今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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名もなきモブウマ娘の回想から始まる2nd.STAGEの決着。


2nd.STAGE決着

 そのウマ娘は私達にとって目の上のたんこぶだった。

 スティール・ボール・ラン。アメリカの感動系バラエティ番組として結構な長寿だったりする。日本にも似たような番組があったっけ?なんていったかな……確か、24時間テレビ?のマラソン?それと似た感じの番組だ。世間での評判は……ぶっちゃけ芳しくない。というのもまぁ、第1回が凄すぎたってだけの話なんだけど。それと比べたら第2回以降はとてもじゃないけど見れたもんじゃないって評価を受けてる。

 その理由もまぁ分からなくもないかな~?ってことで。有体に言うと安全なルートばかり通って面白くないというものだ。

 

 

「冒険する心が足りない」

 

 

「誰か1人でも違うルートを走ろうとする者はいないのか?」

 

 

「ただ走破するだけのスティール・ボール・ランに何の意義がある?」

 

 

 な~んて言われる始末。でもさ、しょうがないじゃん?それで怪我でもしたらどうすんの?って話。外野はなんとでも言えるから良いよね気楽で。それがスティール・ボール・ランを走る私達の意見だ。み~んな同じこと思ってる。それになんだかんだ言いつつもみんなスティール・ボール・ランを見ているのだ。賞金だってちゃんと支払われているし、どんな番組になってもスティール・ボール・ランを見続ける人達はいるし賞賛する人もいる。だからこんな外野の意見なんて聞く必要ない!……そんな風に思っていた。

 それが変わったのが今回のスティール・ボール・ラン。

 

 

「ねぇねぇ聞いた?今年のスティール・ボール・ランの話」

 

 

「ん~?どうかしたの?」

 

 

「いま世界中で大人気のウマ娘、シルバーラビットが出走するみたいだよ!なんでも、大統領の推薦みたい!」

 

 

 シルバーラビット、アンカデキメルゼ。アメリカで知らない者はいないし、世界中で知らない人はいないんじゃないかな?そんぐらいの有名人だし彼女。

 世界中のいろんなレースに出没して、勝利をかっさらっていくウマ娘。どの距離を走ろうが強いし、どんなバ場で走ろうが強い。本当にどうなってんの?ってぐらい強い子。アメリカでは圧倒的な支持を誇っている。そりゃそうだ。なんせアメリカ国民にとっての英雄セクレタリアト様の愛弟子であの方と同じ等速ストライドで走るウマ娘なんだから。そりゃ熱狂しないはずがない。

 だけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私もその中の1人だ。

 

 

(な~にが夢を魅せるウマ娘よ。バカバカしい)

 

 

 夢は叶わないから夢なのだ。私は()()()()()()()()()()。だからそんな話をするみんなに言ってやったわけ。

 

 

「参加するからっていっても、畑違いでしょ?そりゃモンゴルダービーを走ったみたいだけど……私達の方が分があるじゃん?」

 

 

 シルバーラビットと言えばつい最近セクレタリアト様やシアトルスルーさん、レディーズシークレットさんや他の有名なウマ娘と一緒にモンゴルダービーを走ったことが記憶に新しい。モンゴルダービーのハイライトを収録したBlu-rayとDVDは飛ぶように売れたそうだ。

 それがあったとしてもシルバーラビットにとっては厳しいレースになる。だってモンゴルダービーの6倍だし?それにチームメンバーだって……。

 

 

「そうだね~。それに、シルバーラビットは()()()()()()()()()()()

 

 

「え、それマジ!?やっば~!」

 

 

 ……いやいやいや。冗談でしょ?スティール・ボール・ランが何kmあるか分かってんのアイツ?約6,000kmよ?モンゴルダービーの6倍。モンゴルダービーを13人で走ってたのに、その6倍の距離はあるスティール・ボール・ランは単独で走るの?冗談きついって。

 アンカデキメルゼというウマ娘は、なんというか私にとって気に入らないウマ娘。夢だのなんだの言って色んなことに挑戦してる変なヤツ。だから、単独出走の件が私をさらに苛立たせた。

 

 

「バカバカしい。どーせ途中でリタイアするのが関の山だって」

 

 

「ま、そうだよね~」

 

 

「さすがのシルバーラビットも6,000kmは無理っしょ!」

 

 

 アハハハ!ってみんなと笑い合った。そうだ。無理に決まってる。いつも夢だのなんだの言って持て囃されて。その結果スティール・ボール・ランに単独出走する羽目になって。いい気味だ。しかもアイツは直前のインタビューで。

 

 

「全てのSTAGEにおいて僕がトップ通過を取る。これはすでに確定事項だ」

 

 

「覚えておけ。僕にとってスティール・ボール・ランを走破することは()()()()()()()でしかない。そんな当たり前のこと、今更宣言するものでもあるまい?」

 

 

 そんな風に煽っていた。ま、レースが始まればそんなことも言えなくなるし?だから大丈夫でしょ。

 ……そんな風に思っていた、はずだったのに。

 

 

《ここでついに!2着以降のウマ娘が続々とゴールしてきたぁぁぁぁ!しかし1着はシルバーラビット!アンカデキメルゼェェェェ!その走破タイムはなんと!驚異の17分42秒!他のウマ娘よりも遥かに早いタイムでこの1stSTAGEを駆け抜けました!葦毛の魔王はここでも健在!これが絶対女王の強さだ!スティール・ボール・ランのレースリーダーは──アンカデキメルゼだぁぁぁぁ!》

 

 

 アイツは、とんでもないルートを取って1st.STAGEを制した。しかも私達を煽る余裕まで見せて……!

 

 

(なんなのよアイツ……!本当にイライラする!)

 

 

 アイツを見ていると無性に苛つくのだ。どうしてかは分かんないけど、とにかくムカつく。

 チームメンバーの何人かも思うとこがあったのかアイツに乗せられそうになっていた。その度にトレーナーと説得して説き伏せた。

 1st.STAGEは後れを取ったけど2nd.STAGEなら。そんな私達の目に飛び込んできたのは。

 

 

《あっちぃんだよ!暑いに決まってんだろうがボケが!僕が今どこにいると思ってんだよ!?燃えるように熱いわド畜生が!》

 

 

 砂漠のど真ん中で歌って踊っている光景だった。しかも1日だけじゃない、毎日なんかしらやっている。舐められているとしか思えなかった。だけど……!

 

 

(どういう体力してんのよアイツ!?こっちは25人がかりなのよ?なんであっちの方が速いのよ!?)

 

 

 舐められても仕方のないことだった。本当に、本当に腹の立つ奴だ!

 でも、実力は確かなもの。だって、私達はチェックポイントの近くまで来ているけどアイツはもうチェックポイントに到達したのだから。

 

 

《さぁここでスティール・ボール・ラン2nd.STAGEの6日目が終了だ!そしてなんとなんとぉ!トップは残り半分のチェックポイントに着いたみたいだぜぇ!誰か気になるか……と、言いたいとこだが!お前らはもう察しがついているだろう!そう!シルバーラビットぉ、アンカデキメルゼだぁぁぁぁ!》

 

 

 本当に、どういう強さをしているんだろうかシルバーラビットは?なんかズルでもしてんじゃないの?そんな風に思いたくなる強さ。

 ……まぁいいや。

 

 

(ぶっちゃけ、完走することが大事だからね。命を大事に、ってね。それにさ、挑戦って言うけどマジになっちゃってどうすんの?って話。それで怪我でもしたら大ごとだっての)

 

 

 自分にそう言い聞かせてみんなと和気藹々しながら野営をする……心の中に酷いもやもやを抱えたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 半分のチェックポイントを過ぎて1日が経過した夜。双眼鏡なんかを使ってみるけど……うん、やっぱり見えねぇな。

 

 

「煙でも見えたら御の字だったんだけどね~。そうはいかないか」

 

 

 光源はないに等しいから当たり前なんだけど。ま、その代わりに配信で状況を見れるってのはデカいね。さてさて、どんな感じかな~っと。

 

 

《スティール・ボール・ラン2nd.STAGEも7日目が終了だ!現在先頭を走るのはシルバーラビット!その後ろ大体20kmぐらいの位置に後続のウマ娘達がいるぞ!》

 

 

 ふむふむ。まぁ想像していた通りの距離ですね。ただそこまで距離が縮まっているわけじゃないしむしろ開いている気すらする。このままの調子で走るのが吉だね。にしてもさすがにサソリを食べるのも飽きてきたな……貴重なタンパク源だから贅沢は言えないんだけど。

 

 

「狩りもできないしなぁ。明日に備えて早く寝よ……」

 

 

 そして就寝。明日に備えてもう寝る。アヤベさん達からも着信来ないし。

 朝起きて安価の確認。今日の安価は~っと。

 

 

「ブレイクダンスか……え?ここ岩肌がもろに露出してますけど?こんなとこでブレイクダンスをしろと?」

 

 

 ヘッドスピンじゃないだけマシと思うしかないか……。というわけで早速ブレイクダンス!……なのだが。

 

 

「あっづぅ!?あっづい!地面が滅茶苦茶熱い!当たり前だけど!分かってたけども!?」

 

 

 でも安価は絶対!やり遂げなければならない!気合を入れろ僕!うおおおおぉぉぉぉ……。

 

 

「マジで熱かった……」

 

 

 火傷しなかったからいいけど、大分きつかったなコレ……。とりま安価も終わったことだし走ろっと。

 代わり映えのしない景色を走り続ける。8日目も、9日目も、10日目もそれは変わらなかった。砂漠をひたすらに走って横断する。後続は……結局見ることはなかったな。最短ルートを走り続けているおかげってのもあるけど、向こうも砂漠を走るのは大分きついらしい。

 そうして走り続けて丁度17日目の昼過ぎ。ようやく見えてきましたね!

 

 

《モニュメントバレーにトップの姿が!アンカデキメルゼの姿が確認できるぞ!後続は、いない!後続はいない!シルバーラビット、アンカデキメルゼの独走状態だ!残り600m!アンカデキメルゼがモニュメントバレーに到着したぞぉぉぉぉ!》

 

 

 2nd.STAGEのゴール、モニュメントバレーが見えてきた!あそこのゴールテープを切れば終わり……な、わけないでしょうが。

 僕はそのままゴールテープを切って、()()()()()()()()()()()()()

 

 

《な、なんとぉ!?シルバーラビットがゴールしても止まらない!シルバーラビットはそのまま走り続ける!シルバーラビットは……そのまま3rd.STAGEに突入だぁぁぁぁ!》

 

 

 おっしゃあ!このまま3rd.STAGEに突入だぁぁぁぁい!

 

 

《2nd.STAGEを17日と3時間51分!凄まじいタイムで走り抜けたシルバーラビット!3rd.STAGEも何をやってくれるのか!?楽しみにしておくぜぇぇぇぇ!》

 

 

 このまま独走継続だぁぁぁぁい!いや、本音を言うと少しでも差をつけておかないと不味いからなんだけどさ!でも独走したいのは本当!このままいくぞー!

 

 

 ──アンカデキメルゼ、10月13日モニュメントバレー到着。そのまま3rd.STAGEへ。




大体名もなきモブウマ娘ちゃんと同じ心境の参加者達です。
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