原子的媒体との接触記録   作:かんしろ

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久々のモノ描きです


#2 帰還、奇廻、奇機怪傀。

 

「うっ…」

 

『「おぉう?、上手くいったようじゃの…」』

 

夕暮れが差す部屋で少女が2人、ひとつのベッドに向かい合っていた。

 

「貴方は…量子の…」

 

『「おうとも、主はなかなかに愛い寝が─」』

 

 

『「ごあっ!」』

 

悲鳴。

 

「─ゼーレは!?」

 

怒声。

 

少女が思い出したかのようにカッと目を見開き、

狩人が獣を仕留めるように、綴る次の言葉が履かれる前に、少女─ブローニャは白い少女の首を押さえつけていた。

 

『「ぐっ...偉く乱暴な…ぎぃ─」』

 

嗚咽。

 

「─答えて! 、答えろ!!」

 

号哭。

 

情報を決して手放すまいと指先に力を込め、細やかな首へと夢中に腕を押し付けた。

 

少女の白い肌は血の気が引いて、さらに色味を失っていく。抵抗か降参か、梅枝のような細い指でブローニャの腕を引っ掻いている

 

「…!」

 

逃がさないことばかりに必死で、少女の状態に目が向いていない。捕まえたのが少女ではなく、より小さな生き物であれば、縊り殺すほどの熱量すら感じさせていた。

 

『「こ…のぉ...!や、やめ…」』

 

抵抗と呼吸が弱り始めた頃、少女が口火を落とした。

 

『「─よさんか!!!」』

 

声とともに紫輝の瞳が花火のような火を放つ。

 

─少女の首に触れる指が瞬間、微かに揺れた。

震えている、電流を流されるように、凍えるように。

程なくしてブローニャは操る糸が切れたように、少女の

薄い身体へと沈み込んだ

 

「お、ぁ…」

 

『「ふぅ…主が悪いんじゃぞ…身体はもうじきに動かせるじゃろぅが、まぁ、聞け。」』

 

動けない銀狼を後目に少女は求める情報、そして現状の説明を行った。

それはブローニャの探し人は確かに量子空間にいた事。

その彼女には量子空間に適性を保持していて、ブローニャのように自失したりはしないと言う事。

そして自身は人間ではなく、太古のシステムだと言うことと、

目的をもったブローニャのために機能の7割を捨て去ってブローニャを救出したとの事だった。

 

全てを聞いた後にバツが悪そうに「ありがとう」と、ただそれだけをブローニャは言った。

 

そして…

 

「理由は…、なぜ、貴方はそこまでしてくれたの?」

ブローニャは未だに寝そべったままの少女の腕を取り、顔を近づけた。

 

少女はブローニャを撫で、少し笑いながら言う。

 

『「よく分からん、よく分からんのじゃ。情報に頭脳が答えを出す前に、行動が完結しておった。」』

 

『「─所謂、ノリのようなものかの。』

 

「…貴方は、そんな根拠の無い一時の感情で、私を?」

 

心底理解できないというような顔で、疑いの目を覗かせる。

 

『「…おうおう、そうとも、人助けは良い事のはずじゃが、気に入らぬか?」』

 

「…身まで削って出来るのなら飛んだ自己犠牲精神ですね、人間でも無いくせにそれじゃ、まるで…」

 

ブローニャの目からはまだ、疑いの視線が尽きない。

 

『「─疑うのはわかるが、ワシの行動が主の命を"助けておる"、と言うのは紛うことなき事実じゃし…の?』

 

「…ですが、」

 

「─見苦しいぞ、ブローニャ。客人に、ましてや命の恩人にどこまで自己満足の疑問を投げかける?」

 

扉の前へ静かに佇んだブロンドの女が、踵を数度鳴らす。

「...母様」

 

母様、そう呼ばれた女は空の車椅子を押しながら、少女のそばまで近づいた。

 

「先ずは感謝を、あなたの目的がどうあろうと、ネゲントロピーは歓迎しよう。─さぁ、こちらへ。」

 

銀の車輪が手押されてカラカラと音を立て通路を行く、

近代的な意匠の空間に、照らされた3人。

辺りに人影はなく、ガラス越しにはライン上で機械が休む間もなく手を動かしている

静寂、廊下は長い。

ただ車輪の音と重なった足音が、誰かが鼻をすする音が、吹き抜けた風の音が、耳に届く。

 

額から頬へ、汗が滴る。

 

どういうことじゃ?先程から同じような道が続くが…

若い童の顔にもさすがに疲労が見えてきおった。

 

思考を続ける間に、また汗が一筋、頬を伝う。

 

 

 

汗...?儂が常世で活動するための義肢にそんな高度なモジュールは搭載しておらんはず─そうか。

 

壁に手を触れると、壁から天井など、空間の詳細な情報が掌から流入してくる。

 

組成は粗いが立派な電脳、仮想現実のループか。

 

何か、仕組まれておる。

 

『「─のう。」』

 

声が静寂を切り裂いた。

 

「何か?」

 

『「いつまでこうするんじゃ?」』

 

「…?」

 

『「…ん、ワシはの?作り物の器ゆえいまだ歩けぬが、人の歩み方は好きじゃ。

遅くとも着実に、次へと進むその歩みが好きじゃ」』

 

『「それに、ワシはな、待つのは大得意じゃ。今までも沢山暇を耐え待ってきた。」』

 

『「が…そこな娘には退屈がすぎるんじゃないかの?」』

 

「なるほど、気付いたか……面白いな。」

 

言い切った途端、女に指先が向けられる。

 

ばん

 

耳元で花火がなったような爆音を伴い、女が壁に弾き飛ぶ。

 

「─お母様!」

 

悲鳴にも似たブローニャの怒声に被せて、女の笑い声が耳を劈く。

 

 

「─ははは、いい思考回路だな、─丁度いい、能力の程も明かしてもらおうか。」

 

一瞬の閃光の後、空けた視界の先には刃物を携えた荒人の幻影が3体、こちらへ歩き出していた。

 

ふむ。

 

対話、そして思考。

恐らくこれは儂が有用かつ友好かどうかの検証じゃろう

現にそこの娘まで巻き込まれておる。

 

…童に掴まれた際、ワシはその中であの女を見た。

童にとっては母のようなものらしい、なら童に向けられる感情もそれ相応のものじゃろうて。

 

故に敵意は童ではなく儂に、万が一が無いようにそう設定されておるようじゃ。

『「ひぃ、ふぅ、みぃ……むぅ。」』

先程の圧力指向のみで制圧するには少し間が足りんしの…じゃが今は儂自身のリソースも心許ない……

 

なんなら囲まれとるし一方を片付けてもその間にやられるのがオチじゃわ

 

はー、どうしよ

 

「─危ない!」

 

ブローニャの怒声とともにガシャンと、金属が弾ける音がする

 

『「ぬぐっ…ぅ…!」』

 

身体に痛みが走り、目は回る。

近づいてきていた一体が、車椅子ごと身体を弾き飛ばしたらしい、奪うなら逃げ足から、ということだ。

 

─呆けすぎたか!

 

迫る怪物、動くことも儘ならぬ傀儡の手足、思わず目を瞑る……

 

ぐしゃ

 

が、何時になってもその時は来なかった。

襲いかかるハズだった痛みは訪れず、恐る恐る瞼を上げると、灰色が広がっていた。

 

揺れている。身体も、眼前の髪も。

 

「─これは合理的判断に基づく自己救助です、貴方を助けようと思った訳では─ありません。」

 

背負われている。

「量子から復還した時、私の身体は存在の自立に追いつけず幾つか焼け落ちたと、そう聞きました。」

 

それはそうじゃが…別に主が…

 

「─それを防ぎ、補ってくれたのは貴方です。貴方が居なくなれば、補正された私の身体はどうなるか分かりません。」

 

『「なるほどのう…あくまで自身が生き残るための自助だと、確かにのぅ、主の脳の3割、四肢はわしが補填してやっておる。─良い判断じゃ」』

 

ブローニャは少女を背負い走る。重さなど感じないとでも言うような速度は、実際に少女に質量がないからだろう。

 

─しかしのう、いくら逃げても…

 

「…距離が、開かない。」

 

『「開かんよ、このままではの。」』

 

 

 

 

 

『「開かんよ、このままでは。」』

 

追跡を振り切り物陰へ落ち着いた2人。

未だすぐ近くで捜索を続ける化け物共。

 

 

 

どういうことなんですか。現状の説明を、わかるように。

 

『「これは、ワシへの試しじゃの。今は話す暇は無い、取れん、次、次。」』

 

走る、走る。

 

『「ようし、いうぞ。主は、前進した分だけ後退しておる。交差しとるんじゃよ、一本道を。」』

 

……ループ?

 

『「物分りがええの、最近の子は優秀じゃわ、あはは」』

 

背中で面白げに笑う少女に物言えに苛立ちを抑え。なお走る

 

「生き死にがかかってます、真剣に。」

 

『「あははっ、─ん。すまん。」』

 

……これからどうすればいい?

 

逃げ道はなく、距離も開かず…

 

『「ワシに言わす気か?、麗若き女子に言う事ではないんじゃがのう…」』

 

少女の身体の末端が解けるように粒子へと置き換わる。

その粒子は段々と数を増し私の体へと纏われていく。

荒砂のような気持ち悪い感覚はやがて、流砂の如く滑らかな心地を齎した

 

やがてそれは形をなし、鎧の様に銀狼を支える。

 

ふわりと浮かんだ身体は思ってるよりも自由で、頭で思うように動く。

 

『「想像力を働かせるんじゃ、それは仮想を性能へ加味するもの、出来ると思えば突飛なことでなければ成すことができる。」』

 

上半身だけになって壁にもたれた少女が言う。

 

つまり…飛べると信じれば飛べ、金剛だと思えばそのように。

その様な人の願望を形にして表すモノなど、決してロクなものではないだろうが、今はそれを使いこなすしかない状態。

 

銀狼の思考を遮り、少女が大きく叫ぶ。

『「ポジティブに行けよぅ、ほら、見つかったぞ」』

 

「え─あ、はっ!?」

 

声を切り裂きながら突進してくる幻像、それは身構えた私よりも、明らかに弱った少女へ横暴な眼差しを向けた。

 

常識的にはもう間に合わない合間、だがこれからはそれを超越する!"其れ"はその為に用意してくれた物なのだ!

 

”守らなければ!”

 

脳裏へうかんだ少女への強い想いが、まるで空間そのもののように形を成して想像を虚像から現実へ引き上げる。

 

─────!!!

 

 

自分の妄想に吸い込まれる!、意志と自己の順序を書き換えられ喪失しそうだ!

 

 

必死に意志の乱流を超え見据えた景色は遅く、そして澄んでいる。

 

離れた間合いは現実から虚像へ移ろい、事実と想像をすり替える。

それは”超高速の思考と行動”という過程を齎し、”不幸な結果”を入れ替えて行く。

 

少女の前へ庇うように、移動、飛びかかる敵の頭蓋を蹴り穿ち撃滅する。

 

守るという意思が、守ったという結果を生み出した時。

必要だった”過程”はどこにもいなくなる。

それは、超高速の思考と行動を破却することによって成された。

 

強い想いが、現実を塗り潰したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の作品では、本編の様にブローニャの欠損を機械で補うのではなく、主人公であるウイルス(仮称)が権能を分け与える形で修繕しているため、チップで抑えられるはずだった情動も一般的な(?)モノ程度には得ることができていますし、機械で補うよりも高性能な肢体を会得しています。
主人公とブローニャの関係を簡単に表現すると、
発電所と受電設備のようなものになります。
主人公はブローニャが活動するために必要な要素を満たし、自分の欲求を満たし。ブローニャは自己の活動を継続する為に、そしてその過程で得る力を持って自分の目的を成さんとする為に
主人公を保護、利用しようとしています

その中で恩義や少年少女特有の好奇心、そして年相応の甘えや欲求が含まれていくことになります

それらしい事をフィーリングで書いてるので話によっては表現がブレブレになります。容赦。
今回登場したブローニャの装備について、
本編では重装ウサギ19.cを使用し、砲撃戦を繰り広げることもあった彼女ですが、この作品では大幅に強化されたブースターユニットのような義装になっています。
名前はまだ決めていませんが、基本的性能は前述の重装ウサギから1.5倍程で、本体性能が勝る代わりに重装ウサギが所有していた重力力場の形成などが不可能になっています。
比較すると、今回登場した装備は重装ウサギと比べ極近接戦闘を目的とした白兵戦仕様となっています。

主人公はブローニャの欠損を補うのに自己のリソースを1割、自己とブローニャの身体を現実で構築し運営するのに3割利用。そして電脳から無理やり飛び出す際に5割程を霧散させているので
主人公は元の1/10のリソースで行動しています。
ですが手元に残った"生み出す"技能を応用した強大な存在ではあるので誰かと組むと強いです、かなり。
その1例として自身をリソースとして変換することで今回のブローニャの装備を生み出しており、この状態では装備の損傷は主人公当人の損傷に繋がります。
また、装備を生み出す際に霧散する自己情報があるため、回数制限が設けられています。
ブローニャの武器には想像を現実にするという能力が備えられていますが、ニュアンスとしては本人が強く意思で願った結果に対して、何らかの代償を支払う事で願いを達成出来る状況や能力といった過程を与えるモノとなっているので、願った結果を成すことが出来る環境が存在することができない環境条件においては無力となります。
また、この際に支払われる代償はブローニャの身体を補正している主人公のリソースから引かれており、主人公はそのリソースを常に生産し続けている為、余程の広範囲、かつ超威力のようなものを願わない限りはほとんどノーリスク、ちょっと頭が痛いくらいでしようすることが出来ます。







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