今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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モンゴルダービー前日とか色んな感じ。


安価ウマ娘とモンゴルダービー開幕!

 モンゴルダービー。それは、世界一過酷とされているレース。モンゴルの草原1,000kmを複数人のウマ娘で走破するレース。

 まず、僕達が普段走っている平地のレースとはかなり違う。僕達が普段走っているレースは整備されたコースを走っているけど……このモンゴルダービーは違う。整備されていない自然のコースを走り抜けることが大前提だ。坂だってあるし、整備されていないから勿論凸凹している。しかも川とか丘もあるし、それに伴う危険なことがたくさんある。普通のレースとは一味も二味も違う、それがモンゴルダービーだ。

 ウランバートルに着いた僕達を待っていたのは、大会スタッフによる参加の意思の確認。

 

 

「……『それでは、本当によろしいのですね?』」

 

 

「『あぁ。僕達はこの13人でレースに参加する』」

 

 

「『メディカルチームの手配は?』」

 

 

「『このリストに書いてある通りだ。代表者として、メディカルチームの総括を務めるドクターファーガー氏に来てもらっている』」

 

 

「『おれがドクターファーガーだ。本人証明はこれで大丈夫かな?』」

 

 

「……『確かに。では、明日の朝よりここウランバートルでモンゴルダービーを走る上での説明を改めて行います。無論、ルールに目を通しているとは思いますが、これもモンゴルダービーを出走する上で大事なことです。ご理解の程お願いいたします』」

 

 

「『分かった』」

 

 

「『午後からはモンゴルの草原に移動します。夜には宴会が開かれる予定ですので、楽しみにしてくださいね』」

 

 

「『宴会だと!?宴だ宴!テンション上がるぜ!』」

 

 

 師匠大盛り上がりである。他のメンバーも態度にこそ出さないが、楽しみにしているんだろう。ふっ、僕が一番大人ってことか……。

 

 

「アンカちゃんの尻尾と耳が忙しなく動いてるねぇ。宴が余程楽しみなようだ」

 

 

「『こういうとこ見ると、クレイジーラビットもまだまだ子供ね』」

 

 

 う、うるさいやい!そうだよ楽しみだよ!

 

 

「『ふ、分かるぞ我が配下よ。宴と聞いてテンションが上がらないはずがない!現に我も楽しみにしている!明日は心行くまで楽しもうぞ!』」

 

 

「『ふふ、そこまで楽しみにされると、主催者冥利に尽きますね。明日の宴会は楽しいものになることを約束しましょう。それでは、また明日の朝。合同説明会でまた会いましょう』」

 

 

 運営の人と別れて僕達はホテルに到着。ホテルでしっかりと休んで、次の日の説明会に備えた。

 そして次の日の説明会。改めてモンゴルダービーのルールを確認することになる。

 

①出走するウマ娘は10名以上25名以下でチームを組む必要がある。

②上記のウマ娘とは別に、出走するウマ娘達の体調管理をするメディカルチームを組む必要がある(人数は問わない)。

③体温が基準値を超えたウマ娘はモンゴルダービーに出走してはならない。

④メディカルチームが体調不良の判断を下したウマ娘はモンゴルダービーを走ることはできない。再度モンゴルダービーに参加する場合はメディカルチームと運営の許可が下りなければ出走することはできない。

⑤モンゴルダービーは規定の時間を越えて走ることはできない(07:00~18:00)。この時間を越えて走っているのが見られた場合、即時失格となる。

⑥1人のウマ娘が走る距離は最低40kmである。

⑦同じウマ娘が連続した区間を出走することはできない。また、同じ日に同じウマ娘が走ることはできない。

⑧モンゴルダービーを走るウマ娘はチェックポイントに着かなかった場合を考慮して、野営用の道具一式を携帯することを許可する(重量制限は5kgまで。飲み水は含まれない)。

⑨野営の際は野営したテントから半径1km以上離れて行動することはできない。離れた場合は即時失格となる。

⑩野営は同じチームのメンバー同士ならば共同で野営を行っても構わない。

⑪出走者に配布するゼッケンにはGPSが備え付けられている。出走中は肌身離さずつけておくこと。

⑫スタート地点から始まり、40kmごとにチェックポイントが置かれている。このチェックポイントでウマ娘の交代が行われる。

⑬他のチームのウマ娘を妨害する行為は禁止である。妨害する行為、またそれに類似する行為が見られた場合は即時失格となる。

⑭レース中不慮の事故に巻き込まれた場合に備えて各チームに1台ずつモンゴルの草原を走るための車が支給される。この車には次のチェックポイントに待機するウマ娘以外は乗っても構わない。ただし、メディカルチームの人員を最低1人でも乗せることを義務付ける。

⑮参加者はスポーツマンシップに則ってモンゴルダービーを走ること。

 

 他にも細かいルールはあるが、大まかなルールはこんなところだ。

 

 

「『モンゴルダービーのルールは細かく目を通してください』」

 

 

 その後はGPSでどうやって追跡しているか、どのようなバックアップ受けられるかの説明が入る。これに関しては資料に載ってあるが、口頭で改めて確認しているのだろう。聞きながら、僕は会場にいるメンバー以外のウマ娘を確認する……が。

 

 

(どの子も小っちゃい……僕よりも小さいし、下手したらみんなヴィッパーぐらいしかないぞ?)

 

 

 他の出走者は軒並みモンゴルのウマ娘達だ。というか、モンゴル以外で参加するウマ娘は僕達のチームしかいない。つまるところ……圧倒的アウェー環境である。

 

 

「小さいからって油断するなよ。アイツらはここでの走りに慣れている。俺達が圧倒的不利って状況は変わらねぇんだからよ」

 

 

「今更体格で油断はしませんよ師匠。本気で挑みます」

 

 

 師匠と小さい声で会話をする。その間に、ちょっとした小話としてモンゴルダービーの歴史について語られた。

 

 

「『え~モンゴルダービーの起源となったものについてはご存じでしょうが……モンゴルダービーは元々トレーナーの腕を競うためのレースでした』」

 

 

 これは知っている。モンゴルダービーについて勉強している時に知ったことだ。

 

 

「『チェックポイントで待機しているウマ娘を見て、最も優れているウマ娘を見出すトレーナーとしての眼……それらを競うレースでした。コースの環境、状態、そしてウマ娘自身の資質……それらをトレーナーの眼で判断してトレーナーとしての腕を競い合う、そんなレースでした。そんなモンゴルダービーが変わったのは数年前の出来事です。外部からのウマ娘の出走を許可し、チームを組んでもらい出走を認めるルールが追加されました。まぁ、出走してくるウマ娘はいませんでしたが……』」

 

 

 大会運営の方が嬉しそうに僕らを見ている。

 

 

「『今年はついに!モンゴル以外のウマ娘が参加してくれることとなりました!これはモンゴルダービーの歴史に刻まれる偉大なる一歩となるでしょう!』」

 

 

 僕達に注目が集まってる!いや~照れますねぇ!褒められて悪い気はしないですよ!

 そんなこともあったが午後からはいよいよモンゴルの草原に移動する。とはいっても、今日はスタートキャンプに移動するだけだ。トレーニングは明日以降行われ、3日間のトレーニングを経て本走となる。夕方になると、モンゴルダービー前の宴会が始まった。

 

 

「『外部からの参加者って初めて!普段はどんなレースを走ってるの?』」

 

 

「『あなた達と比べると凄く短い距離よ。主流になっているのは……2000mから2400mかしら?』」

 

 

「『え~!?すっごく短いんだね!こっちじゃそんなレース全然見ないよ!』」

 

 

「『そりゃあそうですよね~。レースの歴史も全然違うっすから』」

 

 

「『本当に大丈夫なの?』」

 

 

「『ふっ、心配することはない小さきもののふ達よ。我らは厳しい鍛錬を積んできた……モンゴルダービーを制するのは我らだ!』」

 

 

「『すっごい自信だね。まぁ……私達も負けないけど!それはそれとしていっぱい食べて、いっぱい飲んで騒ぎましょう!』」

 

 

「『そうそう!今日は楽しい宴の日!モンゴルダービーが始まる前に英気を養わないと!』」

 

 

「レースが始まるまでは同じ釜の飯を食う仲間……良い文化だねぇ」

 

 

「ガハハハ!祭りじゃ祭りじゃ!鼓を持てい!」

 

 

「持ってきてませんよフジノオー先輩」

 

 

 どこもかしこも盛り上がってる!というか料理がうめぇ!滅茶苦茶うめぇ!

 この宴は日付が回る頃まで行われ、その間僕達は質問攻めにあっていた。よっぽど外部からの参加者が珍しいというか、僕達が初だから興味津々らしい。

 そして次の日からは実際にモンゴルの草原を走ってのトレーニングが始まる。

 

 

「『やはり、整備されているいつものコースとは違うわね。分かっていたことだけど』」

 

 

「『そうね。小石や芝と土が入り混じったようなコース……普段のコースとは全然違う』」

 

 

「『しかもそれだけじゃありませんよトリプティクさん、レディーズシークレットさん。自然の地形もあるわけですから、坂も至る所にあるでしょう』」

 

 

「そうねデイラミさん。でも……走ったら気持ちよさそう……!」

 

 

「スズカは相変わらずだね~。ま、同意だけど」

 

 

 みんながモンゴルの草原を駆けまわる中、ただ1人……。

 

 

「……」

 

 

 シアさんだけは、ある一点を見つめていた。その視線の先にあるのは、モンゴルのウマ娘達。

 

 

(何してるんだろシアさん?モンゴルのウマ娘達なんかジッと見て……)

 

 

「『呼吸のタイミングの取り方はこう……脚の使い方はこう……成程成程、そういうことっすね。後はインプットを……改良を重ねて……』」

 

 

 ブツブツ何か言ってるけど聞こえない。もう少し近くに「あまり邪魔してやるな我が弟子」と思ったけど、師匠に止められた。

 

 

「師匠、シアさんはなにをやってるんですか?」

 

 

「あぁ、アイツなりの分析だ。そして、俺がシアを第一走者に選んだ理由は……()()にある」

 

 

 どういうことだ?

 

 

「ま、本番になったら分かるさ。お前もトレーニングしとけ我が弟子。特に、俺とお前、フジノオーはさらにタフなコースを走ることになるからな」

 

 

「わ、分かりました」

 

 

 僕もトレーニングに入る。まぁ確かに、本番になれば分かることだろう。

 ただひたすらにモンゴルの草原を走り回り、疲れが残らない程度にトレーニングして。どのコースで走るかを吟味して時間が過ぎていく。そして──

 

 

《今年は35チームが参加することになりましたモンゴルダービー!35チームが横に並んでスタートを待つ姿はまさに圧巻の一言!その中でも一際目立つのは外部からの参加者であるシアトルスルー選手!アメリカでは超!有名人な彼女!そして彼女が所属しているチームは世界中でトップレベルのウマ娘が集っています!アンカデキメルゼを代表としたチームは果たしてモンゴルダービーの台風の目になるか!?テープが……切られました!モンゴルダービー、スタートです!》

 

 

 僕はドライバーが運転する車に乗ってレースを見守る。モンゴルダービーが開幕した。




ついに始まるモンゴルダービー編!
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