今日も楽しく安価だ!   作:カニ漁船

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新規入部の子。とは言っても今までどこかで出てきたとかではなく急に生えてきた子です。


安価ウマ娘と新規入部part2!

 

 

「つ、ついに……!あの人に会えるんだっ!」

 

 

 青みを帯びた黒い髪。セミロングの髪を一房にまとめた、貴公子のような出で立ち。中性的な容姿をした男性と言われても思わず納得してしまうようなウマ娘が、目を輝かせていた。彼女が手に持っている写真に写っているのは──アンカデキメルゼ。

 同室のウマ娘は呆れ顔で青毛のウマ娘を見つめる。

 

 

「あんたも好きだねぇ、アンカさんのこと」

 

 

 その言葉に、ウマ娘は頷く。残像が見えそうなほどに。

 

 

「勿論!いつだって、どんな時だって!自らの勝利を劇的に演出する稀代のエンターテイナー!冷徹の仮面を被る、気高き魔王!あぁ、あの人が所属しているチームに入れるなんて!」

 

 

「……あの人表情が表に出にくいだけだと思うけどね。にしても、大分キツいと思うよ?それに、スピカやシリウスに負けず劣らずの色物揃いだからね、アルナイル」

 

 

 アルナイルに所属しているメンバーは良い意味でも悪い意味でも目立つ。まずアンカデキメルゼからしてゴールドシップと同等の奇人枠に入るし、最近デビューして快進撃を続けている学園随一の問題児アグネスタキオン、アイルランドの王族で下手をしようものなら国際問題に発展しかねないファインモーション。地元愛が強すぎるあまり地元押しが強いホッコータルマエ、優しい性格ではあるものの風貌が仕事人というか始末人のそれであるシンボリクリスエス、新参ではあるもののかなりの暴れん坊として知られているドリームジャーニー……数名はまともではあるが、傍目から見ればかなりの色物揃いだ。

 しかもアメリカの外部コーチセクレタリアトにサブトレーナーとして赴任したニジンスキー。こんなところに入ろうなんて思うウマ娘はほとんどいない。強くなる環境は間違いなく学園一だが、とんでもなくハードルが高い。唯一まともなウマ娘といえばサポート科所属のスミニンヴィッパーぐらいのものだろう。

 もっとも、アンカデキメルゼの写真を片手に持って輝いた表情を浮かべるこの青毛のウマ娘は、つい最近アルナイルの門を叩き、入部することが許された新人である。

 

 

「ま、頑張んなよ?間違いなく強くなれる環境ではあるからね」

 

 

「うん!ぼくもきっと、アンカ様みたいなウマ娘にッ!」

 

 

「うん、それは止めといた方がいいと思う」

 

 

 そんな会話がされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さ~て、今日はアルナイルの新メンバーお披露目会ですよ~!

 

 

「ふっふっふ……楽しみだな。我がチームに入るとは、かなり豪胆なウマ娘であるに違いない。どれ、僕が見定めてやろう」

 

 

「そんな隅の方で丸まりながら言っても説得力ないですよアンカさん」

 

 

 う、うるさいやい!知らないウマ娘なんかと話せるか!

 

 

「ねぇねぇトレーナー!どんな子なの?」

 

 

「そういや俺も知らねぇな。ここ最近はSLRCでドタバタしてたから」

 

 

「ワタシもそうね。どんな子かしら?」

 

 

「そうだねぇ……」

 

 

 トレーナーさんはどう伝えようか迷っている様子。ただ、少しばかりして口を開いた。

 

 

「貴公子みたいな子、かな?」

 

 

 ほうほう、貴公子みたいな子ですか。ということは、中性的な顔立ちをしているとか?はてさて、一体どんな子でしょうか「後はアンカを凄く尊敬してるね」ワッツハプン?

 

 

「アンカさんを尊敬している子ですか。ゼニヤッタさんみたいな子ですかね?」

 

 

「う~ん、近しいものはあるね」

 

 

 ゼニヤッタちゃんに近いのか……。別に悪かないけど。

 そんな話をしていると、部室のドアをノックする音が聞こえた。どうやら件の子が来たらしい!早速トレーナーさんが扉を開ける。入ってきたのは──

 

 

「おぉ……」

 

 

「ほうほう、これは確かに貴公子のようだ。男装の麗人と言われても納得するねぇ」

 

 

 タキオンの言う通り、確かにカッコいい系のウマ娘さんだ。そんなに大きいってわけじゃない。でも160ぐらいはあるだろう。青みを帯びた黒いセミロングの髪を一房にまとめているウマ娘さん。う~んカッコいい。デイラミさん味を感じる。

 ただ、新規入部の子は何かを探すようにきょろきょろとしていた。

 

 

「んだテメェ。何探してたんだ?つーか、挨拶の1つでもしたらどうだ?」

 

 

「──pressure、掛けるのは、bad。相手も、委縮する」

 

 

「つっても、せめて挨拶の1つでも……」

 

 

 ジャーニーが言葉を続けようとした次の瞬間、新規入部の子と隅っこで大人しくしていた僕の視線が合う。目と目が合う~瞬間顔を輝かせて僕の方に近づいてきたぁぁぁぁ!?なになになに!?

 その子はずんずんと僕に近づいてきて──顔を輝かせながら僕の両手を握って!?

 

 

「初めましてアンカ様!」

 

 

 そう告げた。あ、アンカ様?僕のこと?

 

 

「あ、あの~」

 

 

 戸惑っている僕がとりあえず誰かと問いかけようとした次の瞬間。

 

 

「あぁ……!やはり実物はとても可愛らしいお方ですね!」

 

 

「そ、そうな」

 

 

「銀色の葦毛に翡翠の瞳!思わず吸い込まれてしまいそうです!あまり直視していると魅了されてしまいそう……!いえ、もう十分に魅了されておりますが!」

 

 

「い、いや。僕のはな」

 

 

「ですが、今は可愛らしくてもひとたびレースで走れば名勝負を演出する稀代のエンターテイナー!アンカ様のレース、余すことなく見ておりました!」

 

 

「あ、ありが」

 

 

「可愛さの中にある確かな凛々しさ!可愛さとカッコよさ、その二つが両立するカリスマ性!なんと気高きお方……!ここの門を叩いたのは、やはり間違いではありませんでした!」

 

 

 圧が強いなこの子!?さっきからマシンガンのように僕を褒めてくるじゃん!ここまでくると逆に怖いよ!?

 その時、パンパン、と。手を叩く音が聞こえた。発生源はトレーナーさんである。

 

 

「うん、興奮しているのは分かったから。まずは自己紹介しようか」

 

 

 トレーナーさんの言葉で我に返ったのか、僕の両手を握っていた子は顔を真っ赤にしてトレーナーさんのところに足を運ぶ。た、助かった……。

 

 

「あ、改めまして。ぼくはシーザリオ、シーザリオと言います。この度はアルナイルの門を叩いて、入部の許可を貰った次第です。まだまだ若輩の身ではありますが、精一杯頑張っていきますので!みなさんどうかよろしくお願いします!特にアンカ様!」

 

 

 僕を名指しするんじゃないよ。コミュ障は注目されるのが嫌いなんだよ。でも僕を慕ってくれるのは純粋に嬉しいぞ。

 

 

「これまた濃いヤツが入ったな」

 

 

「むしろ濃いメンバーしかいないでしょうここは」

 

 

「一理あるねぇ」

 

 

「え~?私は結構まともよりだと思うけどな~?」

 

 

「──心外。しかし、否定できない」

 

 

「まぁリーダーのアンカさんからしてキャラが濃いですし。でもキャラが濃いということはそれだけ注目されること!つまりこれは宣伝チャンス!」

 

 

「安心しろタルマエ。アンタも十分キャラ濃いから。特に太ももの辺り」

 

 

「私の太ももは太くない!」

 

 

 ま~確かにまともよりかと言われたら若干怪しいところがある……どころじゃないな、うん。

 さてさて、件の新入部員の子改めシーザリオちゃん。なんでそこまで僕を慕っているのやら?

 

 

「さて、シーザリオ……と言ったか?」

 

 

「ッ!あ、アンカ様に名前を呼んでもらえた……!身に余る光栄!」

 

 

 もう細かいことは気にしないでいいや。

 

 

「……何故僕を尊敬している?実績という面でか?それとも生活面でか?」

 

 

「生活面でオメェを尊敬するやつがいるわけねぇだろケツデカ葦毛」

 

 

 うるせぇよ!僕だって思ってるよ!だけど10万人に1人はいるかもしれねぇだろ!

 僕の問いかけにシーザリオちゃんは──これでもかというぐらい顔を輝かせていた。

 

 

()()()()!」

 

 

「……は?」

 

 

「全て、です!アンカ様!」

 

 

 そのままシーザリオちゃんは凄い勢いで語り始めた。

 

 

「まず何といってもその可憐な容姿!まるでお伽噺の妖精が物語の世界から現実に飛び出してきたかと思わずにはいられません!アンカ様を語る上でこれは外せません実績!前人未踏!誰もが成しえなかったクラシック五大レースの制覇に始まり同一年のキングジョージ・凱旋門賞・BCクラシックの制覇!しかもこれをクラシック級のうちに成し遂げるのですから凄まじい偉業まさしく感服の一言です!クラシック五大レースを制しながらこの3つを制する……!あぁ!今思い出すだけでも感激で胸がいっぱいになります!さらにはレースを彩るエンターテイナー気質!ただ勝つのではなく、ドラマチックな勝利を演出するそのお姿!誰もが心を奪われ魅了されたことでしょう!無論ぼくもその1人です!そしてそしてアンカ様が常日頃から仰っておられる夢を魅せる走り!あらゆる無謀!無茶!困難!挑み続けるその姿勢に誰もが胸を打たれ、挑戦する姿勢を取り戻す!そのお姿はまさしく民を導く王!いえ、神のよう!ただ無理難題を言うのではなく、己自らの手で実行することによって民に奮起を促し在り方を示す!あぁ……!やはりあなたは素晴らしいお方ですアンカ様!それに……」

 

 

「まて、待ってくれ。分かった、十分に分かったから」

 

 

 あ、頭痛くなってきた……。これ以上聞くのは止めておこう。シーザリオちゃんはまた我に返ったのか顔を赤くして。

 

 

「す、すいません!ぼく、興奮すると歯止めが利かなくなって……!」

 

 

「そうだねぇ」

 

 

「そうだね!」

 

 

「だな。今ので十分わかったわ」

 

 

「好かれてんなぁ我が弟子」

 

 

「増えてるの大体狂信者な気がするけどね」

 

 

「アンちゃんの交友リストに後輩系ウマ娘が追加されたです」

 

 

 なんというか、尊敬してくれるのは嬉しいんだけどね。

 

 

(ここに入れた理由が良く分かった気がする)

 

 

「これからよろしくお願いします!アルナイルのみなさん!アンカ様!」

 

 

 こうして、アルナイルにシーザリオちゃんが入った。パンパカパーン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の地位が危ぶまれている気がします!」

 

 

「いきなり何言ってるのよゼニヤッタ」

 

 

「だ、だって!どことなく私の立ち位置がピンチになっているような気がして!」

 

 

「アホなこと言ってないでさっさと寝なさい」

 

 

「あーん待ってよー!」

 

 

 アメリカではそんな会話があったそうな。




慕ってくれる後輩が増えたよ!やったねアンちゃん!
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