「『それじゃ、ウチらはこれで。中々楽しかったっすよ、兎ちゃん』」
「『得難い経験でした。また機会があれば会いましょう……と、言いたいところでしたが。あなたはスティール・ボール・ランに出走するのでしたね、シルバーラビット』」
「『ありゃ、そういやそうだった。なら近いうちにまた会えるっすね』」
モンゴルダービーも終わってしばらく。空港でシアさん達の送り迎えに来た僕達。ラムタラさんや松さんも、モンゴルダービーが終わったから別れになる。ちょっと寂しいな、仲良くしてもらったし。シアさん達とはスティール・ボール・ランに出走する都合上すぐに会えるけど。
「『そうですね。スティール・ボール・ランがあるからアメリカにはすぐに渡ります』」
レディーズシークレットさんは柔和な笑みを浮かべていた。
「『何かあれば頼ってください。日本で言う、同じ釜の飯を食べた仲間……私は、必ずやあなたの力になりましょう』」
「『そうっすね。めんどくさいのは嫌いっすけど、兎ちゃんは特別っすよ?』」
お、おぉ!凄く嬉しい!
「『それに、いずれ……ね』」
ただシアさんは何か良からぬことを考えているような?そんな気配を感じたけど。きっと気のせいでしょ!
「『フフフ!実にきょ~み深いウマ娘だったよアンカ!また機会があればお茶でもどうかね?』」
「き、『機会があればお願いします。ドクターさん』」
この人も距離の詰め方がえぐいな!近い近い!
「『やっぱりコイツモンゴルの大地に埋めておくべきだったか?』」
「『縁起でもないこと言うんじゃないよセっちゃん!?』」
「どれ、あたしも手伝おうじゃないか」
「『止めてくれませんかね!?』」
ドクターもまぁいつも通りだった。この人と知り合ったのつい最近ってのも信じられない話だな。でも交友関係は着々と広がってる気がするぞぉ!
「どれ、アンカちゃんはこのまま海外のレースを転戦するから。次会えるのは年の瀬かねぇ?」
「そのぐらいですかね?松さん達に会えないの、少し寂しいです」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。連絡先の交換はしてあるし、会いたくなったらいつでも呼んで構わないよ」
ま、松さんっ!
「アンカデキメルゼ」
「な、何でしょうか?タケシバオーさん」
「貴重な体験だった。改めて、シンザン先輩の誘いに乗ってよかったと感じている」
「はぁ」
「いずれ一緒に走ろう。
?どういうことだろう?タケシバオーさんは引退したはずだと思うけど。あ、もしかして併走とかだろうか?
「はい!機会があれば、お願いします!」
「ガハハハ!アンカは障害レースも走っておるんだったな?だったら、いずれ我とも手合わせしようじゃねぇか!」
「え゛っ、しょ、障害レースの絶対王者に?」
「お前さんの実力なら、中山大障害や中山グランドジャンプでも勝てるだろ。案外、良い勝負すると思うがのう?」
どちらかと言えば恐れ多さの方がヤバいんだけど!?
「タケもフジさんも。あまりアンカちゃんを困らせるんじゃないよ」
「ま、松さん!」
松さんが仲裁に入ってくれた!やっぱり松さんは「アンカちゃんと走るのはあたしさね」松さんもそっち側かい!
その後はなにもなく。シアさんと松さん達は自分達の国に帰っていた。師匠も一旦アメリカに戻るらしい。なんか用事があるとか。その辺の事情は詳しく分からないけど、用事が終わった後は僕達と合流する予定だ。
僕達はラムタラさんとトリプティクさんと同じで英国に帰る。ロンズデールカップあるしね。
「じゃあニジンスキーさん。アンカのことお願いしますね」
「えぇ、任されたわ。ロンズデールカップとバーデン大賞の間は、ワタシが担当する」
「それじゃあアンカ、またアメリカでね」
「あぁ、しばしの別れだ。トレーナー君」
トレーナーさんは先に日本に帰っているアルナイルのメンバーのことがあるから日本に帰らないといけない。別に寂しくなんてないし?寂しくなんてないし!
こうして僕らはイギリスに戻り。
「『それでは我が配下よ!いずれまた相まみえようぞ!我のLANEにも気軽に連絡を入れるがよい!』」
「『それでは。お疲れ様でしたニジンスキー先輩。クレイジーラビットも、また会いましょう』」
「『はい!ラムタラさんもトリプティクさんもお元気で!』」
イギリスで別れ。コーチと僕、そしてヴィッパーの3人はイギリスの拠点で休む。わーい!久々のベッドだー!めっちゃやわらけぇ!
「それじゃあアンカ。ワタシは夜用事があるから出かけるわ。あまり遅くまで遊んでちゃダメよ?しっかりとモンゴルダービーの疲れを癒しなさい」
「「はーい(です)!」」
こうして無事に着いて。僕達のモンゴルダービーは終わった。本当に、得難い経験だった!
アンカデキメルゼ現時点での育成目標・シニア級
モンゴルダービーに出走するメンバーを3人集める 達成!
CFオーアステークスに出走 達成!
ライトニングステークスに出走 達成!
フューチュリティステークスに出走 達成!
ドバイターフに出走 達成!
マンノウォーステークスに出走 達成!
ゴールドカップに出走 達成!
グッドウッドカップに出走 達成!
モンゴルダービーに参加 達成!
ロンズデールカップに出走
バーデン大賞に出走
スティール・ボール・ランに参加
──アメリカ、ホワイトハウス。
「ようプレジデント。邪魔するぜ」
「アポなしで突撃するって本当に君ぐらいだよセっちゃん。どうもこんちゃ~す!」
「あなたも大概でしょうドクターファーガー様。お邪魔します、プレジデント」
「本当にこのものぐさビッグ・レッドは……。お久しぶりっす、プレジデント」
「おぉ!セクレタリアトにドクターファーガー、それにレディーズシークレットにシアトルスルー!ハハ、モンゴルダービーはお疲れ様だったな!」
アメリカ大統領は満面の笑みを浮かべてセクレタリアト達を迎え入れる。少しだけ世間話をして、セクレタリアト達は真面目な表情に切り替えた。
「なぁプレジデント。ドクターから聞いたが」
「あぁ、
「話が早くて助かります、プレジデント」
セクレタリアト達は全員、不敵に笑う。
「
シアトルスルーの言葉に、大統領の心は歓喜に打ち震えていた。
「正直、君は難色を示すと思っていたが……やはり、
「もち。いや~、本当にあの兎ちゃんは良いっすねぇ」
「分かります。あれほどまでに闘争本能を刺激してくるウマ娘も、そうはいないでしょう」
「で、だ。他のヤツらはどう思ってんだ?」
大統領は、大仰に手を広げる。自分が感じている胸の高鳴りを、最高に楽しいという気分を身体を使って表現していた。
「大多数が賛成している!この祭りに、是非参加してみたいと!とは言っても、
「そういや、そのレースにはシルバーラビットも参加するんだったな!しかも、単独で!本当に凄いなぁ彼女は!」
ドクターファーガーは笑う。
「なら、発表は年末か年明けってとこか?」
「ま、そうなるだろうな。楽しみにしていてくれ!」
「期待してるっすよプレジデント」
「えぇ。本当に、期待しております。プレジデント」
彼らの会合は続く。
──時を同じくしてイギリス。ニジンスキーとトリプティク、そしてラムタラは女王に謁見していた。
「お久しぶりでございます、女王陛下」
女王に傅くニジンスキー。それに倣うトリプティクとラムタラ。厳粛な空気が流れていた。
「──面を上げなさい、ニジンスキー、トリプティク、ラムタラ」
女王の声とともに、ニジンスキー達は顔を上げる。女王は、柔らかい笑みでニジンスキー達を迎えていた。
「まずはモンゴルダービー、お疲れ様だったわね。誇らしく思います」
「はい。欧州のウマ娘として恥じない走りをできたと感じております」
「それで?あなた達はどのような用件でここを訪れたのかしら?」
女王の質問。それにニジンスキーは代表して答える。
「なにやら、各国と共同してとある催しをする予定であると。トリプティク経由で聞きました」
「えぇ。それがなにか?」
「
一瞬、驚いた表情を見せる女王。だが、すぐに笑みに戻った。
「ニジンスキー。あなた──本当に変わったわね。やっぱり、
「はい。間違いなく、アンカデキメルゼのおかげであるといえます」
「そう。情熱を失っていたあなたに火を灯した彼女……会ってみたいわ~!映像越しじゃなくて、生で見てみたい!ねぇニジンスキー?今度連れてきてくれないかしら?」
アンカデキメルゼの話題が出た途端、女王は砕けた口調になる。ニジンスキー達はズッコケそうになるも、すぐに持ち直した。
「ほ、本人の了承があれば、まぁ。それはともかく。催しの方ですが」
「あぁ、それならOKよ!他の国も意欲的だもの、年末か年明けには正式発表されるんじゃないかしら?」
「おぉ!それは良いですね!ということは、来年にでも!」
「えぇラムタラ。きっと、楽しい1年になるわ~!」
「はい、女王陛下。来年が楽しみですね」
トリプティクも賛同する。その後は女王にアンカデキメルゼを謁見させる計画を画策していたニジンスキー達だった。
──同様のことは日本でも起きていた。
「やぁ、邪魔するよURAのお偉いさん方」
「すいません、アポなしはちょっと、って!えぇ~!?」
URA本部に訪れたシンザン達。無論職員達は驚いた表情を浮かべていた。
「し、シンザン様!?何故あなたがここに!?」
「なぁに。ちょいと面白い噂を耳にしたもんでねぇ。なんでも、他の国と共同してどでかい祭りをしようとしてるらしいじゃないかい、えぇ?」
シンザンの何故黙っていた?と言わんばかりの攻撃的な笑み。隠していたわけではないが、URAの職員達は慌てていた。堂に入っていたのは、URAの会長とトレセン学園の理事長を務めている秋川やよい、そして秘書である駿川たづなのみである。
「説明ッ!報せようにもあなたは神出鬼没の浮世人!報せようがなかったのだ!結果的に隠していたようになっていたのはすまないっ!この通りだ!」
「あぁ大丈夫さぁ秋川理事長。別に隠していたことを怒ってるわけじゃないさね」
「そもそも、先輩はURAに関わろうともしないじゃないですか。知るはずもないでしょう」
「まっことその通りよのう!お前はもう少し世俗に関わるべきだ!」
「騒がしいのも騒がしくされるのも嫌いなんだよあたしゃ。めんどくさいことになるのは目に見えてる」
シンザンは頭を掻いて。会長の眼を見据え、笑みを浮かべる。
「その計画、
「……あなたほどのウマ娘が、何故?」
URA会長の訝しむような目に、秋川理事長はシンザンの言葉に興奮気味だった。
「驚愕ッ!あなたが出るのであれば盛り上がること間違いなしだ!やはり、
「そうさね。いやぁ、戦ってみたいもんさ」
「同意です。彼女の実力……このタケシバオーも感じてみたいと思っています」
「我もだ!」
「……ま、御覧の通りさ。あたしらもその祭りに、一枚噛ませてもらうよ」
「歓喜ッ!勿論OKだとも!素晴らしいメンバーが集まったものだ!ワーッハッハッハ!」
「それでは、そのように」
URA会長の言葉で締める。そして、秋川理事長が──楽しそうに。
「世界中のウマ娘があらゆる垣根を越えて戦える舞台!
そう宣言した。
シニア2年目以降の伏線も張っていくぅ!