一夜明けて迎えた3rd.STAGE5日目。アンカデキメルゼが朝を迎えるとともに女〇しくてを踊っていた以外は何事もなく。全ウマ娘が走り出していた。
《ゴール直前!ここで迎えるのは周遊3,900mのキャノン湖だぁぁ!この湖を右に行くと水辺を回るルート!これまでのスティール・ボール・ランで最も選択されたルートだ!距離は2,400mと2つあるルートでは長い方だがその代わり起伏のないなだらかな道を進むことができる!反対の左ルート!こちらは距離は1,700mと短い代わりに断崖道となっておりアップダウンは今まで以上に激しいぞ!ここを通るウマ娘は第1回以降現れていないが……だが!ここは期待するしかないんじゃねぇか!?》
先頭を走るアンカデキメルゼが湖へと差し掛かる。彼女が選択したのは──
《先頭のアンカデキメルゼは左の断崖道のルートを走っていったぁぁぁぁ!アップダウンの激しい断崖道を!シルバーラビットが跳ねている!その姿はまさしく
左の道はアンカデキメルゼが飛び跳ねながらゴールに向かって走っている。右の道はアンカデキメルゼ以外のチームのウマ娘達がなだらかな道を走っている。
トップチャット∨ ︙ |
・やっぱアンカデキメルゼは最短ルートだな! ・兎みたいに跳ねてる ・これがほんとのクレイジーラビット ・湖は直進せんの? ・さすがに区間トップは無理やろ ・湖直進すればさらに近いやん! ・↑マジレスすると泳ぎは走りに比べて遅いから右走るよりも時間かかるで ・いけー!アンカデキメルゼを負かせー! ・それでもアンカデキメルゼなら勝てる! ・頑張れシルバーラビット様ー! |
3rd.STAGE決着の時は近い。
よしよし!シルバーラビットを視界に捉えている!まだあっちの方が先に行ってるけど、そんなに差はない!
(この湖で追い抜ける!)
シルバーラビットの性格を考えると、当然のごとく距離の短い左ルートを走っていた。だけど、左ルートは短い分アップダウンが激しいしそれだけスタミナを消費する!対してアイツ以外の全チームが走っている右ルートは、距離こそ長いけどその分起伏もないなだらかなコース!だから、総合的な有利不利は変わらない!最後の直線でアイツを躱せば私達の勝ちだ!
「覚悟しろシルバーラビット!お前はここで終わりだ!」
「散々舐めたような口を利いて!」
他の子達も殺気立ってるな~。ま、気持ちは分からなくもないしシルバーラビットを可哀想とも思わない。
(ふふん、いい気味よ!)
あなたの夢を見せるっていう走りもここで終わり!全区間トップ通過なんてことはさせない!現実に打ちのめされるといいわ!
右ルートももうすぐ終わり!アイツは……やっぱり距離が短い分先に行っていた。だけどその差は右ルートの先頭を走る私と5バ身ぐらいしかない!あっちはスタミナが切れてるだろうし、残り500なら十分に巻き返せる!
「確かにスタミナお化けかもしれないけど!あのアップダウンはキツかったんじゃない!?」
日本では確か、年貢の納め時って言うんだっけ?とにかくシルバーラビットを捉えて私達の勝利だ!
……だけど、アイツは一向に落ちてくる気配がない。私達はスパートをかけてアイツを追うけど、なんでかシルバーラビットに追いつけないっ!?
「というよりも、むしろ離されてる!?」
私も脚を必死に動かしている!その証拠に後続の力尽きた子達を徐々に離していってる!なのに……シルバーラビットには追いつけない!?
どうして、なんで。そう思うよりも先に。
(……まぁ、
今にして思えば、この区間で勝てなくても別の区間で勝てばいいのだ。アイツの総合優勝を阻むのなんてもう無理なことだし、だったら最低限アイツが立てた全区間トップ通過という目標さえ達成させなければそれでいい。なら、このまま引き離されても問題ないか。
(そうだよ。これでいい、これでいいんだ。だって、無事に完走すればいいんだから)
とりあえず怪我をしないように走ろう。この区間で勝とうなんて思わなくていいや。
……だけど、私の脚はそんな意思とは反発するように加速を止めない。シルバーラビットに追いつこうと頑張っている。後なんでか凄いイライラする。なんでだろう?
(どうせ追いつけないのに、頑張ってもっ!)
イライラを何とか抑えながら。私は次の区間に備えるためにペースを落とす。ま、仕方ないよね。これでも2着はキープしているし、総合2位を目指すってのも悪くない。所詮、このレースは完走すればいいんだからさ。
……けど、イライラはどんどん増していく。本っ当にイライラする!必死に耐えて、何とかゴールした。
《3rd.STAGEをトップで通過したのはシルバァァァァラビットォォォォ!アンカデキメルゼぇぇぇぇ!順調に全区間トップ通過という目標に向かって進んでいる彼女!そしてっ!そのまま4th.STAGEに突入……っと?なにやらシルバーラビットが立ち止まっているぞ?後ろを振り向いて、後続へと視線を向けてっ!?》
続々とゴールする私達。そんな私達を待っていたのは──。
「……ッ」
いつもの無表情なのに確かに感じられる、シルバーラビットの落胆の感情だった。は?コイツトップ通過したのになんで落胆してるの?意味わからない。
(このまま走りたいけど……ま、コイツも何か言いたいことがあるんでしょ)
それを聞いてからでも遅くないよね。それに、交代のメンバーを待つのにもちょうどいいし。さてさて、シルバーラビット様はどんなご高説を「
「本当につまらん。百歩譲って僕が通った左ルートを通らなかったのはまぁ良いだろう。だが、最後の直線……貴様ら勝つことを諦めていたな?」
……まぁ、確かにそうだけど。それがなんだって話だ。別にこの区間だけじゃないし、他の区間を勝てばいいだけの話だ。そもそも総合優勝なんてもう無理に近いんだからさ、頑張る意味ってある?
「それがなによ?それがアンタに関係あるわけ?」
「そうよ。むしろ勝てて嬉しいんじゃないの?」
周りからもそんな声が上がる。ただ、わざとらしいように聞こえるから本心というよりはシルバーラビットに対する煽りだろうけど。まぁ気持ちは一緒だろう。他の区間あるから勝ち目のないこの区間で頑張る意味はないじゃん、みんなそう思っている。
だけど、シルバーラビットは明らかに落胆するように溜息を吐いていた。ついで、こちらを睨みつけているかのように眼光が鋭くなった。
「その程度の心構えで、僕の全区間トップを阻もうとしていたのか?だったら、とっとと尻尾巻いて帰ったらどうだ?」
「はぁっ!?」
「何を意外そうな表情をしている?当たり前だろうが。勝つ気がないんだったらとっととこのレースを降りろ。情けない姿を晒す前にな」
コイツ……ッ!言いたいこと言いやがってッ!
「いいじゃん別に!どうせどんなに頑張ったって勝てなかったんだから、じゃあ頑張る意味ないでしょ!?」
「勝ち目が0%だったわけじゃあるまい。少なくとも、それなりの勝ちの目があったはずだ。それを貴様らはむざむざと捨てたんだ」
「ッ!」
確かにそうだ。頑張れば勝てたかもしれない。けどっ!
「後々のこと考えたら!ここで頑張るよりも確実に勝てる区間で勝った方がっ!」
「そんな機会がいつ来るんだ?少なくとも、その程度の心構えで走っている以上、そんな時はこの先一生訪れない」
「なんでそんなことが分かるのよっ!?」
アイツは、シルバーラビットは。変わらずに厳しい目つきで私達を見ていた。
「ありもしない未来を想像して、今を諦める言い訳を作る。そんな現実逃避を続けている以上、貴様らはこの先幾度もチャンスを無駄にする。僕の目標を阻止するなど夢のまた夢……今を頑張れない貴様らが、僕に勝てる道理などありもしない」
「……」
「
踵を返して、シルバーラビットは去っていった。
正直クソほどむかつく。チビだし、無愛想だし、年上に対する礼儀がなってないし。ホントーにむかつく。だけど……。
「……」
何も言い返せなかった。多分ここにいるみんなそう。だーれもシルバーラビットの言葉に反論できなかった。
……切り替えよう。次の4th.STAGEもかなり長い距離を走ることになる。頑張らないと。
(アイツの言葉が……妙に頭にちらつく)
シルバーラビットから言われた言葉が、私の頭の中から離れなかった。
アンちゃんは現在すべての区間でトップ通過。有言実行してるでぇ……。