今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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時はモンゴルダービー後。


短編 シービーとスズカの帰還

 

 

「いや~、それにしても楽しかったな~。うん、あの子についていって正解だったよ。本当に、貴重な体験だった!」

 

 

 シンザンさん達と別れ、アタシは学園へと足を運ぶ……予定だったんだけどちょっと気分が向いたから道草しながら帰ることにした。おハナさんは早く帰ってこいって言ってたけど……ま、大丈夫でしょ。

 懐から一枚の写真を取り出す。モンゴルダービーを走破した後、みんなで撮った記念写真。うん、良いね。

 

 

「これが宝物、ってね。本当に思い出深い旅だったよ」

 

 

「そうかそうか。私も興味があるんだ、是非とも聞かせてもらえるかな?シービー」

 

 

 ありゃ。聞き馴染んだ声が聞こえたと思ったら。

 

 

「ルドルフじゃん。やっほー」

 

 

 ルドルフが立っていた。どういうわけか怒ってるけど。いや、怒ってる原因は想像つくけどね。

 

 

「あぁ、久しぶりだな。相変らず、君の豪胆無比な行動力には驚くばかりだ」

 

 

「それほどでも」

 

 

「……とにかく、学園へと戻るぞ。東条トレーナーも待っている」

 

 

「はーい。ちぇ、道草しながら帰ろうと思ってたのに」

 

 

「だからこそ、私がこうして出向いてきたわけだ。君は絶対に真っ直ぐに来ないからね」

 

 

 おっと、アタシの行動は把握済みってことか。まぁいいや、このままルドルフと一緒に学園に戻ろうっと。

 色々と公共交通機関を乗り継いで。アタシは久しぶりにトレセン学園へと戻ってきたわけだ。うん、懐かしく感じるね。

 

 

「みんな元気にしてるかな?」

 

 

「全員息災だ。中でもテイエムオペラオーの活躍には目を見張るものがある」

 

 

「そう言えば、春シニア三冠を達成したんだっけ?オペラオー」

 

 

「さすがにそれは知っていたか」

 

 

「まぁね。話題になっていたし」

 

 

 リギルのメンバーの1人、テイエムオペラオーが春シニアの三冠を達成したことはアタシでも知っている。日本のニュースはそれなりに追っていたしね。

 また学園を歩いて。リギルの部室へと入ると。

 

 

「待っていたわよシービー。さぁ、お説教といきましょうか……!」

 

 

「え~?長旅で疲れてるから明日にしてくれないかなおハナさん?」

 

 

「黙りなさいッ!そもそもよそのチームに迷惑をかけてあなたは本当……!」

 

 

 怒り心頭って感じのおハナさんが立ってて。アタシはそのままお説教コースに入ったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小一時間おハナさんからお説教を受けて。言いたいこと全部言い終わったかな~?って様子を窺っていると。

 

 

「……まぁなんにせよ。お帰りなさいシービー。無事に帰ってきてホッとしているわ」

 

 

「うん、楽しい経験だったよ」

 

 

「あなた本当に反省してるんでしょうね?」

 

 

「やだなぁおハナさん。反省してる反省してる。超反省してるよ」

 

 

 反省しているのは本当。でもそれ以上に楽しいことだったっていうのも本当。うん、機会があればまた参加してみたいね。

 

 

「それにしても……まさかフジノオー先輩にタケシバオー先輩、そして……浮世人であるシンザン先輩まで参加するとはな」

 

 

「ホントにね~。アンカはどこで知り合ったんだろ?」

 

 

「確かに気になるわね……あのミホシンザンさえも分かっていなかったと言っているし」

 

 

 ミホシンザン、っていうのはシンザンさんを特に慕っていたウマ娘……って、言っていいのかな?どちらかといえば神出鬼没のシンザンさんに説教してた姿が印象的だったな~。

 お説教が終わった後はモンゴルダービーの話を聞かせることに。みんなとのトレーニングだったり、アタシが走った場所の話だったり。そうそう、アンカの崖下りだったりフジノオーさんの崖越えも外せないよね。どれもこれも、みんな楽しそうに走ってたし。

 

 

「それで?あなたは主にどこを走っていたのかしら?」

 

 

「そうだなぁ……砂漠を走ってる時は楽しかったね。ダートとはまた違った感触、っていうのかな?でもさすがに40kmの距離は疲れたね」

 

 

「当たり前だろう?普通のレースじゃまず走らない距離だからな」

 

 

「そうそう。でも、案外なんとかなるもんでね。久々にトゥインクル・シリーズを走ってる時を思い出したよ」

 

 

 アタシはもうドリームトロフィーに移籍している身だ。だからこそ、ちょっと悔しかったり。

 

 

「アンカとトゥインクル・シリーズで激突してみたかったよね~。あんなに面白い子、他にいないよ」

 

 

「……そういえばあの子まだトゥインクル・シリーズの選手だったわね」

 

 

「ほとんど日本にいないから忘れがちですがそうですよ東条トレーナー」

 

 

 アンカは日本のG1戦線には顔を出さないから仕方ないね。秋も出る気はないみたいだし。あ~あ、早くドリームトロフィーに来ないかな?アンカ。もしくは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 というか、さっきからルドルフがそわそわしてるね。もしかして?

 

 

「アタシの話を聞いて、自分も参加すればよかった……なんて考えてる?」

 

 

「っ!?」

 

 

「アハハ、そんなに驚かなくても。答えみたいなもんだよ?」

 

 

 どうやら図星だったみたいだね。うんうん、やっぱりルドルフもウマ娘としての本能を抑えきれないみたいだ。アタシも話している途中で走りたくてウズウズしてきたしね。

 

 

「で?実際のところどうなの?ルドルフ。走ってみたくなったんじゃない?」

 

 

「……」

 

 

「フジノオーさんは畑違いだからともかく、元祖オールラウンダーの怪物タケシバオーさんに生ける神話とまで称されたシンザンさん……」

 

 

 これだけでも凄い。だけど、まだまだいる。アタシは1人ずつ名前を挙げていき……その度にルドルフは喉を鳴らしていた。

 

 

「こんなメンバーと走れたら、きっと楽しい……そうは思わないかな?ルドルフ」

 

 

「だ、だが……私は生徒会長として」

 

 

()()()()()()()()()()()()()。アタシが聞きたいのは、そんな言葉じゃない」

 

 

 この期に及んで生徒会長を盾にしようとするルドルフを、アタシは牽制する。それはつまらないよルドルフ。

 

 

「ねぇルドルフ。アタシが聞きたいのは1つだよ。このメンバーとレースが出来たら……楽しい?楽しくない?それだけ」

 

 

「……わ、私、は」

 

 

「生徒会長なんて肩書は忘れてさ、自分の気持ちに素直になってみなよ?……ルドルフは、このメンバーとレースしてみたいって思わない?」

 

 

 部屋に訪れる静寂。ルドルフの言葉をアタシとおハナさんは待つ。どれだけの時間が経ったのかな?ルドルフは、固く閉ざされた口を、開いた。

 

 

「走ってみたいに決まっているさ。特に、神話とまで称されたシンザン先輩とのレース……昂る気持ちを抑えつけられるはずもない!」

 

 

 その表情は、生徒会長シンボリルドルフとしての顔じゃない。かつてG1を7勝し、史上初の無敗の三冠ウマ娘に輝いた──競技者、シンボリルドルフとしての顔があった。うん、いいねいいね!こうじゃなくちゃ!

 

 

「ま、レースする機会は今んとこないんだけどね」

 

 

 その言葉でおハナさんとルドルフはズッコケた。

 

 

「じゃあ何のために煽ったのよあなたは!?」

 

 

「え?……面白そうだから?」

 

 

「あなたねぇ……!」

 

 

「い、良いんだ東条トレーナー。シービーはこういうウマ娘だからな」

 

 

 良く分かってるじゃんルドルフ。それに。

 

 

「今はないだけで、この先あるかもしれないよ?その時後悔するぐらいなら、今吐き出しておいた方がいいんじゃないかな?って思って」

 

 

「……はぁ」

 

 

 ありゃ。溜息吐かれちゃった。

 

 

「話はここまでにしましょう。とにかくシービーは長旅の疲れをしっかりと癒しなさい。今日はもう帰っていいわ」

 

 

「お、やった」

 

 

「途中まで送ろうシービー」

 

 

 ルドルフに送られてアタシは帰路に着く。その途中にも聞いておいた。

 

 

「ねぇルドルフ。万が一、シンザンさん達とレースする機会があったら……その時ルドルフはどうする?」

 

 

 アタシの言葉に、ルドルフは少しだけ思案する。けど、今度はさっきよりも早く答えた。

 

 

「無論、出るさ」

 

 

「……へぇ?我慢しなくていいの?」

 

 

「意地悪だなシービー。我慢などできるはずがないだろう」

 

 

 拳を強く握りしめて、ルドルフは笑みを浮かべる。

 

 

「古今無双の英傑達と鎬を削る舞台……あぁ、生徒会長としての私ならば我慢したかもしれない。だが、たまには発散しないとな?」

 

 

「ッ!いいねルドルフ、そう来なくっちゃ!」

 

 

 本当にそんな機会があったら、きっと楽しいんだろうなぁ!そんな風に思いながらアタシ達は帰る。

 数ヶ月後。図らずもこの願いが叶うことになるとは、この時は思いもしなかったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふぅ、久しぶりに帰ってきたわね日本。本当に、懐かしい。

 

 

「ようスズカ!モンゴルダービーお疲れさん」

 

 

「スズカさん!お疲れ様です!」

 

 

「トレーナーさん!スぺちゃん!」

 

 

「俺達もいますよ!」

 

 

 空港ではみんなが迎えに来てくれました。スぺちゃん達は私を拘束して……ん?拘束して?

 

 

「あ、あの?スぺちゃん?みんな?どうして私を拘束するの?」

 

 

「ご、ごめんなさいスズカさん」

 

 

「ど、どうして謝るの?」

 

 

 戸惑う私の目の前に現れたのは……凄く怒っているトレーナーさんで!?

 

 

「さぁてスズカ~。楽しい楽しいお説教の時間だ」

 

 

「ッ!?は、離してみんな!」

 

 

「む、無理っす!悪いのはスズカ先輩なんで!」

 

 

「今回ばっかりはトレーナーが正論ですよ!諦めてくださいスズカ先輩!」

 

 

 こ、このためにみんなで来たのね!?トレーナーさんだけじゃ抑えられないから、私を拘束するためにみんなを呼んで!

 

 

「スズカぁ……」

 

 

「は、はい……」

 

 

「……よそ様のチームに迷惑をかけるんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「ごごごご、ごめんなさぁぁぁぁぁい!?」

 

 

「トレーナーさんってウマ娘の足を触っては怒られてますけどそれは良いんですかね?」

 

 

「シーッ!スぺちゃん、今はそれは関係ありませんよ!」

 

 

 私は空港なのにもかかわらず長い時間お説教されていました……周りの視線が恥ずかしかったわ……ッ!

 お説教が終わった後。私達は車で学園へと戻ることになりました。

 

 

「にしても、ダチのためにモンゴルダービーを駆け抜けるスズカさん……!カッコよかったっす!」

 

 

「ダチ?……ま、まぁそうね。アンカさんとは友達だわ」

 

 

「だが、友達のためってのは間違いだポッケ。スズカは自分が走りたいがためにモンゴルダービーに出走したわけだからな」

 

 

 はい、トレーナーさんにすぐさま暴露されました。

 

 

「少なくとも、1週間は走るの禁止だ。どれだけダメージがあるか分からんからな」

 

 

「な、長くないでしょうか?」

 

 

「アンカデキメルゼのチームに押しかけてまでモンゴルダービーを走った罰だ。嫌とは言わせねぇぞ」

 

 

 そ、それを言われるとどうしようもないわ。

 

 

「スぺもしっかり見張っとけ。勝手に走らないようにな」

 

 

「は、はい!」

 

 

 か、監視までつくなんて……さすがに無理そうね。

 

 

「……あ~」

 

 

 しょんぼりしている私の様子を察してか、トレーナーさんは仕方がなさそうに。

 

 

「1週間経ったら好きなだけ走っていい。それを約束してやる」

 

 

「ッ!ほ、本当ですか!?」

 

 

「あぁ本当だ。あまり溜め込み過ぎるのも良くねぇからな。1週間後、身体に異常がなければ練習で好きなだけ走ってもいい」

 

 

「~~~ッ!」

 

 

 や、やったわ!1週間我慢すれば、好きなだけ走れる!

 

 

「ありがとうございます、トレーナーさん!」

 

 

「はいはい……俺も甘すぎるのかねぇ?」

 

 

 ウフフ!一週間後が楽しみだわ!

 

 

「スズカさんチョロいですね」

 

 

「ま~スズカ先輩走るの大好きだしな」

 

 

「なんというか、スズカらしいよね」

 

 

「いいんじゃねぇか?スズカさん走るの好きだし」

 

 

 後部座席の方でスぺちゃん達が何か言ってるけど、気にしないわ!早く1週間が過ぎないかしら!




2人は怒られた模様。ついでにルドルフに参戦フラグ。
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