おーおー。ゴールしたウマ娘達が困惑した表情で僕を見ておるわ。ま、先頭から消えてその後一切姿を見せなかったヤツが実はもうゴールしてましたーなんて状況、そりゃ困惑するよね。
「『あ、あんた……なんでっ』」
「『なんで?おかしなことを言うのだな。僕は普通に走っていただけだ』」
「『で、でも!途中でいなくなったじゃない!』」
そりゃそうでしょう。
「『僕は君達とは別ルートを通っていたからな。姿が見えないのも当然だろう』」
おっと、さらに困惑した表情をしていますね。
「『べ、別ルートって……どこの話よ!?』」
お?知りたいですか?知りたいですか?だったら教えてしんぜましょう!僕が通ったルートを!
《それではここで!飛ばしていたドローンがキャッチした映像を流していくぜ!このドローンには、シルバーラビットが通ったコースが記録されている!ただ心の準備をしておけよ?なんとシルバーラビットは、
あ、丁度いい感じにVTRが流れようとしている。だったら説明しなくていいか。
スクリーンが用意されて、このスティール・ボール・ランのスタートから僕がゴールするまでの映像が記録されていた。
さてさて、後続を突き放して先頭を走る僕ですが。
(
本来のコースから少しずつ離れて僕は直進していく。そうしていくと……見えたッ!
「涸れた川の橋もないところ。外れた道のこの崖!ここを飛び越えれば半分の距離で上り坂にいける!」
ただ1つの問題として、向こうに渡れずに落ちた場合大怪我は免れないレベルの深さなんだけど。
「飛び越えればッ!問題ないよね~ッ!トウッ!」
思いっきり助走をつけて、飛ぶ!これならいけるでしょ!
無事に向こう側に着地した。華麗に着地をして、前を見る。
「ふっふ~ん!余裕の着地ですよ!後はこのままコースに戻るだけです!」
その後はコースに戻って走行を続ける。ちなみにこのルート、第1回のスティール・ボール・ランの参加者である
このまま直進すれば崖に突き当たる、のだが。さすがに今回に関しては崖を上るよりも迂回した方が早いので元のコース通りに走る。そして迎えるのは、雑木林を迂回するコースだ。
「迂回なんてするわけないよね!このまま雑木林に突っ込むぞ!」
迂回ではなく、最短ルートの雑木林を突っ込むルートを通る!ただ、林というよりは最早森じゃねぇかここ!木の枝にぶつかりでもしたらぁぁぁぁ!?
「あっぶな!?こ、こわ~……間一髪セーフッ!」
その後も何度か木の枝にぶつかりそうになりながらも僕は雑木林を抜けていく。
雑木林を抜けたら今度は悪魔の下り坂と呼ばれる場所だ。高低差50m、勾配は30°に達する箇所もあるらしい。だけど!
「こちとらモンゴルで40°近い勾配走ったことがあんだよ!今更30°くらいなによ!」
それはそれとして怖いんだけどね!ちょっと待ってマジで怖い!?あっちよりマシな勾配とはいえ怖いもんは怖いよっ!?
地面が平地に戻った瞬間、ズンッ!って感覚が襲う。とりあえず、悪魔の下り坂は超えた。後は!
「
岩場を、というよりは岩山に近いその場所を僕はぴょんぴょん跳ねながら走っていく。これも先程の人間の男性が通ったルートだ。さ、さすがは他の参加者はウマ娘だったり車で参加している中ただ1人自分の脚だけでスティール・ボール・ランを走ろうとしてた人だよ。とんでもねぇルート通るな。
そしてこの最短ルートを取り終わると、直進した場所にゴールがある!と、いうか!もう見えてる!
「このまま独走じゃぁぁぁぁぁぁい!」
そして僕は、スティール・ボール・ランの1st.STAGEをトップで通過した。
静まり返る会場。出走しているウマ娘やその場に集まった全員が、驚愕の表情で僕を見ている。し、視線が痛い……っ!早くこの場から立ち去りたいっ!
そんな放心している人達を現実に引き戻すように、実況のマイクが響き渡る。
《と、とんでもねぇルートを通ってきやがったぜシルバーラビットォ!常に最短の道を取り続けて、この1st.STAGEをトップで通過してきたぞォ!これは翌日以降のSTAGEでも期待が持てる!やはり、やはりシルバーラビットはとんでもねぇウマ娘だぁぁぁぁ!》
「『ば、バカげている……っ!』」
「『あ、あんた!怖くないのっ!?崖なんて、落ちたら大怪我じゃすまないじゃない!?』」
「『確かにそうだな。落ちたら一巻の終わりだろう』」
言ってることはもっともですね。落ちたら終わり、その通りです。
「『だったら!』」
「『なら、
「『ハァッ!?あんた何言ってんのよ!?』」
僕も何言ってるか分からん。だけどそもそもの話。
「『始める前から失敗を恐れる愚者がどこにいる?』」
「うっ」
「『僕は自分なら飛べると信じて飛んだ。結果的にそれが正解だった。それだけの話だ』」
「『だ、だけど!』」
そうこう話していると、なんかレースを観戦していたファンがこっちに近寄ってきた。お?なんですか?もしかして僕のサインでも「『なに考えているのよシルバーラビット!』」ヒィン!?めっちゃ怒ってる!?
す、凄い。怒髪天を突くって感じで顔を真っ赤にして怒ってるっ!な、なんだよ!僕がなにしたっていうんだよ!ちょっと崖を飛び越えたり雑木林を抜けたり岩山を飛んだり……冷静に考えたら怒られる要素しかねぇな。
「『スティール・ボール・ランは!子供達も見ているのよ!?将来子供達が真似したらどうするのよ!?』」
うわ、テンプレみたいな怒りをぶつけられた。
「『それを教育するのが親の役目だろう?危ないことはするなと教えてやればいいだけの話だ』」
「『前例があるというだけでも子供達は真似しようとするの!それに、あなたの影響力をちょっとは考えなさい!』」
え~?めんどくさ。というかこの人の考えに同調した人達が僕を取り囲み始めたんですけど。あ、ヤバい。ちょっと
「『スティール・ボール・ランは感動の物語なんだ!』」
「『そうだそうだ!6,000kmという旅路、その困難に立ち向かう人とウマ娘達との、挑戦の物語なんだ!』」
「『第一!こんなショートカットズルみたいなもんだろ!正々堂々同じコースで勝負しろ!』」
「「「『そうだそうだ!』」」」
……あ~、めんどくせぇ。
「『ちょっと運営!早くシルバーラビットの参加資格を取り消「『さっきから聞いてりゃうるせーんですよピーチクパーチク』」な、なんですって!?』」
「『僕が何をしたんですか?
「『だけど!他の出走者はちゃんとした道を通ってるんだぞ!?』」
「『知りませんよそんなの。そもそもの話、ショートカットしちゃダメなんてルールはどこにもねーでしょうが。チェックポイントさえ通過すれば、
「『こんなのズルじゃねぇか!他の出走者はお前よりも長く走ることになってんだぞ!?』」
「『じゃあ他も僕と同じルート通りゃいい話でしょ?そんなもんガキでも分かりますよ』」
僕がそう言うと、文句を言いに来た人達は何も言えずに口をつぐみ始める。そして、周りの観客の声も次第に大きくなってきた。大体は僕を批判していた人達を非難する声である。
「『そうだそうだ!シルバーラビットはなにもルール違反をしてねぇだろうが!』」
「『決められたルールで一生懸命走ったシルバーラビットに対しての第一声がそれ!?頭おかしいんじゃないのあんたら!?』」
「『第一!お前らがそうやって規制規制騒ぐからスティール・ボール・ランはつまらなくなったんだろうが!失せろ!』」
おうおう、取っ組み合いでも始まりそうなほどの険悪な雰囲気ですこと。発端は僕なので介入しましょう。
「『そこまでにしておけ』」
「『シルバーラビット!?』」
「『気持ちはありがたいが、ここで争いが起きることは僕の本意ではない。大人しく引き下がってくれるな?』」
当事者である僕の言葉。擁護側は釈然としない表情ながらも大人しく引き下がった。さて、後は批判側だ。
「『随分と批判してくれたな?僕はルール違反を犯してない、ルールに則ってレースをしたのにも関わらず』」
「『うぐっ……』」
「『だが、批判するつもりはない。君達が言っていることも事実なのだからな』」
広がるどよめき。さて、また変なことになる前に説得しておきますか。
「『おそらく、君達も現実に直面して夢を失ってしまった者達なのだろう。だからこそ危険を排除し、挑戦させること自体を諦めさせようとしている。困難に挑戦することを諦め、夢を見ることを忘れてしまったのだろうな。そのおかげで安全性は高まり、そのせいで本来のスティール・ボール・ランの意義からは外れてしまっている』」
苦虫を嚙み潰したような表情。ま、図星ってとこですかね?
「『君達は夢を失ってしまった。冒険する心を失くしてしまった。だから、このレースを見ておけ』」
批判側に指を突きつけて、宣言する。
「『僕が夢を魅せてやる。僕がこのレースであらゆる困難に挑戦し、君達に開拓の心を取り戻させてやる。この僕に……
フッ、決まりましたね……。踵を返して去っていきますよ。
「アンちゃんカッコつけてるです」
良いだろ別に!カッコつけたって!
「程々にね、アンカ」
「う、わ、分かっている」
トレーナーさんからも軽くたしなめられる。反省しよ……。
その後は特に何もなく。明日の2nd.STAGEに備えて道具を買い揃えたりどのルートを通るかを吟味して1日目を終えた。
キャーアンちゃーん。