今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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モンゴルダービーの終わり。後亡霊ウマ娘の方は今週忙しくて書く暇が……。申し訳ないです。


安価ウマ娘と終結!

 モンゴルダービー6日目。僕は最後のチェックポイントで、師匠が来るのを待っていた。まだ誰もこのチェックポイントには来ていない。

 

 

(にしても、まぁ。本当に色々とあったよなぁ)

 

 

 初めは僕の安価で決まったレースだった。でも、1人での出走ができなくて。どうしようかな~って思っていると師匠とコーチが知り合いを呼んでくれて。どういう縁か松さんと知り合って。松さんが声をかけてくれて。シービーさんやデイラミさん、スズカさんが出ることを決めてくれて。

 

 

(本当に、本当に。色々とあった)

 

 

 きっかけは僕のワガママだったのに、みんなこのレースを勝つために必死に頑張って。師匠の川の横断やフジノオーさんの崖飛びが目立つけど、他の人達だって凄かった。

 砂漠地帯を走ってくれたコーチやタケシバオーさん、アップダウンの激しい丘の区間を中心に走ってくれたトリプティクさんやシービーさん。そもそも40kmを走るってだけでもキツいのに走ってくれた他の方々……本当に、本当に助かった。僕もそれなりの無茶をしたけど、そもそも40kmを走るの自体相当な無茶だ。

 

 

(過酷なトレーニングを積んで、スタミナを鍛えまくって。モンゴルのウマ娘の走りをできる限り見て学んで、スタミナの消費を抑える術を覚えて)

 

 

 そうして今、僕達はこのモンゴルダービーを走っている。凄いことだ。

 ──だけど、それももうすぐ終わる。立ち上がって、師匠達が来る方向を見る。向こう側から、師匠ともう1人ウマ娘が走ってくるのが見えた。

 

 

(ッシ!気合、入れますかね!)

 

 

 頬を叩いて気合を入れる。お昼はすでに回っている。モンゴルダービー最後の区間が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンカデキメルゼさん、体調体温共に問題なし!いつでもいけます!」

 

 

「あぁ。分かった」

 

 

 メディカルチェックも済ませて僕は走る準備をする。この最後の区間は何もない。ショートカットになるような道も存在しない。ただ自然のコースを走るだけの区間。だからこそ、地力の差が顕著に出る。

 

 

「我が弟子、お前にかける言葉は1つだ」

 

 

「なんでしょうか?師匠」

 

 

 師匠は、笑みを浮かべながら。

 

 

「──勝ってこい。勝たなきゃ承知しねぇからな」

 

 

「愚問です。絶対に、勝ってきますよ」

 

 

 だから僕も、笑みで返す。自然と笑みが漏れ出ていた。

 

 

「それじゃ、行ってきます」

 

 

「おう、行ってこい」

 

 

 チェックポイントを出て走り出す。もう一人の走者も、ほぼ同じタイミングで走り出した。

 スピード的にはこっちが有利。だけど、スタミナ的にはあっちが有利。ま、スタミナの有利不利はもうないも同然だけど。僕の疲労は抜けてるし、体調も問題ない。後はスタミナが切れない程度にしっかりと余力を残し続けることだ。

 正直、普通のレースだったら先頭で走ることは苦にならない。周りに誰もいないわけだし、それにコースが決まっているから正しい道を進んでいるんだって思える。だけど、ことモンゴルダービーはそうはいかない。

 コースの先は果てのない道。どこまでもどこまでも、永遠に続いているような感じを漂わせる道。ゴールが見えない、それだけでかなりの不安をあおる。

 

 

(普段のコースで走るレースにどれだけ慣れていたか。それが良く分かるよね)

 

 

 先が見えないからペース配分にはいつも以上に気を配らないといけない。自然のコースを利用しているから地形の把握は必須だ。本当は、僕や師匠、フジノオーさんが取ったショートカットなんてやらない方が良いことだ。じゃあなんで取ったかと言われると。

 

 

(勝ちたいからに決まってる。チームのためだとか、そういうのもあるけど。一番は──本能的なものだ)

 

 

 たとえ相手が畑違いのウマ娘だったとしても、それが勝ちを諦める理由にはなりえない。僕達は勝ちたい。僕達というウマ娘の蹄跡を、このモンゴルダービーに刻みつけたい。それも、1着で駆け抜けることで。

 ぶっちゃけ配信とかされていないから、誰かが見ているわけじゃない。きっと、新聞の見出しとして書かれるぐらいの出来事として処理されるだろう。それだけでも嬉しいかもしれないけど、やっぱり僕達の走りがテレビなんかで語り継がれないのはちょっと残念だったかもしれない。

 

 

「いや、僕の奇声が入るし無い方が良いな。うん」

 

 

 空を見上げる。空には、出走しているウマ娘に万が一の事態が発生した時即座に気づけるようドローンが飛んでいる。これも昨今導入されたものらしい。技術の進歩ってスゲー!そういやあれって録画機能付いてんのかな?

 走る。ただひたすらに走る。同タイミングでチェックポイントを出たウマ娘は大差をつけたのを確認してからペースを落とした。近くにいるとどうしても気が散るし。そんな相手だが、今もしっかりと着いてきている。しかも、息一つ乱れた様子がない。僕と同じように、ただ淡々とレースを走っている。

 

 

(うん、モンゴルのウマ娘達も強かったな)

 

 

 モンゴルダービー自体が向こうの領域ということを加味しても強かった。だって、僕らは無茶なショートカットとか色々駆使してようやくトップになったのに、向こうはショートカットなんてしてないのにこれだけの差しかつけられてないんだ。どれだけ強いかなんてすぐに分かる。

 距離をチラリと確認する。残りの距離を確認して、水分補給をしっかりとしながら僕はモンゴルの草原を駆け抜ける。

 

 

(本当に、色々とあったなぁ)

 

 

 準備期間から大変だった。スタミナをつけるために滅茶苦茶に鍛えまくって。野営のトレーニングをしていつどこでも休みが取れるように頑張ったり。地図とにらめっこしながら最短ルートをみんなと話し合って決めたりして。

 いざ本番となったらそりゃもう凄かった。シアさんがトップ通過で駆け抜けたり、スズカさんがチェックポイント通り過ぎようとしてたり……今思えばみんなスズカさんならやらかしそうだと思ってたらしいなあれ。いや、僕も思ってたけど。

 フジノオーさんは途中で降った雨の影響で取るはずだったルートを少し迂回することになって、順位を落としたことを気に病んでいた。そんなフジノオーさんのために、みんなで頑張って巻き返した。師匠の川越えばっかりが目立つけど、多少の無理を通してペースを上げていた他のみんなも凄いと思う。そんなみんなの期待に応えるためか、フジノオーさんは崖から崖へと飛び移った。アレはもう凄かったね。度肝抜かれたよ。あれが世界の道を切り開いた名ジャンパーかと思ったね。

 

 

(全員怪我無く走り終えたのが本当に凄いことなんだなぁ)

 

 

 結果だけ見れば、僕らは大きな怪我をすることなくモンゴルダービーを走り抜くことができた。それは本当に凄いことだと思う。

 モンゴルの草原を駆け抜ける。もうどれくらい走っただろう?それを確認するために腕時計を確認しよう──そう思った矢先。

 

 

(──なんだ。もう見えんじゃん)

 

 

 モンゴルダービーの、僕らが走った合計距離1000kmの旅路の、ゴールが見えた。

 後ろからはギアを上げているであろうモンゴルのウマ娘が上がってくるのが分かる。僕のスタミナは枯渇寸前、ヤバいってのは分かってる。だけど、こういう状況だからこそ──。

 

 

「最ッ高に生きてるって感じがする……ッ!」

 

 

 

 

領 域

 

Stand up HERO!Wake up my soul!

 

 

 

 

 最後に身体から力が湧き上がってきて、枯渇してたはずのスタミナがどういうわけか残っていた。そのまま僕もペースを上げて、後ろのウマ娘との差を縮めさせず。モンゴルダービーのゴールテープを切った。

 周りからは拍手と口笛が響いている。僕達のゴールを祝福するように、誰も彼もがお祭り騒ぎだ。ぶっちゃけ、それを気にする余裕もないくらい疲労してるけど。

 

 

「congratulation!」

 

 

「ブラボー!ブラボー!」

 

 

 観客の中から師匠達もやってくる。みんな、凄く良い笑顔だ。肩を抱き合ったりして、みんなで喜ぶ。

 そして、ゴールで待っていた観客をかき分けて。代表の人がやってきた。柔らかい微笑みで僕達を迎える。

 

 

「『おめでとう、遠い国からやってきた勇気ある者達よ。今年のモンゴルダービーを優勝したのは……君達だ!』」

 

 

「「「『おめでとーう!』」」」

 

 

 ──僕達は、モンゴルダービーを勝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『すっっっっっごいね君達!今度また一緒に走ろうよ!』」

 

 

「『ねぇねぇ!やっぱり他の国のレースって凄いの?私達はお祭り以外では走らないから興味あるな!』」

 

 

 その後。僕達が走破してから数日が経過して。全チームが無事にモンゴルダービーを駆け抜けたらしい。最後に大規模な祭りが開催されていた。

 僕達はモンゴルのウマ娘達から質問攻めにあっている。主に僕達が普段走っているレースの話とか、どんなレースが人気なのか。そういったものだ。それはもうどんちゃん騒ぎである。

 

 

「お疲れ様、アンカ」

 

 

「あぁ、トレーナー君」

 

 

 いつの間にやらトレーナーさんが僕の隣に来ていた。一緒に座って、キャンプファイヤーの火を眺める。

 

 

「本当に、タフなレースだったね」

 

 

「あぁ。もっとも、後1ヶ月2ヶ月もすればこれの6倍の距離のレースが控えているわけだがな」

 

 

「そう言えばそうだったね。大丈夫だよアンカ、最短ルートの計測はもう終わってる」

 

 

「本当か?そんな時間、いつあったんだ?」

 

 

「モンゴルダービーと並行しながら準備を進めてたんだ。君の負担を少しでも減らしたいからね」

 

 

 ……冷静に考えておかしくね?そんな時間あった?滅茶苦茶忙しかった気がするんだけどトレーナーさん。僕達モンゴルダービーのメンバーの体調管理もあるし、現在日本にいるタキオン達のトレーニングメニューの管理もあったはずだ。忙しいなんてレベルじゃなかった気がするんだけど。

 よしっ!深く考えるのは止めよう!

 

 

「おう我が弟子!そんなとこで何してんだ!お前もこっちに混ざれ!我が弟子のトレーナーもだ!」

 

 

「ちょ!?師匠引っ張らないでくださいよ!?」

 

 

「アンカちゃんはあたしらのチームの代表だからねぇ」

 

 

「祭りに主役は必須じゃろう!」

 

 

「ホント、アンカといると飽きないね。すっごく良い経験だったよ」

 

 

「ま、まぁそう言ってもらえると嬉しいです。シービーさん」

 

 

「来年もまた出ようかしら?」

 

 

 スズカさん。絶対にトレーナーさんに止められますよ。

 その後。僕達の宴は夜遅くまで続いていた。本当に、本当に。得難い経験だった。また参加することあるかは分かんないけど、それでも素晴らしい体験だったのは間違いないね。後日知ったのだが。どうやらあのドローンは録画機能も備えていたらしく。各区間ごとの走りをダイジェストで切り取っていた。その中には勿論、僕達の姿も。

 

 

「僕の叫びもきっちり入ってんじゃねぇか!?」

 

 

「そもそも自分で録画しといて何言ってるです」

 

 

 そりゃそうだけどさ!

 こうして僕達のモンゴルダービーは終わった。




この後スティール・ボール・ランを控えてるってマジ?
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