艦これキャラの登場するモンスター・パニック作品を作ってみた   作:垂直離着陸式扇風機

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第九話「だんだんきな臭くなってきた」

 千歳(ちとせ)たちと合流(ごうりゅう)する補給艦隊(ほきゅうかんたい)の編成(へんせい)は補給艦(ほきゅうかん)役(やく)の神威(かもい)と宗谷(そうや)、駆逐艦(くちくかん)睦月(むつき)、望月(もちづき)の計(けい)四隻(よんせき)。千歳(ちとせ)たちはいつ姿(すがた)を現(あらわ)すかと、全員(ぜんいん)がやきもきしながら待(ま)っている。

 

「波(なみ)の砕(くだ)ける音(おと)がするよ」

 

 目(め)を閉(と)じて両耳(りょうみみ)に手(て)をあてていた望月(もちづき)がつぶやいた。

 

「およ? 到着(とうちゃく)にゃしか? 」

 

 睦月(むつき)はそう言(い)うと望月(もちづき)の真似(まね)をしながら首(くび)をゆっくりと左右(さゆう)に回(まわ)し、

 

「うんうん、どうやら近(ちか)づいてきてるにゃしね……おおーい! 」

 

 と、大声(おおごえ)を出(だ)した。

 

「いえ、そうではなくてですね」

「発光信号(はっこうしんごう)! 発光信号(はっこうしんごう)です!! 」

 

 神威(かもい)と宗谷(そうや)が慌(あわ)てて睦月(むつき)を注意(ちゅうい)する。

 

「わかってるにゃしい。軽(かる)い冗談(じょうだん)なのねっ」

 

 睦月(むつき)は小(ちい)さく舌(した)を出(だ)して答(こた)えると、信号灯(しんごうとう)を取(と)り出(だ)して光(ひかり)を点滅(てんめつ)させた。

 他(ほか)の三人(さんにん)も方向(ほうこう)が重(かさ)ならないように発光信号(はっこうしんごう)を送(おく)る。

 

 しばらくすると光(ひかり)の点滅(てんめつ)で返答(へんとう)があり、薄暗(うすくら)がりの中(なか)から千歳(ちとせ)たちが現(あらわ)れた。

 

「皆(みな)さん、お疲(つか)れさまです」

「そちらもお疲(つか)れさま。鎮守府(ちんじゅふ)はどう? 」

「迎(むか)え撃(う)つ準備(じゅんび)と荷物(にもつ)の移動(いどう)で大騒(おおさわ)ぎです」

「あらら、帰(かえ)ってもゆっくりできそうにないわね」

 

 神威(かもい)と千歳(ちとせ)が言葉(ことば)を交(か)わす。

 

「あぁ゛ぁ゛ぁ゛~~もっちぃぃ゛ぃ゛ぃ゛~~、大変(たいへん)だったんだよぉ゛ぉ゛ぉ゛~~!! 」

 

 鬼怒(きぬ)は、よくわからない叫(さけ)びを上(あ)げながら望月(もちづき)に抱(だ)きついている。

 

「時津風(ときつかぜ)、戻(もど)りました」

「雪風(ゆきかぜ)、帰投(きとう)いたしました! 」

 

 時津風(ときつかぜ)と雪風(ゆきかぜ)は、全員(ぜんいん)の近(ちか)くに停止(ていし)して、略式(りゃくしき)の敬礼(けいれい)をする。

 

「はい、お疲(つか)れさまです」

「補給(ほきゅう)をどうぞ」

 

 神威(かもい)が時津風(ときつかぜ)に、宗谷(そうや)が雪風(ゆきかぜ)に液体(えきたい)入(い)りのカップを手渡(てわた)すと、時津風(ときつかぜ)と雪風(ゆきかぜ)は礼(れい)を言(い)ってそれを受(う)け取(と)った。互(たが)いに顔(かお)を見合(みあ)わせて笑(わら)い、ありがたそうにカップに口(くち)をつける。

 

「どれくらい攻撃(こうげき)があったんですか? 」

 

 神威(かもい)が、千歳(ちとせ)にもカップを渡(わた)しながら尋(たず)ねた。

 

「四十回(よんじゅっかい)くらいですね。それ以降(いこう)はずっとつかず離(はな)れずで……」

 

 千歳(ちとせ)が帰還途中(きかんとちゅう)の出来事(できごと)を簡略(かんりゃく)して神威(かもい)に説明(せつめい)する。その横(よこ)では鬼怒(きぬ)が、

 

「いつ直撃(ちょくげき)するかと気(き)が気(き)じゃなかったんだよぉ~~」

 

 などと言(い)いながら、カップ片手(かたて)に望月(もちづき)に泣(な)きついている。

 

「あぁー、飲(の)むか話(はな)すかのどっちかにしてよー」

 

 望月(もちづき)は、色々(いろいろ)とあきらめたような表情(ひょうじょう)で鬼怒(きぬ)の相手(あいて)をしている。

 

「偵察機(ていさつき)からの緊急電(きんきゅうでん)がありませんので、相手(あいて)は 速度(そくど)を保(たも)ったままのようです。夜戦(やせん)を仕掛(しか)ける気(き)はないのかもしれませんね」

 

 宗谷(そうや)は確認(かくにん)するように言(い)うと、

 

「それで、帰還(きかん)する時(とき)ですが、明石(あかし)さんがこれを着用(ちゃくよう)するようにと……」

 

 と、続(つづ)けながら、折(お)りたたまれた銀色(ぎんいろ)の袋(ふくろ)のようなものを取(と)り出(だ)した。

 

「ええと……これは何(なに)かしら? 」

 

 受(う)け取(と)った千歳(ちとせ)がそれを広(ひろ)げて首(くび)を傾(かし)げる。フードつきのマントのようではあるが、表側(おもてがわ)は薄(うす)い銀色(ぎんいろ)の板(いた)で覆(おお)われている。

 

「『ああるみこおと』だそうです」

 

 宗谷(そうや)の返事(へんじ)は何(なん)の説明(せつめい)にもなっていなかった。

 

「ああるみこおと? 」

 

 当然(とうぜん)のように時津風(ときつかぜ)が聞(き)き返(かえ)す。

 

「相手(あいて)が電探(でんたん)を使(つか)っているならば、これで居場所(いばしょ)をわからなくできるらしいです」

 

 宗谷(そうや)も、原理(げんり)までは理解(りかい)していなさそうな口調(くちょう)で説明(せつめい)する。

 

「うん……でも……作(つく)ったのは明石(あかし)さんだよね? 」

「明石(あかし)さんですが? 」

「あ(・)の(・)明石(あかし)さんだよね? 」

「あの……すみませんが、どういう意味(いみ)でしょうか? 」

 

 食(く)い下(さ)がるように聞(き)いてくる鬼怒(きぬ)に、宗谷(そうや)は戸惑(とまど)いながら聞(き)き返(かえ)した。

 

「いや、だってさ。何(なに)かの折(おり)に明石(あかし)さんが提督(ていとく)に言(い)ったことがあるじゃない。『九十九回(きゅうじゅうきゅうかい)失敗(しっぱい)しても……』」

「『次(つぎ)の一回(いっかい)で化(ば)け物(もの)が現(あらわ)れることもある』、だっかしら? 」

「え、ええと……そうでしたか? 」

 

 鬼怒(きぬ)と千歳(ちとせ)の言葉(ことば)に、宗谷(そうや)は困(こま)り顔(かお)で返答(へんとう)した。

 

「それは百物語(ひゃくものがたり)ではないでしょうか? 」

 

 神威(かもい)が言(い)いづらそうに指摘(してき)をしたが、

 

「そこまで間違(まちが)ってはいないかも……」

 

 と、いう望月(もちづき)のつぶやきに、どういうわけか全員(ぜんいん)が納得(なっとく)の表情(ひょうじょう)をしてしまった。

 

「は、はい! とにかく補給(ほきゅう)を済(す)ませて、早(はや)く帰(かえ)ったほうがいいと思(おも)うにゃし! 」

「ゆ、雪風(ゆきかぜ)もそのほうがいいと思(おも)いますっ! 」

 

 その場(ば)をとりつくろうように叫(さけ)んだ睦月(むつき)と雪風(ゆきかぜ)の勢(いきお)いに押(お)されるように、全員(ぜんいん)が明石(あかし)の発明品(はつめいひん)を着用(ちゃくよう)した……のだが、

 

「ねー、これだと絵本(えほん)に出(で)てくるオバケみたいになってない? 」

 

 時津風(ときつかぜ)が自分(じぶん)を見下(みお)ろしながら言(い)う。銀色(ぎんいろ)のマントを頭(あたま)から被(かぶ)ったその姿(すがた)は、どこからどう見(み)ても肝試(きもだめ)しで驚(おどろか)せようとしてシーツをかぶった子供(こども)のようだ。

 

「あぁー、フトンに入(はい)っているみたいで落(お)ち着(つ)くー」

 

 と、言(い)ったのは望月(もちづき)である。

 

「風(かぜ)でひるがえらないよう、紐(ひも)を留(と)めてくださいね。行(い)きますよ」

 

 神威(かもい)の合図(あいず)で、全員(ぜんいん)が列(れつ)になって出発(しゅっぱつ)した。

 

「ねえ……」

 

 しばらくして鬼怒(きぬ)がポツリとつぶやく。

 

「これ……やっぱり、絵本(えほん)に出(で)てくるようなオバケが列(れつ)になってスケートしているみたいに見(み)えるのかな? 」

 

 失笑(しっしょう)が全員(ぜんいん)に広(ひろ)がって、なかなか止(と)まらなくなった。

 

 - - - ( ` ― ´ ) ノ

 

 水平線(すいへいせん)の近(ちか)くに浮(う)かぶ雲(くも)の下(した)が、朝日(あさひ)に照(て)らされてあかね色(いろ)に輝(かがや)いている。その光景(こうけい)をどう思(おも)うかは、様々(さまざま)だ。

 少(すく)なくとも、異変(いへん)で現(あらわ)れた島(しま)にたどり着(つ)いた深海棲艦(しんかいせいかん)たちの士気(しき)は高(たか)い。陸上型(りくじょうがた)の鬼級(おにきゅう)と姫級(ひめきゅう)が艤装(ぎそう)を展開(てんかい)できる水辺(みずべ)まで来(き)たのだから勝利(しょうり)は確実(かくじつ)、という雰囲気(ふんいき)が広(ひろ)がっている。

 

 それぞれが艤装(ぎそう)の調整(ちょうせい)をおこなっている。主砲(しゅほう)、副砲(ふくほう)、対空砲(たいくうほう)。

 魚雷(ぎょらい)を搭載(とうさい)した者(もの)たちは魚雷(ぎょらい)の、航空機(こうくうき)を搭載(とうさい)した者(もの)たちは航空機(こうくうき)の点検(てんけん)を済(す)ませていつでも攻撃(こうげき)できるよう態勢(たいせい)を整(ととの)えている。

 

 集積地棲姫(しゅうせきちせいき)だけは違(ちが)っていた。

 作戦(さくせん)の度(たび)に狙(ねら)われて、物資(ぶっし)を燃(も)やされていることもあるのだろうか。艤装(ぎそう)の確認(かくにん)を早々(そうそう)に終(お)わらせると、島(しま)に来(く)る時(とき)に乗(の)っていた筏(いかだ)のような船(ふね)に横(よこ)になって、攻撃(こうげき)のないうちにと休憩(きゅうけい)を決(き)め込(こ)んでいる。

 

 それを注意(ちゅうい)する者(もの)はいない。リコリス棲姫(せいき)でさえも。

 これもまた、いつもの光景(こうけい)なのだろう。

 

 そして、岩(いわ)と砂(すな)でできている海岸(かいがん)には複数(ふくすう)の深海浮輪(しんかいうきわ)……いや失礼(しつれい)、“筏(いかだ)のような船(ふね)”だ。それが並(なら)んでいる。

 

 空(そら)は、先(さき)ほどよりもずっと明(あか)るくなっている。だとすれば、そろそろ……

 

「れーだーニ感(カン)! 至近(シキン)!! 」

 

 いきなり深海棲艦(しんかいせいかん)たちがいる浜辺(はまべ)のすぐ近(ちか)くにレーダーの反応(はんのう)が生(しょう)じた。

 

「ウロタエルナ! 怪物鳥(カイブツドリ)ガコノ島(シマ)カラ飛(ト)ビ立(タ)ッタカラ、近(チカ)クデ反応(ハンノウ)ガアッタダケダ!! 」

 

 状況(じょうきょう)を見(み)て取(と)ったリコリス棲姫(せいき)が、慌(あわ)てている深海棲艦(しんかいせいかん)たちを一喝(いっかつ)した。つまりは怪物鳥(かいぶつどり)が飛(と)び立(た)ったことで、島(しま)との区別(くべつ)がつくようになったと言(い)いたいのだろう。

 

「航空部隊(コウクウブタイ)、発進(ハッシン)用意(ヨウイ)!! 」

 

 リコリス棲姫(せいき)は間髪(かんぱつ)入(い)れずに次(つぎ)の命令(めいれい)を発(はっ)し、自(みずか)らも爆弾(ばくだん)を搭載(とうさい)する攻撃機(こうげきき)と戦闘機(せんとうき)の発進準備(はっしんじゅんび)を急(いそ)がせる。

 

 戦闘機(せんとうき)は、艦娘(かんむすめ)たちの操(あやつ)る航空機(こうくうき)を撃(う)ち落(お)としたり、追(お)い払(はら)うのが本来(ほんらい)の任務(にんむ)だ。それよりも巨大(きょだい)な怪物鳥(かいぶつどり)が相手(あいて)では、傷(きず)を与(あた)えることすら難(むずか)しいかも知(し)れない。

 とは言(い)え、たくさんの戦闘機(せんとうき)が集(あつ)まって攻撃(こうげき)すれば、怪物鳥(かいぶつどり)をひるませることができるかも知(し)れない。そうすれば、戦闘機(せんとうき)がいない場合(ばあい)よりも攻撃機(こうげきき)の爆弾(ばくだん)が命中(めいちゅう)するかも知(し)れない。

 

 出撃(しゅつげき)させないよりも、させたほうがいいはずだ。

 

「目標(モクヒョウ)、同(オナ)ジトコロヲ旋回中(センカイチュウ)」

「イタゾ! アソコダ! 」

 

 レーダーを装備(そうび)する者(もの)の声(こえ)と、目視(もくし)する者(もの)の声(こえ)が交錯(こうさく)する。大勢(おおぜい)が注視(ちゅうし)する空(そら)の一角(いっかく)を飛(と)ぶ怪物鳥(かいぶつどり)の姿(すがた)は、小(ちい)さなシミのようにしか見(み)えない。

 

「航空部隊(コウクウブタイ)、発進(ハッシン)! 我々(ワレワレ)ノ真上(マウエ)デ集合(シュウゴウ)セヨ!! 」

 

 リコリス棲姫(せいき)の命令(めいれい)で、航空機(こうくうき)を搭載(とうさい)した空母(くうぼ)、鬼級(おにきゅう)、姫級(ひめきゅう)から続々(ぞくぞく)と戦闘機(せんとうき)と攻撃機(こうげきき)が発進(はっしん)する。

 

 怪物鳥(かいぶつどり)はいっそう高(たか)く舞(ま)い上(あ)がると、深海棲艦(しんかいせいかん)たちの周囲(しゅうい)をゆっくりと飛(と)び始(はじ)めた。

 

「襲(オソ)イカカッテクルツモリカ? 」

「ドウヤラソウラシイナ」

 

 どこからともなく話(はな)し声(ごえ)が聞(き)こえてくる。互(たが)いが互(たが)いの様子(ようす)をうかがいながら時間(じかん)が過(す)ぎる。

 

 やがて、

 

「来(キ)タゾ!! 」

 

 と、叫(さけ)ぶのとほぼ同時(どうじ)に怪物鳥(かいぶつどり)が深海棲艦(しんかいせいかん)たち目(め)がけて突(つ)っ込(こ)んで来(き)た。

 

「航空部隊(コウクウブタイ)、攻撃(コウゲキ)!! 」

 

 リコリス棲姫(せいき)の命令(めいれい)とともに、戦闘機(せんとうき)と攻撃機(こうげきき)が一斉(いっせい)に怪物鳥(かいぶつどり)に襲(おそ)いかかる。

 

「全艦(ゼンカン)、砲撃(ホウゲキ)開始(カイシ)!! 」

 

 リコリス棲姫(せいき)は航空攻撃(こうくうこうげき)の最中(さいちゅう)に次(つぎ)の命令(めいれい)を発(はっ)した。航空攻撃(こうくうこうげき)と砲撃(ほうげき)の相乗効果(そうじょうこうか)を狙(ねら)ったのだ。

 

 戦闘機(せんとうき)が機銃(きじゅう)を撃(う)ち、攻撃機(こうげきき)が抱(かか)えていた爆弾(ばくだん)を投(とう)てきする。その後方(こうほう)に構(かま)えていた深海棲艦(しんかいせいかん)が、全(すべ)ての砲(ほう)を用(もち)いて攻撃(こうげき)する。

 怪物鳥(かいぶつどり)の体全体(からだぜんたい)が炎(ほのお)に包(つつ)まれた。

 

 だが、怪物鳥(かいぶつどり)は止(と)まらない。体(からだ)の表面(ひょうめん)を炎(ほのお)が覆(おお)いはしたが、それで爆発(ばくはつ)するわけでも、勢(いきお)いを減(げん)じたわけでもない。

 進路(しんろ)を変(か)えることなく、深海棲艦(しんかいせいかん)を押(お)しのけるようにして水辺(みずべ)に降(お)りてきた。

 

 - - - ( ゚ Д ゚ )

 

 異変(いへん)で出現(しゅつげん)したと思(おも)われるそ(・)れ(・)に対(たい)してであっても、深海棲艦(しんかいせいかん)を相手(あいて)にした作戦(さくせん)であっても、鎮守府(ちんじゅふ)がとれる対応(たいおう)にそれほどの違(ちが)いがあるわけではない。迎撃(げいげき)、防御(ぼうぎょ)、避難(ひなん)、支援要請(しえんようせい)──こういったところだ。

 

 降伏(こうふく)も選択肢(せんたくし)の一(ひと)つではあるが、今回(こんかい)は選(えら)べない。と、言(い)うよりも、選(えら)びようがない。

 鎮守府側(ちんじゅふがわ)からの呼(よ)びかけに一切(いっさい)応(おう)じず、砲弾(ほうだん)のような塊(かたまり)を発射(はっしゃ)してくる以外(いがい)の反応(はんのう)をしてこないのだから、意思(いし)の疎通(そつう)ができないのだ。

 

 もしかしたら、怪奇小説(かいきしょうせつ)や空想物(くうそうもの)に登場(とうじょう)する自動(じどう)で動(うご)き続(つづ)ける機械(きかい)なのではないのだろうか、とすら思(おも)いたくもなる。

 

 もっとも、こういった推測(すいそく)は別(べつ)の機会(きかい)か誰(だれ)かに任(まか)せるとして、この鎮守府(ちんじゅふ)ではこの鎮守府(ちんじゅふ)独自(どくじ)の対応(たいおう)を取(と)っていた。

 

 作戦室(さくせんしつ)は引(ひ)き払(はら)われ、別(べつ)の場所(ばしょ)に周囲(しゅうい)の景色(けしき)に溶(と)け込(こ)む色柄(いろがら)の天幕(てんまく)が張(は)られ、そこに機器類(ききるい)が運(はこ)ばれた。天幕(てんまく)の下(した)が情報(じょうほう)の収集(しゅうしゅう)、分析(ぶんせき)、発信(はっしん)を行(おこな)う、臨時(りんじ)の作戦所(さくせんじょ)となっている。

 

 そして運(はこ)べるだけの物資(ぶっし)が、鎮守府内(ちんじゅふない)の各所(かくしょ)に分散(ぶんさん)して隠(かく)された。この事態(じたい)を解決(かいけつ)するまで島(しま)の調査(ちょうさ)は延期(えんき)するしかないので、調査(ちょうさ)のための道具類(どうぐるい)も今(いま)はしまっておくことになった。

 

 この作業(さぎょう)の合間(あいま)に、隼鷹(じゅんよう)を始(はじ)めとする数名(すうめい)が鎮守府(ちんじゅふ)の一角(いっかく)で何(なに)かをしていたようだが、休憩中(きゅうけいちゅう)の私事(しじ)は他(た)の艦娘(かんむすめ)たちも様々(さまざま)であるため、この時点(じてん)では特(とく)に目立(めだ)ってはいなかった。

 何(なに)をしていたかは、隼鷹(じゅんよう)、加古(かこ)、ポーラ(Pola)、あきつ丸(まる)、神州丸(しんしゅうまる)、山汐丸(やましおまる)という面々(めんめん)の名前(なまえ)で察(さっ)していただきたい。

 

 それが済(す)むと艦娘(かんむすめ)たちの編成(へんせい)が変更(へんこう)された。

 

 戦艦(せんかん)、巡洋艦(じゅんようかん)、駆逐艦(くちくかん)に分類(ぶんるい)される艦娘(かんむすめ)たちは、迎撃(げいげき)艦隊(かんたい)と防衛(ぼうえい)艦隊(かんたい)の二(ふた)つに分(わ)かれた。

 

 迎撃(げいげき)を担(にな)う艦隊(かんたい)は、金剛(こんごう)、リシュリュー(Richelieu)、青葉(あおば)、加古(かこ)、デ・ロイテル(De・Ruyter)、那珂(なか)、由良(ゆら)、白露(しらつゆ)、時雨(しぐれ)、村雨(むらさめ)、夕立(ゆうだち)の計(けい)十一人(じゅういちにん)。日(ひ)が昇(のぼ)らないうちに鎮守府(ちんじゅふ)を出発(しゅっぱつ)した。

 

 防衛(ぼうえい)艦隊(かんたい)のうち、大淀(おおよど)、タシュケント(Тошкент)、睦月(むつき)、望月(もちづき)、吹雪(ふぶき)、ヴェールヌイ(Верный)、雪風(ゆきかぜ)、時津風(ときつかぜ)、そして朝雲(あさぐも)と山雲(やまぐも)の十人(じゅうにん)は、提督(ていとく)とともに臨時(りんじ)の作戦所(さくせんじょ)に移動(いどう)した。他(た)の艦隊(かんたい)との連絡(れんらく)は、あきつ丸(まる)と神州丸(しんしゅうまる)が行(おこな)っている。

 

 防衛(ぼうえい)艦隊(かんたい)のガングート(Гангут)、霧島(きりしま)、陸奥(むつ)、ポーラ(Pola)、鬼怒(きぬ)は、そ(・)れ(・)がやって来(く)る方角(ほうがく)の反対側(はんたいがわ)に移動(いどう)した。そこには既(すで)に占守(しむしゅ)、佐渡(さど)、福江(ふかえ)、日振(ひぶり)、大東(だいとう)。さらに神威(かもい)、宗谷(そうや)、山汐丸(やましおまる)、まるゆらが鎮守府(ちんじゅふ)に所属(しょぞく)する人(ひと)たちや物資(ぶっし)を乗(の)せた船(ふね)、長官艇(ちょうかんてい)、大発動艇(だいはつどうてい)、零式水偵(れいしきすいてい)とともに集(あつ)まっていて、そ(・)れ(・)の動(うご)き次第(しだい)で行動(こうどう)を決(き)めることになっている。

 

 赤城(あかぎ)、加賀(かが)、隼鷹(じゅんよう)、鳳翔(ほうしょう)と千歳(ちとせ)、秋津洲(あきつしま)は、そこからさらに東側(ひがしがわ)で待機(たいき)している。そ(・)れ(・)の動(うご)き次第(しだい)で行動(こうどう)を決(き)める点(てん)は変(か)わらない。

 

 明石(あかし)だけがまだ鎮守府内(ちんじゅふない)に残(のこ)っている。

 

「もう少(すこ)しやることがありますので」

 

 と、いうのが本人(ほんにん)の弁(べん)だ。

 

 こうした策(さく)の数々(かずかず)が、「鎮守府(ちんじゅふ)が破壊(はかい)されることを前提(ぜんてい)とした大胆(だいたん)な作戦(さくせん)」だと言(い)えば聞(き)こえはいいのだが、壊(こわ)れたら本国(ほんごく)に請求(せいきゅう)うんぬんが本音(ほんね)であるのを隠(かく)しきれてないあたりが評価(ひょうか)の難(むずか)しいところではある。

 

 艦娘(かんむすめ)たちは、任務(にんむ)の範囲内(はんいない)については大(おお)きな不平不満(ふへいふまん)をあげていない。しかし、任務(にんむ)以外(いがい)については別(べつ)だった。

そ(・)れ(・)の名称(めいしょう)をどうするかという話題(わだい)から、予想(よそう)もしていかなかった騒(さわ)ぎが巻(ま)き起(お)こったのである。

 




「ああるみこおと」の元ネタは「透明マント」や「光学迷彩スーツ」などですが、「原理がどうこうと言う以前に、そもそも役に立っているかどうかさえわからない道具」というのを出したくなってそうしました。

そのせいで「雪だるまなのか西洋のオバケなのかメジェド様なのかよくわからない姿で水上を移動する艦娘」というさらによくわからないものができてしまいました。
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