クラシック級では、いくつもの苦汁をなめさせられた。皐月賞に始まり、日本ダービーや菊花賞……全ての冠はアンカ君の手に渡った。だが別に嫉妬はしていない。負けて悔しいとは思うが、それも全てボクの実力が至らなかっただけのこと。むしろ、ボクの至らなさが原因でこのボク……テイエムオペラオーという存在をファンに刻みつけることができなかった!あぁ、それはなんて悲しいことだろうか!
アンカ君の実力は飛び抜けている。トゥインクル・シリーズという歴史の中でも、あれだけの偉業を成し遂げるウマ娘は過去未来を通してもアンカ君だけだろう。
「だが、だからと言って勝ちを諦めることはできない。ボクは彼女の偉業を見届ける
もっとも、こんな風に思ったところで一朝一夕で彼女を越える実力を身につけられるわけじゃない。だからこそ、ボクは……クラシック級は強者との共演に甘んじた。脇役でいることを是とした。無論、負ける気で挑んだつもりは毛頭ない。どんな勝負でも勝つ気で挑んでいた。
ま、結果は散々たるものだった。ステイヤーズステークスは直線で競り負けてしまい2着、有マ記念は王道ともいえるレース運びでトップロードさんが制してボクは4着に甘んじていた。だが収穫もあった。同じく有マに出ていたグラスさんやスペシャルウィークさん、そしてトップロードさんの強さの原点にあるもの……時代を創るウマ娘が入れるとされている
リギルの先輩方との併走で存在自体は知っていた。だが、ボクはあと一歩何かが足りなかった。その足りなかった何かを……ボクはこの有マ記念で埋めれたような気がした。
その足りなかった何かが判明したらどうするか?簡単だ。埋まるまで練習あるのみである。
「付き合わせてしまってすまないねドトウ。ほら、飲みたまえ」
「ああ、ありがとうございますぅ~。そ、それに……良いんですよ。私、オペラオーさんのお役に立てるのが嬉しいんですから」
「ハーッハッハッハッハ!その気持ちは嬉しいがねドトウ、キミもレースという舞台に上がる以上ボクのライバルだ。そこは、ちゃんと理解しておきたまえよ?」
「わ、私なんかがオペラオーさんのライバルだなんて……お、おこがましいですぅ」
「そんなことはないさ!ドトウ、キミもボクのライバルの1人だ!」
ドトウは謙遜こそしているがその実力は本物。クラシック戦線では姿を見ることはなかったが、その勝負強さには目を見張るものがある。ボクもうかうかしていられないね。
練習を重ねる日々。
「オペラオーちゃん!まだトレーニングしていきますか?」
「トップロードさん!あぁ、もう少しだけ自主練していくよ!」
「……なら、私も!」
「おぉっと!ボクという輝きに魅せられて火が点いてしまったようだね!あぁ、ボクの輝きは罪……」
「オペラオーちゃんは相変わらず自信家ですね」
自主トレに明け暮れる日々。おハナさんが許してくれる限界ギリギリを攻め続けた。
「……それでオペラオー。私と併走したいということだが」
「はい。お願いします会長さん……ボクに足りないものを埋めるために……あなたの力を貸してください」
「……豪放磊落。良いだろう。だが、遅れることは許さない。全てにおいて私は勝つ気で走る……そのことを頭に刻んでおけ」
「ッ!はい!」
先輩方の力も借りて、上を目指して走り続ける。
「お願いします、ボクに……コーチングをしてくれませんか?少しだけでも構いません」
「お前は確か……リギルのテイエムオペラオーつったか?」
「はい。覚えてくれていて光栄です……セクレタリアトさん」
トレセン学園の外部コーチとして雇われているセクレタリアトさんにも師事をお願いした。
「……良い目をしてんな。自信家の仮面の下に貪欲なまでに勝利を求める瞳を隠している……気に入った!」
「……ということは?」
「だが、俺もシルバーラビットのレースについていく必要がある。だからそうだな……オーストラリアに発つ1週間、お前のトレーニング後に見てやろう」
「ありがとうございます!」
「気にすんな。それが俺の仕事だ。それに……勝ちを求めるために貪欲なその姿勢は嫌いじゃねぇ」
トレーニングを続けた。
菊花賞から決意していた。脇役に甘んじることを。
《ここでテイエムオペラオーが上がってきた!それに続くようにナリタナリタ!ナリタトップロードも上がってくる!ステイゴールドも続くか!?しかしこれはテイエムオペラオー優勢だ!テイエムオペラオーが粘り勝つか!?》
「躱しますッ!オペラオーちゃん!」
G2京都記念。トップロードさんのプレッシャーが増す。おそらく
会長さん達との会話を思い出す。
『……ハハッ、これは、うん。凄いな。最後は追い抜くのに必死だったよ』
『ハーッハッハッハッハ!ですがまだまだです。アンカ君に勝つには……たとえ会長さんといえど競り勝たなければならないですから!』
『……唯我独尊。その気持ちを忘れるな、テイエムオペラオー。その気持ちがある限り……君はどこまでだって強くなれる』
『生意気な後輩を持つと苦労する。だが……頑張れよ、オペラオー』
『ファイトデスヨー!オペラオー!』
ボクも
「ハアアアァァァァァッ!」
「ッ!?オペラオーちゃん速いッ!?でも、まだまだ……!」
残念だがトップロードさん……
《テイエムオペラオーが競り勝った!テイエムオペラオーがハナ差でナリタトップロードを下した!有マ記念の雪辱を晴らすテイエムオペラオーの逆襲劇!しかしナリタトップロードや他のウマ娘も負けたままじゃ終われない!次のレースでは我こそはとギラついている!》
京都記念を制す。そして阪神大賞典もラスカルさんとトップロードさんを下してボクが勝利した。そして、ボクが次に目標に定めたのは……G1、大阪杯。
このレースはトップロードさんに加えて、アヤベさんも出走してきた。アンカ君は海外のレースに出走しているようだが……丁度いい。ボクの
展開は変わりなかった。最後の直線でボクが先頭に立って、アヤベさんとトップロードさんがその末脚でボクに迫りくる。
《さぁ最後の直線に入って先頭はテイエムオペラオー!テイエムオペラオーが先頭だ!しかしここでナリタトップロードが上がってきた!ここまでテイエムオペラオーに2連敗としているナリタトップロードもうこれ以上は負けられない!そしてナリタの外からアドマイヤ!アドマイヤベガが飛んできた!大外から流星が駆け抜ける!アドマイヤベガすさまじい末脚!?恐ろしいスピードでナリタトップロードとともに駆け上がってくる!テイエムオペラオー・ナリタトップロード・アドマイヤベガの三強対決!軍配は誰に上がるのか!?》
「今度こそ、負けませんッ!」
「……勝つッ!」
2人のプレッシャーが跳ね上がる。このボクを食い破らんと、その力を発揮している!あぁ、素晴らしい!これほどのライバルに恵まれてボクは幸せだ!願わくば、この場にドトウやラスカルさん、それに……アンカ君がいればなおのこと完璧だったわけだが。
2人はボクに近づいてくる。その差が1バ身、半バ身と迫り……
「さぁ!キミ達を招待しよう!」
「ッなに!?」
「これ、あの時のッ!?」
「このボクの……
割れた景色の先にあるのは、ボクを讃える明確な
領 域 発 現
永久に輝く帝笑歌劇!
さぁ、ボクとこのレースを彩る
《て、テイエムオペラオー抜かせない抜かせない!テイエムオペラオー驚異の粘り!?ナリタトップロードとアドマイヤベガも必死に追走するがわずかに及ばずテイエムオペラオークビ差1着!つ、強い!?圧倒的強さだテイエムオペラオー!京都記念、阪神大賞典からの大阪杯!これで3連勝!そして春シニア3冠の1冠目を手にした!クラシック級での雪辱を晴らすかのようなレースっぷり!2着アドマイヤベガはクビ差に沈みました!3着はナリタトップロード!》
アンカ君のように、ボクは天高く指を掲げ……宣言する。
「クラシック級では苦渋を舐め続けた……だが!それももう終わりさ!」
ボクは、高らかに宣言する。
「ここからはボクの時代……世紀末覇王伝説が!真に始まるのさ!さぁ皆の者!ボクを讃える凱歌を響かせ、ボクの姿をしかと目に焼きつけるといい!この、テイエムオペラオーの姿を!」
ボクは高らかに笑う。この強さを持って……ボクはアンカ君に勝つ!
きっと、アンカ君もすさまじいトレーニングを積んでいることだろう。だが関係ない!次勝負する時に勝つのは、この
「『見てくださいシアさん。星が綺麗ですよ』」
「『お~本当っすね~。どうですレディ?中々のもんじゃないですか?』」
「……『木の隙間からしか見えないではありませんか』」
どこか非難するようなレディーズシークレットさんの声。まぁ、それも仕方がない。実際微妙に開けたところからしか星は見えないし。
周りには木しかない。ウマホは充電が切れた。加えて、ここにいるのは僕達だけである。
「『それにしても……
「『いや~分かんないっすね兎ちゃん……これも全部あのものぐさビッグ・レッドのせいだ……!』」
「『一応、モンゴルダービーに向けたトレーニングですので。思い付きで行動するビッグ・レッド様には困ったものですが』」
「『お~いお前らー!飯ができたぞー!』」
モンゴルダービーに向けた特訓。僕達は富士の樹海で野営をしています。
(ネタが出てこなくて)わりぃ、やっぱつれぇわ……!なんてことはなく。大変楽しく書けてます。いつも読んでくださる方々本当にありがとうございます!