艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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前回の「比叡イズム」と「磯風マインド」をカレーの作り方で説明すると、

足の長さくらいの魚の身をくり抜いて抜き取った魚肉をこねたもの、穀物、野菜、その他をつめてスパイスを加え、重しを乗せて窯で熱する献立を考えつくのが比叡イズム(Thinker of another dimension)

ターメリックがなくてもコーンミール、あるいはきび粉を代わりに使えば何とかなるだろうで料理を始めようとするのが磯風マインド(Cook the aggressive)

です。

完全に思いつきなので無理に試す必要はありませんし、おススメはしません。自己責任の範囲内でよろしく。



第七話「オマエ、嫌がらせがしたいだけだよな?」

「撤退(テッタイ)ダ! 駆逐棲姫(クチクセイキ)ニ続(ツヅ)ケ!! 」

「倒(タオ)レタヤツヲ抱(カカ)エロ! 急(イソ)ゲ!! 」

 

 先(ま)ず駆逐水鬼(くちくすいき)が、次(つぎ)に駆逐棲姫(くちくせいき)が叫(さけ)んだ。我(われ)に返(かえ)った駆逐艦(くちくかん)が慌(あわ)てて駆逐棲姫(くちくせいき)の後(あと)を追(お)い、比較的(ひかくてき)冷静(れいせい)な駆逐艦(くちくかん)が四体(よんたい)がかり、五体(ごたい)がかりで目(め)を回(まわ)している駆逐艦(くちくかん)を囲(かこ)むようにして持(も)ち上(あ)げてその後(あと)を追(お)った。

 

 駆逐古鬼(くちくこき)はなおも砲撃(ほうげき)を続(つづ)けている。駆逐棲姫(くちくせいき)の予想(よそう)したとおりに。

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)は、カーリングの選手(せんしゅ)が石(いし)を放(はな)つ時(とき)のように姿勢(しせい)を低(ひく)くして駆逐古鬼(くちくこき)の正面(しょうめん)に回(まわ)り込(こ)むと、一気(いっき)にその体(からだ)をすくうようにして持(も)ち上(あ)げた。

 駆逐古鬼(くちくこき)が何(なに)かわめきながら抵抗(ていこう)するが、説明(せつめい)をしている暇(ひま)はない。

 

「右(ミギ)カラ来(ク)ル! 」

 

 駆逐水鬼(くちくすいき)の言葉(ことば)に反応(はんのう)した駆逐古鬼(くちくこき)が、体(からだ)を持(も)ち上(あ)げられたまま腕(うで)だけ動(うご)かして怪物鳥(かいぶつどり)を目(め)がけて主砲(しゅほう)を撃(う)つ。

 駆逐水鬼(くちくすいき)が方向(ほうこう)を変(か)えると、轟音(ごうおん)が横(よこ)から聞(き)こえてきた。怪物鳥(かいぶつどり)の攻撃(こうげき)を避(さ)けることに成功(せいこう)したのだ。

 

「イイゾ! 次(ツギ)モワタシノ言(イ)ウトオリニ砲撃(ホウゲキ)ヲ──」

「ソコデシャベルナ! クスグッタイ!! 」

 

 ただ、どうにもしまらないのが問題(もんだい)だと言(い)えば問題(もんだい)だった。

 

 - - - ( . . ) φ メ モ メ モ

 

 しまらないという点(てん)では、鎮守府側(ちんじゅふがわ)の偵察(ていさつ)に出撃(しゅつげき)した艦隊(かんたい)のやり取(と)りもかなりのものだった。

 

 普段(ふだん)の作戦(さくせん)ならば既(すで)に遭遇(そうぐう)しているであろう深海棲艦(しんかいせいかん)の姿(すがた)が一向(いっこう)に確認(かくにん)できない。怪物鳥(かいぶつどり)に襲(おそ)われているからなのだが、そのような事態(じたい)など知(し)りようもない以上(いじょう)、肩(かた)すかしを食(く)った気分(きぶん)になるのは当然(とうぜん)であった。

 前例(ぜんれい)のない状態(じょうたい)に最初(さいしょ)は戸惑(とまど)い、やがて焦(あせ)りを感(かん)じて神経質(しんけいしつ)になった結果(けっか)、普段(ふだん)以上(いじょう)に疲(つか)れてしまっている。偵察機(ていさつき)で出撃(しゅつげき)した妖精(ようせい)さんの報告(ほうこく)を聞(き)く水上機母艦(すいじょうきぼかん)千歳(ちとせ)の表情(ひょうじょう)も、どことなく精彩(せいさい)を欠(か)いているように見(み)える。

 

 その近(ちか)くで報告(ほうこく)を聞(き)いている鬼怒(きぬ)もそうだ。もっとも、

 

「ねー、それで島(しま)はどんな風(ふう)だった? 何(なに)かあった? 」

 

 と、尋(たず)ねている時津風(ときつかぜ)とそのすぐ横(よこ)にいる雪風(ゆきかぜ)は、今(いま)は好奇心(こうきしん)のほうが上回(うわまわ)っているようだが。

 

「もう少(すこ)し待(ま)っててね。今(いま)聞(き)いているところだから」

 

 千歳(ちとせ)があやすように時津風(ときつかぜ)に言(い)う。しばらく妖精(ようせい)さんの言葉(ことば)に耳(みみ)を傾(かたむ)けて、

 

「どうも至(いた)る所(ところ)岩(いわ)だらけで、植物(しょくぶつ)も動物(どうぶつ)も見当(みあ)たらないみたいね……」

 

 と、つぶやいた。

 

「人(ひと)の気配(けはい)もないのですか? 」

「そうみたいね」

 

 千歳(ちとせ)は、時津風(ときつかぜ)よりいくぶん静(しず)かな口調(くちょう)で尋(たず)ねる雪風(ゆきかぜ)にうなずいた。

 

「ん~~~~。えー……そうすっと、突然(とつぜん)現(あらわ)れたあの男(おとこ)の人(ひと)は島(しま)の住人(じゅうにん)でないってこと? 」

 

 鬼怒(きぬ)が悩(なや)んでいることを体(からだ)で示(しめ)しすかのように、頭(あたま)を左右(さゆう)に揺(ゆ)らせながら言(い)った。

 

「それはまだわからないわね」

 

 千歳(ちとせ)は右手(みぎて)を頬(ほお)にあてて考(かんが)えながら答(こた)える。

 

「洞窟(どうくつ)みたいな所(ところ)に隠(かく)れて生活(せいかつ)しているかも知(し)れないし……やっぱり上陸(じょうりく)してみないとわからないわ」

 

 あきらめたように首(くび)を振(ふ)って、千歳(ちとせ)は時刻(じこく)を確認(かくにん)した。

 

「次(つぎ)の地点(ちてん)に移動(いどう)するまでまだ時間(じかん)あるわね……どうする? 少(すこ)し早(はや)いけど、移動(いどう)しようか? 」

 

 最初(さいしょ)に時津風(ときつかぜ)が、少(すこ)し遅(おく)れて雪風(ゆきかぜ)が賛同(さんどう)した。鬼怒(きぬ)はと言(い)えば大(おお)きく伸(の)びをして、

 

「じゃあ、そうしよっか~。あ~~~、何(なん)かもう、飽(あ)きちゃったよ~」

 

 などとこぼしている。

 

「はいはい、シャキッとする! 行(い)くと決(き)めたらすぐに準備(じゅんび)! 」

 

 千歳(ちとせ)が鬼怒(きぬ)を急(せ)かしていると、周囲(しゅうい)を見回(みまわ)していた雪風(ゆきかぜ)が小首(こくび)を傾(かし)げた。

 

「左前(ひだりまえ)の方(ほう)に何(なに)か見(み)えませんか? 」

「左前(ひだりまえ)? どのあたり──」

 

 千歳(ちとせ)が雪風(ゆきかぜ)に場所(ばしょ)を確認(かくにん)しようとしたのとほとんど同時(どうじ)に、左側(ひだりがわ)後方(こうほう)に大(おお)きな水柱(みずばしら)が上(あ)がった。水道(すいどう)の蛇口(じゃぐち)を上(うえ)に向(む)けて全開(ぜんかい)にした時(とき)の、何十倍(なんじゅうばい)という高(たか)さと幅(はば)で海面(かいめん)から湧(わ)きあがった水(みず)の塊(かたまり)が、次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)には轟音(ごうおん)をたてながら崩(くず)れていく。

 それが終(お)わらないうちに、四人(よにん)は移動(いどう)を開始(かいし)していた。

 

「んにゃぁ゛ぁ゛ぁ゛~~!! 何(なん)なのアレ! 戦艦(せんかん)の主砲(しゅほう)!? 」

 

 鬼怒(きぬ)がひきつった表情(ひょうじょう)で悲鳴(ひめい)を上(あ)げる。

 

「でもでも! 妖精(ようせい)さんは、船(ふね)を見(み)てないって──あっ! 」

 

 時津風(ときつかぜ)は反論(はんろん)している途中(とちゅう)で言葉(ことば)を切(き)り、口(くち)に手(て)を当(あ)てた。

 

「もしかして、島(しま)からの砲撃(ほうげき)なの!? 」

「でも、それだと遠(とお)すぎない!? 」

 

 今度(こんど)は雪風(ゆきかぜ)が時津風(ときつかぜ)に反論(はんろん)した。

 

「じゃあ、潜水艦(せんすいかん)は……ないか!! 」

 

 時津風(ときつかぜ)は再(ふたた)び反論(はんろん)しようとしたものの、自分(じぶん)の主張(しゅちょう)に無理(むり)があることを自分(じぶん)で認(みと)めてしまった。

 

 こうして会話(かいわ)をしている間(あいだ)も全員(ぜんいん)が周囲(しゅうい)を警戒(けいかい)して、次(つぎ)の攻撃(こうげき)を見(み)つけようとしている。

 

 先頭(せんとう)を走(はし)るのは千歳(ちとせ)、左横(ひだりよこ)を少(すこ)し遅(おく)れて鬼怒(きぬ)。その後方(こうほう)やや離(はな)れたところを、時津風(ときつかぜ)と雪風(ゆきかぜ)が航跡(こうせき)を避(さ)けるようにして左右(さゆう)に並(なら)んで進(すす)んでいる。

 

「左横(ひだりよこ)! 遠(とお)い! 」

 

 左側(ひだりがわ)前方(ぜんぽう)のはるかに離(はな)れたところに水柱(みずばしら)が上(あ)がって一呼吸(ひとこきゅう)もしないうちに鬼怒(きぬ)が叫(さけ)んだ。先(さき)ほどと同(おな)じぐらいの大(おお)きさだが、二度目(にどめ)となると驚(おどろ)きかたにも余裕(よゆう)が出(で)てくる。

 

「……変(へん)だと思(おも)いませんか? 」

「うん、一発(いっぱつ)ずつしか撃(う)ってきてない! 」

 

 雪風(ゆきかぜ)の質問(しつもん)に時津風(ときつかぜ)が応(おう)じる。

 

「何(なに)がしたいのかなあ、ホントにぃ……おにおこだ~」

 

 鬼怒(きぬ)は言葉(ことば)こそ怒(おこ)っているが、その目(め)は動(うご)くもの一(ひと)つ見逃(みのが)すまいと警戒(けいかい)を続(つづ)けている。

 

「今(いま)鎮守府(ちんじゅふ)に電文(でんぶん)を送(おく)り終(お)わったわ! あとは偵察機(ていさつき)を戻(もど)らせて──」

 

 千歳(ちとせ)は最後(さいご)まで口(くち)にすることができなかった。艦隊(かんたい)の前方(ぜんぽう)に三度目(さんどめ)の水柱(みずばしら)が上(あ)がったのだ。

 

 水柱(みずばしら)は我(われ)を忘(わす)れて見上(みあ)げる全員(ぜんいん)の前(まえ)でまたたくうちに大(おお)きくなり、その一部(いちぶ)は早(はや)くも崩(くず)れようとしている。このままでは、飲(の)み込(こ)まれてしまうのは確実(かくじつ)だった。

 

 

「え? 千歳(ちとせ)たちの艦隊(かんたい)が? 」

「『しま(島)のほうがく(方角)よりほうげき(砲撃)らしきものをう(受)く』──です」

 

 吹雪(ふぶき)の言葉(ことば)に提督(ていとく)は首(くび)を傾(かし)げる。

 

「砲撃(ほうげき)のようなもの? 」

 

 提督(ていとく)の質問(しつもん)に吹雪(ふぶき)は少(すこ)し考(かんが)えてから、

 

「深海棲艦(しんかいせいかん)の砲撃(ほうげき)とは違(ちが)っているんじゃないでしょうか? 場所(ばしょ)は──」

 

 と、答(こた)えてから、作戦室(さくせんしつ)の壁(かべ)に視線(しせん)を移(うつ)した。ちょうどそこでは、睦月(むつき)が地図(ちず)を貼(は)った板(いた)に、千歳(ちとせ)たちの艦隊(かんたい)を意味(いみ)する色(いろ)つきのピンを刺(さ)している。

 

「あの島(しま)から北北西(ほくほくせい)に約(やく)──」

「ちょっと待(ま)て! 島(しま)からの砲撃(ほうげき)が届(とど)いただと!? 」

 

 ガングート(Гангут)が吹雪(ふぶき)の説明(せつめい)を遮(さえぎ)った。

 

「ガングート(Гангут)さん落(お)ち着(つ)いてください。まだ島(しま)からの砲撃(ほうげき)だとは決(き)まっていませんよ」

「だが、深海棲艦(しんかいせいかん)もそれ以外(いがい)の不審(ふしん)な艦船(かんせん)も見(み)つかっていないのだろう? 」

「んー。だとすると、姿(すがた)を隠(かく)して移動(いどう)しているとか? 」

 

 提督(ていとく)のポツリとつぶやいた一言(ひとこと)が吹雪(ふぶき)とガングート(Гангут)の口論(こうろん)を沈黙(ちんもく)させた。

 

「あ、そう言(い)えばさー。“君(きみ)”の世界(せかい)には、そういうのはあった? 」

「うえっ!? 」

 

 唐突(とうとつ)に話題(わだい)を振(ふ)られた“彼(かれ)”は奇妙(きみょう)な声(こえ)を上(あ)げると、驚(おどろ)いた表情(ひょうじょう)のまま提督(ていとく)に顔(かお)を向(む)ける。しばらく口(くち)ごもってから、

 

「撃(う)つものがある船(ふね)は、映像(えいぞう)や写真(しゃしん)なんかで見(み)たことがあります」

 

 と、答(こた)えた。

 

「あれ、どうしたの? ずいぶん緊張(きんちょう)してるね? 」

 

 タシュケント(Тошкент)が不思議(ふしぎ)そうに尋(たず)ねる。

 

「いや、そりゃしますよ。こんなに大勢(おおぜい)がいる所(ところ)の、一番(いちばん)偉(えら)い人(ひと)なんでしょ? 」

「「「「「「「「「「あー……」」」」」」」」」」

 

 “彼(かれ)”の言葉(ことば)を聞(き)いた艦娘(かんむすめ)と鎮守府(ちんじゅふ)に所属(しょぞく)する人(ひと)たちの口(くち)から、ほぼ同時(どうじ)に同(おな)じ言葉(ことば)が漏(も)れた。

 

「そう言(い)えばそうだったな」

「すっかり忘(わす)れてたね」

 

 ガングート(Гангут)とヴェールヌイ(Верный)がつぶやき、吹雪(ふぶき)とタシュケント(Тошкент)がうなずいている。

 

「……えっと……何(なん)なの、この反応(はんのう)? 」

「お、お気(き)になさらず……」

 

 不思議(ふしぎ)そうに尋(たず)ねた提督(ていとく)に答(こた)える吹雪(ふぶき)の言葉(ことば)は、何(なん)のフォローにもなっていない。本人(ほんにん)もそれをわかっているらしく、

 

「そ、そうだ! お名前(なまえ)、教(おし)えていただけますか? 」

 

 と、慌(あわ)てて“彼(かれ)”に話題(わだい)を振(ふ)った。

 

「あ、そうだ。聞(き)いてないや」

 

 と、タシュケント(Тошкент)が言(い)い、

 

「あれー、言(い)ってなかったっけー?」

 

 と、提督(ていとく)が言(い)う。ヴェールヌイ(Верный)はと言(い)えば、妙(みょう)に期待(きたい)のこもった目(め)で“彼(かれ)”を見上(みあ)げている。

 

「……今居(いまい)貴益(たかます)です……確(たし)かに言(い)ってなかった……」

 

 貴益(たかます)はそう言(い)った後(あと)、

 

「あー……面接(めんせつ)だと落(お)ちてたなあ……」

 

 と、小(ちい)さくつぶやいた。

 

 

 正面(しょうめん)には頂(いただき)も見(み)えないほど巨大(きょだい)な水柱(みずばしら)が立(た)ちのぼっている。

 戦艦(せんかん)数隻(すうせき)が主砲(しゅほう)を一(いっ)か所(しょ)に集中(しゅうちゅう)させれば、あるいは降(ふ)り注(そそ)ぐ水(みず)をいくらかは弾(はじ)き飛(と)ばすことができたかも知(し)れない。そうすれば、ぶ厚(あつ)い装甲(そうこう)で落(お)ちてくる水(みず)による衝撃(しょうげき)を受(う)けきることができたかも知(し)れない。

 

 無茶(むちゃ)を言(い)っていることは認(みと)める。しかし、戦艦(せんかん)数隻(すうせき)でも無理(むり)であるならば、水上機母艦(すいじょうきぼかん)一隻(いっせき)と軽巡洋艦(けいじゅんようかん)一隻(いっせき)、駆逐艦(くちくかん)二隻(にせき)の艦隊(かんたい)に何(なに)ができると言(い)うのだろうか。

 千歳(ちとせ)と鬼怒(きぬ)が目(め)の前(まえ)の光景(こうけい)に圧倒(あっとう)され、進路(しんろ)を変更(へんこう)することすら忘(わす)れてしまったのも、やむを得(え)ないことであった。

 

 だが、雪風(ゆきかぜ)は違(ちが)っていた。速力(そくりょく)を上(あ)げ、千歳(ちとせ)と鬼怒(きぬ)の航跡(こうせき)を飛(と)ぶように乗(の)り越(こ)えると、時津風(ときつかぜ)に体(からだ)を押(お)しつける。

 

「え、雪風(ゆきかぜ)!? どーしたの!? 」

「おしくらまんじゅう……」

 

 雪風(ゆきかぜ)はそう言(い)いながら時津風(ときつかぜ)に見(み)えるように自分(じぶん)を指差(ゆびさ)し、次(つぎ)に千歳(ちとせ)を指差(ゆびさ)してから右回(みぎまわ)りに指(ゆび)を回(まわ)してみせる。そして時津風(ときつかぜ)を指差(ゆびさ)すと、その指(ゆび)で鬼怒(きぬ)を指(さ)し示(しめ)した。

 時津風(ときつかぜ)が理解(りかい)したと言(い)いたげにうなずくと、

 

「押(お)っされて泣(な)くな! 」

 

 と、叫(さけ)ぶと同時(どうじ)に、雪風(ゆきかぜ)と共(とも)に全速力(ぜんそくりょく)で千歳(ちとせ)と鬼怒(きぬ)の間(あいだ)に飛(と)び込(こ)んだ。時津風(ときつかぜ)が鬼怒(きぬ)の右腕(みぎうで)を、雪風(ゆきかぜ)が千歳(ちとせ)の左腕(ひだりうで)をつかむと、そのまま体(からだ)を押(お)しつけて強引(ごういん)に方向転換(ほうこうてんかん)を図(はか)る。

 

 双方(そうほう)の視界(しかい)に水平(すいへい)な海面(かいめん)が映(うつ)ったのとほぼ同時(どうじ)に、すさまじい轟音(ごうおん)が響(ひび)いて大量(たいりょう)の水(みず)しぶきが四人(よにん)の背中(せなか)を打(う)つ。

 しかしそれも一瞬(いっしゅん)のことでしかなく、広(ひろ)がる波(なみ)を避(さ)けるようにして艦隊(かんたい)は再(ふたた)び合流(ごうりゅう)を果(は)たした。

 

 - - - ( ; ∀ ; )

 

 リコリス棲姫(せいき)が周(まわ)りの深海棲艦(しんかいせいかん)たちに、

 

「マダダ!! マダ撃(ウ)ツナ! 」

 

 と、厳(きび)しく言(い)い渡(わた)した。

 その視線(しせん)の先(さき)から、駆逐艦(くちくかん)の部隊(ぶたい)がこちらに合流(ごうりゅう)しようと近寄(ちかよ)って来(き)ている。

 レーダーと偵察機(ていさつき)はそれよりもずっと前(まえ)から位置(いち)の情報(じょうほう)を送(おく)り続(つづ)けていたのだが、視認(しにん)できるようになるまでも、状況(じょうきょう)がはっきりとわかるようになるまでも、長(なが)い時間(じかん)を要(よう)した。

 

 怪物鳥(かいぶつどり)もこちらを視認(しにん)しているだろう。そして、駆逐艦(くちくかん)たちに何度(なんど)も攻撃(こうげき)しているのだから、まだこちらからの攻撃(こうげき)は届(とど)かないと理解(りかい)しているのだろう。

 主力部隊(しゅりょくぶたい)の存在(そんざい)を無視(むし)して、駆逐艦(くちくかん)たちを執拗(しつよう)に狙(ねら)い続(つづ)けている。

 

 しかしそれもあと少(すこ)しだ。あと少(すこ)しで反撃(はんげき)ができる──

 

 迎(む)かえ撃(う)つ主力部隊(しゅりょくぶたい)は二(ふた)つの長方形(ちょうほうけい)を形作(かたちづく)り、長(なが)いほうの辺(へん)に開(あ)いた隙間(すきま)が駆逐艦(くちくかん)の部隊(ぶたい)に向(む)けられている。

 

 陸上型(りくじょうがた)に分類(ぶんるい)される、腰(こし)の高(たか)さ程度(ていど)の浅瀬(あさせ)でないと艤装(ぎそう)を展開(てんかい)できない鬼級(おにきゅう)と姫級(ひめきゅう)を除(のぞ)いた全艦(ぜんかん)が、大小様々(だいしょうさまざま)な砲門(ほうもん)で怪物鳥(かいぶつどり)を狙(ねら)う。

 

 リコリス棲姫(せいき)は、怪物鳥(かいぶつどり)の動(うご)きを予測(よそく)しようと集中(しゅうちゅう)する。しばらくして、砲撃(ほうげき)する方向(ほうこう)を皆(みんな)に伝(つた)える。

 間違(まちが)って味方(みかた)に命中(めいちゅう)しないように──今(いま)だ! 

 




“彼”の名前は、「いまいきます」に人名ふうの漢字をあてました。冗談のつもりでインターネットの姓名判断を試してみたらやたらと凶が多かったので、

「こういうトラブルに遭うならむしろふさわしいのでは?」

と、いう理由で名前が決まりました。

「おしくらまんじゅう」は、時津風と雪風の間だとそれで通じるんだろうぐらいに考えてください。
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