今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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前回ラストに至った経緯。


安価ウマ娘とキャンプ!

 それはスズカさんがモンゴルダービーのメンバー入りをしてから少し経ったある日のこと。

 

 

「そろそろ野営のトレーニングとかしなきゃいけねぇな」

 

 

「どうしたんです師匠?藪から棒に」

 

 

 師匠が突然そんなことを言い始めた。本当に突然だな。それにしても野営か……。

 

 

「いやなに、モンゴルダービーは1日で走破できる距離じゃねぇ。必ずどこかで休む必要がある。そんな時は……基本野営だろ?」

 

 

「まぁそうですね。大会の規定にもそうありますし」

 

 

 モンゴルダービーを走る時間は決まっている。もし走る時間を過ぎてしまった場合、そこにテントを張って野営することになるのだ。この時不正を働かないように見張りが設けられている。なんでも、参加者全員につけるよう義務付けられているゼッケンにはGPS機能がつけられているのだとか。このGPSが1km以上動いた場合、すぐさま運営本部のウマ娘達が動き、チーム全員が失格になる。そしてこの時、チームの1人が不正を働かないようにチーム全員で見張ることも可能だとか。

 ゼッケンを外せばいいんじゃね?と思うかもしれないがその対策も勿論バッチリらしい。というか、そのための見張りだ。実際に不正を働いたウマ娘達は、すぐさま取り押さえられたらしいから。

 

 

「『しっかしまぁ、テント持って走るってのも不思議なもんですね。普通のレースじゃない感覚っすよ』」

 

 

「我は重りをつけて走らされたことがあったからなんともいえんのう。まぁ大して変わらんじゃろ」

 

 

「『飲み物や食料の類は車で追っているメディカルチームが受け渡し可能……この車にはチェックポイントで待機しているウマ娘以外が乗ることも可能だとか』」

 

 

「『ただ、この車自体もモンゴルダービーを走るウマ娘からはそれなりの距離を離して移動しなければならない。不正防止のため、致し方なしね』」

 

 

 そして、この車にも勿論見張りの人が1名乗る。車を利用した不正防止のためだ。すんごい厳重である。

 

 

「で、師匠。野営のトレーニングって言いますけど……どこでやるんですか?」

 

 

 話を元に戻して。野営のトレーニングの件になる。師匠は楽しそうだ。そんなに楽しみなのかな?野営。

 

 

「日本には丁度面白いところがあるだろ?ほら、あそこだよ」

 

 

「あそこって……どこですか?」

 

 

「簡単だ逃亡者……富士の樹海」

 

 

「「「は?」」」

 

 

 富士の樹海?マジで言ってるんです?シアさんやラムタラさん達は良く分かってないみたいだけど……日本に住む僕らは良く知っている。富士の樹海が、どんなところかを。

 

 

「ここからも近いし、何より自然環境的にも良いんじゃねぇか?」

 

 

「そうは言うがねぇセクレタリアトさんよ」

 

 

 松さんはどうも乗り気じゃなさそうだ。まぁ、あの辺呪われてそうだしな。

 

 

「なんで富士の樹海なんだいセクレタリアトさんよぉ。野営のトレーニングだったら他にもいっぱい候補はあると思うがねぇ」

 

 

「まぁ一番は近いってとこだな。後は……生半可な場所で野営してもモンゴルダービーじゃ役に立たねぇからだ」

 

 

「どういうことです?」

 

 

「簡単だ我が弟子。モンゴルダービーでは地図読みも必要になってくる。俺達も勉強しちゃあいるが……いざ実践となった時に道に迷って困る可能性だってあるだろうが」

 

 

 まぁ一理ある。勉強しているとはいえ、本番で発揮できなかったら意味がない。だからこそ、師匠が言いたいのは野営のトレーニングがてら富士の樹海で地図読みのトレーニングも兼ねようということなのだろう。

 

 

「『けど、地図読みに関してはメディカルチームに任せているはずだ。それでは不足か?』」

 

 

「『メディカルチームとなんらかのアクシデントが生じて連絡が取れない状況があるかもしれねぇ。常に最悪を想定しておくのは大事だと思うぜ?トリプティク』」

 

 

「『ふむ……一理あるな』」

 

 

 結局全員が納得したということで。僕達は富士の樹海で野営のトレーニングがてら地図読みにトレーニングも兼ねることになった。問題があるとすれば……。

 

 

「師匠。僕今週末障害レースの条件戦なんですけど」

 

 

「それがどうした?我が弟子」

 

 

「ちゃんと間に合いますよね?」

 

 

「……」

 

 

 おい、無言になるな。

 

 

「……何とかなるだろ!」

 

 

「ふざけんなバカ師匠!これで出走できなかったら師匠のせいですからね!?」

 

 

 幸い今は日曜日。明日から野営のトレーニングを始めるから一応期間はある……迷いさえしなければ。

 一抹の不安を抱えたまま、僕達のモンゴルダービーに向けた野営のトレーニング兼地図読みのトレーニングが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在。僕達は野営の準備も終わってご飯を食べている。

 

 

「『普段食べてるものと比べたらやっぱ味気ないっすね~。ま、これもキャンプの醍醐味ってやつっすけど』」

 

 

「『それに、不思議と美味しく感じますわ。中々ない経験です』」

 

 

「『ふっ、我に捧げる供物としてはいささか物足りぬが……美味である!……ところで、あそこの木にぶら下がってる朽ち果てたロープみたいなものはなんですかね?』」

 

 

「『考えない方が良いわよラムタラ。視界にいれないようにしなさい』」

 

 

「ヒン……」

 

 

 いや~アニメでしか見たことないけど良いね!キャンプ飯!美味い美味い!

 

 

「それにしても、こういう環境で走るのも悪くないわね。いつもとは違った楽しみがあるわ」

 

 

「そうだな。地面が柔らかく、整備されていないこの道……走破するには骨が折れるだろう」

 

 

「『ニジンスキー先輩。今は大体この位置……このままいけば、走破は時間の問題かと』」

 

 

「『そうねトリプティク。早いところこのトレーニングを終わらせましょう』」

 

 

 ご飯を食べ終わって、張ったテントに入って休む。4人ずつ入れるテントだから……あれ?1人余らね?

 

 

「僕・松さん・フジノオーさん・タケシバオーさん・スズカさん・師匠・コーチ・レディさん・シアさん・ラムタラさん・トリプティクさん・シービーさん・デイラミさん……3グループずつに分けたら1人余りますね」

 

 

「『じゃあウチが1人で。いや~1人は楽だから……』」

 

 

「『黙れボッチ。4・4・3・2で分ければいいだろ。何のための野営トレーニングだ』」

 

 

「『ボッチって言うんじゃねぇ!』」

 

 

 しかし誰かが2人でテントに泊まることになるのか。誰になるんだろ?

 

 

「『は~仕方ないっすね。じゃあ兎ちゃんとウチで2人テントに泊まりますよ』」

 

 

「Why?」

 

 

「『兎ちゃんとは親近感が湧くんすよね~なんでっすかね?』」

 

 

「『お前ら2人ともボッチ気質だからだろ』」

 

 

「「『誰がボッチだおい!』」」

 

 

「息ピッタリじゃないのあなた達」

 

 

 そりゃそうですよコーチ!こんな風評被害……黙っておくわけにはいかない!

 

 

「『おっと!そうはいきませんよシアトルスルーさん!』」

 

 

 おぉ!デイラミさんの助け舟「『我が愛しのプリンセスと2人っきりでテントに泊まるのはこの私さ!』」違う!そんなことはなかった!

 

 

「『言っておくが、我が弟子は4人テント確定だ。絶対にお前らが2人っきりのテントで泊まりてぇってうるせぇだろうからな』」

 

 

「「ッチ!」」

 

 

 師匠に予見されてらぁ。結局は師匠が用意していたくじで決まった結果……僕は松さん・トリプティクさん・レディさんと一緒のテントで泊まることになった。

 

 

「よろしくねぇアンカちゃんとお二方。できる限り迷惑にならないように気をつけるよぉ」

 

 

「『こちらこそ、よろしくお願いいたします』」

 

 

「『何か不備があればすぐに申し出を。対応いたします』」

 

 

「『よ、よろしくお願いします……』」

 

 

 早速テントに入って休む……かと思えば。

 

 

「いやぁ、結局レースは勝ってなんぼだからねぇ。それも、ここ一番の大きなレースを勝てばね」

 

 

「『同意します。ですが、いかなるレースであっても勝ちを目指すべきかと』」

 

 

「『それも結局は価値観の相違だ。まぁ、レースに勝つ気で挑むというのは重要ではあるがな』」

 

 

「は、ははは……そうですね」

 

 

 何故かレース談議になってしまった。僕は曖昧な返事で場を濁しておく。

 そんな時、唐突にレディさんの矛先が僕に向いた。

 

 

「『あなたの強さの源泉は何かしら?シルバーラビット』」

 

 

「『そうだな。あれほどまでの強さを発揮するクレイジーラビットの強さの核となるもの……確かに興味が湧く』」

 

 

 と、トリプティクさんの追撃も入って来たぁ!?ま、まぁ答えなんて決まってるんだけど……。

 

 

「僕は、ファンのみんなに夢を魅せたいんです」

 

 

「……『夢?』」

 

 

「はい。夢を持たないことって、すっごく辛いことだってボクは知っている。だからこそ、僕の走りで夢を魅せたい……そんな風に思いながら走っています」

 

 

「『あなたが時折、圧倒的な不利を背負っているのも?』」

 

 

「は、はい。どんな不利を背負っていても、その状況で勝つことで……不可能なんてないんだってことを、一歩を踏み出すための力を。ファンのみんなに与えられたらなって思ってます」

 

 

「『成程ね……』」

 

 

 レディさんとトリプティクさんは……わ、悪くない反応かな?松さんはニコニコしている。

 

 

「偉いねぇアンカちゃんは。立派な志じゃないか」

 

 

「そ、そうですか?」

 

 

「『えぇ。あなたが強い理由……分かった気がするわ』」

 

 

「『ファンに夢を魅せるために、いかなる困難にも立ち向かうことができる……成程、ニジンスキー先輩が君を気に入る理由が、分かった気がするわ。そして、あの方の呪いを祓うことができたことにも、ね』」

 

 

「あ、あはは……」

 

 

 それからもレース談議に花を咲かせて……気づけば寝ていた。鳥の鳴く声とともに起きて。

 

 

「よーしお前ら!朝飯を食ったらすぐに出発だー!」

 

 

 富士の樹海でのトレーニングが、始まる。師匠の突然の思い付きで始まったこのトレーニングだけど……結果だけ見れば大成功だった。これからも何度かやる予定らしい。まぁ野営のトレーニングって大事だしね。

 ……なお、このトレーニングの限界ギリギリを攻めすぎたせいで僕の障害レースの条件戦に間に合わなくなりかけたことはここだけの話だ。結局は間に合ったし、勝ったんだけど。

 

 

「いやー悪い悪い!ちょっとギリギリを攻めすぎたぜ!」

 

 

「うるせーんですよバカ師匠!?間に合ったからいいですけど!」

 

 

 モンゴルダービーのトレーニングは滞りなく進んでいる。その前に僕は……5月のマンノウォーステークスだ。




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