今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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地味にあのウマ娘が登場と日本の様子。


一等星の思惑

 4th.STAGE13日目──。11月1日、この日は雨の中での走行となった。

 

 

《天気はあいにくの雨模様!こんな天気は外にいるだけでも気が滅入っちまうよな?だがスティール・ボール・ランではそうもいかねぇ!他の出走者達を引き離すためにも!この雨の中で走ることは千載一遇のチャンス!だが、無茶もできないってのが辛いとこだ。無茶をすればチームに迷惑がかかることは必至!他のチームを引き離す、チームのメンバーに迷惑をかけない、どっちもやらなきゃいけないっつーのが、このスティール・ボール・ランを走るウマ娘にとっては辛いとこだな》

 

 

 配信では実況の言葉とともに雨の中を走るウマ娘達の姿が映し出される。ただその表情は、いつになく真剣だった。今までが不真面目に走っていたわけではない。ただ、今まで以上に真剣になった……とでもいうべきであろうか?とにもかくにも、一言では言い表せないほどの雰囲気の変化がそこにあった。

 素人目には判断がつかないだろう。だが、確実に空気は変わっていた。

 

 

《各チームのウマ娘が頑張って走っているな!だが先頭を走るシルバーラビットはまだまだ先!この4th.STAGEこそはシルバーラビットに先着することができるのか!?気になるところだな!》

 

 

トップチャット

・いけいけアンカデキメルゼ!

・他もようやっとる

・クレイジーラビットは変わらずの最短ルートか

・んん?他も結構危ないルート通ってんな

・他も道なき道を走ってるのがちらほら

・アンカデキメルゼがんばえ~

・盛 り 上 が っ て ま い り ま し た

・面白くなってきたじゃねーの

・どうせシルバーラビットの勝ちや

\50,000

頑張れシルバーラビット様ー!

 

 

 4th.STAGEの予想日数は21日。残り半分である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふむん、あいにくの雨模様ですねぇ。ウマホはバッグの中に入れているから大丈夫とはいえ、気を付けないといけません。

 

 

「配信を見る限り、ちょっとずつやる気になっているみたいですね。良かった良かった」

 

 

 でも、()()()。まだ足りない。まだ何かが彼女達を邪魔している。多分、ここにきてチームという弊害が生まれてるんでしょうねぇ。

 

 

(アメリカでもあるんですねぇ、チームの輪を乱さないようにしようって動きが)

 

 

 自分だけが動くわけにはいかない、他のチームメイトにも迷惑がかかるから。そんな風な考えが頭をめぐっているんでしょう。ちょっと温度差が生まれ始めている。ただ、着々とこの状況に不満を持っているウマ娘が増えてきている。このままいけば全員を巻き込むことも不可能じゃない……と、思いたいなぁ。

 

 

「その辺に関してはもう個人の考えだからな~。僕じゃどうしようもないっていうか」

 

 

 僕にできるのは煽るだけだ……いや、煽る必要はなくない?某太陽神みたいに頑張れ頑張れできるできる!ってした方がよくない?でもそれやって僕に似合うか?……想像したけど驚くほど似合わねぇな。キャラ変した?って思われても仕方ないぐらいの変貌っぷりである。つまるところ。

 

 

「なら煽るのは間違ってなかったっていうことかな~?でもなぁ、あんまりしたくないんだよな~……」

 

 

 もうこれに関してはどうしようもない。口下手な自分を恨むしかないね。

 そうそう。昨日は久しぶりにアヤベさんから電話を貰ったんだけど*1、どうやら秋の天皇賞が終わったらしい。結果はオペラオーの勝利。いや凄いなオペラオー。今年に入ってから全戦全勝じゃん。ただ、秋の天皇賞に関してはアヤベさんは観戦してただけだとか。

 オペラオーにお祝いの言葉送っちゃろって思ってる最中、アヤベさんは決意の籠った声で。

 

 

『ジャパンカップは勝ってみせるわ』

 

 

 なんて言ってた。なので僕からも激励の言葉を送っておいたよ。アヤベさんもトプロさんもみんながんばえ~。

 

 

「さて、雨で視界不良だからな……気を付けて進まないといけないな」

 

 

 しかも心なしか雨が強くなってきている。後続のことを考えるとここでもうちょっと引き離しておきたい。

 

 

「日没まではまだ時間がある……限界ギリギリを攻めて行きますかい」

 

 

 そのまま雨で悪路となった地面を走り続ける。スティール・ボール・ランは今日も変わりなくってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つい先日行われた秋の天皇賞。大方の予想通り、オペラオーが制した。

 

 

《400を切ってメイショウドトウが先頭だ!メイショウドトウが先頭だ!しかし外からテイエムオペラオー!テイエムオペラオーが並びかける!まだ年間無敗を誇るテイエムオペラオー!この秋の天皇賞でも勝つことができるかどうか!?ナリタトップロードも上がってくる!真ん中からナリタだ!この3人の争いになるか!?残り200!200を切ってテイエムオペラオーが抜けた抜けた!テイエムオペラオーが抜け出した!強い強い!圧巻の走りだテイエムオペラオー!後続を突き放し、圧巻の強さを見せつけて今テイエムオペラオーがゴールイン!これでテイエムオペラオーは8戦8勝の天皇賞春秋制覇!このまま秋シニアの3冠も手にするのか!?次のジャパンカップが非常に楽しみです!》

 

 

 本当に、とんでもない強さになってきたものねオペラオー。このままいけばグランドスラムは確実……ってとこかしら?春シニアの3冠と秋シニアの3冠を制してのグランドスラム……あまりにも前例がないこと。かなりの偉業になるでしょうね。

 

 

(もっとも、そんなことはさせないのだけれど)

 

 

 そのためにトレーニングに励んでいる。そう、アルナイルのニジンスキーサブトレーナーにお願いして。

 

 

「ワタシとの併走は高くつくわよ?」

 

 

「……構いません。これも、オペラオーに勝つためですから」

 

 

「良い目ね。勝つためにギラついている、とても良い目だわ」

 

 

 春の戦いではさんざんと苦渋を舐めさせられた。だけど、オペラオーの実力は本物、勝つことはかなり厳しい。

 オペラオーは中距離以上を得意としている。つまりはまぁ、私と走るレースがほぼ被るわけね。春天には出なかったのだけれど、大阪杯と宝塚記念では負けてしまった。ここで私は考えた。

 

 

(このまま闇雲にトレーニングをしてオペラオーに挑んでも勝てないんじゃないかしら?)

 

 

 そう思うようになってからの私の行動は早かった。まずは私が所属しているチーム・シリウスのトレーナーに出走するレースの相談をする。

 

 

「……というわけなのだけど。何か良い案はないかしら?」

 

 

 私の質問に、トレーナーは考え込んだ後。

 

 

「なら、アヤベが得意としているレースに絞ろう。アヤベが得意としているのは中距離……秋のG1だと、天皇賞とジャパンカップ。この2つにオペラオーは出走してくる可能性が高い」

 

 

 私に提示されたのは2つのレース。秋の天皇賞とジャパンカップ。どちらも芝の中距離レースであり、私が得意としている距離でもある。この2つから選ぶのだとしたら……。

 

 

「……なら、ジャパンカップにしましょう」

 

 

「理由は?」

 

 

「どちらも府中で開催されるけど、秋の天皇賞だと距離が足りないかもしれない。特に、大阪杯でオペラオーを抜かせなかったのだからなおさら。なら、まだお互いに走っていない距離……東京の2400mで勝負するのが得策じゃないかしら?」

 

 

「そうだね。それに、ジャパンカップの方が準備までの期間を長くとれる。その方が、勝率はまだ上がる……だから、ジャパンカップの方が良いだろう」

 

 

 こうして意見が合致したことで、私達は秋の天皇賞を捨ててジャパンカップに照準を絞ることにした。全てはあの覇王に勝つために。

 アルナイルのニジンスキーサブトレーナーにも併走のお願いをした。向こうは驚きこそしていたものの最終的は快諾。ただ代わりに、シリウスのメンバーとアルナイルのメンバーの併走を条件に受けてもらえることになった。

 

 

「これ、つり合いは取れているのかしら?」

 

 

「取れているわ。あの子達にはいろんな相手との併走を経て強くなっていってほしいもの。ワタシやセクレタリアトだけじゃなくて……ね」

 

 

 そういうことなら、まぁ良いのかしら?ということで併走をしてもらえることになった。アルナイルのトレーナーは現在アンカさんに着いていってアメリカにいるのでニジンスキーサブトレーナーが代理のトレーナーを務めている。そんな彼女がよいといったのだからよいと考えましょう。

 オペラオーは強い。それはこれまでの実績が証明している。ならどうやって勝つかと言われたら……まぁ地力を上げるしかないわね。ただ、そこまで心配はしてないわ。

 

 

“お姉ちゃん、本当にオペラオーさんに勝てるのかな?”

 

 

「心配ないわ。だって……」

 

 

“だって?”

 

 

 不安げな表情を見せる妹に、私は笑顔で。

 

 

「あなたと私が力を合わせるのよ?なら、勝てない相手はいないわ。トップロードさんにも、オペラオーにも……アンカさんにもね」

 

 

“ッ!そ、そうだよね!私とお姉ちゃんが力を合わせれば!”

 

 

「えぇ。勝てない相手はいないわ。だから、安心してちょうだい」

 

 

 そう、私では勝てなくても私達なら勝てる。そう信じて、ジャパンカップへの調整を続けた。

 

 

「なぁ、アヤベって時折誰もいないとこでブツブツしゃべってるよな?大丈夫か?」

 

 

「ストレスでも溜まっているのでしょうか?チームリーダーとして見過ごせませんわね……」

 

 

「し、心配だね……」

 

 

 ……とりあえず、みんなの誤解を解くところから始めましょう。というか、結構前から言ってるはずなのになぜ理解が得られないのかしら?

 

 

「……アヤベさんは、私の、お友だちのような存在と、会話をしています」

 

 

「そ、それって……幽霊ってことですの!?」

 

 

「だだだ、大丈夫なの!?」

 

 

「大丈夫、です。チケット先輩。悪意はありませんし、何より、アヤベさんとその方は、とても強いつながりで、結ばれています。問題は、ないかと」

 

 

「そ、それなら良かったですわ」

 

 

 どうやら、誤解は解けたみたいね。

 

 

「ありがとうカフェさん」

 

 

「いいえ、構いません。それにしても、仲が良いのですね」

 

 

 カフェさんの微笑みに、確信をもって答える。

 

 

「えぇ、とても大切な……私の妹だもの」

 

 

“お、お姉ちゃん……ッ!”

 

 

「……フフッ、次のレース、頑張ってください。私も、メイクデビュー頑張ります」

 

 

「えぇ、カフェさんもがんば「オラァオルフェェェェェ!シケた面してんじゃねぇぞ!」……始まったわね」

 

 

「……えぇ、始まりましたね」

 

 

 声のした方へと視線を向けると、アルナイルのドリームジャーニーさんにウチのチームのオルフェーヴルさんが追いかけられていた。

 

 

「ヒィィィィ!?う、ウチはお姉ちゃんと違ってそれなりの成績を出せればそれでいいんスよ~!?」

 

 

「ふざけたこと言ってんじゃねー!アタシが喝を入れてやる!」

 

 

「ヒィィィィン!?」

 

 

 そんな光景を見ながら。

 

 

「あれも姉妹愛、みたいなものなのでしょうか?」

 

 

「多分そうよ」

 

 

 微笑ましく思いながら見ていた。

 

 

「微笑ましそうに見てないで助けて欲しいっスー!?」

 

 

「気合入れろオルフェ!お前は強いんだからもっと頑張れ!」

 

 

「ヒィィィィ!」

 

 

 ジャパンカップは月末、頑張りましょうか。

*1
ちなみにアンちゃんは小躍りするぐらい喜んでました




火種はつき始めてますよ。
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