC時(ジ)DD分(フン)。太平洋(タイヘイヨウ)赤道(セキドウ)東北(トウホク)海域(カイイキ)ヲ担当(タントウ)スル中間棲姫(チュウカンセイキ)ノ元(モト)ニ、正体不明(ショウタイフメイ)ノ怪物(カイブツ)ト遭遇(ソウグウ)シタトイウ連絡(レンラク)ガ入(ハイ)ッタ」

 

 どうやら説明(せつめい)をしている泊地棲鬼(はくちせいき)は、中間棲姫(ちゅうかんせいき)の栖(すみか)に所属(しょぞく)しているらしい。原稿(げんこう)を隠(かく)しもせず、棒読(ぼうよ)みなうえに画面(がめん)のほうには目(め)を向(む)けようともしない。

 

 もっとも、記録(きろく)映像(えいぞう)に迫真(はくしん)の演技(えんぎ)は必要(ひつよう)ないと言(い)われれば、そのとおりなのであるが。

 

「ソノ怪物(カイブツ)ハ、太平洋(タイヘイヨウ)深海(シンカイ)棲姫(セイキ)ニ連(ツ)レ添(ソ)ッテイル『じらチャン』ニ、突然(トツゼン)背後(ハイゴ)カラ襲(オソ)イカカッタ」

 

 映像(えいぞう)が切(き)り替(か)わって、太平洋(たいへいよう)深海(しんかい)棲姫(せいき)がいつも連(つ)れているクジラのような姿(すがた)をした“それ”が、驚愕(きょうがく)の表情(ひょうじょう)で口(くち)を開(ひら)く様子(ようす)が映(うつ)った。仕方(しかた)のないこととは言(い)え、完全(かんぜん)な素人(しろうと)演技(えんぎ)だ。

 

「じらチャン……」

「『じらチャン』て呼(ヨ)ンデルンダ……」

 

 海峡夜棲姫(かいきょうよるせいき)の二体(にたい)がぽそりとつぶやく。

 

「悲鳴(ヒメイ)ヲ聞(キ)イテ振(フ)リ向(ム)イタ太平洋(タイヘイヨウ)深海(シンカイ)棲姫(セイキ)ガ見(ミ)タノハ、『じらチャン』ヲ飲(ノ)ミ込(コ)モウトスル、巨大(キョダイ)ナいぐあなノヨウナ怪物(カイブツ)ノ姿(スガタ)ダッタ」

 

 突然(とつぜん)画面(がめん)が真(ま)っ黒(くろ)になり、深海棲艦(しんかいせいかん)が使用(しよう)している文字(もじ)が白(しろ)く表示(ひょうじ)される。

 それを見(み)た北方水姫(ほっぽうすいき)が移動(いどう)を始(はじ)めた。

 

 ──こう記(しる)すと、サンゴ礁(しょう)がある海域(かいいき)にどうして北方水姫(ほっぽうすいき)がいるのかという疑問(ぎもん)を持(も)つのも当然(とうぜん)であろう。

 しかし、ここにいる深海棲艦(しんかいせいかん)たちがそれを気(き)にしているように見(み)えないのだから、深海棲艦(しんかいせいかん)たちにとっては不思議(ふしぎ)でも何(なん)でもないことなのかも知(し)れない。

 

 どこの海域(かいいき)であっても、必(かなら)ず誰(だれ)かが「北方(ほっぽう)~」、「南方(なんぽう)~」という通称(つうしょう)で配属(はいぞく)されるのであろうか……十分(じゅうぶん)にありえることだ──

 

 それはさて置(お)き、北方水姫(ほっぽうすいき)は大急(おおいそ)ぎで北方棲姫(ほっぽうせいき)と北方棲妹(ほっぽうせいまい)のところに移動(いどう)すると、マントで二体(にたい)の目(め)を隠(かく)そうとした。

 まるで「幼(おさな)い子(こ)には刺激的(しげきてき)な内容(ないよう)が含(ふく)まれています」という警告(けいこく)に反応(はんのう)した保護者(ほごしゃ)のような態度(たいど)であったが、不幸(ふこう)なことに北方棲姫(ほっぽうせいき)と北方棲妹(ほっぽうせいまい)がマントの端(はし)から顔(かお)をのぞかせていることには気(き)がついていないようだった。

 




陸に住む者と海に棲む者の双方とも、「性別にかかわりなく」成長の過程で「艦娘」、あるいは「深海棲艦」などになる場合があり、そうなっている間の性別は「不詳」という設定です。

それ以上のことは深く考えていません。
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