ドバイミーティングも終わり、日本に帰ってきた僕達。やることは、モンゴルダービーのトレーニングだ。まぁ僕はマンノウォーステークスに向けてのトレーニングがあるんだけど……それも並行してやればいい。
「『よう、帰って来たぜお前ら』」
「『おー、中継見てたっすよ兎ちゃん。良い走りだったっすね』」
「『あ、ありがとうございます』」
師匠の言葉に真っ先に反応したシアトルスルーさんが僕に労いの言葉をくれる。他のみなさんは……うん、練習中みたいだ。でも。
「ほうほう……これが世界の走りか。フジさんから聞いてはいたが……いいねぇ、滾るねぇ!」
「『日本が誇る神のウマ娘……成程、噂に違わぬ実力者ね』」
「『あくまでトレーニングではありますが……それでも負けるわけにはいきません。セクレタリアト様の名に懸けて!』」
向こうではシンザンさんとトリプティクさん、レディーズシークレットさんがトレーニングしてる。また違う方を向くと。
「ガハハハ!タケよ、身体が鈍っているんじゃねぇか!?」
「世迷言を、フジノオー先輩。まだ身体があったまっていないだけ……直に、万全になります!」
フジノオーさんとタケシバオーさんがトレーニングしていて。
「『ほう!日本のウマ娘も中々やるではないか。だが……我には遠く及ばぬ!刮目せよ!この神のウマ娘、ラムタラの真の力を!』」
「うん、何言ってるのか分からないね。日本語でお願いしてもいい?」
「あれー!?」
「アハハ!やはりラムタラ様も美しいが……ミスターシービー!あなたもまた良い!実に素晴らしい美学だ!」
ラムタラさんとデイラミさん、シービーさんがトレーニングしている。
……うん。
(多分ここが世界一贅沢なトレーニング場だな)
そんなことをしみじみ思っていた。
「『にしてもシア……お前またボッチでトレーニングしてたのかよ?』」
「『良いでしょ別に。ウチは1人でやる方が性に合ってるんす……まぁ、モンゴルダービーの関係上、ずっと1人でトレーニングするってのはさすがに不味いのでどうにかしないといけないっすけど』」
「『なんだ、ちゃんと分かってんじゃねぇか。ならいい、俺達とやるぞ』」
「『セクレタリアト先輩とニジンスキーさんと……すか。ほうほう、それはまた……』」
瞬間、シアさんの圧が増した。
「『楽しみっすね。特に、いっつも人のことをボッチだのなんだの言いやがってる先輩にはうんざりしてたとこなんすよ!』」
「『何言ってんだ?事実だろ』」
「『うるせーバーカ!』」
師匠とシアさん普通に仲良いな。というか、シアさんあくまで普段は大人しいってだけでかなり好戦的な方なんだな。前回集まった時*1に分かっていたことだけど。
さてさて、師匠とコーチはシアさんとトレーニングする。ということは……。
「……あれ?僕は誰とトレーニングすれば?」
まさかの僕がボッチ!?……やだー!誰か一緒にトレーニングしてよー!
「ほれ、アンカちゃんはこっちであたしたちとトレーニングしようか」
「ま、松さん……!」
「『クレイジーラビット……その実力、体感させてもらいましょうか』」
「『セクレタリアト様が見出し、昇華させたその実力……是非とも体感してみたいものですね』」
こうして僕は松さん達とトレーニングする「ようやくたどり着いたわ。でも、道中空気が澄んでいて走っててとても気持ち良かったぁ……!」あれ?この声って……。
「スズカさん?」
「えぇ、久しぶりねアンカ」
どういうわけか、このトレーニング施設にスズカさんが訪れました。……ここ、トレセン学園からかなり離れているどころか県すら違いますけどまさか走ってきたんですか?しかもそんな大荷物を持って。
「ど、どうしたんですか?そんなに荷物を持って」
「うん、アンカにちょっとお願いがあって」
「……僕に?どんなですか?」
困惑しすぎてつい敬語になってしまっている僕を尻目に、スズカさんはとてもいい笑顔で。
「私もモンゴルダービーのチームに入れてくれないかしら?」
そう言ってきた。スズカさんがモンゴルダービーに?
(……ぶっちゃけ、枠は全然余ってるからいいんだけど)
でも、スピカのトレーナーさんの許可はちゃんと取っているのかな?後でトレーナーさんがどうこう言われるの嫌だよ?僕。
「……トレーナーの許可は取っているのか?」
「……」
おい、露骨に目を逸らすな。絶対許可取ってねぇじゃねーか。
「大丈夫よ。ちゃんと取っているから……あの後モンゴルダービーはダメって説得されたけど事後承諾ならいいわよね?」
「じゃあ僕の目を見て言ってくれますか?」
「それでアンカ。私をあなたのチームに入れてくれないかしら?」
おっと?話が通じないタイプですかね?
「……スピカのトレーナーの許可を取ってから「私をチームに入れてくれないかしら」いや、だから許可を「チームに入れてくれないかしら」だから許「チームに入れてくれないかしら」……許「チームに入れてくれないかしら」分かりました分かりました!分かりましたから言いながら近づいてこないでくださいよ!圧が凄いんですよ圧が!」
「ふふっ、やった♪」
クソ!圧が強すぎる……!まさかスズカさんの走りたい欲がここまでだなんて……!
「で、でも!ちゃんとスピカのトレーナーさんには連絡入れますからね!?それだけは絶対ですからね!」
「えぇ、勿論構わないわ」
「トレーナー君!」
「許可ならもう取ったよ。サイレンススズカの姿が見えた時に」
サラマンダーよりもずっと速い仕事ぶりだなおい!?
「でもまさかここまで来るとは思わなかったよ……遠かったんじゃない?」
「一応、色んな人に聞きながら来たから。それに、ここまで走ってきたからとても気持ちが良かったわ」
「そっか」
あぁ!?トレーナーさんが思考を放棄した!?
というわけで。
「モンゴルダービーのアンカさんのチームに新しく入ることになりました、サイレンススズカです。みなさんよろしくお願いします」
「ほう!栗毛の逃亡者ではないか!あのBCターフとジャパンカップでの熱い戦い以来だ……しかし!今度は仲間!ともにモンゴルダービーを制しようではないか!」
「『アメリカのターフで話題になってた逃亡者っすか。いや~兎ちゃんの顔は広いっすね~』」
「応!よろしく頼むぞ!」
モンゴルダービー、スズカさんが仲間になりました。パンパカパーン。
まぁ色々とありましたがトレーニングを再開することになって。とは言っても、モンゴルダービーのトレーニングなんて単純だ。
「『おいおい!ちょっとペースが落ちてきたんじゃねぇかシア!身体が鈍ってんじゃねーの!?』」
「『そういうアンタこそ!ビッグ・レッドともあろう方が、もうギブっすか!?』」
「『抜かせ!俺はまだまだ走れんだよ!まだコースを100周走っただけじゃねぇか!』」
「『全く喧嘩しながら走るだなんて……野蛮極まりないわね』」
「『全くです。我々のようにただ粛々とこなせばよいものを』」
「『いや、ニジンスキー先輩もトリプティク先輩も張り合っているような』」
「「『何か言ったか(かしら)?ラムタラ』」」
「『な、なんでもありませぇぇぇぇぇん!?』」
スタミナをつけるために、走る、走る。走る!とにかくスタミナをつけるためのトレーニングをしていた。まぁ走るだけじゃないんだけど。
僕達のレースは障害レースでもなければゴールドカップの4025m以上*2は走らない。だが、モンゴルダービーは1人最低でも40km……場合によっては80km走る必要がある。そう、最低ラインでいつもの約20倍の距離を走らなければならないのだ。なので必然的にとんでもない量のスタミナが要求される。
「ほほう……スズカちゃんも中々やるねぇ」
「あのシンザンさんに褒めてもらえるなんて、恐縮です。ですが……たとえ誰であっても先頭の景色は譲りません……!」
「……いいねぇ、面白いねぇ!後輩達もちゃんと育っているようであたしゃ嬉しいよ!」
「シンザンも滾っているではないか!だが、スタミナ勝負という点では我に分がある!負けんぞ!」
「……お戯れを。オレが勝たせてもらいます」
「『……日本のウマ娘も中々やりますね。ですが、私も負けるわけにはいきません』」
「これは勝負ではないが……やはり熱くなってしまうね!仕方のないことだ、これほどのメンバーが集う機会はないのだから!現に、私も……滾っているッ!」
「アッハハハハ!うん、やっぱり来て正解だったよ!ルドルフやエースも誘えばよかったかな!」
もっとも、全員
「最ッ高に生きてるって感じがする……ッ!」
ただひたすらに走り込む。高地にある、このトレーニング施設を使って!
この後全員で滅茶苦茶走り込んだ。すんごい疲れたけど……!
「あ~……久々にこんなに走ったねぇ。でも、悪くない気分だ!」
「奇遇だなシンザンよぉ。俺もそう思っている!」
「……ま、確かにそうね。それにはワタシも同意するわ」
最っ高に楽しかった!マンノウォーステークスまでは、しばらくここでトレーニングすることになるだろう。明日からも頑張るぞー!
仲間が増えたしとんでもねぇメンバーとトレーニングしているおかげでアンちゃんどんどん強くなるな……。