今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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アンちゃんのお仕事関係。


短編 安価ウマ娘のお仕事事情

 アンカデキメルゼにはそれはもうたくさんの仕事の依頼が舞い込んでくる。それも当然で、彼女のネームバリューは絶大だからだ。

 

 

「是非ウチの雑誌で!」

 

 

「新商品のモデルになってくれませんか!?」

 

 

「独占インタビューさせてください!」

 

 

「テレビに出演してもらえませんか!?こういう番組なんですけど……」

 

 

 こういった声が後を絶たない。少しでも利益を得るために、視聴率を得るために……あの手この手でアンカデキメルゼにお願いするのだ。

 だが、肝心のアンカデキメルゼの反応はというと。

 

 

「それで……どうする?アンカ」

 

 

「断る。僕のトレーニング時間が削られるだろうが」

 

 

「そっか。……そういうことですので、お引き取りください」

 

 

「「「そ、そんな~!?」」」

 

 

 大抵の場合一蹴する。こちらも理由は単純。本人にその気がないというのと、自分の時間が削られることを極端に嫌うからだ。

 アンカデキメルゼにお願いしてもダメ。ならばと今度はトレーナー側から崩そうとする。

 

 

「う~ん……一応アンカに話を通してみますね」

 

 

「お、お願いします!本当に頼みます!」

 

 

 トレーナーはアンカデキメルゼとは違い、しっかりと考えてから結論を出す。本人と相談し、その上で結果を伝えてくれる。もっとも。

 

 

「すいません。アンカは、興味がないから嫌だ、とのことです。なので申し訳ありませんが、お引き取りください」

 

 

「嘘だぁぁぁぁ!?」

 

 

「いえ、本当のことです」

 

 

 このトレーナー、基本的にアンカファーストな考え方のため断られる回数の方が多い。

 頻度にして50件に1件、仕事を受けてくれるかどうかの狭き門……それが、アンカデキメルゼに仕事を依頼するということである。

 トレーナーも最初からこうだったわけじゃない。むしろ最初の方は依頼者側の立場になって考えていたためか、あるいはアンカデキメルゼの地位の向上のためかアンカになんとか仕事を受けさせようとしていることの方が多かった。

 

 

「アンカ、お願いだから仕事を受けてくれないかな……?今までの依頼全部断ってるじゃないか。君の評判にだって関わるし、ファン受けもよくないよ?」

 

 

 そんな風にお願いしていた。だが、アンカデキメルゼはこれを一蹴。

 

 

「ふん、僕は束縛されるというのが嫌いだ。それが興味のあることならともかく……興味のないことで他人に僕の貴重な時間を奪われるなどまっぴらごめんだね」

 

 

「そ、そうは言うけどさ。それでもちょっとは受けないと」

 

 

「絶対にごめんだね。それじゃ、今日のトレーニングを始めよう」

 

 

「……分かったよ」

 

 

 当初はこんな調子だった。その度にトレーナーは依頼者に頭を下げて、申し訳なさを感じながら依頼を断り続けていた。ごくたまに、アンカデキメルゼの気が向いた時に仕事を受けるのだが……それもほとんどない。

 どうにかして仕事を受けさせられないだろうか?普通ならばこう考えるだろう。いくらレースが強くても、それもファンがいてこそ成り立つもの。そのファンサービスとして重要なレース外での対応を疎かにするのはとてもまずい。だからいかにしてアンカデキメルゼに仕事を受けさせるか?これが重要になってくる。

 

 

「アンカは興味のないことで自分の時間が無くなることを嫌がる……それはきっと、興味があるない以前にその仕事のことを知らないからかもしれないっ!だったらっ!」

 

 

 トレーナーはまず、仕事の依頼をされた段階で詳細を事細かに聞くことにした。今までも聞いていたが、それをより細かくだ。

 

 

「……というわけなんだけどアンカ、この仕事はどう?」

 

 

 普段の業務の時間を使って、アンカデキメルゼにプレゼンをする。この仕事はどんなものなのか?この仕事でどれくらいの時間がとられるのか?この仕事を受けることでどんなメリットが生じるか?そして何よりも重要な部分……この時間、アンカデキメルゼの時間は空いているか?

 それが実を結んでか。

 

 

「まぁいいだろう。この仕事を受けてやる。丁度暇だったしな」

 

 

「ッ!ありがとうアンカ!早速先方に連絡するよ!」

 

 

「あ、あぁ……あまりにもトレーナーさんに申し訳ないから受けることにしましたけど、さすがに興味がないからってやり過ぎたみたいですね……これは反省しなければ

 

 

 アンカデキメルゼは徐々に仕事を受けるようになった。本当に、ほんと~に少しだけだが。トレーナーからすればとても大きな一歩である。

 それからもアンカデキメルゼの興味を惹くようにプレゼンして、なんとか仕事をさせようと頑張っていった。その結果が──。

 

 

「アンカー、この仕事なんだけどどう?」

 

 

「……無理だな。僕には合わない」

 

 

「だよね。俺もそう思ってたところ。じゃあ先方にはダメって伝えておくね」

 

 

「あぁ。よろしく頼んだぞ」

 

 

「それにアンカの時間が削られるからね。ここの人、リテイクが多いって聞くし」

 

 

「本当か?ならば尚更良かったな」

 

 

 これである。最早雑談のように話を振って仕事を受けるか受けないかを決めるレベルにまで達していた。

 

 

「……ちょっと待て、軽くスルーしかけたが何故リテイクが多いということを知っている?」

 

 

「うん?そりゃあ色んな情報の伝手を頼って。ここの仕事を受けたことがあるウマ娘達に話を聞いてみて、そしたらリテイクが多いって話をよく聞いたから」

 

 

「そ、そんな時間あったか?」

 

 

「うん。これぐらいは普通にあったよ?だって話を聞くだけだし」

 

 

「……トレーナーさんが人外に片足踏み込んでいる気が」

 

 

「間違いなく君のせいだろうねぇアンカ君」

 

 

「人聞きの悪い!」

 

 

「実際その通りだろうが我が弟子」

 

 

 ちなみにだが、タキオン達に舞い込んできた仕事もトレーナーがしっかりと厳選している。その仕事の評判、トレーニングとの兼ね合い、タキオン達の調子をしっかりと見極めたうえで相応しい仕事を選んでいた。そして、実際にトレーナーが厳選した仕事はタキオン達にとっても満足度の高いものばかりであり、受けてきた仕事が原因でこじれたことは一度もないレベルである。

 そのせいもあってか、アンカデキメルゼもトレーナーが持ちかけてきた仕事にはかなりの信頼を置いている。

 

 

「……そういえばよぉ」

 

 

「うん?どうしたのジャーニー」

 

 

 仕事の話がひと段落して。ドリームジャーニーは訝し気にアンカデキメルゼを見る。

 

 

「確か、アンカって年度代表ウマ娘になったんだろ?」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

「っつーことは、新しい勝負服を貰えたってことだ」

 

 

「あ、あ~……」

 

 

 思い当たる節があるのか、トレーナーは気まずそうに頬を掻く。当のアンカデキメルゼは思いっきり目を背けていた。

 そしてドリームジャーニーは、かねてから気になっていたことを口に出す。

 

 

「この1年、その勝負服見てねぇけど……あれってどうなったんだ?」

 

 

 それは、言ってはいけないことを言ってしまったような。触れてはいけないものに触れてしまったような……そんな空気が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部室に流れる気まずい空気。や、やーいやーい!ジャーニーが原因ですよー!ジャーニーやっちゃったなー!

 

 

「で?実際のとこどうなんだよアンカ。なんでオメー勝負服1着しかないわけ?」

 

 

「い、1着しかないわけじゃない!」

 

 

「──ならば、show。見せて欲しい。少なくとも……我々は、see──見ていない」

 

 

「そ、それはぁ……お、お見せできない事情がありましてぇ……」

 

 

 畜生め!もう逃げられねぇじゃねぇか!?どう言い訳しようか?そんな風に考えていると……助け舟を出すようにトレーナーさんが!あ、あんた救世主だよ!

 

 

「実はさ、アンカって年明けからずっと海外のレースに出ていたでしょ?」

 

 

「そうですね。たまにこっちで障害の条件戦に出てましたけど」

 

 

「うん。それに、日本にいる時もモンゴルダービーのトレーニングだったし……ぶっちゃけて言うとさ、時間がなかったんだよね。新しい勝負服を貰う時間が」

 

 

「「「あ~」」」

 

 

 まぁ、こういうことである。ほっとんど日本にいなかったせいで、新しい勝負服の希望を出す時間もなけりゃそれを受け取るだけの時間もなかったってことですよ!アッハッハ!

 

 

「実際それって問題になったりしねーの?仮にもURAが絡んでんだろ?」

 

 

 あ、確かにそうだ。URAが絡んでいるわけだし、普通だったら大問題になりそうな気がするけど……。

 

 

「まぁそうだね。実際には結構催促されてたし」

 

 

「え!?そうなの!?」

 

 

 初耳なんだけど!?

 

 

「じゃあなんで教えなかったんだい?アンカ君の反応を見るに初耳だったようだし」

 

 

「え?だって……」

 

 

 トレーナーさんは、それはもう素敵な笑顔で。

 

 

「アンカの時間が取られるじゃないか。アンカが一生懸命頑張っているのにそれを邪魔するだなんて俺にはとてもできないよ」

 

 

「お、おう……」

 

 

「だからあの手この手を使って引き延ばしてさ、毎回毎回なんとか納得してもらってたわけ」

 

 

「ち、ちなみにURA側からは?」

 

 

「やだなぁ。毎回毎回ちゃんと納得してもらってたよ?」

 

 

「……野蛮な真似はしてねぇだろうな?」

 

 

「するわけないでしょそんなこと!?」

 

 

 いや、じゃあどうやって納得してもらったか疑問なんですけど!?というかそもそも!

 

 

「何故僕に教えなかった?」

 

 

「え?」

 

 

「え、じゃない。少なくとも僕が関わっていることだ……僕には知る権利があっただろう?何故僕に教えなかった?」

 

 

 厳しい目で見ますよ!おこですよおこ!なんで教えて……

 

 

「だってアンカに報せたら、後回しにしてくれ、って答えられたし。実際アンカはずっと忙しかったから俺の方で断っておいたよ。邪魔になるわけにもいかないし」

 

 

 はい僕のせい!完全で完璧に僕のせい!何してんだよ僕!

 

 

「でも、結構大変じゃなかった?トレーナー。URAからの依頼なんだよね?」

 

 

「そうでもないよファイン。催促されるたびにアンカは今忙しいからダメです、って断ってたから」

 

 

「そ、それでなんとかできるもんなんですか?」

 

 

「意外とどうにかなるものだよタルマエ。URAだってレースが大事っていうのが分かってるからね。そのレースに悪影響になるようなことはしたくないんだろうさ」

 

 

 ま、まぁ……それもそう、なのか?

 

 

「というわけで、まとまった時間ができたから今度新しい勝負服の話をしに行こうかアンカ」

 

 

「あ、あぁ。分かった」

 

 

「先方にはずっと待ってもらったからね。お小言の1つや2つは覚悟した方がいいかもしれないよ?」

 

 

 ……いや、僕が待たせた期間を考えれば当たり前だからそりゃ覚悟しますけど。というか、本当に良く待ってくれたなURA。

 そして後日。新しい勝負服の話をしにURAへ訪れた。けど、お小言は言われなかったな……なんでだ?本当に何もやってないよなトレーナーさん?




ちなみにスレ民達が立ち上げたあの会社は例外の模様。
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