艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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第五話「No monster Normally」

 本人(ほんにん)たちが意識(いしき)することなく同(おな)じ時期(じき)に別(べつ)の場所(ばしょ)で同様(どうよう)の行為(こうい)に及(およ)ぶという現象(げんしょう)は、あるいはシンクロニシティなどという言葉(ことば)で表現(ひょうげん)するべきなのだろうか。それともただの偶然(ぐうぜん)として済(す)ませるべきなのか。

 もしかすると、好(この)みの相手(あいて)に「運命(うんめい)ですね」と言(い)われた時(とき)にどう思(おも)うかで答(こた)えは決(き)まるのではないのだろうか。

 

 つまりはそのような現象(げんしょう)、あるいは因果(いんが)、それとも神(かみ)の三重(みえ)ざる天(てん)。はたまた作者(これかいたヤツ)の都合(つごう)……の結果(けっか)かどうかはともかくとして、艦娘(かんむすめ)たちと深海棲艦(しんかいせいかん)たちが海中(かいちゅう)から現(あらわ)れた島(しま)に向(む)かってそれぞれの本拠地(ほんきょち)を出(で)たのは同(おな)じ日(ひ)になった。

 

 ただし、双方(そうほう)の目的(もくてき)は違(ちが)っていた。

 

 艦娘(かんむすめ)たちの目的(もくてき)は、島(しま)の調査(ちょうさ)であった。

 島(しま)にたどり着(つ)くために周辺海域(しゅうへんかいいき)を抑(おさ)えながら前進(ぜんしん)する点(てん)については、普段(ふだん)の任務(にんむ)とそれほど変(か)わるところがない。違(ちが)っているのは、島(しま)の中(なか)を調査(ちょうさ)するための上陸艦隊(じょうりくかんたい)が準備(じゅんび)されていることと、深海棲艦側(しんかいせいかんがわ)が現(あら)われた時(とき)の対処法(たいしょほう)が決(き)められていることであろうか。

 

 この鎮守府(ちんじゅふ)の方針(ほうしん)に従(したが)って、最初(さいしょ)に潜水艦(せんすいかん)たちが島(しま)の周辺海域(しゅうへんかいいき)に向(む)けて出航(しゅっこう)した。

 しばらく時間(じかん)を置(お)いて、駆逐艦(くちくかん)、巡洋艦(じゅんようかん)、水上機母艦(すいじょうきぼかん)で編成(へんせい)された艦隊(かんたい)が鎮守府(ちんじゅふ)を出(で)た。

 

 何(なに)かの異常(いじょう)を見(み)つけた時(とき)にいち早(はや)く知(し)らせることが、これらの艦隊(かんたい)の役割(やくわり)だ。

 

 それからまた時間(じかん)を置(お)いて出航(しゅっこう)したのは駆逐艦(くちくかん)、巡洋艦(じゅんようかん)、空母(くうぼ)で編成(へんせい)された艦隊(かんたい)。潜水艦(せんすいかん)や水上機母艦(すいじょうきぼかん)のカバーと、飛行機(ひこうき)による深海棲艦(しんかいせいかん)への攻撃(こうげき)を任(まか)されている。

 

 次(つぎ)は駆逐艦(くちくかん)、巡洋艦(じゅんようかん)、軽空母(けいくうぼ)、戦艦(せんかん)、揚陸艦(ようりくかん)で編成(へんせい)された艦隊(かんたい)。島(しま)への上陸(じょうりく)とその支援(しえん)が目的(もくてき)だ。

 

 これらに選(えら)ばれなかった艦娘(かんむすめ)たちは、万一(まんいち)の場合(ばあい)に備(そな)えて鎮守府(ちんじゅふ)で待機(たいき)する。

 

 

 これに対(たい)して、深海棲艦(しんかいせいかん)たちの目的(もくてき)は島(しま)にいると考(かんが)えられる怪物(かいぶつ)の利用(りよう)だった。太平洋(たいへいよう)深海(しんかい)棲姫(せいき)とその連(つ)れを襲(おそ)った怪物(かいぶつ)の仲間(なかま)がいるならば、砲撃(ほうげき)や雷撃(らいげき)で追(お)い立(た)てて鎮守府(ちんじゅふ)に向(む)かわせるというものだった。

 

 艦娘(かんむすめ)が怪物(かいぶつ)と戦(たたか)わないといけなくなったところで距離(きょり)をとって艦娘(かんむすめ)を攻撃(こうげき)すれば、艦娘(かんむすめ)たちは怪物(かいぶつ)と深海棲艦(しんかいせいかん)の両方(りょうほう)を相手(あいて)にしないといけなくなる。

 そういう作戦(さくせん)だった。

 

 上空(じょうくう)を偵察機(ていさつき)が飛(と)び、それを追(お)うようにして怪物(かいぶつ)に襲(おそ)われても素早(すばや)く回避(かいひ)のできる駆逐艦(くちくかん)が続(つづ)く。数隻(すうせき)ごとに部隊(ぶたい)を作(つく)り、駆逐古鬼(くちくこき)、駆逐水鬼(くちくすいき)、駆逐棲姫(くちくせいき)に率(ひき)いられて海(うみ)を前進(ぜんしん)する。

 

 少(すこ)し離(はな)れた後(うし)ろを、複数(ふくすう)の潜水艦(せんすいかん)を守(まも)るように囲(かこ)んだ巡洋艦(じゅんようかん)、空母(くうぼ)、水上機母艦(すいじょうきぼかん)、戦艦(せんかん)らが棲鬼(せいき)、棲姫(せいき)らとともに進(すす)む。

 

 リコリス棲姫(せいき)の姿(すがた)もその中(なか)に確認(かくにん)できる。陸上型(りくじょうがた)に分類(ぶんるい)されていることもあってか、艤装(ぎそう)を外(はず)して筏(いかだ)のような船(ふね)に……いや、あれは確(たし)か、深海浮輪(しんかいうきわ)とかいう……

 とにかく、浮(う)くものに乗(の)った状態(じょうたい)で戦艦(せんかん)に引(ひ)っ張(ぱ)られている。

 

 港湾棲姫(こうわんせいき)、飛行場姫(ひこうじょうき)、離島棲姫(りとうせいき)などもそのようにして移動(いどう)している。リコリス棲姫(せいき)と同(おな)じく、島(しま)の海岸(かいがん)近(ちか)くで艤装(ぎそう)を展開(てんかい)する予定(よてい)なのだ。

 

 役割毎(やくわりごと)に別(わか)れて出撃(しゅつげき)する艦娘(かんむすめ)たちに対(たい)して、深海棲艦(しんかいせいかん)たちはほぼ一同(いちどう)が出撃(しゅつげき)という構図(こうず)になった。

 

 

 そのまま時間(じかん)が過(す)ぎる。海(うみ)にも空(そら)にも異常(いじょう)はない。栖(すみか)から島(しま)までの航程(こうてい)を半分以上(はんぶんいじょう)済(す)ませた深海棲艦(しんかいせいかん)の駆逐艦(くちくかん)部隊(ぶたい)は、なおも前進(ぜんしん)を続(つづ)けている。

 出撃(しゅつげき)してしばらくは散開(さんかい)して周囲(しゅうい)に注意(ちゅうい)を払(はら)っていたものの、何(なに)も起(お)こらないことで注意(ちゅうい)はどんどんいい加減(かげん)になっていった。今(いま)では時折(ときおり)思(おも)い出(だ)したように目視(もくし)とレーダーで周囲(しゅうい)を調(しら)べる時間(じかん)以外(いがい)は、皆(みんな)でたわいもない話(はなし)に花(はな)を咲(さ)かせている。

 

「ホントダヨオ! 」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)が皆(みんな)に聞(き)こえるようにしゃべっている。

 

「西(ニシ)ニアル広(ヒロ)イ陸地(リクチ)ノ近(チカ)クニイタヤツガソウ言(イ)ッテタンダ! 陸地(リクチ)ノヤツラガ見(ミ)テイル映像(エイゾウ)デハ、全身(ゼンシン)ヲ毛(ケ)デ覆(オオ)ワレタ怪物(カイブツ)ガ高(タカ)イ塔(トウ)ヲ登(ノボ)ッテタッテ! 」

「全身(ゼンシン)ガ毛(ケ)ダラケ? 」

 

 駆逐古鬼(くちくこき)はそう言(い)うとおかしそうに笑(わら)う。

 

「ドンナ怪物(カイブツ)ナノサ? おっとせい? ソレトモぺんぎん? 」

 

 深海棲艦(しんかいせいかん)なだけあって、まず海(うみ)にいる動物(どうぶつ)が頭(あたま)に思(おも)い浮(う)かぶらしい。

 

「ワザワザ塔(トウ)ニ登(ノボ)ルナンテ、高(タカ)イトコカラ飛(ト)ビ込(コ)ム趣味(シュミ)デモアッタノカナア? 」

 

 駆逐棲姫(くちくせいき)の言葉(ことば)に駆逐古鬼(くちくこき)と周(まわ)りにいた駆逐艦(くちくかん)たちが笑(わら)い声(ごえ)をあげる。話(はなし)を最初(さいしょ)に振(ふ)った駆逐水鬼(くちくすいき)もだ。

 

 そのようなことを言(い)い合(あ)っている最中(さなか)に、駆逐古鬼(くちくこき)、駆逐水鬼(くちくすいき)、駆逐棲姫(くちくせいき)の右肩(みぎかた)の辺(あた)りから音(おと)が鳴(な)り響(ひび)いた。三体(さんたい)は舌打(したう)ちすると少(すこ)し距離(きょり)をとって右肩(みぎかた)の通信機(つうしんき)を叩(たた)く。

 

「コチラりこりす棲姫(セイキ)。東北東(トウホクトウ)ニ出(ダ)シタ偵察機(テイサツキ)ガ、警報(あらーと)ヲ発信(ハッシン)シテスグ消息(ショウソク)ヲ絶(タ)ッタ。ソチラデハ何(ナニ)カ確認(カクニン)シシテイルカ? 」

 

 三体(さんたい)は「いいえ」をそれぞれの言葉(ことば)で返答(へんとう)して通信(つうしん)を終(お)えると、早速(さっそく)寄(よ)り集(あつ)まった。

 

「れーだーニ反応(ハンノウ)ハアッタ? 」

 

 駆逐棲姫(くちくせいき)の問(と)いに駆逐古鬼(くちくこき)と駆逐水鬼(くちくすいき)は首(くび)を横(よこ)に振(ふ)った。

 

「故障(コショウ)ハシテナ……変(ヘン)ナ反応(ハンノウ)ガアル! 」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)の叫(さけ)びに駆逐古鬼(くちくこき)は自分(じぶん)のレーダーの反応(はんのう)を調(しら)べる。

 

「何(ナニ)コレ? 」

 

 しばらく沈黙(ちんもく)した後(あと)で駆逐古鬼(くちくこき)がつぶやく。

 

「雲(クモ)……ジャナイヨナ……動(ウゴ)キガ早(ハヤ)スギル」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)も首(くび)をひねっている。

 

「ドンナ反応(ハンノウ)? 」

 

 唯一(ゆいいつ)レーダーを持(も)っていない駆逐棲姫(くちくせいき)は、双眼鏡(そうがんきょう)で前方(ぜんぽう)を見回(みまわし)ている。

 

「ンー、飛行機(ヒコウキ)ミタイダケド……」

「モシカシテ怪物(カイブツ)? 」

「イヤ、デモ……前(マエ)ニ倒(タオ)シタノハ、いぐあなミタイナヤツダロ? 」

 

 不毛(ふもう)なやりとりがしばらく続(つづ)いたものの、正体(しょうたい)がわからないことに変(か)わりはない。結局(けっきょく)、今(いま)までよりも速度(そくど)を落(お)として厳重(げんじゅう)に警戒(けいかい)しながら前進(ぜんしん)する以外(いがい)の選択肢(せんたくし)はなさそうなのだ。

 

 三体(さんたい)と駆逐艦(くちくかん)たちは、気(き)が乗(の)らない様子(ようす)を隠(かく)そうともせずに前進(ぜんしん)を再開(さいかい)した。

 

「地上(チジョウ)ノヤツラハコウイウノヲ“肝試(キモダメ)シ”ッテ言(イ)ウンダッケ? 」

 

 と、いう駆逐水鬼(くちくすいき)のつぶやきは、誰(だれ)にも聞(き)かれることなく大海原(おおうなばら)に消(き)えていった。

 

 

 ──怪物(かいぶつ)が登場(とうじょう)するアクションシーンが描(えが)かれた作品(さくひん)に詳(くわ)しい人(ひと)であれば、こういうシーンの後(あと)には怪物(かいぶつ)が移動(いどう)するシーンが来(く)るものと思(おも)って身構(みがま)えるであろう。

 

 それがそうした作品(さくひん)の型(かた)であったり、定番(ていばん)であったり、様式美(ようしきび)である……というか、印象(いんしょう)づけるにはそうしたほうが効果(こうか)があるから多用(たよう)された結果(けっか)としてそう呼(よ)ばれるようになり、それを見慣(みな)れた者(もの)もまた、知(し)らず知(し)らずのうちにそうした作法(さほう)への反応(はんのう)が身(み)についた、ということなのかも知(し)れないが。

 

 そうした分析(ぶんせき)はさて置(お)き、今(いま)この瞬間(しゅんかん)には、深海棲艦側(しんかいせいかんがわ)の偵察機(ていさつき)が消息(しょうそく)を絶(た)った海域(かいいき)より南側(みなみがわ)に、怪物(かいぶつ)と呼(よ)ばれている何(なん)らかの存在(そんざい)が移動(いどう)していた。レーダーが反応(はんのう)したとおりに。

 

 それをこのようなほ(・)の(・)め(・)か(・)し(・)で済(す)ませるか、あるいは丹念(たんねん)に描写(びょうしゃ)するかは記(しる)す側(がわ)の事情(じじょう)であって、それへの反応(はんのう)は反応(はんのう)する側(がわ)の事情(じじょう)である。

 

 小難(こむずか)しく書(か)き連(つら)ねようとすれば文字数(もじすう)が増(ふ)えるのと、同様(どうよう)のことでしかないのだ──

 

 - - - “ ( - “ ” - ) ”

 

 鎮守府(ちんじゅふ)の近(ちか)くにある多目的広場(たもくてきひろば)の一(ひと)つでは、待機中(たいきちゅう)の六人(ろくにん)が移動(いどう)の仕方(しかた)についてあれこれと話(はな)していた。白露(しらつゆ)、時雨(しぐれ)、村雨(むらさめ)、夕立(ゆうだち)、デ・ロイテル(De・Ruyter)、そして由良(ゆら)だ。

 

「やっぱりね、曲(ま)がる時(とき)の参考(さんこう)になるのはスピードスケートだと思(おも)うの」

 

 白露(しらつい)が腰(こし)のあたりまで上(あ)げた右手(みぎて)の手(て)のひらを前(まえ)に向(む)かって滑(すべ)るように移動(いどう)させ、その途中(とちゅう)で左(ひだり)に急角度(きゅうかくど)で方向(ほうこう)を変(か)えてみせる。

 

「おぉ~、確かに」

 

 村雨(むらさめ)が何度(なんど)となくうなずいて白露(しらつゆ)に同意(どうい)する。

 

「でも体(からだ)を傾(かたむ)けすぎると下(した)になった艤装(ぎそう)が使(つか)いにくいっぽい? そうすると肩(かた)から下(した)だけ傾(かたむ)けたほうがいいっぽい? 」

 

 夕立(ゆうだち)はそう言(い)うと、上半身(じょうはんしん)の姿勢(しせい)を保(たも)ったまま左右(さゆう)に揺(ゆ)れるように動(うご)く。

 

「両側(りょうがわ)を狙(ねら)うか片方(かたほう)を狙(ねら)うかで変(か)わってくるね。ぶつからないように手(て)を上(うえ)に回(まわ)そうか? 」

 

 時雨(しぐれ)が両腕(りょううで)を頭(あたま)の上(うえ)に掲(かか)げて、左右(さゆう)に振(ふ)りながら言(い)う。

 

「あー、なるほどなるほど。そういう感(かん)じなんだ」

「よさそうですね。試(ため)しに全員(ぜんいん)でやってみましょうか」

「ん? 」

 

 ついついノリで言(い)ってしまったデ・ロイテル(De・Ruyter)は、由良(ゆら)たちが不思議(ふしぎ)そうに自分(じぶん)を見(み)ていることに気(き)がついた。いつのまにか自分(じぶん)も練習(れんしゅう)するメンバーに含(ふく)まれてしまっていることにも。

 

「えー、まじかー。やっばーい」

 

 口(くち)ではそう言(い)うデ・ロイテル(De・Ruyter)だったが、いろいろと試(ため)してみることを嫌(きら)っているわけではない。失敗(しっぱい)しても文句(もんく)はなしだよなどと言(い)いながら、由良(ゆら)の左(ひだり)に横一列(よこいちれつ)に並(なら)ぼうとしている駆逐艦(くちくかん)たちの、さらに左側(ひだりがわ)にポジションを取(と)った。

 左右(さゆう)にいる軽巡洋艦(けいじゅんようかん)が村雨(むらさめ)たちを間(あいだ)に挟(はさ)むような並(なら)びだ。

 

「では腕(うで)を大(おお)きく左右(さゆう)に広(ひろ)ひろげて、ぶつからないように。1、2、3、4で体(からだ)を左(ひだり)に傾(かたむ)けながら、左手(ひだりて)を頭(あたま)の上(うえ)を通(とお)るように回(まわ)して右側(みぎがわ)に上半身(じょうはんしん)をひねる」

 

 由良(ゆら)は説明(せつめい)しながら動(うご)きを実践(じっせん)してみせる。

 

「そして、5、6、7、8で元(もと)に戻(もど)る……その次(つぎ)は反対側(はんたいがわ)ね」

 両腕(りょううで)を左右(さゆう)に広(ひろ)げた状態(じょうたい)に戻(もど)すと、今度(こんど)は体(からだ)を右(みぎ)に傾(かたむ)けながら右手(みぎて)を回(まわ)す。

 

 全員(ぜんいん)が理解(りかい)したとうなずいた。

 

「さあ、皆(みんな)でいいとこ見(み)せちゃおう! 」

 

 由良(ゆら)の合図(あいず)に合(あ)わせて全員(ぜんいん)が説明(せつめい)のとおりに動(うご)き始(はじ)めた。ところがいつの間(ま)にか、足踏(あしぶ)みをしながら頭(あたま)の上(うえ)で広(ひろ)げた両手(りょうて)を左右(さゆう)に振(ふ)る動(うご)きに変(か)わっていく。

 

「あれ? あれれ? 」

 

 白露(しらつゆ)が戸惑(とまど)いの声(こえ)をあげている間(あいだ)も皆(みんな)の動(うご)きは止(と)まらない。

 両手(りょうて)を肩(かた)の高(たか)さで水平(すいへい)に保(たも)って前(まえ)に出(だ)したまま右(みぎ)に向(む)き、続(つづ)いてくるりと左(ひだり)に向(む)く。戸惑(とまど)っている白露(しらつゆ)自身(じしん)も動(うご)きについていっている。

 

 |全員(ぜんいん)怪訝(けげん)な表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていたが、体(からだ)はなおも動(うご)き続(つづ)けている。そのままその場(ば)で横(よこ)に一回転(いっかいてん)し、右手(みぎて)を上(うえ)にあげた状態(じょうたい)で上(うえ)を向(む)いたポーズをとったところで、ようやく一連(いちれん)の動(うご)きが止(と)まった。

 

「これ那珂(なか)ちゃんライブのバックで踊(おど)っている娘(こ)の振付(ふりつけ)っぽい! 」

 

 夕立(ゆうだち)が唐突(とうとつ)に叫(さけ)んだ。

 

「んふふっ。どおりで……」

「ああ、覚(おぼ)えのある動(うご)きだと思(おも)ったのは、それでか……」

 

 村雨(むらさめ)と時雨(しぐれ)が互(たが)いの言葉(ことば)に吹(ふ)き出(だ)してしまう。

 

「それ、やっばいよー。戦闘中(せんとうちゅう)にやりだしたらやばいって」

「それじゃあ、少(すこ)し休憩(きゅうけい)しましょうか。ね? 」

 

 デ・ロイテル(De・Ruyter)までつられて笑(わら)ってしまったので、由良(ゆら)も首(くび)を傾(かし)げて苦笑(くしょう)するしかなかった。

 

 

 この鎮守府(ちんじゅふ)では、日常的(にちじょうてき)に任務(にんむ)をこなすにあたって司令官室(しれいかんしつ)とは別(べつ)に作戦室(さくせんしつ)が設(もう)けられている。

 と、言(い)っても、外観(がいかん)は食堂(しょくどう)とそこまで変(か)わりはない。規模(きぼ)が大(おお)きくなる度(たび)に建物(たてもの)を増(ふ)やしていったために、基地(きち)と言(い)うよりも漁村(ぎょそん)のように広(ひろ)がっているのだ。

 

 作戦室(さくせんしつ)の中央(ちゅうおう)には、机(つくえ)と衝立(ついたて)と機械類(きかいるい)がずらりと並(なら)んでいる。十人(じゅうにん)ほどの艦娘(かんむすめ)と鎮守府(ちんじゅふ)に所属(しょぞく)する人(ひと)がそれぞれの作業(さぎょう)をこなしており、ちらほらと“妖精(ようせい)さん”の姿(すがた)も見(み)える。

 

 作業中(さぎょうちゅう)の者(もの)が用事(ようじ)があると告(つげ)ると、連絡係(れんらくがかり)がそれを受(う)け取(と)って作戦(さくせん)をまとめている艦娘(かんむすめ)に知(し)らせる。まとめた情報《じょうほう》は整理(せいり)されて作戦室(さくせんしつ)の一角(いっかく)に届(とど)けられ、秘書(ひしょ)を務(つと)める艦娘(かんむすめ)がそれを提督(ていとく)に報告(ほうこく)する。

 

 指示(しじ)や連絡(れんらく)がある時(とき)は、この逆(ぎゃく)の順序(じゅんじょ)で伝伝(つた)えられる。

 

 秘書(ひしょ)は交代制(こうたいせい)で、今日(きょう)務(つと)めているのは吹雪(ふぶき)だ。

 

 その作戦室(さくせんしつ)の出入口(でいりぐち)のほうから慌(あわ)ただしく駆(か)けてくる音(おと)が聞(き)こえてきたかと思(おも)うと、防暑服(ぼうしょふく)を着(き)たタシュケント(Тошкент)がノックもそこそこに駆(か)け込(こ)んできた。

 

「急(いそ)いで逃(に)げて、同志(どうし)たち! ヴェールヌイ(Верный)が……ガングート(Гангут)が! 」

 




陸地で見たという映像は「キング・コング」……の、ような映画でも、おもしろい格好のアブナイ何者かが建物に登っていたニュースでも特に問題なしです。
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