艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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第六話「飲み込まれる大地(の恵み)」

 作戦室(さくせんしつ)に駆(か)け込(こ)んできたタシュケント(Тошкент)の言葉(ことば)に、一瞬(いっしゅん)ではあるが室内(しつない)にいる者(もの)たちの動(うご)きが止(と)まった。が、すぐに我(われ)に返(かえ)ったかのように、再(ふたた)び作業(さぎょう)に戻(もど)っていく。

 

「ん-。どうかしたのー? 」

 

 提督(ていとく)は間延(まの)びした声(こえ)でタシュケント(Тошкент)に尋(たず)ねた。

 

「同志提督(どうしていとく)! 」

 

 声(こえ)を聞(き)いたタシュケント(Тошкент)が大急(おおいそ)ぎで提督(ていとく)に近寄(ちかよ)ると、吹雪(ふぶき)を押(お)しのけて両肩(りょうかた)をつかむ。

 

「お願(ねが)いだから早(はや)く逃(に)げて! ガングート(Гангут)が! ……えーと……あの……何(なん)だっけ……」

「えーと……まず落(お)ち着(つ)こうか。はい、し──」

「いや、だから早(はや)く逃(に)げて! 」

 

 いつものセリフでなだめようとしたのが逆効果(ぎゃくこうか)になった。

 提督(ていとく)はタシュケント(Тошкент)にすさまじい勢(いきお)いで揺(ゆ)さぶられ、悲鳴(ひめい)とも呻(うめ)きともとりかねる声(こえ)を出(だ)している。

 

「タシュケント(Тошкент)さん落(お)ちついてください! それでは提督(ていとく)がもちません! 」

 

 吹雪(ふぶき)がそう言(い)ってどうにか止(と)めようとしている最中(さいちゅう)に、再(ふたた)び作戦室(さくせんしつ)の扉(とびら)が開(ひら)いた。

 

「頑張(がんば)っているな、同志諸君(どうししょくん)! 差(さ)し入(い)れを持(も)って来(き)たぞ! 」

 

 ガングート(Гангут)は開口一番(かいこういちばん)にそう言(い)うと、茶器(ちゃき)を運(はこ)ぶワゴンを作戦室(さくせんしつ)の中(なか)に運(はこ)び入(い)れた。鎮守府内(ちんじゅふない)で作(つく)ったのか、ティートローリーと言(い)うよりバスケットワゴンに近(ちか)い。

 

 天板(てんばん)の下(した)にカップやティースプーンなどが入(い)れられ、その下(した)にはティーポット。そしてサモワールという、フタのついた優勝(ゆうしょう)カップの杯(さかずき)から蛇口(じゃぐち)のような注(そそ)ぎ口(ぐち)が出(で)ている湯沸(ゆわ)かし器(き)が入(はい)っている。

 茶(ちゃ)を入(い)れるならば他(ほか)にも容器(ようき)があるだろうに、わざわざサモワールを使(つか)ったのはガングート(Гангут)なりのこだわりなのだろうか。

 

「ああっ、ガングート(Гангут)! 」

 

 タシュケント(Тошкент)は提督(ていとく)から手(て)を離(はな)すと、ガングート(Гангут)のところに駆(か)けていく。そしてガングート(Гангут)の前(まえ)に立(た)ちふさがると、

 

「ヴェールヌイ(Верный)だけでなく同志(どうし)皆(みんな)を革命(かくめい)するつもりなのかい!? そうはさせないよ!! 」

 

 と、叫(さけ)んだ。

 

「いや待(ま)て。どういう意味(いみ)だ、タシュケント(Тошкент)? 革命(かくめい)する? ヴェールヌイ(Верный)? 」

 

 当然(とうぜん)ながらガングート(Гангут)は困惑(こんわく)した。タシュケント(Тошкент)はそれを意(い)に介(かい)さず、一気(いっき)にたたみかける。

 

「そうだよ! 昨日(きのう)の夜(よる)、『ここはひとつ革命(かくめい)をするべきか』ってポツリとつぶやいてたじゃないか! 」

「あ、ああ……」

 

 しばらくして、ガングート(Гангут)は意味(いみ)がわかったという表情(ひょうじょう)をした。

 

「『たまには茶(ちゃ)でも振(ふ)る舞(ま)ってみるか』のつもりで、『革命(かくめい)する』と言(い)ったんだが? 」

「……は? 」

 

 今度(こんど)はタシュケント(Тошкент)が混乱(こんらん)した。いや、混乱(こんらん)しているうえにさらに混乱(こんらん)したと言(い)ったほうが正(ただしい)だろうか。

 

「あ、でも確(たし)か! ついさっきヴェールヌイ(Верный)が一口(ひとくち)飲(の)んだとたんに咳(せ)き込(こ)んで──」

「私(わたし)がどうかした? 」

 

 ガングート(Гангут)の背後(はいご)から声(こえ)がした。

 

「ヴェールヌイ(Верный)! 無事(ぶじ)だったの!? 」

 

 タシュケント(Тошкент)が大慌(おおあわ)てでガングート(Гангут)の背後(はいご)をのぞきこむと、ヴェールヌイ(Верный)が両手(りょうて)で大(おお)きなカゴを持(も)って立(た)っていた。

 

 ──この世界(せかい)においては、ヴェールヌイ(Верный)と響(ひびき)の両方(りょうほう)がいる鎮守府(ちんじゅふ)もあれば、一人(ひとり)の艦娘(かんむすめ)が両方(りょうほう)の名前(なまえ)で呼(よ)ばれている鎮守府(ちんじゅふ)もあるらしい。

 そしてこの鎮守府(ちんじゅふ)では、ヴェールヌイ(Верный)と響(ひびき)は一人(ひとり)の艦娘(かんむすめ)で、艤装(ぎそう)を身(み)につけていない時(とき)は帽子(ぼうし)や髪(かみ)にヘアエクステがついているかどうかで判断(はんだん)しているようだ。

 

 もっとも、この点(てん)については記(しる)している側(がわ)もなぜそうなっているのか説明(せつめい)のしようがないので、そういうものとして受(う)け取(と)ってもらうしかない……設定(せってい)するのが面倒(めんどう)だからやっていないのか、という点(てん)については、察(さっ)することのできる人(ひと)ならばすでに察(さっ)しているであろうから、説明(せつめい)そのものが不要(ふよう)であろう──

 

「え? 生(い)きてるんだよね? 一度(いちど)死(し)んで蘇(よみがえ)ったとかじゃないよね? 」

「済(す)まないけど、何(なに)が言(い)いたいのかわからないよ。どうしたんだい? 」

 

 ヴェールヌイ(Верный)は、突然(とつぜん)駆(か)けてきたかと思(おも)うと理解(りかい)できないことを聞(き)きながら体(からだ)のあちらこちらに触(ふ)れているタシュケント(Тошкент)に、不思議(ふしぎ)そうな表情(ひょうじょう)で尋(たず)ねた。

 

「いや……あの……咳(せ)き込(こ)んで、倒(たお)れ込(こ)んで……」

「うん、間違(まちが)って気管(きかん)に入(はい)ってしまってね。今(いま)は大丈夫(だいじょうぶ)だよ」

 

 心配(しんぱい)そうに見(み)つめるタシュケント(Тошкент)に、ヴェールヌイ(Верный)は静(しず)かに答(こた)えた後(あと)、思(おも)い出(だ)したように小(ちい)さく咳(せき)をした。

 

「あー……よかったあ……」

 

 タシュケント(Тошкент)がその場(ば)に座(すわ)り込(こ)んだ。大(おお)きく息(いき)を吐(は)いて首(くび)を左右(さゆう)に振(ふ)る。

 

「もう……驚(おどろ)いたんだから」

「ふん。もしかして、ひどく勘違(かんちが)いをさせてしまったか? 」

「あー……そろそろいい? 」

 

 提督(ていとく)は、タシュケント(Тошкент)に手(て)を貸(か)して立(た)たせようとするガングート(Гангут)に声(こえ)をかけた。

 

「ええと……つまり、お茶(ちゃ)に変(へん)なものは入(はい)っていないんだね? 」

「もちろんだとも! 」

 

 ガングート(Гангут)は胸(むね)を張(は)って答(こた)えた。

 

「とっておきにしていたチャーガ(Чага)を使(つか)っただけで──」

「チャーガ(Чага)!? チャーガ(Чага)なの、ねえ!? 」

 

 タシュケント(Тошкент)の驚(おどろ)きは今日(きょう)で何回目(なんかいめ)なのだろうか。

 

「え? お茶(ちゃ)がどうかしたの? 」

 

 その様子(ようす)に不安(ふあん)になった提督(ていとく)がガングート(Гангут)に尋(たず)ねる。

 

「いや、チャーガ(Чага)という白樺(しらかば)の木(き)に生(は)えるキノコを煎(せん)じた飲(の)みものなんだ。味(あじ)は濃(こ)くないが、それでも口(くち)に合(あ)わなかったらサモワールに入(はい)っている湯(ゆ)で薄(うす)めてくれ」

「もちろんお茶請(ちゃう)けも用意(ようい)したよ」

 

 ガングート(Гангут)に続(つづ)いて答(こた)えたヴェールヌイ(Верный)が、手(て)にしたカゴを振(ふ)ってみせた。

 

 提督(ていとく)が横(よこ)にいた吹雪(ふぶき)を手(て)で呼(よ)び寄(よ)せた。その耳元(みみもと)で、

 

「なあ、吹雪(ふぶき)さんや。これはいわゆる、“アレ”ではないかのう?」

 

 と、悪(わる)だくみをしているようにささやく。吹雪(ふぶき)もそれに乗(の)って、

 

「ええ、“アレ”でしょうね。突発的(とっぱつてき)に思(おも)いついて、やってしまったりやらかしたりする例(れい)の……」

 

 と、ささやいて少(すこ)し間(ま)を置(お)いてから言(い)った。

 

「シンカー・オブ・アナザー・ディメンジョン(比叡イズム)」

「クック・ザ・アグレッシブ(磯風マインド)」

 

 提督(ていとく)と吹雪(ふぶき)がほぼ同時(どうじ)に口(くち)に出(だ)した言葉(ことば)の意味(いみ)については、二人(ふたり)の間(あいだ)ですら通(つう)じているかどうかも怪(あや)しいのだから、深(ふか)く考(かんが)えなくてもいいだろう。むしろ、二人(ふたり)の声(こえ)が届(とど)いていたタシュケント(Тошкент)の、

 

「えーと……ソーイ・クフー(創意工夫)の話(はなし)をしてるってこと? 」

 

 と、いう質問(しつもん)のほうがまだ意味(いみ)を理解(りかい)しやすいくらいだ。

 

「ふん。だったら、そういうことにしておいてやろう」

 

 ガングート(Гангут)の反応(はんのう)から察(さっ)するに、あまり良(よ)い意味(いみ)で使(つか)われていなさそうなことも。

 

「あー、そーだ」

 

 提督(ていとく)は、自分(じぶん)の言葉(ことば)に対(たい)する反応(はんのう)を完全(かんぜん)に無視(むし)して言(い)う。

 

「みんなでお茶(ちゃ)するんなら、“彼(かれ)”も呼(よ)ぼうか?」

「あの……作戦中(さくせんちゅう)ですから、あまり機密(きみつ)に触(ふ)れるようなことは……」

 

 吹雪(ふぶき)が、作戦室(さくせんしつ)に部外者(ぶがいしゃ)を入(い)れることに注意(ちゅうい)を促(うなが)したものの提督(ていとく)は、

 

「まあ、いいんじゃない。たぶん見(み)てもわかんないよ」

 

 と、いともあっさりと決(き)めてしまった。

 

 - - - ( * ´ 艸 ` )

 

 深海棲艦(しんかいせいかん)の駆逐艦(くちくかん)部隊(ぶたい)の混乱(こんらん)ぶりは、鎮守府(ちんじゅふ)の比(ひ)ではなかった。

 

「全然(ゼンゼン)いぐあなジャナイジャナイ! オノレ……オノレーッ!! 」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)の怒(いか)りは、この場(ば)にいないリコリス棲姫(せいき)にぶつけられた。もっとも、リコリス棲姫(せいき)にしても深海司令本部(しんかいしれいほんぶ)にしても、イグアナのような怪物(かいぶつ)の他(ほか)に巨大(きょだい)な鳥(とり)が現(あらわ)れるとは思(おも)ってもいなかっただろう。

 

 そうなのだ。駆逐艦(くちくかん)部隊(ぶたい)の探知(たんち)したレーダーの反応(はんのう)は、巨大(きょだい)な鳥(とり)によるものだったのだ。

 

 大(おお)きさは零式水偵(れいしきすいてい)と同(おな)じくらい、あるいは二式飛行艇(にしきひこうてい)の半分(はんぶん)くらいだが、攻撃(こうげき)してくる時(とき)の速(はや)さはそれをはるかに超(こ)える。

 通(とお)り過(す)ぎた直後(ちょくご)に波(なみ)が、その後(あと)に奇妙(きみょう)な音(おと)が轟(とどろ)く。戦艦(せんかん)の主砲弾(しゅほうだん)を何十倍(なんじゅうばい)にも大(おお)きくした塊(かたまり)が突(つ)っ込(こ)んで来(く)ると表現(ひょうげん)したほうが、適切(てきせつ)かも知(し)れない。

 

 深海側(しんかいがわ)の駆逐艦(くちくかん)が何体(なんたい)も怪物(かいぶつ)の足指(あしゆび)にすくいあげられ、あるいは引(ひ)っかけられて宙(ちゅう)を舞(ま)い、戦闘不能(せんとうふのう)に追(お)い込(こ)まれた。駆逐棲姫(くちくせいき)も頭(あたま)に爪(つめ)の一撃(いちげき)を受(う)け、帽子状(ぼうしじょう)の覆(おお)いは原形(げんけい)をとどめていない。

 

 反撃(はんげき)は効(き)いているのか、いないのか。

 艦娘(かんむすめ)たちと戦(たたか)うための主砲(しゅほう)は、突(つ)っ込(こ)んでくる時(とき)こそ狙(ねら)いを定(さだ)められるものの、怪物(かいぶつ)の硬(かた)い足(あし)ややわらかい羽毛(うもう)に弾(はじ)かれて痛手(いたで)を与(あた)えているようには思(おも)えない。

 

 艦娘(かんむすめ)たちの操(あやつ)る飛行機(ひこうき)を追(お)い払(はら)い、叩(たた)き落(お)とすことが目的(もくてき)の対空砲(たいくうほう)となると、主砲(しゅほう)よりも弾丸(たま)が小(ちい)さいので役(やく)に立(た)っているかどうかすらわからない。それどころか、ただ怪物(かいぶつ)を怒(おこ)らせるだけになっているようですらある。

 艦娘(かんむすめ)たちの鎮守府(ちんじゅふ)に追(お)い立(た)てるどころか、一方的(いっぽうてき)に損害(そんがい)を受(う)けながら右往左往(うおうさおう)するしかない状態(じょうたい)なのだ。

 

「りこりす棲姫(セイキ)、聞(キ)コエルカ!? コンナノドウヤッテ相手(アイテ)スレバイイノヨ!! 」

 

 通信機(つうしんき)に話(はな)しかける駆逐棲姫(くちくせいき)の声(こえ)は、悲鳴(ひめい)に近(ちか)かった。

 

「急(イソ)イデ空母(クウボ)ノ艦載機隊(カンサイキタイ)ヲ向(ム)カワセル。オマエタチハ本隊(ホンタイ)ニ合流(ゴウリュウ)シロ」

「ソンナコト言(イ)ッテモ、逃(ニ)ゲ回(マワ)ルノガ精一杯(セイイッパイ)ナンダッテバ!! 」

「何(ナン)トカシテ振(フ)リ切(キ)レ。以上(イジョウ)」

 

 実際(じっさい)のところそれ以外(いがい)に言(い)いようはないし、方法(ほうほう)もないのだろうが、それができるかどうかは別(べつ)の話(はなし)だ。駆逐棲姫(くちくせいき)が大声(おおごえ)で文句(もんく)をわめきちらすのも当然(とうぜん)であった。

 

 艤装(ぎそう)の思(おも)ってもいなかった欠点(けってん)が露呈(ろてい)した。と、言(い)うよりも、体(からだ)の構造上(こうぞうじょう)後方(こうほう)への攻撃(こうげき)が極(きわ)めて困難(こんなん)なことが、撤退(てったい)を難(むずか)しくしていた。

 前(まえ)を見(み)るか、後(うし)ろを見(み)るか。怪物(かいぶつ)の動(うご)きを警戒(けいかい)し、いつでも砲撃(ほうげき)できるように身構(みがま)えながらの移動(いどう)は、思(おも)うよりもずっと難(むず)かしい。

 

 教訓(きょうくん)を込(こ)めた笑(わら)い話(ばなし)であろうが、注意(ちゅうい)を怠(おこた)っていたある艦(かん)が、水面(すいめん)からほんの少(すこ)し顔(かお)を覗(のぞ)かせていた岩礁(がんしょう)につまずいて顔面(がんめん)から海面(かいめん)にぶつかったとか、海面(かいめん)を転(ころ)がって行(い)ったとかいうのを聞(き)いたことがある。

 撤退中(てったいちゅう)にそうなるとは思(おも)いたくないが、ならないとは限(かぎ)らない。それが自分(じぶん)の最期(さいご)の原因(げんいん)になるなんて、深海棲艦(しんかいせいかん)でなくとも絶対(ぜったい)にゴメンだろう。

 

「アア、モウ! 次(ツギ)ニ突(ツ)ッ込(コ)ンデ来(キ)タラ撃(ウ)チマクッテ、スグニ逃(ニ)ゲヨウ! 」

「ソレシカナサソウダナ! 」

 

 駆逐棲姫(くちくせいき)の言葉(ことば)に、遠(とお)くで方向転換(ほうこうてんかん)している怪物鳥(かいぶつどり)に狙(ねら)いをつけていた駆逐水鬼(くちくすいき)が応(おう)じると、

 

「オマエタチモ聞(キ)イタナ! へまスルンジャナイヨ!! 」

 

 と、周(まわ)りにいる駆逐艦(くちくかん)たちに叫(さけ)んだ。

 

 各部隊(かくぶたい)の駆逐艦(くちくかん)はうなずいて返事(へんじ)をすると、損害(そんがい)の大(おお)きい者(もの)は艤装(ぎそう)を解(と)いて水中(すいちゅう)に逃(のが)れた。

 

 ──この世界(せかい)の鬼級(おにきゅう)や姫級(ひめきゅう)ではない深海棲艦(しんかいせいかん)は、一度(いちど)艤装(ぎそう)を解(と)くと栖(すみか)に戻(もど)るまで丸腰(まるごし)、つまりは普通(ふつう)の魚(さかな)とほとんど変(か)わらない状態(じょうたい)になる。そのため、艤装(ぎそう)をつけ慣(な)れている者(もの)のほうが、艤装(ぎそう)を解(と)いた後(あと)にかえって心細(こころぼそ)くなることがあるとも言(い)われている。

 

「例(タト)エルナラ、ソウ……裸(ハダカ)ニナルノヲ恥(ハ)ズカシク思(オモ)ウヨウナ……『ムシロ興奮(コウフン)スル? 』……ソ、ソウカ……強(ツヨ)イナ、オマエ……」

 

 と、言(い)う会話(かいわ)があったかどうかまではわからない──

 

 駆逐古鬼(くちくこき)の返事(へんじ)はなかった。すっかり頭(あたま)に血(ち)が上(のぼ)ってしまっていて、わけのわからない叫(さけ)び声(ごえ)を出(だ)しながら主砲(しゅほう)を乱射(らんしゃ)している。

 

 その様子(ようす)を見(み)た駆逐棲姫(くちくせいき)が駆逐水鬼(くちくすいき)を呼(よ)び寄(よ)せて、耳元(みみもと)で何(なに)かささやいた。駆逐水鬼(くちくすいき)は怪物鳥(かいぶつどり)の位置(いち)を探(さぐ)りながらその言葉(ことば)にうなずく。

 

「来(キ)タゾ! あいつニ砲口(ホウコウ)ヲ向(ム)ケロ! 弾丸(タマ)ヲバラマケ!! 」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)がそう叫(さけ)んだのは、それからほんの数秒後(すうびょうご)のことだった。

 駆逐艦(くちくかん)たちは、駆逐水鬼(くちくすいき)が主砲(しゅほう)を構(かま)えた方向(ほうこう)に頭(あたま)を向(む)けて一斉(いっせい)に砲撃(ほうげき)を開始(かいし)した。

 

 怪物鳥(かいぶつどり)に傷(きず)を与(あた)えているかどうかはわからない。しかし弾丸(だんがん)という固形物(こけいぶつ)がぶつかるのを嫌(いや)がって進路(しんろ)を変(か)えるならば、正面衝突(しょうめんしょうとつ)は避(さ)けられるかも知(し)れない。

 

 だから撃(う)つ。

 とにかく撃(う)つ。

 ひたすら撃(う)つ。

 

 対空砲(たいくうほう)も使(つか)って、文字通(もじどおり)の弾幕(だんまく)を空中(くうちゅう)に広(ひろ)げる。

 

「クラエ、〆&√#∞@ゞ!! 」

 

 駆逐古鬼(くちくこき)が口汚(くちぎたな)く罵(ののし)りながら砲撃(ほうげき)する。駆逐棲姫(くちくせいき)も駆逐水鬼(くちくすいき)も、ただただ撃(う)ち続(つづ)ける。

 

 怪物鳥(かいぶつどり)の羽(はね)の模様(もよう)が目(め)に映(うつ)ったかと思(おも)った次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、すさまじい音(おと)とともに四体(よんたい)のイ級(きゅう)が宙(ちゅう)を舞(ま)った。艤装(ぎそう)の効果(こうか)で水面(すいめん)を跳(は)ねるように転(ころ)がり、その度(たび)に水(みず)しぶきを上(あ)げる。

 

 状況(じょうきょう)は理想通(りそうどお)りではない。だが、今(いま)でなければ次(つぎ)があるかどうかはわからない。

 

「撤退(テッタイ)ダ! 駆逐棲姫(クチクセイキ)ニ続(ツヅ)ケ!! 」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)は大声(おおごえ)で叫(さけ)んだ。

 




作戦室でのやりとりは、
→ 某ゲームのポンコ……「地獄CEO」ネタを見て、お茶で一休みするシーンを入れたくなる
→ 英国式の茶会以外が知りたくなって、「艦隊これくしょん」に登場する艦船の出身国のお茶事情を調べる
→ サモワールというものを見つけて使ってみようと考える
→ お茶以外のソフトドリンクと茶の代用品も知りたくなって調べるうちに、「お茶」を使ったダジャレができるという理由でチャーガを選ぶ
と、いうふうに決めていったのですが、サモワールを見つける前に「ベリーを使った飲み物をこぼしたのを出血と勘違いする」というネタを考えていて、出血を連想させるようなまぎらわしいことを言っていたというシーンを作るために「革命がどうこうとつぶやいていた」ということにしていたので、それを組み合わせたらああなりました。

「お茶の時間だコラァ!(某ヤンキー漫画ふう)」や「まさかのための○○式お茶の時間!(某スペイン宗教裁判スケッチふう)」、思わせぶりなBGMや笑い声、決め台詞とともに現れる例のヒーローふうなどのほか、ドアを蹴破った足が抜けない、勢いそのままにドアが戻ってくるなど適当にネタとアドリブで応用をきかせてください。

チャーガの歴史や効能は調べてもよくわかりませんでした。16世紀から17世紀の頃には健康にいいと信じられて民間療法のようなかたちで用いられてきた「らしい」ので、ガングートは「艦の記憶のようなもの」で乗組員が「昔、健康にいいと言われて飲んだことがある」と言っていたことを覚えていて、取り寄せたということにしています。

話が長くなりそうだったのでお茶請けや「ヴァレーニエ」について書くのはやめました。
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