《幕を開けた2nd.STAGE!先頭を走るのはやはりシルバーラビット!シルバーラビットが初日同様グングン飛ばしていく!先頭を走るのは自分だ!誰にも先頭は譲らないとばかりにガンガン飛ばしていくッ!そしてそのまま50km先の水場まで……ッ!?》
2nd.STAGEは砂漠を越えるルート。ゆえに水場がとても重要になってくる。チームで持つことのできる水にも限りがあるし、後ろからついてくる補給部隊からいちいち買い直すのも手間というものだ。だからこそ、この2nd.STAGEは水場のあるルートをできる限り進むのが定石である──普通なら。
だが、先頭を走るアンカデキメルゼは一番近い水場のルートから
《な、なんと!?シルバーラビットは50kmの水場を無視するルートだ!
他の出走者は困惑する。アンカデキメルゼのあまりにも無謀すぎる走りに。だが。
「わ、私も……だけど……」
何人かはそのルートを走ろうとする。だが、脚がすくんでそのルートを走ろうとは思わなかった。他のメンバーの安全もそうだし、なによりも
他の出走者達は本来のルートを走る。50km先の水場を目指す安全なルート。その道を目指して走る。胸に大きなしこりを残したまま──。
……暑っつ!暑っつい!滅茶苦茶暑い!
気温のせいじゃない!ここ砂漠でいくら見渡しても砂と岩とちょっとの草しかねぇから太陽の光を遮るもんが何もない!マジで周りの温度が高い!今何度だよ!?
「……43度ォ!?ふざけんじゃねーですよ!?」
滅茶苦茶暑いはずだよ!砂漠舐めてたよ!桂ぁ!今何キロぉ!?
「……6時間で70kmか。今が16時だから、日没までには何とか間に合うかな?」
安価は初日で100kmだからね。このペースならなんとか間に合うだろう。水を飲んで水分補給を怠らない。水が無くなってしまったら……後80kmは先にあるであろう水場まで我慢するしかない。
その辺に群生している草とかを集めながら地図を確認する。地図を確認するが……うん、やっべ。
「ここ、どこだ?真っ直ぐ突っ切るルートを取ってるからこの方角で合っているはずなんだけど……」
たまに運よく枯れ枝なんかも見つけて。それを拾いながら現在地を確認するんだけど……いかんせん大まかな位置しか分からん。ま、まぁ走ってれば着くでしょ。今はそれよりも。
「シャワー浴びたいよ~!暑い中走ってるから僕の勝負服が汗でべとべとだよ~!でも水は使いたくないよ~!」
汗でべたついて気持ち悪い!シャワー浴びたい!でも我慢するしかない!クッソ~、次の水場まで我慢だ我慢!
ひとまずちょっとだけ休憩が取れたのでまた走り出す。にしても……!
(暑さもあってか、体力の消耗が予想以上に激しいな。あんまり無理はできないし、それに)
日射病の危険だってある。あ、そうだ。トレーナーさんに定期的に差しとけって言われてたんだった。いったん荷物を降ろして、っと。
「え~と、どこだったかな?……あった!」
バックの中から目薬を取り出す。これこれ!これを差しとかないとね!
「脱水症状で目が乾きすぎて割れることがあるらしいしね。定期的に差しておかないと」
目薬を差し終わって僕はまた走り出す。
この砂漠越え、想像以上にキツいのはその距離じゃない。砂漠ってほとんど景色が変わらないわけだ。つまるところ、自分の現在地を見失いやすい。
(本当に正しい道を走っているのかという恐怖感、そして遮蔽物がほとんどないから太陽の光をほぼ直で浴びることになる。影を走ることができない)
これが思いの外厳しい。幸いにも影に入りさえすればそれなりに涼しくなるのだけは幸いだ。
ぶっちゃけただ暑いだけだったら厚着をしなければいい。だが、そういうわけにもいかない。
(夜になったら今度は気温が一気に下がる。日本の冬にだって負けない寒さが待っていることを考えると、安易に服を脱ぐわけにはいかない)
まだ砂漠の夜を体験していないから分からないけど、用心しておくに越したことはない。……後、ここ本当にどこだ?マジでこのルートで合ってるよね?気球やドローンも見えるし、大丈夫だよね!?
ま~後は食事の問題。この区間は、現地調達も視野に入れている。なので動物もいないかな~?と思いながら見ているわけだが。
「ビックリするぐらいいないじゃん……」
一応食料類なんかも溜め込んでるけどさ、できる限り余裕を持たしておきたいわけよ。最悪その辺の草でも食べるか……。食わないよかマシでしょ。
肩を落としながら走り続ける。今日はどこまでいけるかな~?後、ここ何処かな~?……マジで迷ってないよね僕?本当に大丈夫だよね!?
「答えてくれる人いねーよ!」
だーれもいないから1人でノリツッコミするしかねぇんだよ!クソが!
2nd.STAGEのタイムリミットが迫る。スティール・ボール・ランの出走者達は水飲み場を経由しながら走り続け、最終的には──
《さぁここでスティール・ボール・ラン2nd.STAGE1日目が終了だ~!これ以上は走るんじゃねぇぞ?規則で決まっていることだからな!さぁさぁ、気になるであろうトップは……》
ほとんどの選手が80km地点に到達していた。各々野営の準備を始めている。
(大体はこの地点まで来ている。だけど……今年は)
(第1回以外の例年と比べても速いペース。だけど)
結構なペースで進んでいると実感している出走者達。だが、気分は晴れない。それは、
タブレットで流している配信で、TOPを走るウマ娘の名前が告げられる。その名前は、予想通りだった。
《現在トップを走るのはシルバーラビットォ!アンカデキメルゼェェェェ!なんとなんと!その距離実に112km!砂漠地帯のど真ん中を突っ切るシルバーラビットは112kmで2nd.STAGEの1日目をフィニッシュだぁぁぁぁ!やっぱりすげぇぜシルバーラビットは!》
シルバーラビット、アンカデキメルゼ。予想通りの名前に溜息を吐きそうになる出走者達。
「……ねぇ、本当にこのままでいいのかな?」
「そうは言うけどさ、やっぱり危ないじゃん?」
「そうだね……砂漠の横断だって、下手したら」
口々にできない理由を考える参加者達。そんな状況を、チームをまとめるトレーナーらしき人物がまとめ上げる。
「ほら!早く野営の準備をしろ!これからどんどん気温が下がっていくぞ、凍え死にたくなかったら早く準備を整えろ!」
「「「は、はい!」」」
出走者達は、心にもやもやを抱えたまま野営の準備を進めていた。車から食料を取り出して、明日に備えての栄養を取る。今でこそ気温はどんどん下がって過ごしやすくなっているが、明日の朝になればまた酷暑での走行になる。栄養が足りなくて砂漠で力尽きる……なんて事態もあり得るのだ。そうなった場合はドローンが映像をキャッチするのですぐさま運営が回収しにいくのだが。
それに、最近はそんな出走者もいなくなった。ここのルートは比較的安全ということもあり、砂漠で倒れるなんてことは無くなったのである。むしろ、最近ではリタイアするウマ娘すら減少傾向である。第1回はかなりの数のリタイアを出したにもかかわらず、だ。
2nd.STAGEの夜は過ぎていく。明日もまた走ろう──そう考えながら、出走者達は寝床についた。
アンちゃん汗だらけで走る。